世界の動き 2026年1月13日 火曜日

今日の一言
「トランプ関税への最高裁判断」
 1月9日には出る出ると言われていたが、現時点(2026年1月13日朝)では、トランプ大統領の新たな「グローバル関税」に関する最高裁の最終判断はまだ出ていない。

現状のステータス
 大統領が2025年に国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に導入した幅広い関税について、違法とした下級審判決をトランプ政権側が不服として最高裁に上告している。
​ 最高裁は2025年11月に口頭弁論を実施し、2026年1月以降に判決が出ると見込まれているが、1月8日・9日時点の意見公表日にはこの関税事件の判決は含まれておらず、言い渡し日は未定のままだ。

下級審での判断
 2025年5月、米国国際貿易裁判所(CIT)は、IEEPAはこのような包括的輸入関税を認めておらず、トランプ大統領が主張する「無制限の関税権限」は認められないとして、関税を違法と判断した。
​ 2025年8月、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)もこの判断を支持し、IEEPAを使った今回の広範な関税発動は権限逸脱だと結論づけている。​

今後の見通し
 最高裁は、大統領がIEEPAを根拠に関税を課す権限をどこまで持つか、そして違法とされた場合に既に支払われた関税をどこまで返還すべきか、といった点を中心に判断するとみられている。
​ 判決内容次第では、数千億ドル規模の関税還付や、今後の大統領による単独の通商政策権限の範囲に大きな影響が出る可能性がある。

要するに、「関税は違法」とした下級審判断は出ているものの、それを最終的に確定させる最高裁の判決はまだ出ていない、という状況だ。パウエルの状況を見れば自分に反対の判断をした最高裁判事でさえトランプ政権に訴追対象にされかねない。

ニューヨークタイムズ・ニュースレターより
1.トランプによるFRBのいじくり
【記事要旨】
 トランプ大統領は、FRB(米連邦準備制度)のパウエル議長を繰り返し批判し、利下げを強く要求してきた。最近では、FRB本部の改修工事に関するパウエル氏の監督責任をめぐり、連邦検察が刑事捜査を開始したことが明らかになった。この捜査はトランプ氏に近い人物が指揮しており、パウエル氏は「金融政策が政治的圧力や威嚇で左右されるかどうかが問われている」と警告している。
 争点は、FRBが専門家による独立機関として雇用と物価安定を追求すべきか、それとも政治家が選挙などの目的を含めてコントロールすべきかという点にある。
 FRBは世界で最も影響力のある中央銀行であり、米ドルの安定は世界経済の基盤となっているため、その独立性への揺さぶりは国際市場にも動揺を与えている。
 実際、パウエル氏への捜査が報じられた直後、株式・ドル・米国債が不安定になり、金価格は過去最高を更新した。中央銀行の独立性が損なわれれば、他国でも同様の圧力が強まり、トルコのように高インフレを招く危険性がある。
 一方で、一部の学者は、FRBが低インフレに偏りすぎて国民の優先課題を十分に反映していない可能性を指摘し、政治的な関与を部分的に見直す議論も出ている。しかし、世界から見れば、政治介入はドルの信頼性を損ない、米国の財政運営にも悪影響を及ぼしかねない。
 トランプ氏は重要な点に触れているものの、パウエル氏を刑事的に脅すやり方は、中央銀行の説明責任を求める立場の人々でさえ支持していない。
【コメント】
 トランプはパウエル議長を口汚くののしっている。Jerome Powell a “clown,” a “dummy,” a “major loser” and a “bad head of the Fed.”
「道化師」「間抜け」「大敗者」「FRBの頭の悪い人」というようにだ。
 彼の政権の人たちはこんなことを言う指導者に唯々諾々と従っているのだろうか。

