世界の動き 2022年5月24日 火曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より

今日の一言:
 キッシンジャー博士の言葉 If you do not know where you are going, every road will get you nowhere. 「どこ行こうとしているかわからなければ、どの道を行こうとどこにもたどり着けない」
 先日FinancialTimes紙の博士へのインタビューを見た。ウクライナ進行後のもので対露、対中の米国外交がテーマだった。博士は5月27日に99歳になるが質問には明確にかつ老獪に回答していた。

1.バイデン大統領は支援を約束
【記事要旨】
 東京での記者会見で台湾が侵攻された際の直接的な軍事支援について「ある。それが従来からの米国の姿勢」と返答。従来の米大統領が取ってきた「戦略的曖昧さ」から一歩踏み込んだ見解。ホワイトハウスは従来通りとバイデン発言を修正しているがバイデンは従来の大統領とは違う見解を繰り返している。東京では米国中心の中国に対抗する緩やかな経済新構想(IPEF)が12か国で発足。
【コメント】
 ウクライナで直接支援を表明して来なかったことがロシアの侵攻を招いたという反省がもたらしたバイデン発言だろう。「台湾有事」は日本の有事になりうるので日本は国防のグランドデザインを明確化する必要がある。個人的には、国防費を増額し、それが米国からの軍用機や軍備輸入に使われるのは遺憾だ。日本は中国と米国の間で自らの国益を守る賢さが問われている。

2.ロシア外交官が抗議の辞任
【記事要旨】
 ロシアのジュネーブの国連代表部に駐在するBoris Bondarev氏はロシアのウクライナ侵攻は恥ずべき行為として辞任。ウクライナのゼレンスキー大統領はダボス会議で世界のリーダーに向けウクライナへの支援とロシアへの一層の制裁強化を訴えた。ロシアから撤退したビジネスのウクライナへの進出も。
【コメント】
 プーチンの鉄の統制にほころびが出てきている一つの表れだろう。ロシアの官と軍の動揺の行方を注視したい。

3.クッシュナーはサウジとの関係を濫用?
【記事要旨】
 トランプ政権発足時中東への投資を促進する30憶ドルのアブラハムファンドが設立されたがトランプの退陣で消滅した。今、クッシュナー(トランプの娘婿で顧問)とムニューチン(前財務長官)は私的に、同じ考えのファンドを設立した。このファンドはUAE,クウェイト、カタールの投資家から5億ドル、サウジの国家ファンドから10億ドル、サウジ投資家から20憶ドルのコミットメントを集めた。
【コメント)
 政権幹部がその後の自分の金儲けに政権時の人脈を使うのはどこの国にもある話。米国はあけっぴろげで職業倫理に抵触する恐れがあるところまで踏み込んでいる。そもそも倫理のない人たちなので批判は全く気にしないだろう。

その他:
フィリピンでのフェリーの火災。知床の方が大きな惨事
At least seven people were killed after a passenger ferry caught fire in the Philippines.
イランでの暗殺?
A senior member of Iran’s Revolutionary Guard Corps was assassinated in Tehran on Sunday. There was no immediate claim of responsibility, but the style of killing echoed previous attacks by Israel.
天文の話題で気宇壮大に
Scientists have long wondered if the planet Mercury may have been hit by a large object, stripping away its outer layers and leaving a rocky remnant behind. New research into rare meteorites called aubrites, scattered across museums on Earth, could shed light on mysteries surrounding the planet closest to the sun.

(2022年5月24日 火曜日)

世界の動き 2022年5月23日 月曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より
今日の一言:
 A friend in need is a friend indeed.
 「まさかの時の友が真の友」

 米国の「拡大抑止」がバイデン来訪で大きく取り上げられているが、従来の「抑止」との違いがよく分からない。IPEFとTPPの違いも同様だ。
 「友情」には何が本当に必要なのか、「本質」を考える時期であり、苦言を呈するのも友人の在り方だとおもうのだが。

