創業経営者のオーバーライド(暴走)をどう防ぐか

     企業があるべき経営を行うのを保証する体制整備を内部統制という。ところが、内部統制を「創業者の性格を矯正する」ために機能させるのはほぼ不可能だ。しからばどうすれば良いか。
 「創業者の強烈な影響力を前提にした設計」に切り替えれば、相当程度まで機能させることは出来る可能性がある。

創業者支配企業で起きがちな事象

• 強い売上・利益プレッシャーと短期志向が、不適切会計の温床になる(東芝やニデックでも「短期的収益重視」が不正会計の背景と分析されている)。
• 「こんな数字では会長が許さない」といったメッセージが階層的に伝播し、現場が「数字を合わせること」を優先する文化を形成する。
• 創業者と特別な関係にある取締役・役員が周囲の牽制を無力化し、業務分掌・職務権限・相互牽制が形式化します。創業者への忖度だけで食っている役員が大勢いる。

前提としての「オーバーライドは起きる」設計
• 経営者によるオーバーライドは、内部統制の限界として避けられない前提であり、目的は「ゼロにすること」ではなく「ガバナンスされたオーバーライド」にすることにする。
• こうしたオーバーライドモデルでは、何をバイパスできるかのクラス分け、誰が承認できるかの承認境界、理由の記録、レビュー要件が必須となる。
• つまり、創業者が「例外」を行使すること自体を禁じるのではなく、その行使を可視化・多段階承認・事後レビューの枠に押し込める発想が重要だ。

具体的な仕組み
1. オーバーライドの制度設計
• 「通常プロセス」と「例外プロセス」を明確に区分し、例外発動時には自動的に記録・アラートが飛ぶワークフローを設ける。
• 創業者・会長が単独で完結できるオーバーライド範囲を極小化し、独立社外取締役や監査等委員会への同時通知・承認を必須にする。
2. 取締役会・委員会の「実効性」の強化
• 不適切会計が疑われた際、監査等委員会による第三者委員会設置やデジタルフォレンジックなどの介入は典型的な対応だが、平時から「経営者に対抗できる情報アクセスと専門性」を持った委員会構成が必要になる。
• 創業者と利害・経歴が近すぎない社外取締役を多数派に近い水準まで入れ、指名・報酬・監査の3委員会を通じて人事・インセンティブへの影響力を確保するように努める。同じ意見を持つ社内役員と連携する(口で言うのは簡単だが実現はとても難しい。強力な社外役員を増やすインセンティブは創業経営者には無いのが普通だ)。

3. 人事・インセンティブ設計の修正
• 売上至上主義的な昇進・評価制度は、不正の「動機」を増幅させるので、機会があれば是正を図る。
• 取締役・幹部の評価指標に、コンプライアンス・内部統制・長期価値指標(ROIC、顧客満足、品質指標等)を組み込み、短期利益偏重を緩和する。

4. グループ内部統制(企業集団)の再設計
• 多数の子会社を抱える企業では、親会社の売上重視方針や子会社社長の自律性が、不正な前倒し計上・粉飾を招いた事例が多数あるので注意する。
• リスクの高い事業・地域には、親会社が経理・決算プロセスを集中・標準化し、子会社に独立した内部監査と内部通報窓口を設けることが有効である。こうしたことが出来る人材がいるかどうかは大きなネックになる。

内部監査・監査等委員会の実務ポイント
• 「創業者に近い情報源」からの兆候をすくい上げるため、内部監査と監査等委員会・監査役との緊密な常時連携が必要である。
• 経営トップに直接レポートするホットラインを内部監査部門が持つだけでなく、取締役会・監査委員会に直接通報できるチャネルを整備し、トップが関与する案件を逃さない設計が必要だ。これも内部監査担当者の意識改革が必要だ。通常内部監査は創業者のための機関と化している。
• フォレンジックやデータ分析による「売上・利益の異常検知」を平時から運用し、創業者の「数字目標」が現場でどのような会計操作を誘発しているかをモニタリングする。

