日本の低失業率は良いことか?

日本の低失業率は、労働市場の構造・社会慣行・文化的要因が複雑に作用している。いろいろな要因を整理してみよう。
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1. 労働市場の流動性の低さ
• 欧米:失業率は「雇用の出入りの激しさ」の表れ。解雇しやすい反面、再就職もしやすい。
• 日本:長期雇用慣行(終身雇用)と解雇規制により、労働移動が少ない。
→ 企業は簡単に解雇しないので「失業者」として表に出にくい。
• その代わりに「賃金抑制」や「非正規化」で調整するため、失業率が低めに出る。
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2. 低賃金でも職にとどまる傾向
• 「失業状態」よりも「不本意な低賃金・非正規雇用」に甘んじる人が多い。
• 生活保護の利用が少なく、セーフティーネットへの心理的ハードルが高い。
• 失業率統計上は「雇用されている人」にカウントされるため、表面的に失業率は低く出る。
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3. 労働組合の弱体化
• 戦後すぐは強かった労組も、70年代以降は組織率が低下(現在は約16%)。
• 労働者の権利擁護よりも「雇用の維持」を優先する傾向が強まり、賃上げ要求力が弱い。
• 結果、企業は「雇用を守るが賃金は上げない」バランスを取りやすく、失業率は低く抑えられる。
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4. 社会的・文化的要因
• 「職を失う」ことへのスティグマ(社会的烙印)が強い。
• 家族や地域共同体の中で「仕事をしていること」が強い同調圧力になる。
• そのため、労働者自身も低賃金や非正規職を受け入れやすい。
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5. 統計の仕組み
• 総務省「労働力調査」では「就業者=1週間に1時間でも仕事をした人」と定義。
• 非正規・短時間労働者も含まれるため、実態以上に失業率が低く出る。
• 代わりに「不完全就業率(希望する労働時間を得られない人の割合)」でみると、日本は欧米と差が縮まる。
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まとめると、日本の低失業率は
• 労働市場の流動性の低さ
• 低賃金や不本意就業を受け入れる社会的要因
• 労働組合の弱体化による雇用調整バイアス
• 統計上のカウント方法
などが重なって生じていると言える。
 つまり「失業率が低い=雇用が健全」とは限らず、実質的には「低失業率・低賃金・非正規拡大」というトリオでバランスが取られているのが日本の特徴である。つまり、日本の失業率が米国やEUに比べて恒常的に低いのは、日本の経済が彼らより健全だからだ、とはとても言えない状況だ。
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 さらに言えば、低失業率の副作用というべき状況がうかがえる。日本の「低失業率」自体は一見すると健全に見えるが、その裏側には 企業経営のリスク回避姿勢や構造的な硬直性が潜んでおり、ご指摘の「内部留保の蓄積」「イノベーション不足」ともつながっていると言える。整理すると以下のようになる。
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日本の「低失業率」の副作用と企業行動への影響
1. 雇用維持が最優先になりやすい
• 日本企業は「従業員の雇用を守る」ことを社会的責任として重視。
• 解雇を避けるため、不況時には 賃金抑制や新規投資削減 でしのぐ。
• その結果、内部留保は積み上がるが、成長投資には回りにくい。
 リスクをとって新事業に挑戦するより、雇用維持を優先する構造。
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2. 労働市場の硬直性が競争力低下を招く
• 解雇しづらく、流動性が低いため、人材の新陳代謝が進まない。
• 不採算事業の人員を削減できないので、成長分野にリソースを移せない。
• 企業は「余剰人員を抱えるリスク」を恐れ、むしろ投資を控える。
  人材の流動性が低いと、企業も大胆な投資に踏み切れない。
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3. 内部留保の積み上げと投資不足
• 企業は不測の事態(円高・不況・災害など)に備え「現金・預金」を厚く保持。
• OECD統計でも、日本企業の現預金比率は主要国で突出して高い。
• この「守りの財務姿勢」が、研究開発投資やM&Aなどのリスクマネーを抑制。
  「リスクを取るより貯め込む」経営行動が固定化。
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4. 低賃金・非正規拡大が需要不足を招く
• 失業率は低いが、実質賃金は伸びず、可処分所得も伸びない。
• 企業は賃上げに消極的 → 家計消費は伸びず、需要不足 → 投資インセンティブも低下。
• 結果的に「低失業率・低賃金・低成長」が定常化。
  賃金抑制が国内市場の縮小を招き、さらに投資が減る悪循環。
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5. 世界競争における遅れ
• 米国や欧州の企業は「リストラ+新事業投資」で産業構造を更新。
• 日本企業は「現状維持+内部留保」で競争力強化が遅れがち。
• 例:デジタル産業・EV・バイオ分野で、欧米中に比べ劣後。
 低失業率を維持する社会的圧力が、逆に産業の新陳代謝を妨げている。
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  こうして分析してくると以下のように要約できそうだ。
• 日本の「低失業率」は、企業と労働者の双方が「雇用維持」に強く依存した結果。
• しかしその副作用として
    内部留保の過剰蓄積
    イノベーション不足
    産業転換の遅れ
が進んでしまった。

