世界の動き 2025年12月4日 木曜日

今日の一言
「AI利用の障害を克服するには」
 BCG(ボストン コンサルティング グループ)が11月に公開したレポート『Building Effective Enterprise Agents』は、現場レベルでAIエージェントを「使えるもの」にするための参考になる。
 企業にとっての最大の障壁は、古いシステムとの接続、信頼できないデータ、複雑なガバナンス構造にあり、AIの能力ではないと指摘。単一のAIエージェントではなく、複数のタスクを処理するサブエージェントが協調し合い、複雑な業務を担っていく「ディープエージェント」を推奨し、企業の中核業務へとスムーズに統合できると言う。
 BCGは、業務フローの改善よりも「何を達成したいのか」という「アウトカム(成果)起点の思考」を重視。ゴールから逆算して設計することで、本当に意味のあるAI導入が可能になるという。
 例えばローン申請業務なら、「例外処理の短縮」「書類確認の自動化」などと業務プロセスを細かく分解しエージェントが担うべき領域を明確にする。プロセス改善よりも成果にフォーカスするこのアプローチは面白い 。
 いずれにしても、2026年はAIエージェント元年になり、評価とガバナンス、そしてアーキテクチャの整備に長けた企業が、AI時代の成長曲線に乗れる段階に入ってきた。
記事元:https://www.bcg.com/assets/2025/building-effective-enterprise-agents.pdf

世界の動き
1.第二次世界大戦の物語をめぐる争い
【記事要旨】
●中国の主張
– 中国は戦後80周年の軍事パレードで、自国を「主要な勝利者」と位置づけ、ソ連と並んでナチス・ドイツや日本に勝利したと強調。
– 習近平は国際的な場面で繰り返し第二次世界大戦を引き合いに出し、「反ファシズム」「戦後秩序の保護」を語るが、暗に日本を歴史的侵略者として警戒すべき存在と示唆。
●戦後秩序と物語の多様性
– 戦後秩序は主に西側の物語(アメリカがヨーロッパを解放し、自由民主主義と市場経済を広めたというストーリー)によって形成されてきた。
– しかし現在、その秩序は揺らぎ、中国やロシアが自らの歴史解釈を前面に押し出し始めている。
●各国の歴史認識
– 勝者側(米英など)は「善と悪の戦い」として戦争を記憶し、教育や記念行事で繰り返し強調。
– 敗者側(ドイツ・日本)は複雑で、ドイツは「贖罪」、日本は「謝罪の十分さ」や「戦後の平和憲法の是非」が政治的論点。
– ソ連(約2400万人死亡)や中国(約2000万人死亡)は西側の物語では十分に扱われてこなかった。
●ロシアと中国の動き
– ロシアは「大祖国戦争」として犠牲の大きさを強調し、ウクライナ侵攻を「非ナチ化」と結びつける。
– 中国は日本の再軍備や台湾問題を、戦時の犠牲と「未完の約束」(中国本土と台湾の統一)に結びつけて正当化しようとしている。
●歴史の争奪戦と現在への影響
– 歴史解釈は単なる学問ではなく、現在の国際秩序や外交戦略を形づくる武器。
– 西側も9.11を真珠湾攻撃に例えるなど、自国の都合に合わせて第二次世界大戦を引用してきた。
– 今後は「ポスト戦後」からさらに進み、各国が自らの物語を競い合う「ポスト・ポスト戦後時代」に入ろうとしている。
【コメント】
 要するに、この記事は「第二次世界大戦の記憶と物語が、現在の国際秩序や対立に深く影響を与えており、中国やロシアは自らの歴史解釈を通じて新しい世界秩序を形づけようとしている」という点を強調している。
 それにしても高市首相の発言は「中国が台湾に軍事侵攻すれば日本は台湾防衛のために参戦する」と世界中で理解されていることを示す。しかも中国に言わせれば、日本は台湾を再保有の野心すら持っているというのだ。
 この悪意のある主張に日本は積極的な外交戦をして対抗しなければならない。

其の他の記事
・ウクライナ情勢をめぐり、米ロの交渉担当者らによる約5時間にわたる協議は進展をみせなかった。では、ロシアに紛争終結を迫るものは何だろうか?
・EU当局は、凍結されたロシア資産2100億ユーロをウクライナへの巨額融資に充てるという最新の計画を発表した。
・イスラエルは、一部のパレスチナ人がガザから脱出できるよう、ラファ国境検問所を再開すると発表した。エジプトは国境がすぐに再開されるとは考えていないと否定した。
・イスラエルがヒズボラへの攻撃を再開する懸念が高まる中、イスラエルとレバノンは停戦協議を実施した。
・香港当局は、少なくとも159人が死亡した火災の責任追及を求めた批判者を逮捕した。