現実的な落とし所(プロとしての割り切り)
• 創業者の強烈なリーダーシップを完全に中和する内部統制は存在せず、「創業者の権限をどこまで透明化し、多元的な牽制を差し込めるか」が現実的な目標になる。
• そのため、内部監査や監査等委員会としては、「統制を守らせる」よりも、「例外・逸脱が必ず痕跡を残し、後から検証・責任追及できる状態を作る」ことを優先ターゲットに置く方が実務的である。
・そうした牽制的な動きを創業者に気づかれないように巧妙に行うことが望まれる。実際にはとても難しいのだが。

監査委員会の兵法
 監査等委員会は「創業者の振る舞いを変える」より、「創業者の影響力を制度の枠に押し込める」ことを狙うべき。 内部監査はその枠の中で「生き残りつつ、事実を上に届け続ける」ための戦い方を選ぶ必要がある。

監査等委員会が出来ること
1. 権限のフル活用と内部監査の直轄化
• 監査等委員会には、取締役・子会社への報告徴求権、業務・財産調査権が明文で付与されている(会社法399条の3)。
• 内部監査部門を「監査等委員会直轄」と位置づける規程・ガイドラインを整備し、監査計画の承認・重要案件の報告ラインを委員会に一本通すことで、執行側からの圧力を弱める。

2. 「創業者案件」に対応する監査の設計
• 創業者・会長・特定幹部に関する案件は、社長ラインではなく監査等委員会への直接報告とするルートを規程に明記する。
• 経営者の不正や法令違反を把握した場合、監査等委員会は取締役会への報告義務を負うため、取締役会の議事録・資料への記録と株主総会での報告をセットで意識する。

3. 指名・報酬を通じた「人事レバー」の活用
• 監査等委員会は、他の取締役の選任・解任・報酬に関する意見を株主総会で述べることができる。
• 創業者に近すぎる取締役や「数字至上主義」を煽る役員について、指名・再任・報酬の場面で懸念を明確にし、議事録に残すことで、心理的圧力と外部向けシグナルを両立させる。

4. 会計監査人との「共同戦線」
• 多くのガバナンス方針は、「監査等委員会が必要と認める場合、会社負担で外部専門家の助言を受けられる」と規定しており、会計監査人とも継続的に情報交換すべきだとしているはずだ。
• 創業者のオーバーライド懸念がある領域(売上認識、見積会計、関連当事者取引など)を、会計監査人と共通の「重点エリア」として合意し、監査計画段階から踏み込んだ手続を要求する。

5. 情報チャネルの複線化
• 「経営者のオーバーライドを防ぐには、監査役(監査等委員)に現場から直接情報が集まる体制が重要」である。
• 社内通報制度・内部監査・人事部門・法務から監査等委員会への直接報告ルートを複線化し、「社長までのラインで情報が止まらない」構造を作る。

内部監査部門の兵法
1. 組織上の独立性を最大限に引き上げる
• 内部監査部門長は、最高経営者と取締役会の双方に直接アクセスする「二重レポートライン」を持つべき。コーポレートガバナンスコードで謳われているのにまだできていない会社も多い。
• 創業者企業では、形式上は社長直属でも、実質的な職務上の指示・評価は監査等委員会(委員長)から受ける体制を明文化し、社内に周知する。

2. 「敵を作るレポート」ではなく「経営にも役立つレポート」
• 内部監査は、単なる「摘発機能」と見なされると、創業者・幹部からの排除圧力が高まる。
• 改善提案と効果(コスト削減、業務効率化、リスク低減)を数値で示し、「やると経営に得」「やらないと監査等委員会・会計監査人の問題になる」という両面を丁寧に設計することで、存在意義を認めざるを得ない状態を作りだす。

3. 危険なテーマの「攻め方」の工夫
• 経営者オーバーライドが疑われるテーマ(売上認識、在庫、グループ間取引など)は、慎重に進める。
• まずはプロセス・システム・現場レベルの統制不備として事実を積み上げ、その延長に「統制上、特定の個人に過大な裁量が集中している」と冷静に示し、監査等委員会に引き取ってもらう形を狙う。

4. 自分たちの「守り」を事前に確保する
• 内部監査人の独立性への脅威(発見事項の削除要請等)については、その経緯と相手の発言・タイミングを詳細に記録し、必要に応じて監査等委員会に報告すべき。
• 報告対象・頻度・報告方法(書面・口頭)のルールを、監査規程と監査等委員会の監査基準の両方に書き込み、「後からでも必ず上に届く」ルートを制度化しておくと、現場での圧力に耐えやすい(かもしれない)。