 つまり、低失業率は一種の「安定の罠」であり、短期的には安心だが、長期的には世界的競争力の低下を招く構造的要因になっているのだ。

 さて、日本の低失業率の副作用を解消するにはどうすればよいのだろうか。外的要因で変化せざるを得なくなりそうだ。トランプ関税、AIの飛躍的な発展でホワイトカラーの職業の多くが不要になること、日本の労働力不足解消のための外国人労働者の流入といった要因で、労働市場は大きく変動しそうだ。内的要因はどうだろうか。日本人がリスクを取ってジョブホッピングをするような心持になるだろうか。中学生に「将来なりたい職業は」と聞くと、会社員や公務員が上位に来るそうだ。外的要因を先取りして、自らが自分の道を切り開いて行ける個人が確立すると良いのだが、どうなるだろうか。

2025年8月31日 日曜日

2025年8月の市場動向 (備忘メモ)

1) 株式市場 月間リターン(8/1–8/30,)

米国
S&P 500(終値6460.26): +1.9%、NASDAQ(同21705): +1.6%、ダウ平均(同45636.90): +3.2%。8月最終週はパウエル講演を受けて長期金利が低下、月次でもプラスで終了。
日本
TOPIX(3075.18): +4.49%、日経225(42718.47): +約4%。月中にTOPIX初の3000超え・日経も史上高値圏(4.3万台)に到達、その後は持ち高調整でやや鈍化。

2) 8月の主な出来事と株価への影響
・ジャクソンホール(8/22):パウエル議長が労働市場の下振れリスクに言及し「慎重な緩和」へ含み。これで9月利下げ観測が台頭、株高・長期金利低下・ドル安に反応。
【本当に利下げの環境が整うのだろうか】
・米インフレ指標:7月PCEは概ね想定線、一方で7月PPIは強めのシグナルもあり、利下げのペースにはなお議論余地。
・ビッグテック/AI関連決算:NVIDIAは好決算でAIテーマを再点火、月末にはDell・Marvellがガイダンスを嫌気され軟調、AI関連は強弱混在で物色の回転が発生。
【利食い100人力。今は半分は利食いの時期】
・日本株の高値更新:TOPIXが過去最高、日経は史上高値圏。円安追い風と海外資金の流入が背景。月末は利益確定で一服。

3) 金利の動き(8月)
米国金利:10年国債利回りは4.22%近辺(8/29)まで低下。パウエル講演・ウォーラー理事の利下げ示唆でカーブは低下基調に。
日本金利:10年JGBは1.6%前後で推移。超長期ゾーンの需給不安で上振れする場面もあったが、月末は落ち着き。 BOJの国債買入れ漸減も続く。
【更なる金利上昇には要注意】

4) 為替(8月のドル/円・ドル指数)
ドル/円:月後半まで147–148円台中心、パウエル講演後は147円前後までドル安/円高に振れる局面。
ドル指数(DXY):月間で下落(約▲2%)。利下げ観測強まりドル安基調。

5) 今後の主なイベント(9月以降)と株価の推定
米国
CPI(8月分):9/11(米東部)。コアの減速が確認できれば利下げコンセンサスを後押し→グロース/AI・内需(住宅/小売)に追い風。逆に粘着なら金利再上昇で高PER株に逆風。
FOMC:9/16–17。足元は9月25bp利下げ観測が優勢。利下げ開始=短期は株式にポジティブ、ただし**「景気減速が理由の利下げ」なら景気敏感は選別**に。
日本
BOJの買入れ・長期金利:10年1.6%台が続くと銀行・保険に相対追い風、金利上振れはバリュー優位/グロース調整のシナリオに。超長期の需給・入札結果は引き続き要監視。