2.ガザ地区の建物を一つ一つ破壊
【記事要旨】
 2ヶ月以上前、イスラエルとハマスは停戦合意に署名した。この合意は、2年間にわたるイスラエルの激しい爆撃でガザ地区の大部分が廃墟と化した後、ガザ地区のパレスチナ人に休、破壊は続いている。、しかし破壊は続いている。
 ニューヨーク・タイムズが衛星画像を分析した結果、停戦開始以来、イスラエルはガザ地区で2,500棟以上の建物を破壊したことが明らかになった。これらの建物のほとんどはイスラエルの支配地域内にあるが、数十棟はイスラエル軍の占領地と合意された境界線の外側に位置している。
 イスラエル当局は、これらの破壊はトンネルや爆弾が仕掛けられた家屋を破壊し、ガザ地区を「非武装化」する取り組みの一環だと述べている。しかし、ガザ地区のパレスチナ人は、イスラエルが地域全体を破壊していると主張している。
 「これは完全な破壊だ」と、1990年代にガザ地区で軍を率いた元イスラエル軍司令官は語った。「選択的な破壊ではない。全てを破壊しているのだ。」
【コメント】
 大阪冬の陣の後、家康が大阪城の外堀を埋めたような行為だ。

その他の記事
・トランプ大統領が軍事攻撃を警告したことを受け、イラン政府は戦争への準備は整っているものの、交渉の用意もあると述べた。
・ベネズエラ政府は少なくとも24人の政治犯を釈放し、政治犯の総数は少なくとも41人となった。
・英国は、女性や子供の性的な画像を人工的に生成したソーシャルメディアプラットフォーム「X」の調査を開始した。
・EUは、中国製電気自動車について、自動車メーカーに対し、輸入を制限し最低価格を設定することで、高関税を免除するという回避策を与えた。
・スイスの裁判所は、元旦に火災が発生したバーのオーナーに対し、少なくとも3か月の公判前勾留を命じた。

2026年1月13日 火曜日

世界の動き 2026年1月12日 月曜日

今日の一言
「成人の日」
 今日は成人の日。国民の祝日だ。新成人は109万人で昨年とほぼ同数で統計開始以来の低さ。少子化は顕著に進んでいる。
 日本では年齢に関係する祝日が3つもある。5月5日「こどもの日」は Children’s Day、1月の第二月曜日「成人の日」は Coming-of-Age Day、9月の第三月曜日「敬老の日」は Respect for the Aged Day だ。それぞれ子供の成長を祝い、大人になったことを自覚する若者を励まし、高齢者を敬う日として祝われていますという説明だ。
 日本の労働時間が西欧に比べて極めて大きかった昔はいざ知らず、これの祝日の必要性は再検討すべき時期に来ていると思われる。成人の日の振り袖姿や若者の空虚に聞こえる誓いの報道を見るたびにそう思うのだ。

ニューヨークタイムズ・ニュースレターより
1.イラン抗議デモとトランプ政権の威嚇
【記事要旨】
– イランでは、昨年12月以来、経済危機(制裁、腐敗、通貨暴落、物価高、失業)を背景に反政府デモが拡大していた。
– 12月28日の通貨リアル急落が引き金となり、テヘランのバザール商人が抗議を開始。これは1979年革命を想起させる象徴的な出来事だった。当時もバザール商人の抗議が革命の引き金になったのだ。
– デモは大学や地方都市にも広がり、政府庁舎の放火やインターネット遮断が発生。
– イランは地域での軍事的影響力が弱まり、同盟勢力(シリア政権、ハマス、ヒズボラ)も打撃を受けている中での危機となった。
– トランプ大統領は、デモ参加者が殺害されれば米国は「攻撃準備完了」と警告した。
– その直後に、米国は反米陣営の一角であるベネズエラを攻撃し、マドゥロ大統領を拘束。これがイラン国内に大きな衝撃を与えた。
– トランプはさらにイランへの威嚇を強め、「過去のように市民を殺せば米国は強く攻撃する」と発言。
– 人権団体はすでに死者が出ていると報告しており、米国が軍事行動を検討しているとの情報もある。
– イラン国内では「次の標的はイランか」という不安が広がっている。
– ベネズエラの事例から、
– トランプは嫌う指導者を軍事力で排除することをためらわない
– 米国はタンカー拿捕などで経済封鎖を強化できる
– ロシアや中国は介入しない可能性が高い
   ことが明らかになった。-
– イラン政府はこれまで強硬弾圧でデモを抑えてきたが、今回は米国の威嚇が計算を複雑にしている。
– デモ参加者は「米国がどう動くか政府が気にしているため、今回は押し返せるかもしれない」と感じている。
– 一方で、ベネズエラでは体制そのものは崩壊せず、副大統領が政権を継承した点もイランの人々は理解している。
– 最後に、米国の敵対国の中で最も安全なのは核兵器を持つ北朝鮮であり、イラン政権が生き残れば核開発の動機がさらに強まる可能性があると指摘されている。
【コメント】
 イランの軍備の張子の虎状況は、イスラエルとの紛争であらわになった。ただ、トランプ氏にはベネズエラとイランの二か国で問題に対処する能力は無いだろう。