5. 監査テーマの選び方と「順番」
• 成長企業・創業者企業では、内部監査部門の存在自体が新しいことが多く、「いきなり聖域」に踏み込むより、ガバナンス全体を押し上げる基盤領域から着手する方が受容されやすい。
• 例えば、与信管理・在庫管理・IT一般統制など、誰もが重要と認めるリスク領域で「成果」を出し、その後に収益認識・経営者オーバーライド領域へ進む「段階戦略」をとることで、部門の信用を先に積んでおくべし。

創業会長は会社のことを一番よく知っている問題
 企業にとって一番問題なのは、会社のことは創業会長が一番よく知っているので、その意見に、役員会が耳を貸さざるを得ず、彼・彼女の思う方向(結果として違法になりうる可能性がある)に組織を挙げて進んでしまうことだ。これをどう防げばよいか。

 創業会長の「一番よく知っているから、皆が従ってしまう」こと自体は変えにくいので、「従うとしても、違法な方向には行けない構造」を多重に仕込む発想が現実的だ。

1. 取締役の義務を“前面に出す”設計にする
• 各取締役には、会社法上の善管注意義務・忠実義務があり、違法な意思決定に賛成すると個々の取締役が損害賠償責任を負うことを、社内研修・意見書等で明確に共有しておく。
• 取締役会の場で「これは法令違反リスクが高い」「取締役の責任につながる」と法務・外部弁護士から正式意見を出させ、議事録に残すことで、会長の“勘”より個々の取締役の責任リスクを意識させる。

2. 取締役会の“独立性”を物理的に高める
•創業者・ 経営トップに対して物が言えない取締役会では、経営者リスクをコントロールできないので、社外取締役、特に支配株主・創業者と距離のある独立社外取締役を増やすことが重要だが創業者に呑ませることが必要になる。
• 指名・報酬の議論で、会長から独立した社外取締役が中心となる枠組みにし、「会長が言うからそうする」から「取締役会の合意としてそう決める」へ重心を移す。

3. 利益相反・支配株主リスクとして扱う
• 支配株主・創業者は、会社との間で利益相反や少数株主の不利益を生みやすい主体なので、上場会社には少数株主保護のためのガバナンス体制構築が求められる。
• 会長の提案・意向が「支配株主としての利益」と「会社・少数株主の利益」のどちらに軸足があるのかを整理し、関連当事者取引や利益相反案件として、特別委員会・社外取締役だけで審議させる手当てをする。

4. “違法リスクの高いテーマ”はプロセスを固定する
• 法令違反につながりやすいテーマ(売上認識の前倒し、取引条件の不当変更、虚偽開示など)は、事前に「こういう場合は必ず法務・コンプラ・外部専門家のレビューを経る」と取締役会決議・ガイドラインで固定する。会計監査人から監査委員へのフィードバックが必要。
• 会長の発言が出ても、「この類型は必ず外部意見を取ることに取締役会で決めています」というように、個人の“経験則”よりも事前に決めたプロセスを前に出せるようにしておくと、現場・役員が逃げやすくなる。

5. 反対・保留の「記録」と“少数派”の見える化
• 取締役には、違法の疑いがある議案に反対し、その旨を議事録に明記させることで、将来の責任追及から免れる余地がある。
• 会長案に対し、社外取締役や監査等委員が「反対」「留保」「条件付き賛成」といった異論を明確に記録し、その存在を社内・株主に可視化することで、“会長に従えば安全”という空気を崩しやすくなる。

6. 監査等委員会・内部監査・外部監査の“三角連携”
• 経営トップにモノが言えない状況を緩和するには、取締役会だけに頼らず、監査等委員会、内部監査、会計監査人が連携してチェックすることが重要である。
会長の意向に基づく施策で「会計・法令リスクが高い」と判断されるものは、
• 内部監査がリスク評価・事実を整理
• 監査等委員会が取締役会への指摘・是正要求
• 会計監査人が監査上の重点領域・KAM化の検討
という三段構えを事前に合意しておくと、会長一人の判断で突っ走りにくくなる。

