“21 Lessons for the 21st Century” 再読

Yuval Harariの名著を再読した。特に11章のWarの部分をだ。
 副題が”Never underestimate human stupidity”となっている。

 前回この本を読んだ時は(多分2018年)、Warについての記述はピンとこなかった。

 ハラリ氏の主張を要約すれば、以下のようになる。
「第二次大戦の開戦時と違って武力で領土を拡張することを正当化できる理由は、侵攻する側の国にとってもまったくないので、武力侵攻は普通に考えれば起こる可能性はない。
 近時の武力進行で成功したと思えるのはロシアのクリミア併合だが、これとて、軍事面での成功はその後の経済制裁で全く帳消しになった。
 経済制裁を受けているロシアと受けなかった中国の成長率の違いを見れば、戦争が、割に合わないのは明らかだ。
 ただ、核戦争の脅威はなくならない。人間の馬鹿さ加減を見くびることは出来ないからだ。」

 この主張を読んで、私は、今どき核戦争など考えられないのに慎重な結論だと思っていた。クリミア併合の事例にも注意を払わなかった。

 しかし、今読むと、

・事実として、制裁による経済的な打撃を考慮せず軍事攻撃を実行する国があるのだ。

・制裁を受けても、核戦争をちらつかせ世界を脅す大国があるのだ。
 再読して、ハラリ氏の慧眼に驚かされた。

 さて、ハラリ氏は戦争について結論的に何と言っているのか?
 ・戦争は不可避と考えず緊張を緩和する努力をすること。
 ・人間の愚かさを考えれば戦争が絶対に起きないとみなすことは出来ない。
 ・自分たちの国家、宗教、文化が、他国のそれより優れているという考えを持たないように、国家、宗教、文化を、現実的で控えめな位置に置く努力をすること。 と述べている。 

 3つ目のポイントはそのとうりだが実行するのは難しい。今後しばらくはますます国家意識が高まり、自国の宗教や文化に他国が口出しするのを認めない風潮が高まっていくのだろう。日本でも世界的にもだ。

(2022.4.30 Saturday)

世界の動き 2022.4.29 Friday

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
連休前夜の東京の繁華街は大変な人出だったらしい。タクシーも捕まらなかったそうな。
感染拡大が抑えられ、日常生活が戻ることを期待したい。

1.中国のコロナ対応策
【記事要旨】
 北京での感染拡大を受け、中国政府は経済刺激策を発表。レイオフを回避した企業への失業保険料、電気代、インターネット代金等の免除。大学を出ても就職できない人が起業する際の補助。上海と寧波の住民への122百万ドル相当の金券配布。運転手への通行パス。移民への補助。と多様な内容。更に大規模インフラ投資策という伝統的刺激策も。北京の一日の感染者数は56人。
【感想】
 大小の策を取り交ぜ、ゼロコロナは何としても維持する印象。

2.米国はウクライナ支援増額
【記事要旨】
 バイデンの330億ドルのウクライナへの軍事、経済、人道の追加支援の公表直後、米上下院は第二次大戦中の軍事支援法案を復活させウクライナ支援を加速。ロシアの富豪の個人資産差し押さえ策を強化し獲得資金はウクライナ支援に使う予定。英はウのロシア領内攻撃を正当化。中国は露からの石炭への関税を免除し露を支援。世界の政治指導者は戦争長期化によるコスト高に備える方向へシフト。露がウの指導者、ジャーナリスト、活動家を拉致していると米が非難。
【感想】
 Timesはプーチンの核兵器使用をほのめかす発言に触れていないが、プーチンは言ったことは実施する人間なので注意が必要だろう。

3.インドとパキスタンでの酷暑
【記事要旨】
 酷暑が数億人に影響。週末は更に悪化し雨をもたらすモンスーンが始まるのは数週間先。ニューデリーの消防員は暑さで何でも燃えそうだと語る。農業にも大きな影響あり小麦は15-20%収穫減、クミンは50%が不生育と見込まれる。気候温暖化のせいで世界の酷暑は深刻化すると科学者は警告。
【感想】
 戦争に天災か。だんだん黙示録の世界になってくる。

その他:
イランとアフガンの間の緊張
Earlier this month, an Afghan immigrant killed clerics in one of Iran’s holiest shrines. The attack has led to ethnic tensions in both countries, which have each sent troops to their shared border.
海も小さくなる
A new study finds that if fossil fuel emissions continue apace, the oceans could experience a mass extinction by 2300. There is still time to avoid it.
ifterはラマダンの時に食事が可能な時間のこと
My colleague, Declan Walsh, spent much of the holy month of Ramadan in Sudan. At iftar meal after iftar meal, he spoke with people about the country’s economic and political instability. “We come to forget it all,” one young musician told Declan. “The heat, the electricity cuts, the protests. Here, at least, we can sing.”

