Jean-Marc Gilson

日本語ではジョンマーク・ギルソン氏と言われるこの人わかりますか?
10月24日の日経一面の「三菱ケミカルHD新社長にギルソン氏」という記事が躍っていたが、そのギルソン氏だ。

記事で特に興味深かったのは以下。
・社外取締役が委員長を務める指名委員会が選考を主導した
・選定の基準は4つのP:Performance. Potential, Passion, Personality
・橋本指名委員会委員長によれば、社内で3人、社外で4人(すべて外国人)の候補が残ったが4Pではギルソン氏がダントツだったという。

外部者には随分保守的な日本の会社というイメージがある三菱ケミカルHDがいきなり外国人を社長にするという決断はかなり大きなステップだったと思われる。

今回越智社長が退任し小林喜光会長は留任のようだがギルソン新CEOとの関係が気になるところだ。

個人的には、実務的に、サクセションプランで重視する要素として4つが明示されていたことは参考になった。

更にいろいろ調べていたら経済同友会の「経営者及び社外取締役による CEO 選抜・育成の改革 」2019年公表が見つかりこちらも参考になった。

海外で戦う企業には外国人の経営層が不可欠だが、日本は遅れているのは確か。それに一石を投じた今回の動きは、閉鎖的な氷を破るのか注視していきたい。

(2020.10.25)

第一生命の詐欺事件

事件の概要を把握するために日経新聞(2020.10.12)の記事を読んでみていただきたい。
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第一生命保険の元社員が顧客から約19億円を不正に集めていた問題で、金融庁が同社に対して保険業法に基づく報告徴求命令を出したことが12日、分かった。金融庁は、不正を長期にわたって見逃し、被害額が拡大したことを問題視。詳細な経緯や再発防止策について報告を求めた。
同社は2日、山口県周南市で営業を担当していた元社員が少なくとも10年以上にわたり、架空取引を持ち掛けて顧客21人から総額約19億円の資金を不正に取得したと発表。警察が捜査している。
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いやはや、金融機関をめぐる詐欺事件で最も基本的なものがまだ存在していることにまず驚いた。
メガバンクでも地方銀行でも信用金庫でも同様の事件は起きてきた。

本件の特徴は以下だと思う。
・金額が大きい(19億円というのは既存事件と一桁ちがう)
・長期(一部報道では10年以上)にわたっている
・被疑者がトップクラスの成績を上げてきて
特別調査役とかいう肩書をもらっている89歳という
老齢の女性である

多分、被疑者の営業実績と年齢が顧客を詐欺話を容易に信じ込ませた重要な要素だろう。

不正が起きる際には不正の3要素が背景にあると言われるので本件での3要素を考えてみたい。
1.動機:この女性は人生の終盤になぜ19億円もの
大金を詐取しようと思ったのだろうか?

贅沢をしたかったのか?ほかの理由があったのか?

2.機会:自分の信用力がとても大きくて、顧客が簡単に信じて
お金を自分に預けてくれる。
第一生命には自社内を通さないお金の動きを
確認する統制手段がない。

3.正当化:自分がこれだけ会社に貢献したのだから
これくらいの不正は良いだろうという
自分への言い訳。

もし、被疑者が自分のために詐取したお金を湯水のごとく使っていたら、生活が非常に派手になるので周りで気が付く可能性が高い。これをYellow FlagとかRed Flagという。
気の利く上司なら見逃さないはずだ。19億円の豪遊を見逃すとしたら生命保険会社の管理職の目は節穴だ。

ここからは私の個人的な推論だ。
・この女性は今までの実績を維持するための資金として
使ったのではないか。
・会社のためという言い訳で、被疑者は良心の呵責なく詐取を続けることが出来た。
・こうして80歳台になってもトップクラスの営業成績を上げ続けることが彼女にとっての人生の意義になっていたのではないか。

この推論は全く間違っているかもしれないが、現在わかっている状況をよく説明できる推論と思われる。

管理職への教訓は、Yellow Flag/ Red Flagに気を付けることだ。

(2020.10.13)

一隅を照らす、これ、国の宝なり

拙著に「一隅を照らす」と添え書きし
尊敬する友人に謹呈した。

すると標記の最澄法師の言葉を返信でいただいた。
大変嬉しかった。
四字熟語では「一燈照遇万燈照国」とも言う。

どんなポジション・立場に置かれようと、
一隅を照らす心構えで仕事に取り組みたい。

一人の燈は小さくてもきっと世の中全体が良くなると
信じながら。

(2020.10.11)

総合的に俯瞰的に

「総合的に俯瞰的に」検討することが流行りのようだ。
McKinseyやHBSのニュースレターがコロナ禍を経たビジネスの変化をいろいろと論じている。

日本の現状に照らして、総合的に俯瞰的にコロナ禍後の事業環境の変化を考えてみたい。

コロナがあってもなくても日本が直面する大きな潮流は以下の5つにまとめられると思われる。
1.成長志向企業のグローバル化
2.安定志向企業の国内市場深化
3.グリーン化
4.少子高齢化
5.貧富格差拡大
コロナ禍が、かかる環境変化を加速するのは間違いない。

日本で唯一世界的に競争力があると思われる自動車産業を例に事業環境変化の影響を考えてみたい。

1.グローバル化
インド市場へいち早く進出したスズキが好例。
日本の殆どの自動車会社がこの路線。差別化が困難。

2.国内市場深化
自動車産業では例に乏しいが、海外展開は
提携先に任せる三菱自動車が例になるか。
PCでは、PanasonicのLet’s Noteが好例。

1.2.は業界レベルで対応可能かもしれないが、
3.4.5.は業界のみでの対応が難しそう。

3.グリーン化
CO2収支の算出には「車生産に際して排出
されるCO2量」「燃料のグリーン化」等が
考慮されるので、
電気自動車を安価に製造できる企業のみならず
他の競争優位を背景に参入する企業が増加しそう。
エネオス+ヤマダ電機とかイーレックス+SONYとか。

4.少子高齢化
社会インフラとしての交通システムの抜本的な
見直しが必要であり個々の企業が自動運転車を
開発すればよいわけではない。
人材も枯渇する中で各社が競うのは経営資源の
無駄かも。

5.貧富の格差拡大
高級車を所有できる一部の富裕層を狙うか(フェラーリ、ベントレー等)公共財としての運搬手段としての車を提供するかの岐路になる。
高級ブランドの無い日本メーカーは殆どが
安価な下駄を作ることになる。社会不安を背景に米大統領が乗るビーストのような特殊車両のニーズが高まるかも。

トヨタがどのように高収益企業の座を維持して行けるかとても興味深い。

(2020.10.9)