7. 最後の“ブレーキ”としての株主・市場
• 取締役会が創業者に引きずられやすい構造自体が改善されない場合、株主総会での説明責任・株主代表訴訟・支配株主の責任といった「外部からのブレーキ」が現実の選択肢になる。
• 取締役は、違法・不適切な施策が会社価値や少数株主に損害を与えうると分かっていながら追認すれば、自らの責任リスクだけでなく、株主からの訴訟・レピュテーションリスクも負うことを意識しなければならない。
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創業会長の「知見」そのものは尊重しつつ、
• 法令・ガバナンスに関わるテーマは“必ずプロセスに乗せる”、
• 個々の取締役に「従えば自分の首が飛ぶ」責任構造を見せる、
• 社外取締役・監査等委員・専門家・株主のレバーを外側から効かせる、
という構造で「耳は貸すが、違法な方向には動きにくい会社」に寄せていくのが実務的な方向になる。

2026年2月1日 日曜日 7:40AM 晴れ 気温0度 寒い朝です

20026年1月の市場動向 備忘録

【株式市場】
米国株は1月、途中に大きめの下落局面を挟みつつも月間では小幅なプラス圏、日本株はAI・半導体関連主導で堅調な上昇、為替はドル高一服からドル安・円高方向への修正という流れでした。

株式市場:米国
S&P500は月中に一時2%超下落する場面があったものの、月末時点では月初比で約2%高と小幅な上昇で終了しました。ダウ平均は1月単月で約2%上昇と相対的に堅調で、ナスダック総合も1%台後半の上昇と、ハイテクを含め主要指数はそろってプラス圏でした。
​ 地政学リスクや通商政策をめぐる不透明感からボラティリティは高めで、「上昇相場だが押し目も大きい」という展開でした。

株式市場:日本
日経平均は大発会で半導体・AI関連を中心に急伸し、TOPIXは上場来高値を更新するなど、年初からリスクオンの動きが鮮明でした。日経平均は1月単月で約2.5%上昇、前年比では3割超高まで水準を切り上げ、グローバルでも強い部類のパフォーマンスとなりました。背景には、世界的なAI・半導体ブームの波及、東京CPIの落ち着き、米金融政策のハト派転換期待など、内外要因が重なって日本株買いを後押ししています。

【為替・金利:ドル円中心】
ドル円は1月前半に一時159円台までドル高・円安が進行した後、月末にかけて152円台まで急速にドル安・円高方向へ反転しました。1月の平均レートは約156.8円と、月初(156円台後半)に比べるとやや円高方向に振れて終了しており、月間で見るとドル安・円高が進んだ形です。
​ 米金融政策の先行き(利下げ観測)やリスク回避局面でのポジション調整が意識され、日米当局による市場介入の噂も出て、年初の「一方的なドル高・円安トレンド」は一旦頭打ちとなりました。

全体像
リスク資産全体としては、日本株が相対的に強く、米株はボラティリティを伴う小幅高、為替はドル高の巻き戻しという姿で、地域間・アセット間のコントラストが出た1カ月でした。
実務的には、円ベース投資家にとっては「日本株ロング+為替ヘッジの選択をどうするか」「ドル建て資産での為替感応度管理」が1月のテーマになり得る局面だったと言えます。

【総選挙結果のシナリオ分析】
トレード・リスク管理上の示唆(円建て投資家視点)

シナリオ1(安定勝利)想定なら
日本株:指数ロング継続、ただしイベント前後はボラ上昇を見越し、バリュー/小型より大型コア中心。
為替:ドル円ロング(円安方向)継続も、BoJ正常化進行を考慮しアウトライトよりオプション(リスクリバーサル等)で表現。

シナリオ2(ねじれ)想定なら
日本株:外需大型・グローバル優良株オーバーウェイト、内需・政策依存セクターはアンダーウェイト。
債券:超長期JGBの一部ロング(財政拡張抑制シナリオ)をヘッジとして保有。

シナリオ3(政権交代・ポピュリズム台頭)想定なら
初期は「株ショート+超長期JGBショート+円ショート」といったリスクオフ寄りポジション、その後の政策パッケージ次第で「リフレ銘柄ロング+円ショート」を組み替える二段構えが現実的。
ボラティリティ上昇が高確率なので、バニラオプションやコリドールなど、ボラロング戦略の検討余地が大きい局面。