1.オーストラリアの新
【記事要旨】
 スコット・モリソン現首相は敗北を認め労働党のアンソニー・アルバニーズ党首が新首相に就任する見込み。アルバニースはモリソン政権への信任投票として選挙戦を展開し、「革命でなく改革」を訴える。有権者は生活費の上昇や、モリソンの「否定と遅延政策」に懸念を抱き、アルバニースの代替エネルギー推進政策を支持。オーストラリアでは投票が義務化され、高い投票率は、労働党への支持が増えたわけではなく、環境保護を訴える小政党等が伸びた。オーストラリアでは選挙運動はソーセージ・パーティーのノリで投票へ行くのは仕事というより支持者の集会という建付けになっている。
【コメント】
 この記事には結果が示されていないが、「豪放送局はオーストラリア下院総選挙(任期3年、定数151)での暫定の獲得議席数。アンソニー・アルバニージー氏率いる野党・労働党は72議席、スコット・モリソン現首相率いる与党・保守連合は55議席となっている 出典:オーストラリア放送協会(ABC)」と放送。連立は不可避で、環境政党や女性活動家がどのように政権に関与するかが今後の見物。

2.バイデン大統領はアジア友好国を歴訪
【記事要旨】
 バイデンはトランプ政権で揺らいだアジアの同盟国との関係強化を目指す。韓国では11日前に就任したばかりの尹大統領と面談し北朝鮮に融和的だったトランプ政権から政策変更。今日は東京で米主導のアジアの経済構想を発表予定だが関税の引き下げを伴わない枠組みの有効性を疑問視するアジア諸国もある。ロシアのウクライナ侵入でぼやけたが、バイデン政権発足当初のアジア重視と中国への対抗政策を世界的に明示するのが訪問目的。
【コメント】
 日本政府は何故IPEFへの参加を唯々諾々と賛成するのだろうか。TPPへ参加してもらうのが正論であろうが。IPEFでの台湾の取扱いも腰が据わっていない印象だ。

3.インド、バングラディシュでの豪雨
【記事要旨】
 死者60人以上、家を失った人が100万人以上という豪雨が、家屋や駅や街を流出させている。今年はインド北部・中部でモンスーン期まえの豪雨が続き、バングラでは昨年はロヒンギャの難民キャンプに大きな被害が出ている。インド洋とベンガル湾からの影響を受けるインドとバングラは特に気候変動の影響を激甚に受けやすい。
【コメント】
 これから日本でも集中豪雨の季節を迎える。他山の石にしたいものだ。

その他:
国連がウイグルの人権状況を調査。中国はどこまで見せるのですかね?
The U.N.’s top human rights official will visit Xinjiang, where Beijing has cracked down on the Uyghur minority, and other parts of China this week. Activists say the trip holds significant risks for the credibility of her office.
戦争犯罪の証拠
Atrocities: The Times is documenting evidence of potential war crimes, like killings in Bucha, some carried out by a notorious Russian brigade. A Times visual investigation shows how Russian soldiers executed people there.
フィリピンでの非都市生活
For decades, young Filipinos have left rural areas in pursuit of economic success, leading to overcrowded cities. The pandemic temporarily reversed that pattern, and many enjoy rural life. If the government makes good on stated efforts to reinvigorate the hinterlands, the shift may stick.

(2022年5月23日 月曜日)

人生の無形資産

 GAFAの株価の源泉は「無形資産」で説明される。これらのテックジャイアントは今後も間断なく世界を驚かす製品やサービスを提供するであろう。その企業価値の源泉は、工場といった「有形資産」ではなく、優秀な社員を集め、維持し、成長させる人的資産や企業内に透徹する起業家精神に代表される財務諸表に表現できない「無形資産」にあるのだ。

 自動車メーカーを事例を取ればもっとわかりやすい。テスラの5月20日の時価総額は一ドル128円換算で約88兆円。同日のトヨタ自動車は33兆円だ。2021年のトヨタの販売台数は約1000万台。テスラは93万台にすぎないが、テスラの時価総額はトヨタはおろか世界の大手自動車グループを合算した時価総額を上回っている。
 テスラの有するEVでの技術力や強力なブランド力がなせる業で、トヨタが世界中に築いている生産拠点や販売ネットワークと云った「有形資産」はテスラの「無形資産」に企業価値の判断では大きく見劣りしている。

 さて、個人的な話で恐縮だが、昨日、誕生日を迎えて、自分の資産と負債は何かと雑駁に考えてみた。

 資産では、自宅ほかの不動産、自家用車、といった「有形資産」が代表的だ。溜まりに溜まってきた本やCDは二束三文の価値しかあるまい。骨董や美術品も無縁だ。「金融資産」は死ぬまではもつのではないかと楽観派だ。少なくとも「金融負債」が無いのは老後には心強い。