レンジ想定(1か月程度)
S&P500:+2%〜−3%のレンジ(CPIとFOMCの組み合わせ次第)。インフレ鈍化×利下げ示唆なら上限トライ、粘着インフレなら金利上振れ→テック主導の調整も。
日経225/TOPIX:円安一服なら輸出主導の上値はやや重く。一方、国内金利の高止まりは金融・商社・エネルギーに資金が回りやすい。

6) 注目セクター/個別トピック
米国
・AI関連の二極化:半導体(NVIDIA)は好業績で牽引、一方でAIサーバー需給や顧客集中を巡りサプライチェーン銘柄(例:Dell、Marvell)は決算敏感。**「コア(設計・最上流)」>「装置・部材・周辺」>「完成機」**の順で選別色。
・金利低下で:住宅関連、ディフェンシブ(ヘルスケア/公益)に資金回帰の余地。パウエル講演後のリリーフ局面では高PERの過熱感に注意。
日本
・金融(銀行・保険):イールド拡大の恩恵、超長期のボラはあるが中期で追い風。
・自動車・機械等の輸出:円安→利益率改善の継続テーマ。高値圏ゆえイベント前の利確圧力には注意。
・インフラ・エネルギー:国内金利の上昇・資源高局面では商社/エネルギーの相対優位が出やすい(選別)。

7) プライベートエクイティ(PE)&プライベートクレジット(PC)市況
PE
・ファンドレイズは鈍化継続(H1 2025で減速、Q2は前期比▲4.6%)。ただしセカンダリーや大型旗艦は引き合いが残る。北米偏重、クロージングまでの期間は平均17か月と長期化。分配の滞りがLPの新規コミットを抑制。
・ディール/エグジットは件数は伸び悩みも、金額は前年上半期比で回復。ストラテジック売却の復調が下支え。

プライベートクレジット
・AUMは高水準だが、未投資比率(ドライパウダー)が約24%との推計も。大型案件参加やセカンダリーの活性化で消化を狙う動き。利回り妙味は維持も、流動性・エクスポージャー集中など新たなリスクに注意。

一部機関投資家はPC配分のテンポを調整し、ヘッジファンド等へ回帰の兆しというサーベイ結果も。

2025年8月30日

世界の動き 2025年8月29日 金曜日

今日の言葉
「日銀の政策目標」
FRB(米連邦準備制度)の政策目標は、FOMCの度ごとに日本で詳しく報道されるので、ご存知の方が多いだろう。
法律(Federal Reserve Act)で明記されていて、いわゆる「デュアル・マンデート」:
• 物価の安定(インフレーション抑制)
• 最大限の雇用(maximum employment)
となっている。
では、日本銀行の政策目標はどうなっているのか。
日銀の場合も、法律(日本銀行法)に基づいている。
日本銀行法第2条には次のように書かれている:
日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うにあたっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
つまり公式の政策目標は 「物価の安定」 であり、FRBのように「雇用」までは明示されていない。
雇用状況を日米比較すると、
日本では確かに失業率が長期にわたり2〜3%台と低水準で推移しており、完全雇用に近い状態。(現在の失業率は2.5%) そのため日銀は 雇用水準を政策目標に掲げる必然性が低い。
逆に米国は労働市場の変動が大きいため、「最大雇用」がFRBの政策目標として制度的に組み込まれている。(現在の失業率は4.2%)  ということが言えそうだ。
日本の失業率の低さについてはまた稿を改めたい。現在の日本の地盤沈下の原因と考えるからだ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.ロシアによるキエフへの最大規模の攻撃
【記事要旨】
昨日、キエフに向けて数時間にわたるミサイルとドローンの集中攻撃が行われ、4人の子供を含む少なくとも18人が死亡した。トランプ大統領がプーチン大統領と会談してから2週間足らずでのキエフへの最大規模の攻撃は、アメリカの最近の外交努力がロシアとウクライナの平和に全く近づいていないことを示している。
「ロシアは交渉のテーブルに着く代わりに弾道ミサイルを選んだ。戦争を終わらせる代わりに、殺戮を続けることを選んだ。」とゼレンスキー大統領は述べた。」
トランプ大統領は、プーチン大統領によるウクライナへの攻撃に不満を表明しているが、ロシアに対する新たな制裁を課すという脅しは実行に移していない。
キエフにあるEUミッションとブリティッシュ・カウンシルの建物が攻撃で被害を受けた。英国は、ロシア大使を召喚し、攻撃に抗議したと発表した。
ゼレンスキー大統領は、首席補佐官と安全保障会議議長が本日ニューヨークでトランプ大統領のチームと会談し、将来の和平協定に含まれる安全保障上の保証について協議すると述べた。
ロシアとその同盟国は、米国とその同盟国がドイツ経由で軍事物資を輸送するために使用しているルート上空で偵察ドローンで飛行させている。
【コメント】
プーチン大統領に自制は無い。あるのはトランプの弱腰に乗じて、最大限の譲歩をウクライナから獲得することだ。アラスカ会談が開催されたので、トランプの和平への熱はすっかり冷めているようだ。