【日本でのMBO】
1月は公表ベースでは案件なし。

2026年1月31日
AM10:45 気温5度 風冷たく体感温度は2度程度

世界の動き 2026年1月30日 金曜日

今日の一言
「魚は頭から腐る」
 (以下Yahoo Newsより部分引用)
 ニデックは、不適切会計の疑いを巡り、東京証券取引所から特別注意銘柄に指定されたことを受け、1月28日、改善計画・状況報告書を提出した。
 中国の子会社で、経営陣の関与のもと不適切な会計処理が行われていた疑いがあり、内部管理体制を改善する必要性が高いとして、去年10月、東京証券取引所から特別注意銘柄に指定された。
 ニデックは、1月28日、特別注意銘柄の解除に向け、企業風土改革のための新組織を立ち上げることなど再発防止策を盛り込んだ改善計画・状況報告書を東京証券取引所に提出した。
 改善計画・状況報告書によると、不適切会計の原因として創業者の永守重信氏の意向を優先する企業風土が内部統制の脆弱性に繋がったとしている。決裁権限が同氏に集中していたことで、永守氏の意思を周囲の幹部らが忖度していたとも分析している。また永守氏が株価を非常に重視し、株価の水準を維持・向上することを過度に重視する傾向が強かったことも、原因のひとつとしてあげている。目標が達成できない可能性があると、一日に数回にわたり進捗を共有する会議が設定されたり、会議が深夜に及ぶケースもあるなど、これらが目標達成に向けたプレッシャーを生じさせた。
 創業オーナー経営者に内部統制を利かせるにはどうすれば良いか。これは同種のトップをいただく企業にとって大きな課題だ。詳しくは週末に述べてみたい。

ニューヨークタイムズ・ニュースレターより
1.世界の音楽のるつぼ
【記事要旨】
 グラミー賞についての対話で、批評家は「今年はBad Bunnyの年になるべきだ」と語る。彼はスペイン語で歌うプエルトリコ出身のアーティストで、旧来のモデルに頼らず世界的スターとなり、ストリーミング時代の象徴的存在となった。
 インターネットとストリーミングが言語圏を越えて音楽を広げ、スペイン語音楽やK-popのようなジャンルが世界的に台頭している。
 アメリカは長く音楽の中心だったが、現在は世界中のコミュニティが互いに影響し合う「グローバルな音楽のるつぼ」へと変化している。TikTokなどのSNSは新人アーティストの主要な登竜門となり、かつてのように「SNS出身=軽視」という時代ではなくなった。
 また、AIはすでに制作現場で部分的に使われているが、まだ本質的な創造には至っていない。AIは「正しい音楽」を作るのは得意になるかもしれないが、「間違いから生まれる革新」は人間にしかできない。
 最後に、批評家は自身が注目する音楽として、K-popの巨大産業の影響下で独自性を追求する韓国人アーティストEffieの作品を挙げ、革新性や破壊力のある音楽に惹かれると語っている。
【コメント】
 ここに上がっているアーティストはどれも知りませんでした。世界の潮流に遅れている自分を痛感しますが、ラップやレゲエっぽい音楽は全く聞く気になりません。

2.英中関係の再構築
【記事要旨】
 英国のスターマー首相は昨日、北京で中国の習近平国家主席と会談し、長年続いた両国関係の「氷河期」からの脱却で合意した。
 スターマー首相にとって、今回の訪問は、中国とのより緊密な関係が英国のさらなる成長をもたらすという現実的な賭けである。習主席との会談後、スターマー首相は中国が英国民の30日以内の旅行に対するビザ発給要件を緩和したと発表した。
【コメント】
 中国の圧力を感じない欧州諸国は中国との関係改善が容易だらう。日本がロシアの圧力を感じないのと同様だ。スターマー首相は中国の後、訪日予定だが、関係の親密化をさらに図りたい。