*文化面から
韓国では、コーヒーはカフェイン以上の存在
 韓国人はコーヒーに情熱を注いでいます。そして、コーヒーショップを開くことは、多くの人にとって一種の夢となっています。ソウルのカフェ密度はパリのカフェに匹敵し、競争は熾烈です。
 韓国人にとって、コーヒーショップはカフェイン以上の意味を持っています。多くの人が家族と狭いアパートに住んでいるため、人を家に招くのは難しいのです。カフェは、カップルがゆっくりと過ごしたり、旧友と近況を語り合ったり、学生が勉強したりする空間を提供します。
【コメント:記事の写真で見るとコーヒーショップが林立している。日本では個人営業のショップはどんどん廃業しているようだが、韓国ではどのように稼いでいるのだろうか】

2025年12月4日 木曜日

世界の動き 2025年12月3日 水曜日

今日の一言
「Bitcoin急落」
 Bitcoinの最近の急落を強気の投資家Keith Fitz-Geraldはどう見ているか。今朝彼の長文のコメントがあったので紹介したい。
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 単に「有望な銘柄を探す」や「強い信念で投資する」だけでは不十分であり、市場の仕組みを理解することが成功の鍵だ。特に仮想通貨市場では以下のポイントが重要だ。
– ビットコインは高リスク資産
  安い資金で繁栄し、金利上昇で急落する。米国10年国債利回りの上昇が資金コストを高め、売り圧力を強めている。
– 機関投資家の参入は大規模レバレッジを伴う
  ETFや先物、構造商品などで資金が膨らみ、資金調達が厳しくなると一斉に強制清算が起こり、売りが雪崩のように広がる。
– 流動性の階層構造
  資金が逼迫すると投資家は「売りたいもの」ではなく「売れるもの」を売る。米国債やドルは守られるが、仮想通貨は最下層にあり必ず打撃を受ける。
– 神話に惑わされるな
  「機関投資家が救う」「ETFが下値を支える」「半減期が万能」などの物語は繰り返されるが、市場を動かすのは資金であり、神話ではない。
– ビットコインは壊れていないが、多くのトレーダーは壊れている
  恐怖に駆られた資金は利益を生まない。市場の仕組み(レート、レバレッジ、流動性、強制売却)を理解して冷静に動ける者がチャンスを掴む。
結論
  ビットコインの急落は「市場の仕組み」を理解していない投資家にとって混乱だが、冷静に仕組みを見抜ける者には大きなチャンスとなる。勝ちたいなら市場の構造を学び、恐怖に流されず戦略的に動くべきだ。
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 日本国内ではまだBitcoinETFが買えないため、米国市場のETFを証券口座経由で検討するか、複数の仮想通貨を分散投資してETF的な効果を再現するのが現実的だ。
– 安定性を重視するなら BlackRockのIBTC、コスト重視なら ARKB が注目度高い選択肢になる。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.独立した報道には厚い皮膚が必要
【記事要旨】
 ニューヨーク・タイムズの編集責任者ジョー・カーン氏が読者からの質問に答えた内容をまとめた記事だ。主なポイントは以下の通りです。
●独立した報道の姿勢
– インターネットには膨大な意見や解説があり、読者は自分の世界観を裏付ける情報を容易に得られる。
– 新聞社の役割はそれを補強することではなく、事実を掘り下げ、多様な視点を提示し、公共の関心事に対して説明責任を果たすこと。
– トランプ大統領の権力行使や民主的規範の軽視についても継続的に検証している。
●中国報道の視点
– 中国はかつて「追いつく存在」だったが、現在はインフラやEVなどで世界をリードしている。
– 米中関係の報道では客観的事実に基づく取材を重視しているが、米中間の緊張により現地に常駐できる記者が減っていることを懸念している。
– 現地に住み込む記者の存在は不可欠だと強調。
●イスラエル・パレスチナ報道の偏向批判
– 一部読者は「イスラエル寄り」、別の読者は「パレスチナ寄り」と感じるが、記者の基本姿勢は広く取材し、文脈を示し、事実に基づく調査報道を行うこと。
– 過激な対立の中では、権威ある事実報道を広い読者層に届けることが一層重要になる。
●独立報道の難しさ
– 読者の中には自分の立場に沿った報道を求める人もいるが、新聞社は政党や政府、企業などに縛られない独立したジャーナリズムを貫く。
– 独立報道を続けるには「厚い皮膚(批判に耐える強さ)」が必要。
– 民主主義は共通の事実基盤に依存しており、対立する側からも尊敬される報道機関が不可欠だが、批判の声は常に強い。
【コメント】
 ジョー・カーン氏は「独立したジャーナリズム」を守ることの重要性を強調し、政治的圧力や読者の期待に左右されず、事実に基づく報道を続ける姿勢を示している。民主主義において、信頼される独立報道は不可欠であり、そのためには批判に耐える覚悟が必要だという信念がうかがえる記事だ。

