アリとキリギリスの英訳

アリとキリギリスの英訳

夏の間、家の中にまで現れて邪魔者だったアリは秋風が吹くとともにその姿をばったり見せなくなった。晩夏からここぞとばかりに鳴いていた秋の虫の声も今は弱弱しくなっている。
この時期に思い出すのは、イソップ寓話でも最も有名なお話の一つ、アリとキリギリスだ。英語のタイトルは何だろうとおもって調べてみると、The Ant(s) and the Grasshopper となっている。この話の寓意はいくつかあるが、最もわかりやすいのは、「遊び惚けていて、しっかり貯えておくことを怠ると後で困ったことになるよ」ということだろう。老後に2000万円必要という金融庁の)(幻の)報告書もこうした常識から逸脱したものではない。
このような考えを表現するのにふさわしい英語の言い方を最近覚えた。Delayed gratification という言葉がそれにあたる。Gratificationは満足である。Delayed gratificationは「将来のより大きな満足のために、自己の欲望や衝動をコントロールし目先の欲求を押さえる能力」を指す。若い時から収入の10%を貯蓄しておこう、という先人の教えを守っておけば楽勝だったのにと思う人は私に限らず多いだろう。これは蓄財にとどまらず、研究開発や技術進歩といった経済活動の多くを成功に導く能力であろう。そうそう、Delayed gratificationの反対語はInstant Gratificationなのでこれも覚えておくと便利です。
最近話題のMMTは、金融はどんどん緩和すべきだ。財政出動もどんどん拡大して経済を成長させるべきだと主張しているように読める。考え方の本質がInstant Gratificationに過ぎるのが、多くの人に胡散臭く思われる所以のではないだろうか。
(2019.10.22)

Whistleblowerか内部告発者か

大分昔ニューヨークで不動産投資金融会社のMDをしていたころ、ユダヤ人の社長からconnotation(日本語訳は含意)ということを何回も教えられた。
例えば、日本ではスキームという言葉をよく使う。複雑な不動産金融取引のやり方を、「この案件の金融スキームは・・・」という言い方を普通にする。このスキームという表現は米国人には絶対してはいけないと言われた。では何といえば良いか?ストラクチャーと言うべきだ。スキームは人を欺くというbad connotationがあるのだ。ストラクチャーはニュートラルな言葉であり、悪いconnotationは無い。
もう一つの例。海外にある日本の会社では、現地採用の社員のことをローカルとよく呼ぶ。この言葉には現地の人を下にみる考えが滲んでいる。現地採用の米国人であればAmerican employeeとか表現すべきであり、bad connotationを持つ言葉の使用は控えるべきだ。
トランプ大統領の弾劾プロセスを民主党が進めようとしている。大きな原因はトランプ政権(あるいは国務省等の行政機関の要職)にいるwhistleblowerによる内部告発だ。トランプがウクライナの大統領に軍事支援と引き換えにバイデン元副大統領の息子の不正行為を調べるように依頼したという情報がwhistleblowerにより表に出たのだ。
日本語では内部告発者(このまま英語に訳すとinternal accuserだろうか)という言葉を使うが、この言葉には私にはまだ違和感がある。裏切って重要情報を社外にもらし会社や上司を告発するというbad connotationがある。社内ホットラインの受け手役に何社かなっているが内部告発は非常に少ない。これには内部告発という語感の問題もあると強く思うのだ。
一方、Whistleblowerという言葉には、本来社会が知らないといけない隠された状況・情報を明らかにしてくれたということでneutralかpositiveなconnotationがあると思う。Time紙恒例のPerson of the Yearにおいて2002年はThe Whistleblowersとして、Enron, World Com, FBIで内部告発した3人の女性が取り上げられた。困難な状況で正義の告発をした人たちとして英雄視され、whistleblowerという言葉も広く知られるようになった。(余談だが、Time紙の2001年のPerson of the Year は今トランプの顧問として糾弾されているジュリアーニ市長でした。歴史の皮肉を感じますね)
2019年1月に公開されヒットした邦画「七つの会議」をご存じだろうか。池井戸潤原作、野村萬斎、香川照之主演の、企業犯罪エンターテインメントである。広告によれば「ぐうたら社員の告発による社内のパワハラ騒動を機に、会社の闇が暴かれてゆく」ということだ。飛行機で見たが大変面白い作品だった。

機内では英語の字幕があるのですが、英語のタイトルは何だと思いますか? Whistleblowerでした。        (2019.10.10)

「対岸の火事」か「他山の石」か

日産自動車、かんぽ生命(日本郵政)そして関西電力と、日本を代表する一流企業(と一般には考えられている)での、不祥事が止まらない。
不祥事が発生し、その内容を知った際に、多くの人は、「対岸の火事」として考えがちだ。自分には関係ない世界の出来事だ、業種が違う、会社のガバナンス形態が違う、意思決定の方法が違い不祥事は起こりえない、というような理由をあげて思考停止する。
そうだろうか。
役員報酬の決定方法、取締役会の運営方法、営業推進の方法、社員へのノルマ・報奨制度、地公体との関係、発注先との関係、交際費の使い方等、問題を一般化して考えれば、いろいろと自分たちの組織の在り方を見直す機会になりそうだ。
うかうかしていては駄目だ。不祥事に学び、「他山の石」とする姿勢が重要だ。
(2019年10月7日)

山陰旅行の印象

山陰旅行

2泊3日の山陰旅行に行ってきました。
羽田から出雲に入り、出雲大社特別見学、玉造温泉泊、足立美術館見学、観光列車天地号乗車、三朝温泉泊、鳥取砂丘見学、鳥取から羽田へ戻るという日程の、ゆったりした日程の旅行でした。

出雲大社
八足門から神域に入り参拝させていただきました。八足門をくぐると外界より急に気温が下がったように感じられました。出雲大社のしきたりに従い、2拝4柏手1拝でお祈りしました。人出は思ったより少なかった。

足立美術館
日本庭園は見事でした。窓枠が額縁になり、まさに絵を切り取った風景を楽しみました。
横山大観のコレクションは若いころから晩年の作までそろっていました。僭越ですが、大観は若い時のほうがずっと良いと思いました。風景画に自己の内面が見事に浮かび上がっているからです。
魯山人のコレクションも見事でした。ホテルニューオータニの美術商に魯山人の作品が時々あり高値の花と眺めていますが、足立美術館のものは、値を付けられないほどの名品に見えました。

観光列車天地
安木から倉吉まで乗車。途中見るもの無し。

鳥取砂丘
砂の美術館に保存されている砂のアートには感心しました。砂丘は、とても小さい。

ドバイの砂漠はバギーで走り回ってもどこまでも砂漠だった、オアシスには大きなリゾートホテルが建っていた。鳥取砂丘のオアシスは寂しい。今では誰でも簡単に海外旅行でき、砂漠を見ている人も多いと思われます。従来通りの売り方だと、日本人の観光客は減っていくと思います。

総括的な印象:
・出雲市、米子市、安木市、鳥取市、どこに行っても人がとても少ない。
・鳥取砂丘以外は外国人観光客を殆ど見なかった。
・観光列車天地は乗る価値があるか疑問。
・インバウンド客に訴求するのには何か工夫が必要と思われた。
・玉造温泉、三朝温泉、いずれも温泉の質には満足した。温泉街は大分さみしくなってきている印象を持った。いずれも温泉街の真ん中を川が流れており、もう少し徒歩で歩く宿泊客を取り込む工夫が必要だと思われた。
2019/10/1 記