その他の記事
・トランプ大統領の国境管理担当官は、ミネアポリスにおける移民取り締まりは「改善」する必要があると述べ、移民税関捜査局(ICE)の職員を同市から撤退させる可能性を示唆した。
・ミネアポリスの暴力行為を目の当たりにしたグリーンランドの人々は、米国との緊密な関係に反対している。
・EUは、イランの抗議者殺害を受け、イラン革命防衛隊をテロ組織に指定した。
・中国の検察は、同意のない女性との間に複数の子どもをもうけた男性を起訴しないことを決定し、激しい議論を巻き起こした。
【コメント: なぜ不起訴になったのか(報道内容に基づく要点)
 中国のある省の裁判所は、重度の精神疾患で同意能力のない女性に対し、男性が繰り返し妊娠させたにもかかわらず、刑事責任を問わない判断を下した。
 その理由として、判決文には次のような趣旨が含まれていたと報じられている:
– 女性が産んだ子どもが「社会的有用性(social utility)」を持つ
– 出産が中国の人口減少対策と整合的である
– よって男性の行為を「犯罪として扱わない」判断が下された
この「社会的有用性」という表現が、人口政策のために女性の権利が軽視されたのではないかという強い批判を呼んでいる。
 少子化対策は社会通念に勝つということだろうか?】
・トランプ大統領の関税が不安定さを引き起こし、米国の貿易赤字は急増した。

・テスラは売上減少に対抗するため価格を大幅に引き下げたため、年間利益は急落した。
【コメント:テスラ株は現在416.57ドル。14.89ドル、3.45%の値下がりだ。しばらく調整するとみる。】

2026年1月30日 金曜日
7:00AM 摂氏0度 今日も寒いです。

世界の動き 2026年1月29日 木曜日

今日の一言
「プライマリーバランスの軽視」
 今朝のラジオ番組で京都大学の藤井聡教授が高市首相を絶賛していた。何をか? プライマリーバランスという財政のくびきを日本の首相が音頭を取って外したことだ。これで日本の再成長が可能になるというのだ。そうだろうか。
 プライマリーバランスが存在しても日本の政府債務残高は積みあがってきた。これが無くなれば(首相は単年度から複数年度で見てゆくと言ってはいるが)一層の財政の悪化を懸念される。懸念するのは、我々だけではない。世界中の巨大な機関投資家だ。
 藤井教授の絶賛する一点は、首相に対して筆者が最も懸念する一点である。

ニューヨークタイムズ・ニュースレターより
1.新しい世界でカナダが示す教訓
【記事要旨】
 ダボス会議でのマーク・カーニー首相の演説は、世界の指導者だけでなくカナダ国民からも強い支持を受けた。演説の中心にある問いは、「長年アメリカに依存してきた国々は、今や不安定で時に敵対的な米国とどう向き合うべきか」というものだった。
 カーニーは「古い秩序は戻らない」と述べ、貿易相手の多角化や戦略的依存の縮小、そして“中堅国同士の連携”を訴えた。
■ カナダの現状と転換
 カナダは米国との経済的結びつきが最も強い国で、輸出の約7割が米国向けだ。トランプ政権の関税強化(25〜35%)で大きな打撃を受けている。
 それでもカナダは米国依存からの脱却を最も積極的に進めており、中国との戦略的パートナーシップ締結や、アジア・中南米との自由貿易協定交渉を加速している。こうした姿勢が国民に支持され、カーニーの支持率は60%に上昇している。
■ 多角化の進展
 2025年、米国との貿易は4%減少する一方、他地域との貿易は13%増加した。 初めてアジアへの天然ガス輸出が開始され、 米国以外への石油輸出比率は2%から10%へ上昇(主に中国向け)した。
■ 中国との関係強化
 中国EVへの関税引き下げと引き換えに、カナダ産菜種への関税が減免された。 これは「対中政策で米国に追随する」という従来路線からの転換を象徴している。
■ 中堅国の連帯というメッセージ
 カーニーの主張の核心は、「米国の気まぐれに各国が単独で対抗するのは不可能。中堅国が協力してこそ抑止力が生まれる」という点にある。
 専門家は、もしカナダのような米国依存度の高い国が転換に成功すれば、他の同盟国にとっても大きな示唆になると指摘する。
■ 結論
 カナダは完全に米国から離れることはできないが、米国が力を振るうとき、他国がカナダを支える世界をつくるための国際連携を呼びかけている。これは、米国中心の秩序が揺らぐ中で、中堅国が生き残るための新しい戦略だといえる。
【コメント】
 カーニー首相の発言を引用する。
 “The old order is not coming back, Nostalgia is not a strategy.”

