第一生命の詐欺事件

事件の概要を把握するために日経新聞(2020.10.12)の記事を読んでみていただきたい。
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第一生命保険の元社員が顧客から約19億円を不正に集めていた問題で、金融庁が同社に対して保険業法に基づく報告徴求命令を出したことが12日、分かった。金融庁は、不正を長期にわたって見逃し、被害額が拡大したことを問題視。詳細な経緯や再発防止策について報告を求めた。
同社は2日、山口県周南市で営業を担当していた元社員が少なくとも10年以上にわたり、架空取引を持ち掛けて顧客21人から総額約19億円の資金を不正に取得したと発表。警察が捜査している。
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いやはや、金融機関をめぐる詐欺事件で最も基本的なものがまだ存在していることにまず驚いた。
メガバンクでも地方銀行でも信用金庫でも同様の事件は起きてきた。

本件の特徴は以下だと思う。
・金額が大きい(19億円というのは既存事件と一桁ちがう)
・長期(一部報道では10年以上)にわたっている
・被疑者がトップクラスの成績を上げてきて
特別調査役とかいう肩書をもらっている89歳という
老齢の女性である

多分、被疑者の営業実績と年齢が顧客を詐欺話を容易に信じ込ませた重要な要素だろう。

不正が起きる際には不正の3要素が背景にあると言われるので本件での3要素を考えてみたい。
1.動機:この女性は人生の終盤になぜ19億円もの
大金を詐取しようと思ったのだろうか?

贅沢をしたかったのか?ほかの理由があったのか?

2.機会:自分の信用力がとても大きくて、顧客が簡単に信じて
お金を自分に預けてくれる。
第一生命には自社内を通さないお金の動きを
確認する統制手段がない。

3.正当化:自分がこれだけ会社に貢献したのだから
これくらいの不正は良いだろうという
自分への言い訳。

もし、被疑者が自分のために詐取したお金を湯水のごとく使っていたら、生活が非常に派手になるので周りで気が付く可能性が高い。これをYellow FlagとかRed Flagという。
気の利く上司なら見逃さないはずだ。19億円の豪遊を見逃すとしたら生命保険会社の管理職の目は節穴だ。

ここからは私の個人的な推論だ。
・この女性は今までの実績を維持するための資金として
使ったのではないか。
・会社のためという言い訳で、被疑者は良心の呵責なく詐取を続けることが出来た。
・こうして80歳台になってもトップクラスの営業成績を上げ続けることが彼女にとっての人生の意義になっていたのではないか。

この推論は全く間違っているかもしれないが、現在わかっている状況をよく説明できる推論と思われる。

管理職への教訓は、Yellow Flag/ Red Flagに気を付けることだ。

(2020.10.13)