(2022.4.29 Friday)

世界の動き 2022.4.28 Thursday

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。(宮本武蔵)

1.ロシア、欧州へのガス供給を停止
【記事要旨】
 欧州の制裁に対応しロシアはブルガリアとポーランドへのガス供給を停止した。欧州首脳は「脅し」と非難。ポーランドは備蓄が75%あり、ドイツはロシアへの依存度をずっと減らしてきた。ギリシャはブルガリアにガスを供給する。通貨ユーロは5年来の低レベル。天然ガス先物は23%上昇。
 石炭火力を抑制し原発が停止し天然ガスを輸入に依存している日本ではガス価格の上昇が脅威に。ウクライナでは露軍の侵攻を防ぐために橋やダムを破壊し洪水まで起こしている。
 東部では統合的な作戦で露は侵攻地域を拡大。ロシア領内で爆発ありウ軍の活動活発化か。戦争開始以来の露軍戦死者は15000人と英が発表。
【感想】
 日本のロシアへのガス依存度は10%程度と聞くが、世界中で需要が増えれば影響は避けられない。原発の再稼働、再生エネルギーへの転換等、政策議論が出てこないのは残念だ。

2.上海では市民の怒りが高まる
【記事要旨】
 当局の検閲を潜り抜けSNSでは上海の惨状が拡散。市民の悲嘆、苦境、怒りの拡散はゼロコロナ政策を進める習近平政権に痛手になる。「四月の声」という動画が広く拡散し視聴されている。水曜の新規感染者は12309人でその内171人だけが隔離されていない人から発生し、上海での流行は沈静化。北京では139000人が検査のために動員されている。
【感想】
 4回目のワクチンの話が出ているが、有効かどうかもはっきりしない。我が国のコロナコントロールは、依然として科学的な知見と事実に沿った判断が出来ない。

3.シンガポールでの議論を呼ぶ死刑執行
【記事要旨】
 世界で最も厳しい麻薬取締法を持つシンガポールで1.5オンス(約40g)のヘロインを密輸しようとした34歳のマレーシア人Nagaenthran Dharmalingamへの死刑が執行された。同氏の弁護士と人権活動家によると、同氏はIQ69で、犯罪について理解できず密輸を強要されたものだという。シンガポール政府は死刑が麻薬持ち込み抑制に効果があるとするが、国連高等人権弁務官は世界で広がる人権擁護の法律に反すると非難。
【感想】
 マレーシアやシンガポールの空港では持ち物から「絶対に」離れてはいけない。自分の荷物に麻薬を知らぬ間に入れられると死刑になってしまう。

その他:
アウンサンスーチーさんの命運
A Myanmar court sentenced Daw Aung San Suu Kyi to five years in prison in a corruption trial closed to the public.
まず両姓を名乗るのか
Children in Italy will be given their mother’s and father’s surnames at birth, instead of automatically being assigned just the father’s.
世界最高齢の田中さん亡くなる
Lives lived: Kane Tanaka, the oldest person in the world, survived two world wars, the 1918 flu pandemic and cancer. She died in Japan at 119.

(2022.4.28 Thursday)

世界の動き 2022.4.27 Wednesday

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:You can’t change your destination overnight, but you can change your direction overnight. 「あなたの人生を一晩で変えることは出来ないが、あなたの進路は帰られる」ニューヨークで聞いた言葉。

1.北京での大規模検査
【記事要旨】
 感染者の増加に対応し、上海でのようなロックダウンを避けるために、北京市当局は22百万市民の検査を早期に進める。火曜日の感染者数は22人。北京市民の4分の3が5日間に3回の検査を受ける計画。1か月のロックダウンが続く上海では市民が助け合うが、緊急医療の不備が目立ってきている。
【感想】
 感嘆すべき検査能力。

2.より筋肉質なNATOへ?
【記事要旨】
 火曜にドイツは、ウクライナにレーダー付きの防空用戦車等の重火器の送付を決定し、従来の慎重な姿勢から転換。米はロシアの弱体化を狙い40か国に軍事支援を呼びかける。露政府は、西側の動きは核戦争へのリスクを高めると警告。ロシアに依存した西欧のエネルギー状況は依然として大きな課題。
【感想】
 ウクライナが流した戦争を支援する国々に感謝する動画に日本が含まれていなかったそうだ。やはり軍事支援が評価されるのかなと思う。