2.シリア軍、衝突後アレッポの一部地域に進攻
【記事要旨】
 シリア最大の都市の一つであるアレッポでは、クルド人主導の民兵が同市から撤退し、数日にわたる衝突が終結したことを受け、昨日、2つの地区がシリア政府軍の制圧下に入った。
 民兵の撤退により、2024年12月の内戦終結以来最悪の暴力事件の一つとなったアレッポは静けさを取り戻した。この戦闘で少なくとも24人の民間人が死亡し、120人以上が負傷した。
 米国は土曜日、シリア全土のイスラム国拠点に対して大規模な空爆を実施した。この作戦は、シリアで米軍兵士2人と民間通訳1人が殺害されたことへの報復として、先月行われたさらに大規模な空爆に続くものとなった。
【コメント】
 ベネズエラにすっかり目を奪われていたが、シリアでは戦闘が続いていたのだ。ここはトランプが解決したと称する8つの戦争のうちの一つだ。

その他の記事
・ミネアポリスでICE職員が女性を殺害したことに対する怒りが高まり、抗議活動が全米各地の街頭に広がった。国土安全保障長官は、ミネアポリスにさらに職員を派遣すると述べた。
・オーストラリアの山火事で少なくとも1人が死亡し、数十棟の家屋が焼失した。
・イスラエル警察は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近の1人を、機密軍事文書の漏洩に関する捜査を妨害しようとしたとして拘束した。
・インドネシアとマレーシアは、AIチャットボット「Grok」が実在の人物の性的に露骨な画像を生成したことを受け、Grokへのアクセスを遮断した。
・欧州当局は、トランプ大統領によるグリーンランド占領の脅しへの対応策を水面下で策定している。

・グレイトフル・デッドのギタリストで創設メンバーのボブ・ウィアーが78歳で亡くなった。

2026年1月12日 月曜日 成人の日

内部監査の新しい役割

GRC Report Insights – A New Role for the Internal Audit Function January 10, 2026 より

 内部監査機能の新しい役割を説くGRC Reportの記事だ。いろいろと示唆に富むので紹介したい。著者はNorman Marks氏。内部監査のベテランで論客だ。

【記事の内容】
主なポイント
内部監査の役割の拡大:内部監査リーダーは、取締役会と監査委員会の有効性を積極的に支援することで、従来の保証業務を超えることができる。
実践的なガバナンス支援:(監査委員会)規程の起草、議題の策定、外部監査人との連携、自己評価の実施といった活動は、監督体制を大幅に強化することができる。
ガバナンスを加速させるテクノロジー:AIなどの新興ツールは、取締役会が大量の情報から迅速に洞察を引き出し、真に重要な事項に集中するのに役立つ。
取締役会の支援者としての最高監査責任者(CAE):スタッフ、アドバイザー、ファシリテーターとして活動することで、CAEは取締役会メンバーがテクノロジーをより効果的に活用し、経営陣に適切な質問を投げかけることを支援できる。
価値の創造と保全:ガバナンスへの内部監査の貢献を高めることは、最終的に組織の価値創造、保全、そして持続能力の向上につながる。

詳細分析
 この記事では、筆者が、従来の保証業務を超え、取締役会と監査委員会の運営をより効果的に支援するCAEの役割の進化について考察している。 AIとテクノロジーによって新たな機会が生まれていることから、筆者は、内部監査機能は取締役会のガバナンス、洞察、そしてパフォーマンスを強化することで、より大きな価値を提供できると主張している。