 ここまで来て、資産では「有形資産」だけでなく、テスラではないが「無形資産」があることに、はたと気が付く。

 ビジネス関係で取引先や同僚に、恩恵を与えていることが多ければビジネス上の「無形資産」だ。逆に、恩恵を受けていることが多ければビジネス上の「無形負債」だ。友人関係でも、貸し借りがあるので、自分は「無形資産」が多いのか「無形負債」が多いのか考えてみるとよい。成功しているビジネスマンは概して「無形資産」が多いと筆者は思う。

 こうした、恩恵のやり取りや貸し借りだけでなく、純粋な心の中の「無形資産」もあることにも気づく。

 例えば、・父母との懐かしい思い出、・高校の思い出と同級生との交歓、・大学のクラブ活動とアルムナイとの交わり、・成就しなかった想いと思慕の残滓、・家族の励ましの思い出、などは、自分の心の中の「無形資産」だ。これらは自分が生きている限り永続し、新しいビジネスに取り組んだり、人生の曲がり角に直面する際には、我々を内側から支えてくれる。

 これからの人生で新たに「無形資産」を積み上げることも可能だ。聖書曰く「与えられるよりは与えるほうが幸いである」 It is more blessed to give than to receive.  
     他人から見ればきっと欲張りで恥知らずですぐに安易に走る自分にどれだけできるかわからない。しかし、挫折するに違いなくとも、そんな考えを大事にして「無形資産」が積み上げられるような生活をして行きたいものだ。

(2022年5月22日 日曜日)

「悲観的に考える」と「投資家の本分」と

キャッシー・ウッドという投資家をご存じだろうか。

投資運用会社アーク・インベストメントの創業者にして、ARK Innovation ETF【ARKK】を運用する女性投資ファンドマネージャーである。2021年まではARKKはベンチマークであるSP500の4倍以上のリターンを挙げ、同氏は天才の名前をほしいままにしていたが、2022年からの環境変化でARKKも大暴落の最中にある。

Tesla・ZOOM・Conbase・Unity・Spotifyなど、最先端とも言うべき銘柄を「ノアの方舟ARK」のごとく詰め込んだのが【ARKK】だった。

少数の限られた株式に大きく張る手法は当たれば大きいが、2022年には、金融引き締めや利上げなどの環境悪化でことごとく急落しており、【ARKK】も2021年の最高値から70%以上値を下げている。

2021年後半から市場環境が反転する過程で、彼女のYouTubeを何度か見てきたが、金利上昇局面でも少しも動じず「今はインフレではない。デフレだ」と繰り返していたのが目に焼き付いている。とてもエッジの立った投資家だという印象を受けたのだ。

さて、今日のテーマ「悲観的に考える」で何を言いたいか。

金利の上昇、コロナの蔓延とサプライチェーンへの影響、ウクライナの戦争と、これでもかと悪いニュースが重なり、悲観的なコメントしか出来ないのが普通だろう。キャッシーのように断定的に世の中と逆のコメントをするのは勇気がいる状況だ。

このような状況で、私が言いたいのは、悪い情報に明るい側面は無いのだろうか考えようということだ。

・ロシアのウクライナの侵攻:
確かにロシアの理不尽なウクライナ侵攻でウクライナの国民は塗炭の苦しみを味わっているが、西欧の考え方のすり合わせ、特にNATOとEUの関係の整理、に役に立ったのではないか。ハンガリーやトルコのような考えをする国もあれば、フィンランドやスウェーデンのように考える国もある。今回の戦乱が無ければあらわにならなかった立場の違いではないだろうか。米欧の民主主義国の一体化が進み、経済安保で大きな進展があったともいえるだろう。
また、核戦争の脅威が現実にあることを指摘してくれた。人間の愚かさを見くびってはいけないのだから、国として、国民としてやることがあることを再認識させてくれた。平和ボケした日本にはよい薬だと思われる。
エネルギーを友好国への依存することがどんなに恐ろしいことかをおもい起こさせてくれた。
・コロナの蔓延:
先進国が抜け駆け的に対策を進めても世界全体で沈静化できなければ問題の解決にならないことが明らかになった。COVAXがまがりなりにも機能して来たのは大きな成果と言えるのではないだろうか。
また、国内で人種・民族紛争にうつつを抜かす国ほど解決に時間がかかることが明らかになった。
・インフレの増嵩
インフレに対してヘッジになるのが運用の基本ではなかったのだろうか。株に大きく賭ける運用の姿勢がそもそも邪道ではなかったのだろうか?
お客の資産を減らさないのをモットーとするスイスの(日本の?)銀行家の知恵が活きる時代ではないのだろうか。

