NYタイムズのDealBookという証券関係のセクションを読んでいて、聞いたことのない言葉に出くわした。Prediction Markets「予測市場」だ。
この言葉はすでに定着しているようでWikipediaで検索すると日本語の説明が出てくる。その説明が理解できなかったので自分で調べてみた。今日はこの予測市場について解説したい。
まず、NYタイムズの記事を紹介したい。NYTimes, DealBook, January 3, 2026より
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予測市場は勢いを維持できるだろうか?
カルシKalshiとポリマーケットPolymarketは2024年、大統領選挙の結果を正確に予測したことで初めて注目を集め、今や巨大ビジネスへと成長した。カルシは最近、評価額110億ドルで10億ドルを調達した。これは、50億ドルの資金調達からわずか2か月後のことだ。一方、ポリマーケットは150億ドルの評価額で資金調達を進めていると報じられている。
これは、予測市場がもはや単なる選挙結果への賭け以上のものとして認識されているからでもある。カルシが数十億ドル規模の取引量を誇るようになったのは、スポーツベッティングの大手企業として大きな成功を収め、ドラフトキングスやファンデュエルといったオンラインスポーツブックメーカーに予測市場への参入を促したためだ。さらに、インターコンチネンタル取引所のようなウォール街の大手企業でさえ、ポリマーケットに投資している。
問題は、予測市場がどこまで拡大できるかだ。カルシの共同創業者兼CEOであるタレク・マンスール氏は、最終的にはあらゆるものに賭けられるようにしたいと述べている。しかし、規制当局、特に予測市場の収益の一部を得るためにこれらの企業を訴えてきた州当局は、この件について何か言うかもしれない。
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この記事のポイントは今まで事象の賭け事にすぎなかった予測市場が、金融先物市場のようにリスクヘッジの手段に使えるかもしれないということだ。
現状は、“賭け市場”の性格がまだまだが強いが、将来的には 先物市場に近い役割を果たす可能性がある、というのがこの記事の示唆だ。
予測市場と先物市場はの違い・共通点
共通点
• どちらも「未来の出来事に対する価格」を売買する。
• 価格は市場参加者の期待を反映する。
• リスクを移転する仕組みを持つ。
違い
予測市場 先物市場
対象 選挙、天気、スポーツなど 金利、商品、株価など
なんでも 経済指標
目的 主に投機 ヘッジ(リスク管理)、投機
規制 ギャンブル規制の対象 金融商品として規制対象
予測市場はヘッジに使えるのか?
予測市場がヘッジになる具体例を示す。
① インフレリスクのヘッジ(KalshiのCPI市場)
株式や債券はインフレに弱い。
しかし予測市場では「CPIが上がる」契約を買うことで、
インフレ上昇時に利益が出る構造を作れる。
→ 債券のインフレリスクを部分的に相殺できる。
② 政策リスクのヘッジ
企業や投資家は政策変更に大きく影響される。
例:
– 「特定の税制改正が可決されるか」
– 「関税が導入されるか」
これらのイベントに対してポジションを取ることで、
政策ショックによる株価下落を補填できる。
③ 気候・天候リスクのヘッジ
農業・エネルギー・観光などは天候に左右される。
例:
– 「今年の降水量が平年より少ない」
– 「気温が平年より高い」
これらはコモディティ先物よりも細かくリスクをヘッジできる。
④ 地政学リスクのヘッジ
株式市場は地政学イベントに弱い。
予測市場では:
– 「制裁が発動されるか」
– 「選挙結果がどうなるか」
– 「紛争が拡大するか」
など、株式市場では直接ヘッジできないリスクを取引できる。
こう見てくると、何んとなく予測市場はヘッジに使えそうだという印象を持つ。以下では、Kalshi(カルシ)で実際にどうやってベットするのか を、できるだけ具体的に見てみよう。
Kalshi は「Yes/No の先物市場」のような仕組みなので、やり方を理解するととてもシンプルだ。以下、Kalshi.comを参照されたい。
Kalshiでベットする流れ(実際の手順イメージ)
以下は一般的な流れで、実際の画面や規制は変わる可能性がある。
① 口座を作る
– メールアドレスを登録
– 本人確認(KYC)を行う
– 米国在住者向けのサービスなので、国籍・居住地によって制限あり
筆者のように日本在住の場合、直接利用は現状難しいが、仕組みを理解すること自体は投資の視野を広げる意味で価値がある。
② 市場(Market)を選ぶ
Kalshi には多様な市場がある。
例:
– 「来月のCPIは3.0%以上か?」
– 「FOMCは次回利上げするか?」
– 「今年の降水量は平年より多いか?」
– 「特定の法案は可決されるか?」
それぞれが Yes/No の二択になっている。
③ Yes か No を選ぶ
市場を開くと、次のような価格が表示されます。
例:
“CPIが3.0%以上になる” → Yes = 0.42ドル、No = 0.58ドル
これは:
– Yes が当たれば 1ドルもらえる
– 今の価格は 0.42ドル
– つまり市場は「42%の確率」と見ている
という意味だ。
④ 購入数量(Contracts)を決める
Kalshiでは「1コントラクト = 最大1ドルのペイアウト」。
例:
Yes を 0.42ドルで 100コントラクト買う
→ コストは 42ドル
→ 当たれば 100ドル
→ 外れれば 0ドル
利益 = 100 – 42 = 58ドル
損失 = 42ドル
非常に明確で、オプションや先物よりも分かりやすい構造だ。
⑤ 満期(イベント発生日)まで保有する or 途中で売却する
Kalshiは「満期前に売買できる」のが特徴だ。
– 市場価格が上がれば途中で売って利益確定
– 下がれば損切りも可能
これは先物市場と同じで、流動性がある限り途中でポジションを閉じられる。
具体例:「来月のCPIが3.0%以上か?」
– 市場を見ると Yes = 0.40、No = 0.60
– 「インフレはやや上がりそう」と感じた投資家は
Yes を 0.40 で 50コントラクト購入
– コストは 20ドル
– 結果が Yes なら 50ドル受け取り
→ 利益30ドル
– 結果が No なら 0ドル
→ 損失20ドル
これは インフレ上昇リスクのヘッジとして機能する。
– 債券が下落する(インフレ上昇)
– しかし Kalshi の Yes ポジションが利益を出す
→ ポートフォリオ全体の変動が緩和される という構造だ。
Kalshiの特徴(他の賭け市場との違い)
– 金融商品としてCFTCに登録されている(米国)
– Yes/No の二択で分かりやすい
– 経済指標・政策・天候など、株式市場ではヘッジできないリスクを扱える
– 満期前に売買できる
– 1コントラクト最大1ドルなのでリスクが限定的(現状はレバレッジを効かせた取引は出来ないようだ)
ということで、「世界の出来事を資産クラスとして扱う」タイプの投資家には、非常に相性が良い仕組みだ。
今後の「予測市場」の発達と日本への波及について注目したい。
2026年1月4日 日曜日