AI時代において内部監査リーダーが取締役会のパフォーマンスを強化する方法

 IIA(内部監査人協会)は、内部監査の「目的」を次のように定義している。「内部監査は、取締役会と経営陣に対し、独立した、リスクに基づいた、客観的な保証、助言、洞察、そして先見性を提供することで、組織が価値を創造、保護、そして維持する能力を強化する。」
 この文には多くの意味が含まれている(「積極的」、「価値ある」、「将来を見据えた」といった言葉を用いることで、より明確にすることができる)。しかし、この目的の記述からは明確ではないかもしれないが、多くの成功しているCAEが果たしている内部監査の役割がある。その役割とは、取締役会と監査委員会の実効性を高めることだ。
 内部監査部門は監査委員会に報告しており、私(Marks氏)はCAEとして常に、ガバナンスと監督の役割において、委員会を支援するためにできる限りのことを行うことを自分の目的と捉えていた。例えば、私は次のようなことを行った。

・監査委員会規程を起草し、必要に応じて変更を提案した。
・監査委員会の議題作成を支援した。(ある企業では、取締役会のIT委員会の議題作成にも協力した。)
・取締役会規程のどの項目をいつ取り上げるべきかスケジュールを管理し、その議題が会議の議題に確実に含まれるようにした。
・議題の草案を作成し、議長とCFOと協議した後、議長が最終承認した。
・外部監査人と協力し、彼らの資料が適切な会議で監査委員会に提出されるよう努めた。
・資料を委員会メンバーに時間通りに提出するよう強く促した。
・議長と法務顧問の承認を得るため、監査委員会の議事録を作成した。
・監査委員会の新メンバーにオリエンテーション研修を行った。
・監査委員会とそのメンバーの自己評価プロセスを主導した。
・自己評価の結果、研修の必要性が明らかになった場合は、研修を提供または促進した。
・ある取締役は英語が苦手だった。資料の理解と議論の準備を支援するため、毎回会議の前に彼の自宅で個別に面談を行った。
・外部監査人のパフォーマンス評価を行う時期が来た際、私は世界中の経営陣を対象に調査を行い、その結果を監査委員会と経営幹部に報告した。

 今、私たちはより多くのことを実現できる。取締役会ポータルへのAIの統合や、エージェントAIのより一般的な活用といったテクノロジーの進歩は、取締役会、委員会、そしてそのメンバーがより効果的かつ効率的に業務を遂行する機会となる。組織の運営についてより深い洞察を効率的に得ることができ、より適切な質問をしたり、必要に応じて経営陣に異議を唱えたりすることが可能になる。

 例えば、取締役会の資料(多くの場合、会議の直前に配布されます)を何百ページにもわたって精読​​する代わりに、AIを活用して資料を要約し、議論のテーマや論点を特定することができる。AIは、些細な情報の山から重要な情報を見つけ出すのに役立つ。

 CAEとして、私は機能的に監査委員会に報告してきた。多くの点で、私は彼らのスタッフであり、アシスタントであり、秘書であり、アドバイザーとしての役割を受け入れてきた。今、我々は、彼らがパフォーマンスを向上させるために新しいテクノロジーを導入し、活用できるよう支援する機会、そしておそらくは義務を負っている。

 多くのCAEは、業務におけるAIの活用方法を模索している。AIなどのテクノロジーを活用して取締役会や委員会、そしてメンバーの業務効率化を支援し、大きな付加価値(そして高い評価と感謝の気持ち)を創出することに挑戦しよう。

【コメント:実際にできているのか】
 この論考の筆者は、「取締役会・監査委員会の実務的サポート+AI活用支援」を包括的にCAEが行うことを提唱している。「先進的な機能」を標榜しているということは、こうしたことを実際に実行できているCAEが少ないことの証左であろう。
 米国での実際の事例をPerplextyAIで調べてみると以下の事例が出てきた。

1. ガバナンス面でボードを支える CAE 事例
 ある企業では、CAE が取締役会から「内部監査チームからもっと価値を引き出すにはどうしたらよいか」と直に依頼を受け、ボードの期待を踏まえて監査計画や報告のあり方を見直したケースが紹介されている。
​ 同ケースでは、内部監査部門が経営・取締役会双方との対話を通じて、リスク/ガバナンス課題を可視化することで、ボードのモニタリングを実質的に強化しており、筆者の言う「ボードのスタッフ・アドバイザー」としての役割に近い位置づけになっている。