2.トランプ政権によるイランへの圧力強化
【記事要旨】
 トランプ大統領は、米空母打撃群がイラン攻撃可能な位置に展開したのに合わせ、イランへの威嚇を大幅に強めた。イランが米国の要求に応じなければ、「迅速かつ激しい」攻撃を行う可能性があると発言した。
 米国と欧州がイランに提示している主な要求は次の3点である。
– ウラン濃縮の全面停止
– 弾道ミサイル開発の制限
– ハマス、ヒズボラ、フーシ派など代理勢力への支援停止
 一方、トランプ大統領は以前「支援する」と述べていたイラン国内の抗議者に関する要求は今回含めなかった。
【コメント】
 米国が大きく前のめりになっている印象だ。前回の核施設への爆撃のような攻撃があるかどうかは微妙な状況になってきている。

3.ミネアポリスで進む変化
【記事要旨】
 アレックス・プレッティ殺害への強い反発を受けてトランプ大統領は表向きには語調を和らげているものの、ミネソタ州では依然として厳しい取り締まりが続いている。
■ ミネソタ州のその他の動き
– ミネアポリスでの公的イベント中、民主党議員イルハン・オマルが男に襲われ、正体不明の液体をかけられた。
– 土曜日の致命的な銃撃事件に関与したICE(移民・関税執行局)職員2名が停職処分となった。
– エクアドル政府は、ICE職員が許可なくミネアポリスの同国領事館に入ろうとしたとして正式に抗議した。
【コメント】
 口先での言い逃れで片付けようとしてきたが、白人男性が射殺される事件への対応次第では、トランプを強力に支持してきた中下層の白人が離反する恐れがある。

その他の記事
・ウラジーミル・プーチン大統領は、退陣したシリアの独裁者バッシャール・アル=アサド氏をかくまっているにもかかわらず、モスクワでシリアのアハメド・アル=シャラー大統領を歓迎した。
・銀価格は金価格よりも急騰している。一体何が起こっているのだろうか?
【コメント:銀特有の追い風(産業需要)がある。銀は高い導電性・熱伝導率を持ち、太陽光パネル、EV、半導体、電池、スマホや家電など広範な製品に不可欠な素材だ。AIデータセンター向けのチップや電力インフラ、高度な軍需用途などでも需要が増えており、「脱炭素・電化・AIブーム」が銀需要を構造的に押し上げている。
 米内務省が銀を「クリティカル・ミネラル(重要鉱物)」に指定したことや、中国の輸出管理強化など、戦略物資としての位置づけも強まっている。】
・ウクライナ東部で無人機による攻撃があり、列車内で5人が死亡した。生存者がその瞬間を語った。
・科学者たちは、政治、テクノロジー、気候の憂慮すべき進展を理由に、終末時計を終末にさらに近づけている。
【コメント:いま終末時計(Doomsday Clock)は「真夜中まで残り85秒」、つまり23時58分35秒に相当する位置に設定されている。】

2026年1月29日 木曜日
6:54AM 摂氏1度 ようやく太陽が出ました。寒いです。

世界の動き 2026年1月28日 水曜日

今日の一言
「Debt Bomb」
日本の金利上昇について市場での懸念が増している。昨夜の報道番組で識者が集まって心配する必要がないというコメントを述べていた。以下の理由だ。
・負債額は総額ではなく純負債で見るべきだ(政府には資産が沢山ある)
・政府の財政状況はここ数年で好転している
・金利が上がっても既存債務の利払いがすぐ増高するわけではない
・財政支出を梃子に日本の成長力が高まる
そうだろうか。
米国の政府債務の増大には、昨年から米国で大きな懸念が高まっていた。米国債の金利上昇は政府にとって大きな懸念材料だった。市場関係者も懸念を述べていた。
そういった状況で、日本の極端に大きな政府債務が注目された。欧米のメディアではDebt BombとかJapan Origin Financial Crisisとかという言葉が躍る。
市場は常にオーバーシュートする。債務が金融危機につながらないことを祈る。だだ、危機が去ったとしても、日本を待ち受けるのは戦後の英国型の長い調整インフレの時代だということを忘れてはならない。