3.香港での茶色い顔の問題
【記事要旨】
 Barrack O’Karma 1968という香港での人気TVシリーズで、フィリピン人のメイド役の顔の色の変化が議論を呼んでいる。最初は茶色が濃く、中国に同化が進むにつれて顔色が薄くなるという、人種的な偏見が根底にあるプロットだという批判だ。
 香港には203000人のフィリピン人が居住し、うち190000人はメイドだ。
【感想】
 筋の展開で俳優の外観や表情が変わっていくのは理解できるが、フィリピン人にとっては不快なことだろうとは思う。アナ雪を黒人の女優が演じたり、ブロードウェイでは人種の前提が崩れる動きが出ているようだが、どうなるのだろうか。

その他:
北朝鮮では
In a military parade on Monday, Kim Jong-un vowed to expand North Korea’s nuclear arsenal “at the fastest possible speed​.”
Twitterはどうなる?
Elon Musk now has to contend with the realities of his free-speech talk, our tech columnist writes. The company’s move may have been good for its investors, but it had little if any regard for other stakeholders.
子供に向けた仮想通貨ですか?
You can now buy NFTs on apps for toddlers, often peddled by internet-native cartoon characters. The toddler-specific social media — a marketplace, like any other on the internet — is pitched to parents as “a creative outlet, an educational opportunity, even a civic duty to join in,” the critic Amanda Hess writes.

(2022.4.27 Wednesday)

世界の動き 2022.4.26 Tuesday

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
 物価高対策に政府は6.2兆円の国費を充てるそうだ。その中には今年度補正予算から2.7兆円とのこと。4月が始まったばかりなのにもう補正予算論議とは。。政府と与党の財布の緩さには驚く。

1.イーロン・マスク、Twitter社とのディールをまとめる
【記事要旨】
 イーロン・マスク、Twitterを総額440億ドル(一株$54.20、38%のプレミアム)で買収することでTwitterと合意。マスクは20年来の同社を非公開化する願望を実現。トランプのアカウントを再開するかが大きな関心。マスクの言葉はFree speech is the bedrock of a functioning democracy, and Twitter is the digital town square. 同社従業員の多くは前途に悲観。株価は51.70ドルまで上昇。
【感想】
 世界一の金持ちは何でも出来る。SMSを手中に収めることも。

2.次は北京がロックダウンか
【記事要旨】
 北京の朝陽区では金曜以来70の感染確認。3-5百万住民全員のPCR検査を今後5日以内に実施予定。北京では市民が買いだめに走る。上海での厳しいロックダウンが前例で、世界のサプライチェインに影響を与え中国経済に打撃を与えている。ロックダウンを機に政府は民間企業への統制を強めている。
【感想】
 全市民PCR検査の後は厳しいロックダウンというのがこれまでの政府の方針と市民に見透かされている。

3.米国はロシアの弱体化を狙う
【記事要旨】
 バイデン大統領はブリンケン国務長官の訪ウ後、現駐スロバキア大使をウクライナ大使に任命しキーフの大使館を再開予定。オースチン国防長官はWe want to see Russia weakened to the degree it cannot do the kind of things that it has done in invading Ukraineと語る。戦争は拡大し、ウクライナ東部では何万もの住民が電気のない生活。西部では少なくとも5つの駅が露のミサイル攻撃を受ける。オデッサでは数が月前に娘が生まれ幸せをかみしめていた母親が娘と共に死亡。ゼレンスキーの政策には野党からも支持。
【感想】
 米国のウクライナへの強力な支援は、米ロ代理戦争の表れでもある。

その他:
次はモルドバか
Explosions hit Transnistria, a Russian-allied region of Moldova, amid fears of a new front in the war.
マクロン勝利の欧州右翼への影響
Macron’s victory is a blow to right-wing populism in Europe, like the kind championed by President Viktor Orban of Hungary. Slovenia’s Trump-admiring prime minister, Janez Jansa, appears to have lost his bid for re-election.
トランプはまだ裁判続き
A New York judge held Donald Trump in contempt of court for failing to turn over documents related to an inquiry by the state attorney general. He will be fined $10,000 per day until he does so.
日本でもタトゥーが流行る
Tattoos have long been taboo in Japan. Since 2014, though, the number of Japanese adults with tattoos has nearly doubled, as social media and celebrity culture prompt more young people to seek out elaborate ink. One catch: They’re choosing discreet places, so they can hide their body art at work.

(2022.4.26 Tuesday)