2. AI ガバナンスと取締役会連携に踏み込む CAE 事例
 The ODP Corporation では、取締役会が AI ガバナンス計画の策定を経営に指示し、そのプロセスに内部監査が関与、CAE が AI ガバナンス委員会のメンバーとして参加していると報告されている。
​ この枠組みでは、AI 導入のマイルストーンや新たなリスク、必要なコントロールについて取締役会レベルの議論が行われており、内部監査が AI ガバナンスの設計・モニタリングを通じて取締役会の監督機能を支援している点で、筆者の提案する「価値創造と保全に貢献する内部監査」の具体例と見ることができる。

3. AI を活用して取締役会向けインサイトを強化する内部監査の事例
 IIA Foundation と AuditBoard の共同調査では、複数の CAE が GenAI を使って監査計画立案や指摘事項・統制記述のドラフトを高速化し、その分をリスクインサイトの深化やステークホルダーとの高度な対話に振り向けている事例が紹介されている。
​ 別の事例では、AI による継続的モニタリングとダッシュボード化により、取締役会・監査委員会がリアルタイムに近い形で重要リスクの兆候を把握できるようになり、「従来の事後的な監査報告」から「意思決定支援ツール」としての内部監査へと役割をシフトさせつつあると説明されている。

4. CAE が取締役会の「AI 利用能力」を高めている動き
 EY などの大手ファームは、CAE が AI リスク・AI ガバナンスをテーマにした年間監査計画を組み、同時にボード・経営向けに AI リスク教育やワークショップを提供することを推奨しており、実務でもこうした教育・ファシリテーションを担う CAE が現れている。
​ 上記のような企業では、AI を単に監査効率化に使うだけでなく、取締役会・監査委員会が AI の可能性とリスクを理解し、経営に対してより良い質問を投げかけられるようにすることを、CAE の重要なミッションの一つと位置づけている。​
 筆者の論考の「実装イメージ」として整理すると
・委員会規程案の起案・定期的な見直し支援
・議題設定・年次スケジュール管理・外部監査人との調整
・委員会自己評価のリードと結果に基づくトレーニング提供
・個々の委員のニーズに応じた資料理解支援
・さらに AI・ボードポータルの活用をボード側に「導入・教育する役割」

ということになるが、これらを「フルセットで」開示しているケースは見当たらない。 一方で、AI ガバナンス委員会への参画、取締役会向けリスク・AI 教育、GenAI によりボードへのインサイト提供を強化する内部監査の実務は既に複数社で確認でき、筆者のの描く新しいロールに向かう潮流は明確に出ていると言えそうだ。

【より重要なコメント:日本への応用】
 私(水島)自身は、内部監査部、非上場企業の監査役、上場企業の監査役、上場企業の社外取締役、上場企業の社外監査等委員、という役職を通じで、内部監査と取締役会の関係を見てきた。

 筆者が言うような関係をCAEが経営陣や取締役会と築くには、CAEが彼らの役に立つ監査を行い洞察を提供するという認識を獲得することが何より重要だ。また、取締役会メンバーに少なくとも一人は内部監査のかかる機能に理解を持つメンバーが必要だ。取締役会で内部監査の定例報告すらない企業を数多く見てきた。内部監査の機能が企業で理解されていない証左であり、IIAが何と言ってもIIAのルールで日本の企業が動くわけではない。

 監査委員会規程や取締役会規程の「文言に手を入れてほしい」というレベルまで信頼されるには、単に“腕がいい監査部長”では足りず、「信頼されるガバナンス・パートナー」としての総合力が求められる。 その信頼は、一度の成果ではなく、行動とコミュニケーションの積み重ねで形成される。

1. 専門性・独立性・一貫性
 IIA は、CAE に対して「基準の遵守」「十分なスキル」「組織戦略との整合」を満たした上で、取締役会・監査委員会の“trusted advisor”であることを期待している。
​ 経営陣や取締役会メンバーに不都合な内容でも、事実とリスクをブレずに伝える姿勢を保つことが、監査委員会側の「この人の話は信じてよい」という感覚を育てる可能性が高まる。