2.クレムリンで重要な会談
【記事要旨】
 ウラジーミル・プーチン大統領は昨日、トランプ大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏と、米国大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏と会談し、ウクライナ紛争について協議した。ロシアメディアは、二人がクレムリンの大きな白いテーブルに着席する様子を報じた。
 ウィトコフ氏は、ウクライナ紛争終結に向けた最新版の計画を発表すると予想されていた。しかし、同日早朝の発言で、プーチン大統領はトランプ政権の和平計画に難色を示す欧州諸国を批判し、ウクライナの欧州同盟国を脅迫した。「我々は欧州と戦うつもりはないが、もし欧州が突然我々と戦争を始めれば、我々は今すぐにでも準備を整えている」とプーチン大統領は述べた。
【コメント】
 プーチンの戦闘モードは不変だ。対外的にも国内的にも、ずっと取り続けないといけないスタンスなのだろう。

其の他の記事
・インドは、犯罪防止のため、すべてのスマートフォンに追跡アプリをプリインストールするよう命じた。野党はこれを大規模監視の道具だと非難した。
・トランプ大統領はソマリア移民に対し、米国にいさせたくない「ゴミ」と呼び、外国人排斥の激しい非難を浴びせた。
・レバノンでは、2020年のベイルート港爆発現場にて、教皇レオ1世が執り行うミサに数千人が参加した。
・英国は、膨大な未処理案件を解消するため、3年以下の刑期の犯罪に対する陪審裁判を廃止する計画を発表した。
・米国で麻薬関連罪で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領、フアン・オルランド・エルナンデス氏は、トランプ大統領の恩赦を受けて釈放された。
・韓国警察は、性的搾取を目的とした資料を入手するために12万台の家庭用カメラがハッキングされたと発表した。
・ニューヨーク・タイムズ紙は本日、ディールブック・サミットを開催する。主役には台湾の頼清徳総統や、チェスチャンピオンでロシアの野党政治家のガルリ・カスパロフ氏も含まれる。

2025年12月3日 水曜日

世界の動き 2025年12月2日 火曜日

今日の一言
「Professional Skepticism :職業的懐疑心」
内部監査人に求められる言葉だ。
日本を代表する一流企業で品質に関する不正がここ数年続いてきた。東芝は不正会計に端を発して消滅した。NIDECも不正会計の全貌がわからない。地方の信用組合が考えられないほどの乱脈計をしていた。最近は電力会社の役員による独断の支払い約束が明るみに出た。
社内で、企業活動の中枢を観察できる立場にいた内部監査人は何をしていたのだろうか。「職業的な懐疑心」をもっていれば、これはちょっとおかしいなと必ず気が付いたはずなのだが。