2.イスラエル予備役、ガザ攻撃に不参加?
【記事要旨】
イスラエルはガザ市攻撃のために数千人の予備役兵を招集する準備を進めている。しかし、当局はどれだけの人が戦闘に復帰するか確信が持てない。
ここ数ヶ月、イスラエル予備役兵の兵役不参加が増加している。戦争に幻滅した者もいれば、レバノン、シリア、ヨルダン川西岸といった複数の戦線での長期にわたる派遣と戦闘で疲弊した者もいる。
イスラエル政府は軍がガザ市への全面攻撃を計画していると発表したが、兵士はまだ市の大部分に展開していない。しかし、ガザ市のザイトゥーン地区では数週間前から作戦を展開し、それまでほぼ無傷だったザイトゥーンはイスラエル軍の爆撃によって壊滅状態にある。
【コメント】
なるほど。予備役の人たちも喜んで戦場に向かているわけではないのか。超正統派の扱いと並んで政府にとっては頭の痛い問題のようだ。

3.欧州諸国、対イラン制裁の復活へ
【記事要旨】
英国、フランス、ドイツは昨日、国連に対し、イランが2015年の核合意に違反したため、合意に基づき停止されていた制裁を復活させる計画だと報告した。
国連決議で概説されている「スナップバック制裁」への動きは、制裁が復活する前に30日間の交渉期間を設けるものだ。イランはこの動きを違法とし、国連の核監視機関との「継続的な対話プロセス」を損なうものだと主張した。
【コメント】
「スナップバック」は、2015年にイランと欧米などとの間で成立した国際的な取り決め、「核合意」によって解除されたイランに対する国連の制裁を再開させる措置です。
核合意の参加国がイランに合意違反があると判断した場合、国連安全保障理事会に通知したうえで、手続きを経て制裁を再開させるもので、措置の発動期限は、ことし10月18日までとなっています。
国連の制裁が再開された場合、イランはウラン濃縮活動の停止を求められるほか、金融や武器の取り引きなどが制限されることになります。(以上NHKより)

その他の記事
米国:FRB理事のリサ・クック氏は、トランプ大統領による解任決定を理由に訴訟を起こした。CDC長官のスーザン・モナレス氏は、ホワイトハウスが解任を表明したにもかかわらず、辞任を拒否した。
北朝鮮:金正恩委員長は来週、他の世界の指導者らと共に軍事パレードに参加するため北京を訪問する。
香港:メディア王のジミー・ライ氏の裁判は昨日終結したが、釈放されるかどうかは政治的な判断となる可能性がある。

インド:新たな50%の関税は、同国の新興太陽光発電産業を打撃を与えている。
小売業:トランプ大統領の高関税は、かつてはブラジルとインドを製造の安全な選択肢と見ていた米国の中小企業に大打撃を与えている。

文化
『K-POPデーモンハンターズ』の秘密
悪魔のようなボーイズバンドに立ち向かう3人のポップスターを描いたアニメミュージカル『K-POPデーモンハンターズ』は、じわじわと人気が高まり、一大現象へと発展しました。Netflix史上最も視聴された映画です。
同僚によると、この成功の最も知られていない側面の一つは、映画がファン層を理解している点です。この映画は、アニメやK-POPといったニッチなファン層を巧みに捉えています。ファンの存在は、映画のキャッチーな楽曲がポップチャートを駆け上がるのに貢献しました。ファン層は物語の重要な推進力でもあり、コンサートシーンでは熱狂的なファンのショットが数多く登場します。

