BDCについて

BDCはBusiness Development Companyの略。
日本語訳は、事業開発会社と言う。

事業開発会社(BDC)は、クローズドエンド型投資の一種。中小会社に投資をするた事業者だけでなく中小企業や再生企業といった、他の投資手段ではアクセスできない成長の可能性のある企業に必要な資本へのアクセスを提供する。

クローズドエンド型とは、投資信託協会の説明によると、
投資信託や投資法人のうち、資産を取り崩すことができないタイプのこと。解約できるものをオープンエンド型という。ファンドの発行する証券を、投資家の請求に応じて、純資産価額で取り崩して換金(解約)することが出来ないタイプ。一部解約や減資には応じないもの。クローズドエンド型の投資信託は、流動性に乏しく日々時価評価することが困難であるような資産に対して投資を行う場合に用いられ、換金性を担保するために市場に上場され、投資家は市場で売却することで換金を行う。例として、不動産投資法人や非上場株式に投資する投資法人が挙げられる。

要するに、皆さんの多くが持っているREIT(不動産投資信託)は一般の投資家から集めた資金を不動産に投資している。REITの多くは上場されているから、投資家は換金したいときには証券市場で容易に転売による換金が出来る。
REITと同じ仕組みを使って流動性の低い株式、主に非上場の企業に投資するのがBDCだ。

非上場企業に投資するビジネスで有名なのはプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)だ。
PEファンドの主たる投資家は大手の機関投資家であり、一般投資家には参加の手段がない。

米国で最近好調ばBDCの例としては以下が挙げられており興味深い。(Reality CheckというNews Letterより
Innovative Industrial Properties (IIPR)
大麻関連の不動産・企業の投資する。
大麻合法化の動きを受けて好調。
Compass Diversified Holdings (CODI)
金庫のシェア全米一。
治安の悪化による金庫需要の増加。
増大する拳銃の保管場所としての金庫仕様増加。

ここにきてBDCが注目を集めているのは、とりわけ、BDCの配当実績が他の資産クラスを上回っているからだ。低金利下での運用難にBDCが一般投資家を引き付けているのだ。

わが国ではREITは大きく発達したがBDCは未発達だ。
投資対象の多角化の観点から整備が望まれる。

(2020.9/30)

2021年の予算作成における注意点

McKinseyのManaging PartnerであるKevin Sneaderの表題のプレゼンを見た。
コロナ禍で、戦略を価値に変えてゆくために特に注意すべき5つの点を説いている。

英語のまま引用し、私の訳文を付す。

First, stress test scenarios and assumptions to counter uncertainty.
①不確実性に対応するためのシナリオと前提についてストレステストすること。

Two, reimagine the business from a zero base in order to determine key business drivers.
②主要なビジネスの推進力を特定するために事業をゼロベースで再考すること。

Three, hold back some spending centrally, as contingency, to build flexibility and optionality into budgets.
③予算に柔軟性と選択可能性を与えるために一部の支出を不測の事態に備え集中的に控えること。

Four assign finance talent to support the highest priority areas, or topics in order to prevent burnout.
④燃え尽きるのをを防ぐために、優先度が最も高い分野・トピックに対して金融に明るい人材を配すこと。

Five, rethink decision-making with the explicit goal of de-biasing the planning process.
⑤計画プロセスのバイアスを無くすという明確なゴールのを持って意思決定を再考すること。

以前の常識はもう役に立たない可能性が高いが、強靭性と持続可能性を背景に今投資をすることで危機に弱まるのではなく強くなる企業になることが可能であるいう結論で結んでいます。

筆者は、5つのアドバイスはどれも傾聴に値すると思います。投資に際しては、それが企業の強靭性と持続性に効くのかどうかを常に考慮し、Perfect Stromのようなケースを想定しストレステストをするのは、もともとの筆者の主張と同一であり、とても共感しました。

(2020.9.26)

A Little Fellow

”Good to a little fellow. ”「小さな顧客に親切に」
1975年に当時ピープルズバンクをモットーにしていた三和銀行に入行した際に先輩から教えられたBank of Americaの創立者であるGianniniの言葉だ。

イタリア系移民であったGianniniが移民のためにサンフランシスコで作った銀行が小さな顧客を大切にする積み重ねで世界最大の銀行に成長するいきさつは以下に述べられている。(A Little Fellowという伝記映画の説明から引用)
Before banks had a branch on every corner, they were an exclusive service for the wealthy. For the poor, working, and immigrant class, saving money was as unreliable as stashing it under a mattress. But at the turn of the 20th century, A.P. Giannini revolutionized the industry with his small bank in San Francisco.
As a first-generation Italian-American, his goal was to serve “the little fellow” and breed prosperity within his immigrant community. By building trust and giving loans on a simple handshake, he created one of the largest banks in the country – Bank of America.