2. 監査委員会の「視点に立つ」姿勢
 監査委員長は、重いアジェンダの中から何を優先し、どのリスクに時間を割るべきか悩んでおり、CAEには「委員長の立場になって考え、戦略的な助言をしてほしい」と期待している(はずだ)。
​ 規程やチャーターの議論も、「委員会が法令・コーポレートガバナンス・ステークホルダー要求をどう満たすか」という観点で提案すると、形式改定でなく“課題解決のための文言変更”として受け入れられやすくなるかもしれない。

3. 継続的でオープンなコミュニケーション
 良好な関係は、定例会の場だけでなく、四半期ごとの1対1ミーティングや電話での事前すり合わせなど、頻度と質の高い対話から生まれると考えられる。
​ 「会議でいきなりサプライズを出さない」「事前に重要論点や難しい指摘を共有し、委員長の考えも聞く」ことで、委員長は CAE を“安心して相談できる相手”と認識し、規程・チャーター案へのコメントも求めやすくなる。​

4. 経営陣との建設的な関係
 信頼される CAE は、監査委員会だけでなく CEO・CFO など経営陣とも健全な関係を築き、「攻撃的な“内部監察”」ではなく「厳しくも建設的なパートナー」として振る舞うことが肝要だ。
​ 経営と対立している内部監査では、規程改定の場に出してもらえず、逆に「経営と必要な緊張関係を保ちつつも、合意形成できる人物」と見なされることで、委員会規程や取締役会規程の起案・レビューに関与させてもらえる余地が広がる。

5. 実務で示す「ガバナンスへの貢献」
 規程そのものだけでなく、リスクアジェンダの優先順位付け、重要な不祥事・不正リスクの早期把握、複雑な規制対応の整理などで「取締役会の目と耳」として価値を出す CAE は、自然と規程・チャーター改定にも意見を求められるようになる。
​ IIA の「Relationships of Trust」でも、内部監査が組織の目的達成と価値創造にどれだけ貢献しているかを継続的に示すことが、委員会からの信頼と“席(seat at the table)”を獲得する鍵だと強調されている。

6. 日本企業の CAE が意識すべきポイント
 形式論ではなく、「会社法・コーポレートガバナンス・コード・取引所要請を踏まえたベストプラクティスとして、この条文をこう変えると、委員会のモニタリング品質が上がる」という“法務・ガバナンスの両面からの提案力”が肝になる。
 監査委員会・指名報酬委員会・リスク委員会などと横串に関係を作り、「規程の文言」よりも「委員会の実効性向上」に焦点を当てた対話を重ね、その延長線上として規程改定への関与を求めてもらう流れを意識してゆきたい。

2026年1月11日 日曜日

株式市場動向 2026年1月2日から9日 備忘録

【株式市場全般】 米国は年初に一度下落した後、1月7~8日にかけて主要指数が再び高値圏に乗せる展開となり、日本は初商い(1月5日)から日経平均が約3%急騰する「強いスタート」となりました。 地政学リスクの高まりはボラティリティやセクター間の強弱に影響を与えたものの、生成AI関連・半導体と大型テック(マグニフィセント7周辺)への資金集中という、2025年からの流れを基本的には継続させています。

1. 米国株式市場(1/2~1/9)
1月2日の米株は2026年初日こそエネルギー・資本財が上昇する一方、消費関連や通信サービスが軟調で、S&P500・ナスダックとも週トータルではマイナススタートとなりました。
​ ただし、その後の取引ではダウが1月7日に49,000ドル台へ上昇し、S&P500も過去最高値更新、ナスダックも上昇する局面があり、週後半にかけて指数全体は再び高値圏を試す動きとなっています。

 米国主要指数
S&P500
2025年終値:約6,845ポイント
2026年1月9日終値:6,966.28ポイント 騰落率:約+1.77%
ダウ平均
2025年終値:約48,062ポイント
​2026年1月9日終値:49,504.07ポイント騰 落率:約+3.00%
NASDAQ総合
2025年終値:約23,242ポイント
​2026年1月9日終値:23,671.35ポイント 騰落率:約+1.85%