2025年8月29日 金曜日

世界の動き 2025年8月28日 木曜日

今日の一言
「トランプ大統領の従軍慰安婦発言」
 李韓国大統領との会談中にトランプ大統領が全く脈絡が無く突然行った発言が波紋を呼んでいる。報道する記事ごとに、日本よりのもの(「韓国が固執している」)と韓国よりのもの(「韓国の経験に大統領は共感」)様々だ。
 原文を見よう。
 “The whole issue of the women. Comfort women. Very specifically. We talked and that was a very big problem for Korea, not for Japan. Japan was, wanted to go, they want to get on. But Korea was very stuck on that”. これは日本の見方に近い。
 実際の会談の様子を見ると、韓国民の多くが苦しんだことをTrumpは言及しており、韓国を支持する姿勢がうかがえる。
 微妙な問題は、報道の仕方や見方で、印象が微妙に異なる事例だ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.海外のクリーンエネルギーを潰すトランプ氏
【記事要旨】
 トランプ大統領は米国内だけでなく海外に対しても化石燃料利用を促し、各国の気候変動対策を弱める圧力をかけている。
 具体策として、関税・ビザ制限・港湾使用料などで温室効果ガス削減協定に賛成した国を制裁すると表明。
 ほぼ全ての貿易協定で、相手国に米国産石油・ガスの大量購入を義務付けている。
 サウジなどと連携し、石油由来プラスチック生産の規制に反対。
 ホワイトハウスは「曖昧な気候目標で米国経済や安全保障を危険にさらさない」と主張。
 専門家や欧州当局者はこうした圧力が深刻と懸念。科学者は化石燃料から風力・太陽光などへの迅速な転換が不可欠と指摘している。
【コメント】
 掘って、掘って、掘りまくれと大統領選挙の時から公言していた。彼のこうした動きはわかっていたのに。。。

2.トランプ大統領の関税発動でインドは混乱
【記事要旨】
 トランプ大統領が50%の関税を課したことを受け、インド全土の企業は政府に支援を求めた。政府は、輸出業者が新たな市場を開拓し、融資を容易にできるよう、6年間で280億ドル規模のプログラムを発表した。
 業界団体は、労働者への賃金支払い、電力価格の引き下げ、銀行融資の実現を政府に強く求めた。トランプ関税は、インド経済の約2%を占める繊維産業など、大量雇用を生み出す産業に大きな打撃を与えるだろう。
【コメント】
 インドへ向けているトランプの怒りの矛先はなぜプーチンに向けられないのだろうか。不思議だ。

3.欧州の防衛への大きな賭け
【記事要旨】
 ウクライナ戦争に駆り立てられた欧州と英国の首脳は、数十億ドル規模の防衛費を投入している。彼らは軍事費支出を雇用と成長を生み出す経済対策として推進している。
 経済学者たちは、軍事備蓄ではなく研究開発に多額の資金を投入しない限り、その効果は小さいと警告している。公的債務ではなく税金による資金調達は、成長をさらに抑制する可能性がある。ドイツは再軍備のための借入を拡大しており、債務を抱えるフランス、イタリア、英国はより厳しい選択に直面している。
【コメント】
 日本の選択肢はどうなるのだろうか。防衛国債の大量発行となれば戦前を髣髴とさせる事態だ。

その他の記事
米国:ミネアポリスのカトリック教会で、学生たちがミサを行っていたところ、窓から銃撃犯がライフル銃を乱射し、子ども2人が死亡、17人が負傷した。
諜報活動:トランプ大統領と密接な関係のあるアメリカ人がグリーンランドで「秘密裏に影響工作」を行っているとの疑惑が浮上したことを受け、デンマークは米国特使を招集した。
ガザ地区:トランプ大統領は、特使のスティーブ・ウィトコフ氏と義理の息子で元顧問のジャレッド・クシュナー氏と、ガザ地区の将来についてホワイトハウスで長時間会談した。
ドイツ:兵力不足に直面しているドイツで、軍の募集計画案は新たなインセンティブを提供しているが、入隊目標が達成されなければ徴兵制が復活する可能性がある。