ニューヨークタイムズ電子版より
1,反分極化の教皇レオ1世
【記事要旨】
– フランシスコ教皇との比較的文脈
フランシスコ教皇は2013年、移民の玄関口ランペドゥーサ島を訪問し、移民・難民・弱者への関心を鮮明にした。これに対し、2025年に選出されたレオ1世教皇については「前任者とどれほど似ているか、どれほど違うか」が注目されている。
– 中東訪問の象徴性
レオ1世はトルコとレバノンを訪問し、キリスト教徒が少数派で紛争が続く地域に強い関心を示した。就任時の最初の言葉が「平和」であったように、訪問中も平和を一貫して強調している。通常ならカトリック多数派の国を最初に訪れるのが自然だが、敢えて中東を選んだ点に象徴性がある。
– イスラエル・パレスチナ問題への姿勢
フランシスコが「ガザでの出来事はジェノサイドの可能性」と強い表現を用いたのに対し、レオ1世はより外交的で、二国家解決支持を改めて表明。さらに、国務長官がハマスの攻撃とガザ戦争双方を「虐殺」と呼んだことも重要な発言として記録されている。
– 価値観と政策の特徴
基本的な価値観はフランシスコと大きく変わらないが、AIのリスクを強調する点が特徴的。環境保護や弱者の尊厳をさらに強調し、最初の公式文書は貧困問題に関するもの。米国司教に対して大量国外追放を非難するよう強く促すなど、社会的弱者への配慮を前面に出している。ただし、直接的な非難や攻撃的な言葉は避け、柔らかいアプローチを取る。
– 「反分極化の教皇」としての役割
世界が分断と対立に満ちる中で、彼は平和と統一を最大の課題と位置づける。教会内部でも女性の叙階、離婚・再婚者の聖体拝領、同性婚など論争的課題が山積しており、分極化への対応が不可欠。
– アメリカ的背景と個性
初のアメリカ出身教皇だが、ペルーで20年過ごし、スペイン語・イタリア語を流暢に話すなど「典型的なアメリカ人」とは異なる側面を持つ。一方で中西部特有のアクセントや映画の趣味(『サウンド・オブ・ミュージック』『素晴らしき哉、人生!』『普通の人々』『ライフ・イズ・ビューティフル』)にはアメリカ的要素が表れている。選んだ映画は必ずしもカトリック的価値観に合致せず、むしろ人間関係や葛藤を描く作品が含まれている点が興味深い。
– 人物像
遊び心があり、ユーモアのセンスを持ち、謙虚な印象を与える。政治家や外交官のように「自分が最重要人物だ」と振る舞うことはなく、観察者として場にいる姿勢が際立つ。
【コメント】
要するに、レオ1世はフランシスコの価値観を継承しつつも、より外交的で柔らかいアプローチを取り、分極化した世界と教会に「平和と統一」を掲げる存在として登場した新しい教皇ということのようだ。

2.ロシアは米国特使の提案を待ち望んでいる
【記事要旨】
トランプ大統領の特使であるスティーブ・ウィトコフ氏は、本日モスクワでウラジーミル・プーチン大統領と会談する予定だ。
ウィトコフ氏は、ウクライナ紛争終結に向けた新たな外交努力のきっかけとなった物議を醸した和平案の起草に尽力した。しかし、最近の活発な会談にもかかわらず、両者間の溝が縮まった兆候はほとんど見られない。それでも、EUの外交政策トップは記者団に対し、今週は「外交にとって極めて重要な週になる可能性がある」と述べた。
【コメント】
ロシアの代弁者に近いが、何もやらないよりは、紛争解決への関心を高める効果はありそうだ。

3.スリランカで甚大な災害
【記事要旨】
アヌラ・クマラ・ディサナヤケ大統領は、先週スリランカを襲ったサイクロンについて、「スリランカ史上最大かつ最も困難な自然災害」と宣言した。
サイクロン・ディトワによる死者は350人を超え、洪水と土砂崩れの被害は100万人以上に達した。昨年、大規模な抗議運動によって強大な政権が倒された後に政権に就いた政府にとって、復興は大きな課題となるだろう。
異例の破壊的なモンスーンシーズンは、インドネシア、タイ、ベトナムにも襲来した。少なくとも1,200人が死亡した。
【コメント】
日本人が閉じ込められたせいでインドネシアの報道が多いが、モンスーン地帯の台風被害は格別に多いようだ。日本政府は支援に資金と人を提供するべきだ。

其の他の記事
・香港のアパートで火災が発生し、150人以上が死亡した事件で、建設業者は安全基準を満たさない足場ネットを使用し、それを検査官から隠そうとしていたと当局は述べた。
・ホンジュラス大統領選挙の暫定結果では、トランプ氏が支持する候補者と対立候補が接戦となった。
・控訴裁判所は、トランプ氏を代理した弁護士のアリーナ・ハッバ氏が、ニュージャージー州の米国検事として違法に職務を遂行していたと判断した。
・英国は、米国の潜在的な関税を回避するため、医薬品への支出を増やすことに同意した。
・ロシアが国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士や物資を送るために使用する発射台は、先週の事故により使用不能となっている。