今日、税金の支払いで家の近くのメガバンクへ行った。窓口が一つしか空いておらず、15分ほど待たされた。半沢直樹を演じる俳優が広告に使われている銀行だが、小さな顧客に目を向けることは少なそうだ。

預金金利は0.001%だから1000万円預けていても利息は年間100円に過ぎない。時間外に預金を引き出せばその手数料の方が大きい。

殆どの銀行は、預金は要らないから投資信託を買ってくれとかラップ口座を開設してくれと言う。フィーに目が言っての勧誘で、顧客のことを考えて勧めているわけではない。

みずほ銀行は来年から通帳の発行手数料を1000円取るそうだ。他のメガバンクも追随するらしい。あんなに豪華な通帳でなくて結構だから無料で通帳を引き続き発行してくれる金融機関に期待したい。

「Bank of Americaのお話のころは小さな預金者を大切にして金利を5%払っても中小企業に10%で貸せば利益を上げることが出来た。ゼロ金利の今は、時代が違う。銀行も赤字になりかねない時代だ。あらゆるコストは回収しなければならない」という説明はよくわかる。

ただ、その根底に、
「小さな顧客を大切にする」という精神が無ければ、そもそも銀行業を行うべきでない。
そうした精神を失った銀行は、顧客からの信頼を勝ち取ることも出来ない。

今一度Gianniniの精神を思い出す時だ。

(2020.9.24)

COVID19後の低炭素経済刺激策

低炭素社会の実現、代替エネルギー開発の推進、エコを優先した企業活動等、これらの多くは、エコに過剰な配慮をするため、経済を効果的に刺激し、社会の効率性の向上にはあまり役立たないという印象を持つ人が多いと思う。

私もその一人だったが、McKinseyの最近の、目からうろこのレポートを紹介したい。
How a post-pandemic stimulus can both create jobs and help the climate May 2020

この論文では、COVID19に悩まされる世界であるからこそ、低炭素社会に向けた景気刺激策が、雇用と環境に効果的だと述べている。

政策を定め実行する際の優先順位付けは以下の5つに注意して行うべきという分析はその通りと思われる。
・社会経済的利益
・気候の恩恵
・景気刺激策が実施されるまでの時間軸
・炭素排出量が削減される期間
・実現可能性

更に有益なのは、ヨーロッパにおける低炭素に配慮した経済刺激策の具体例が示されていることだ。12の実行可能なリストが挙げられている。
・機器の交換や廃熱技術のアップグレードなどの手段を通じて、産業のエネルギー効率を向上させる
・大規模な産業クラスターの周りに炭素捕獲と貯蔵のインフラストラクチャを構築する
・住宅を改造して、ヒートポンプを設置するなど、エネルギー効率を向上させる
・暖房、換気、空調、照明、セキュリティをより適切に管理するために、特に商業用不動産にスマートビルシステムを設置する
・広範囲の電化をサポートするために配電網(相互接続を含む)を強化する
・大規模およびコミュニティ規模のエネルギー貯蔵を拡大
・風力および太陽光発電能力の構築を加速
・発光ダイオード(LED)を使用して街路灯の展開を加速する
・電気自動車(EV)充電ネットワークの拡大
・主要なバスの高速輸送と都市鉄道プロジェクトを作成する
・EV製造をスケールアップ
・アクティブな輸送のためのインフラストラクチャを開発する(自転車レーンなど)

こうしてみると、先進の欧州と日本の差は大きくはないようにも見える。日本政府の広報が下手なのか、日本ではそれそれの政策手段をどこまで実施して来たか、実施する予定なのかがよくわからないのが問題だが。いずれにしても、日本でも、すぐにとりかかれる政策オプションも少なくないように見える。

コロナ禍の今こそ、長期的に環境を守り低炭素社会を実現する政策をすぐに採用して行くべきだ。新政権には、巨大な予備費を活用し、国家百年の礎になる政策を立てて実行してもらいたいものだ。

(2020.9.21)

Back to Normal!

金融財政事情研究会(きんざい)という組織があり、金融機関向けに書籍を刊行し、セミナーを主催している。

10月26日から30日まで「第52回金融内部監査人養成スクール」の開催を予定しており、筆者は初日と二日目の午前中に内部監査と内部統制の概論を話すのが初回(もう20年ほど前だ)からの通例になっている。

最近は年3回開催してきたが、今年の4月と7月はコロナ禍で流れた。今回も心配していたが、きんざいによれば、受講希望者が多く、今回は実開催される模様だ。

多くの金融機関が、東京への出張を許可するようになったのだろう。ビジネスがノーマルに戻ってきている兆しだろう。

北海道から沖縄まで、日本国中の金融機関から、内部監査の新任の担当者(部長クラスの受講も多い)が集まる楽しいスクールだ。受講生の皆さんにお目にかかるのが楽しみだ。

(2020.9.18)