テクノロジー:エヌビディアの売上高は前四半期に56%増加し、ウォール街の予想を上回り、AIブームが減速していないことを投資家に安心させた。

2025年8月28日 木曜日

世界の動き 2025年8月27日 水曜日

今日の一言
「GT-R」
 独特の感情を呼び起こす車だ。ケンとメリーのスカイラインは大学生のころだった。
 その後、スカイラインGTに乗っていたことがある。日産関連の会社の監査役をしていたため、その会社の売り上げ支援のために、当時、車のなかった私も車を買わざるを得なくなったのだ。
 当時のスカイラインGTRには触手が動かなかった。ワイルドで運転しにくい印象だった。
 日産復活の象徴として独自モデルとなったGT-R。2007年から18年間の生産が昨日修了した。これまで48000台が生産され、国内販売は17000台余りだった。
 最近街中で目立つのは、スポーツカーとは対極の車であるSUVばかりだ。
 もう一度GT-Rの、更には、スポーツカーがブイブイする日本の復活を望みたい。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.インドは米国との関係に困惑している
【記事要旨】
 かつて米国とインドは、中国への対抗を目的に緊密な協力関係を築き、テクノロジーや防衛分野での連携やサプライチェーン多様化が進んでいた。しかし2025年に入り、トランプ政権がインドに対し50%関税を課すなど強硬姿勢を示したことで、両国関係は急速に悪化。インド政府も米国の狙いが分からず「困惑」と表明している。
 インドは高関税や米国への貿易黒字、農業保護などで摩擦がある一方、米国からのエネルギー・防衛輸入増加でバランスを取ろうとしていた。しかしトランプ政権には響かず、インドのロシア産原油輸入増加への制裁的対応が一因となっている。中国も同様にロシア原油を購入しているが制裁を免れており、政策の一貫性が疑問視されている。
 こうした中、インドは外交軸を広げ、モスクワや北京との接触を強化。プーチン訪印やモディ首相の7年ぶりの訪中が予定されるなど、米国一辺倒からの転換が進む。20年以上続いた米印戦略の枠組みはこの数か月で大きく変化し、インドは今や米国に対抗する独自の立場を模索している。
【コメント】
 インドは非同盟の伝統があり、歴史的にロシアと緊密だ。中国とも表立って対立する姿勢を回避するしたたかさがある。
 のんきにこぶしを振り回すトランプの登場に本当に困惑perplexedしているようだ。

2.トランプ大統領、FRB理事解任を企て
【記事要旨】
 トランプ大統領が、住宅ローン詐欺の疑いで連邦準備制度理事会(FRB)の理事6人のうちの1人、リサ・クック氏を解任する意向を示したことを受け、ワシントンでは大規模な法廷闘争が勃発した。クック氏は昨日、解任に異議を唱えて訴訟を起こすと述べ、大統領には解任を命じる「権限はない」と主張した。
 FRBは政治的圧力から隔離されているはずなのに、トランプ大統領はFRB職員に対し、金利引き下げを企てようと次々と攻撃を仕掛けている。
【コメント】
 FRB(連邦準備制度理事会、Federal Reserve Board)の理事については以下のような仕組みになっています:
  任命権:アメリカ合衆国大統領が任命します。ただし、任命には上院(Senate)の承認が必要です。
理事の任期は14年と長期で、任期がずれているため、政権交代があっても一度に全員が入れ替わることはありません。
  解任権:大統領にはFRB理事を自由に解任する権限はありません。法律上、FRB理事は「just cause(正当な理由)」がある場合にのみ解任できるとされており、政治的理由での解任は基本的に認められていません。この独立性がFRBの重要な特徴です。
  要するに、任命は大統領(と上院の承認)、解任は正当な理由が必要であり大統領の恣意的判断ではできないというのが基本です。

その他の記事
ウクライナ:ロシア軍は初めてドニプロペトロフスク地方の村々を制圧した。ロシアとウクライナのエネルギー戦争は激化しており、送電網や石油・ガス施設への攻撃が急増している。
フランス:フランス株式市場は、政府が9ヶ月で2度目の崩壊に陥る可能性があるとの報道を受け、下落した。
英国:右派「改革英国」のナイジェル・ファラージ党首は、当選した場合、最大60万人の不法移民を英国から強制送還する計画を発表した。

気候:中国のアフリカへの太陽光発電輸出が急増している。

2025年8月27日 水曜日