2. 日本株式市場(1/5~1/9)
 東京市場は1月5日の大発会で日経平均が前営業日比約1,493円高(+2.96%)の51,832.80円、TOPIXも約2%高で、2026年を力強くスタートしました。
​ 上昇を主導したのは半導体・AI関連など大型テックであり、背景には米国でのAI・半導体株高と円安進行を織り込んだ海外投資家の買いがあると分析されています。

 日本主要指数
日経平均
2025年終値:50,339.48円 2026年1月9日終値:51,939.89円
​騰落率:約+3.18%
TOPIX
2025年終値:3,408.97ポイント 2026年1月9日終値:3,514.11ポイント 騰落率:約+3.08%

3. 地政学リスクの影響
 年初は米軍によるベネズエラへの軍事行動など、地政学リスク要因が意識されましたが、東京市場ではこれに対する反応は限定的で、むしろAI・半導体主導の上昇トレンドが優勢でした。
​ 米国市場でもインフレ鈍化や利下げ観測、強い企業収益がリスク要因をある程度相殺し、指数全体としては「調整を挟みつつも高値圏維持」という姿になっており、リスクはボラティリティ要因として残りつつもトレンドを完全には崩していません。

4. 生成AI関連・半導体の過熱感
 米国では2026年入り後も半導体・AI関連株が上昇基調を維持し、1月2日のセクター別ではエネルギー・資本財と並んでチップ(半導体)銘柄が上昇し、市場を相対的にアウトパフォームしました。
​ 日本でも大発会の急騰は「米国でのAI・半導体高を受けた買い」が主因とされ、生成AI・半導体関連への期待と高バリュエーション容認のムードが、TOPIXの史上最高値更新や日経平均5万2千円台回復に反映されています。

5. マグニフィセント7等への集中
 2025年に市場を牽引したマグニフィセント7については、年初の局面ではグループ全体で足元5営業日連続下落するなど、やや調整色が強く、「一強相場」からのスタイル分散をうかがわせる動きも出ています。
​ 一方で、「マグニフィセント7」全体の利益成長率はS&P500平均を上回っており、AI関連投資の恩恵を受けるメガテックへの中長期的な期待は依然として高く、2026年の市場見通しでもこれら大型テックが重要な収益ドライバーであり続けるとの評価が多い状況です。
​ このため、年初の米日株式市場は「地政学リスクと高バリュエーションへの警戒からの一時的な調整」を挟みつつも、生成AI・半導体と大型テックを軸とした上昇トレンドを基本線として維持し、市場構造としては依然「AI・メガテック偏重」の色彩が強いスタートになったと整理できます。

 まだまだタイタニックの甲板での音楽会は続くようだ。いつ市場がピークを打ち、その後崩落するかは誰にもわからない。

【PE市場、プライベートクレジット市場の動き】 昨年末から足元にかけて、PEもプライベートクレジットも「コロナ後の調整から回復・再アクセル」に入っており、特にエグジット再開とプライベートクレジットへの資金流入が目立っています。 公募市場のボラティリティや関税・地政学要因を横目に見つつ、「ディシプリン強化+流動性確保」をキーワードに2026年サイクルに入っている印象です。

PE市場:ディール・エグジットの回復

 2025年後半は世界のPEディール価値が前年同期比で2ケタ増となり、Q3時点で年間1.6兆ドル(前年同期比+23%)規模に達するなど、2023年前後の停滞から明確な回復が確認されています。M&A・IPOの回復でエグジット価値も2025年Q3までで2022〜24年の通年を上回るペースとなり、LPへの分配再開期待から2026年の売却案件増が見込まれているのが昨年末以降の大きな変化です。

PEの投資テーマとスタンス

 テック・インフラ・サービス(特にデジタルインフラ、エネルギートランジション、ミッションクリティカルSaaS)がディール中心で、バリュエーションは高止まりだが「ハンズオンでの価値創造」を前提としたより選別的な投資が主流になっています。2025年半ば以降の関税・金利不透明感を受け、「レバレッジ抑制」「ストラクチャーの保守化」「ファンドレベルでの流動性管理強化」がキーワードとなり、2026年に向けてもディシプリン重視のトーンが維持されています。