2025年12月2日 火曜日

世界の動き 2025年12月1日 月曜日

今日の一言
「一年の計は師走にあり」
 今日から12月。あっという間に今年ももう一月しかない。さあ、何をしようか。
 まずは、今年を振り返り、何をしたか・出来たかを考えたい。感謝すべき出来事や嬉しかった瞬間があっただろうか。次に、身の回りの整理だ。今年中に物とデジタルで片づけたいものを断捨離したい。「今年やり残していて、まだ間に合うこと」に優先的に取り組みたい。さらには、来年のイメージをざっくり描き、「仕事・お金・健康・家族・学び」という分野で、やるべきことの一部に、着手することが考えられる。新年からいきなりではなく、12月のうちに小さな新習慣を試し始めて、助走をつけることが考えられる。
 こう考えると、まさに一年の計は師走にありと言えそうだ。
 健康に感謝して寒い時期を乗り越えたい。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.帝国的なイスラエル
【記事要旨】
●イスラエルの軍事行動
– 2023年10月7日のハマス主導攻撃以降、イスラエルは圧倒的な軍事力を展開。
– レバノン郊外でヒズボラ幹部ハイサム・アリ・タバタバイを空爆で暗殺。こうした攻撃は日常化し、多くは報道されない。
– 標的はヒズボラ幹部だけでなく、一般市民が巻き込まれることも多い。
●「戦争と平和の狭間」
– イスラエルとヒズボラの停戦は崩れかけている。米国は年内のヒズボラ完全武装解除を要求するが、実現は困難。
– イスラエルは「ヒズボラが武装解除しない限り撤退できない」と主張し、ヒズボラは「イスラエルが攻撃を続ける限り解除できない」と応酬。
– 各攻撃は敵の抵抗心を強め、和平の可能性を遠ざけている。
●レバノンの脆弱性
– 政府は国家独占の武装権を確立しようとするが、イスラエルの攻撃が妨げとなっている。
– 米国元大使は「イスラエルのさらなるエスカレーションが、近年まれに見る有能なレバノン指導者を弱体化させる」と警告。   ●地域構造の変化と課題
– イラン主導の「抵抗の枢軸」は弱体化。イランはイスラエルとの短期戦で打撃を受け、シリアもアサド政権崩壊後はイラン寄りではなくなった。
– しかし軍事的支配だけでは平和の基盤にならず、パレスチナ国家問題が未解決のまま残る。
– 「支配」だけでは行き詰まりであり、外交的対話の道が必要だと示唆されている。
【コメント】
 要するに、イスラエルの圧倒的軍事力は中東で「帝国的存在」として機能しているが、その支配は和平を遠ざけ、レバノンやガザを「戦争と平和の狭間」A gray zone between war and peaceに置き続けているという記事だ。記事の行きつ戻りつの分析が、現状の複雑さをよく示している。

2.ウクライナの首席交渉官が辞任したが、協議は継続中
【記事要旨】
 ウクライナ当局者は昨日、フロリダでトランプ政権高官らと会談した。トランプ政権は、ロシアとの戦争終結に向けた提案への同意をキエフに迫ってきた。マルコ・ルビオ国務長官は会談後、「やるべきことはまだたくさんある」と述べた。
 ウクライナ側からは、ゼレンスキー大統領の右腕であり首席補佐官だったアンドリー・イェルマーク氏が欠席した。イェルマーク氏は汚職捜査のさなか、金曜日に辞任した。会談は、ロシアがウクライナをドローンとミサイルで約10時間にわたって攻撃した翌日に行われた。
【コメント】
 トランプ政権内でもウィトコフ特使とルビオ長官の間で主導権争いがあるようだ。双方の責任者がぐらついていると、まとまるものもまとまらないだろう。

3.トランプ大統領、ベネズエラへの圧力を強める
【記事要旨】
 トランプ大統領は航空会社とパイロットに対し、ベネズエラ近海の空域を封鎖すると警告し、政権が「麻薬カルテルとの戦い」と位置づける作戦を強化した。
 しかし、ワシントン・ポスト紙がヘグセス国防長官が麻薬密輸の疑いのある船舶の乗組員全員の殺害を命じたと報じたことを受けて、カリブ海における米国の軍事作戦の激化は議会の厳しい監視対象となっている。この報道を受け、軍司令官は9月初旬の攻撃で生き延びた人々を殺害するため、二度目の攻撃を実行した。議会の共和党と民主党の有力議員は、この二度目の攻撃は戦争犯罪に当たる可能性があると示唆した。
【コメント】
 この記事は「軍事的優位を誇示する戦略」と「国際法・人道的規範との衝突」という二重のテーマを含んでいる。前のイスラエルの記事と同様に、軍事力の行使が安全保障を強めるのか、それとも逆に政治的・倫理的リスクを高めるのかという問いが浮かび上がる。

