アリとキリギリスの英訳

アリとキリギリスの英訳

夏の間、家の中にまで現れて邪魔者だったアリは秋風が吹くとともにその姿をばったり見せなくなった。晩夏からここぞとばかりに鳴いていた秋の虫の声も今は弱弱しくなっている。
この時期に思い出すのは、イソップ寓話でも最も有名なお話の一つ、アリとキリギリスだ。英語のタイトルは何だろうとおもって調べてみると、The Ant(s) and the Grasshopper となっている。この話の寓意はいくつかあるが、最もわかりやすいのは、「遊び惚けていて、しっかり貯えておくことを怠ると後で困ったことになるよ」ということだろう。老後に2000万円必要という金融庁の)(幻の)報告書もこうした常識から逸脱したものではない。
このような考えを表現するのにふさわしい英語の言い方を最近覚えた。Delayed gratification という言葉がそれにあたる。Gratificationは満足である。Delayed gratificationは「将来のより大きな満足のために、自己の欲望や衝動をコントロールし目先の欲求を押さえる能力」を指す。若い時から収入の10%を貯蓄しておこう、という先人の教えを守っておけば楽勝だったのにと思う人は私に限らず多いだろう。これは蓄財にとどまらず、研究開発や技術進歩といった経済活動の多くを成功に導く能力であろう。そうそう、Delayed gratificationの反対語はInstant Gratificationなのでこれも覚えておくと便利です。
最近話題のMMTは、金融はどんどん緩和すべきだ。財政出動もどんどん拡大して経済を成長させるべきだと主張しているように読める。考え方の本質がInstant Gratificationに過ぎるのが、多くの人に胡散臭く思われる所以のではないだろうか。
(2019.10.22)