ニューヨークタイムズ・ニュースレターより
1.イランの過激なデモ弾圧
【記事要旨】
2026年1月、イラン全土で広がった抗議デモに対し、政府は通信遮断を行いながら極めて強硬な弾圧を実施した。
ニューヨーク・タイムズの調査によれば、1月9日に最高指導者ハメネイ師が「いかなる手段を使ってでも抗議を鎮圧せよ」と命じ、治安部隊は少なくとも19都市でデモ参加者に実弾を発砲した。
病院には頭部・眼部・胴体への銃撃やペレット弾による重傷者が殺到し、遺体安置所には300体以上の遺体が運び込まれた。多くは頭蓋骨の損傷や眼窩の陥没など、明らかに致死性の暴力の痕跡があった。
独立系団体は、死者数が「数千人規模」に達するとの見方で一致している。
イランでは過去20年で何度も抗議運動が起きてきたが、今回の弾圧は桁違いの規模で、政権が自らの存続に深刻な危機感を抱いていたことを示している。
経済不満から始まったデモは、やがて「ハメネイ打倒」を叫ぶ政権転覆要求へと発展し、政権は4日間でほぼ完全に鎮圧した。
専門家は、1988年の大量処刑以来の規模だと指摘する。現在のイランは、国内の正統性危機と、国外では米国・イスラエルとの緊張や地域代理勢力の弱体化が重なり、建国以来最も脆弱な局面にあるとされる。
歴史と今回の弾圧は、政権が生存を脅かされるとき、より苛烈な暴力に訴える傾向を示している。
【コメント】
米軍の介入観測があるが、イランは西半球には無い。トランプは口策介入にとどめるとみる。

2.EU とインドが大規模な貿易協定に合意
【記事要旨】
EU とインドは、約20年にわたる交渉の末、「史上最大級」とされる貿易協定に署名した。
両者は、トランプ大統領による関税引き上げの脅威を受け、米国依存を減らす必要性が高まっていた。
協定では、インドが欧州車への関税を最大10%まで引き下げることが盛り込まれ、今後6年間で EU の対インド輸出額が倍増すると見込まれている。
その他の貿易関連の動き
– 英国のキア・スターマー首相は、中国との新たな貿易・投資協定を模索するため訪中。ただし、トランプ大統領を刺激しないよう慎重に進める意向。
– トランプ大統領は、韓国が以前の貿易合意の履行が遅れているとして、韓国製品への関税を再び25%に引き上げた。
【コメント】
日本とインドの間にはすでに自由貿易協定(EPA/CEPA)が存在し、2011年に発効している。
韓国への関税引き上げ発表は驚いた。何がトランプの気に障ったのだろうか。

3.スペイン、無登録移民に合法滞在への道を開く
【記事要旨】
スペイン政府は、数十万人規模の無登録移民に一時的な在留許可を申請できる制度を認める政令を可決した。
これにより、長年「法的な宙づり状態」に置かれてきた人々が、合法的な滞在へ進む道が開かれる。
社会党主導の政府は、農業・観光業などで移民労働力が不可欠であることを理由に、この政策はスペインにとって重要だと説明している。
【コメント】
この決定は、違法移民への取り締まりを強化する傾向にある他の欧米諸国とは対照的な動きとなった。

その他の記事
・ロシアとウクライナの犠牲者総数は、春までに200万人に達する見込みです。
・トランプ大統領は、ミネソタ州の抗議活動参加者が連邦捜査官に射殺される前に合法的に許可された銃を所持していたと非難し、「誠実な」調査を行うと約束しました。
・決議案には、トランプ大統領の平和委員会に関する計画の一部が明らかにされており、ガザ地区に対する広範な権限をトランプ大統領に付与することも含まれています。
・ICE(移民税関捜査局)の捜査官は、来月の冬季オリンピックに米国代表団に同行する予定で、イタリア国民は憤慨しています。
【コメント:なぜ ICE が同行するのか
米国政府の説明は以下だ。
– 米国選手団や関係者の安全確保のため
国際大会では、テロ対策や重大犯罪対策として、米国はしばしば法執行官を派遣します。その一環として ICE の捜査官も同行させるという立場です。
– 国際犯罪・人身取引対策の支援
ICE には国際犯罪捜査部門(HSI)があり、海外イベントでの犯罪防止を支援することがあります。】
・デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、米国がいつまで同盟国であり続けるかは分からないと述べました。

2026年1月28日 水曜日
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