其の他の記事
・インドネシア当局は、壊滅的な洪水の後、行方不明となっている数百人の捜索を行った。
・ホンジュラスでは新大統領を選出する選挙が行われているが、トランプ大統領が候補者を支持し、不人気な前大統領の恩赦を発表したこともあって、多くの人が選挙が不安定になるのではないかと懸念している。
・パキスタンは、タリバンとの関係が急激に悪化する中、アフガニスタン人の大量追放を強化している。
・ローマ教皇レオ14世は、イスラエルとパレスチナが二国家解決に向けて交渉できるよう支援する方法についてトルコ大統領と協議したと述べた。
・香港のアパート火災では、少なくとも8人の移民家事労働者が死亡し、生き残った人々も職を失うことを恐れている。この火災による死者数は現在146人となっている。

2025年12月1日 月曜日

角野隼斗コンサート

昨夜、横浜のKアリーナにピアニスト角野隼斗氏のコンサートを聴きに行った。大変多くの聴衆が集まった。以下中日スポーツの記事から引用する。
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30歳のピアニスト、角野隼斗(すみの・はやと)が29日にKアリーナ横浜で開催したリサイタル「“Klassik Arena” supported byロート製薬」の公演チケットが1万8546枚を売り上げ、「屋内のソロピアノリサイタルで販売されたチケットの最多枚数」としてギネス世界記録に認定された。
幼少期からピアノを学んだ角野は開成高等学校、東京大学工学部を経て、東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程を修了した知性派ピアニストとして知られる。音楽と情報工学の両面での研究成果が評価され、東京大学総長賞(学長賞)を受賞。2021年には第18回ショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリストとして世界的に注目を集めた。
ベルリンを本拠地とするレーベル、ソニークラシカルインターナショナルと専属ワールドワイド契約を締結してリリースした世界デビューアルバム「Human Universe」は、日本ゴールドディスク大賞「クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞。ニューヨークのカーネギーホールやベルリン・フィルハーモニー大ホールでの協奏曲デビューを果たし、ドイツの権威あるクラシック音楽賞「オーパス・クラシック賞2025」では、優秀若手アーティスト賞と優秀ライブ・パフォーマンス賞(ソリスト部門)の2部門を同時受賞。単独アーティストによる複数部門受賞は史上初の快挙となった。
甘いマスクでも人気を集め、近年はAERAの表紙を飾るほか、フィギュアスケート鍵山優真選手への楽曲提供などで音楽活動の幅を広げている。来年1月21日には、新作アルバム「CHOPIN ORBIT(ショパン・オービット)」をリリースする。
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当方が、彼に注目したのは2021年のショパンコンクールで優勝者が決まっていく過程のTV番組だった。スタインウェイ、ヤマハ、カワイといったメーカーが演奏者を全力を挙げてサポートしてゆく姿を追った番組だった。東大の工学部でピアノの達人である角野は番組の中でも目立った存在だった。2位に日本人最高位で入賞した反田恭平さんよりも注目されたと言ってよいかもしれない。
先日、彼のポーランドをめぐるNHK特集を見たが、ワルシャワのショパンコンクールの会場や、ジャズのライブクラブ、第二次大戦のユダヤ人収容所をめぐる旅だった。ちょうど夫婦でポーランド旅行を終えたばかりだったので、とても懐かしく拝見した。
彼の演奏の特徴は、代表作のピアノ版のボレロのように全力で鍵盤をたたく奏法にあるとおもう。昨夜は2台のピアノ(1台は細工がしてあり変な音が出る)を使うピアノソナタで全力の演奏を見ることができた。腱鞘炎が心配だ。

引用した中日新聞の記事で、商業的に大成功していることがよくわかった。
まだ東大に在籍して情報工学を追及しているところは、見上げたものだと思う。

本人も意識しているのだろうが、ショパンに面持ちがそっくりなところも女性ファンを引き付けるところだろう。昨夜の18546人の聴衆の9割は女性客だった。

2025年11月30日 日曜日