さて、私が申し上げたいことを要すれば、以下に尽きる。
・悲観の中に、楽観の芽を見つけて行くのが投資家の本分だろう。
・国の失政をあげつらわず、自分で出来る工夫をするのも、投資家の本分だろう。

(2022年5月21日 土曜日)

世界の動き 2022年5月20日 金曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より
今日の一言:
今朝は所用があり発信が4時間近く遅れました。申し訳ありません。こんな時は
“Better late than never!” 「遅くてもやらないよりはまし」
と言い訳します。

1.ロシアはウクライナ南東部の支配を計画
【記事要旨】
 ウクライナの占領地を視察した露高官は「ロシア一家にとって重要な地域になる」と占領地支配方針を表明。ロシアの占領地のコントロールは弱くても、欧州の穀倉地帯、有数の原子力発電所、重要な港が含まれ、ウクライナ経済への影響は甚大。米上院は400憶ドルのウクライナへの軍事・生活支援を可決。この2か月で米の支援は540億ドルに上っている。制裁の影響は軽微とプーチン大統領は言うが徐々に露の日常生活に影響が出ている。ハンガリーはロシアからのエネルギー禁輸にいまだ反対。
【コメント】
 南東部では露とウクライナの一進一退の攻防が続きそう。破壊された市街の映像に胸が痛む。

2.ウクライナでの戦争がアフリカの飢餓を招く
【記事要旨】
 コロナ禍と南米での干ばつのさなかに2大食料生産国、ロシアとウクライナ、を巻き込んだ戦争が農作物に大きな影響を与えている。アフリカ諸国のうち14か国は食料輸入の5割以上をウクライナとロシアに依存している。ソマリアを始め東アフリカ諸国での飢餓が懸念される。些細な食糧価格の上昇も弱小国には激甚な影響を与える。国連FAOは西・中央アフリカでの飢餓に直面する人口が戦争前の4倍の41百万人に上ると推定する。
【コメント】
 限界的な生活をしている人々は少しの変調で飢餓に直面する。日本ではおびただしい食料が廃棄されているわけだが、それを飢餓に苦しむ人々に送るすべがない。世界的なフローはさておき、日本の貧困家庭でも食べるものに事欠く人もいるようだ。
 日本国内であれ世界的であれ所得の再配分、過剰物資の流動化、民族的な政治運動の解消、もう何十年も繰り返されてきたテーマだが我々には解決策が見つからない。結局はレッセフェール、市場原理に任せる、というのが万人が合意できる解決策と言うことになる。

3.オーストラリアの民主主義を女性がよみがえらす
【記事要旨】
 約25人の独立系女性候補ーほとんどが成功した経歴の持ち主ーが腐敗し、右傾化し、女性嫌悪に傾く豪州の政治に新風をもたらそうとしている。The tealsと呼ばれるこの人たちは、土曜の選挙で与党の自由党連合も野党の労働党も過半数が獲得できない際には、政府に迅速な反応を期待し高い生産性を期待するtealsは大きな力を発揮すると見られている。Tealsは親ビジネス、親イノベーション(特にエネルギー分野で)、親平等(特に人種差別と性差別に関し)でありClimate200というグループ名で850万ドルの政治資金を集めてきた。
【コメント】
 このような動きが日本でも出てきてほしいと思うが、女性間でのやっかみや嫉みが大きい我が国ではなかなか出てこないのかなとも思う。

 人口の3 %が変われば社会は変化するという政治研究もある。沈滞した世襲政治に変化をもたらすものは何なのだろうか。

その他:
日本の誤入金事件
A city worker in Japan wired a 24-year-old man an entire town’s Covid aid by mistake. The recipient gambled it away and has been charged with fraud.
イスラエルの不安定な政権
Israel’s opposition now has a two-seat majority in Parliament, raising the possibility of a fifth election in three years.
英米法では
In the 17th century, an English judge, Lord Matthew Hale, wrote that women were contractually obligated to their husbands. That ruling still looms large in the U.S., Britain and India — where a Times reporter spent the past two weeks speaking to women about their struggle to balance between their ambitions in a modernizing economy and the constraints of a patriarchal system.

(2022年5月20日 金曜日)