プライベートクレジット:成長と質の両にらみ

 2025年を通じてプライベートクレジットAUMは前年比で数%台の四半期成長を続け、特にQ1〜Q2は4~5%成長と強い伸び、その後やや減速しつつもQ3〜Q4にかけて再加速が見込まれるなど、「拡大トレンドが続いた年」と整理されています。直接融資(ダイレクトレンディング)はタリフ不透明感やボラティリティでディール数自体はモデストながら、リファイナンスとアドオンM&A向けの案件が目立ち、スプレッドは高水準を維持したまま2026年入りしています。

プライベートクレジットの昨年末からの注目点

 2026年アウトルックでは、第一順位シニアローンの直接起源案件の利回りが8.0~8.5%程度でトラフを形成するとの見方が多く、利下げが浅い中で「依然として過去12年の上半分の水準」として、イールド面の魅力が強調されています。​   セミリキッド型ビークル(個人向けオープンエンド/インターバルファンド)への資金流入が加速し、米国ダイレクトレンディング市場の約3分の1を占める水準に達したことは、2025年末時点での大きな構造変化です。

公募クレジットとの関係・構造面の変化

 2024~25年にかけて「プライベート→パブリック」「パブリック→プライベート」のリファイナンスがほぼ同程度見られるなど、レバレッジドローン・ハイイールド市場との間で資金調達が双方向に行き来する状況が定着しつつあります。​  銀行は貸出をバランスシートから落とし、プライベートクレジットと共同で組成するケースが増えており、レバレッジの一部が銀行からノンバンク(プライベートファンド)にシフトしている点は、システミックリスクの観点からも昨年末時点で強調されているトレンドです。

投資家目線でのインプリケーション

 PE:2023~24年の「デニード・エグジット」が解消されつつあり、2026年にかけて分配再開・セカンダリー市場活性化が期待される一方、金利・関税・地政学でシナリオ差が大きく、ファンド選別(Vintage・戦略・GPのトラックレコード)が一層重要になっています。

 プライベートクレジット:利回りは依然魅力的で、ロスレートも管理可能との見方が多いものの、ストラクチャー(コベナンツ、シニアリティ、スポンサーの質)による分散がリスク管理の肝となり、「拡大市場のなかでどの部分に乗るか」が昨年末以降の主な論点になっています。

 日本のプライベートクレジット市場の現状は「銀行貸出が厚い中で、ミドルマーケット向けダイレクトレンディングを中心にニッチを切り開きつつある初期成長フェーズ」だ。機関投資家のオルタ配分拡大と海外マネージャーの参入が今後数年の主な推進力になるとの見方があるが、そうなるのだろうか。

2026年1月10日 土曜日​

 
 
 
 

2026年1月10日 土曜日

世界の動き 2026年1月9日 金曜日

今日の一言
「丹羽宇一郎氏」(以下時事通信の記事)
  元伊藤忠商事社長で、民間初の駐中国大使を務めた丹羽宇一郎(にわ・ういちろう)さんが2025年12月24日、老衰のため死去した。86歳だった。名古屋市出身。葬儀は近親者で済ませた。
 1998年から2010年にかけ伊藤忠の社長、会長を歴任。10年6月、中国大使に起用された。民間人の中国大使は72年の国交正常化後で初めてで、中国と太いパイプを持つ大手商社の実力者として、経済交流の拡大に向けた手腕を期待された。
 しかし、就任直後に沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件や、レアアース(希土類)輸出規制問題などが相次ぎ発生。12年には尖閣諸島の領有権をめぐり日中関係が悪化した。中国各地で大規模な反日デモが起き緊張が高まる中、東京都の尖閣諸島購入計画に懸念を示し、与野党から更迭論が浮上、同年内に退任した。
 伊藤忠の経営者としては、バブル期の「負の遺産」処理を決断。社長2年目の00年3月期には巨額の損失計上に踏み切り、経営の立て直しにつなげた。
  歯に衣(きぬ)着せぬ物言いでも知られ、会長時代は経済財政諮問会議の民間議員や地方分権改革推進委員会の委員長として活躍した。大使退任後の15年には日中国交正常化に関する記念式典の開催を提案するなど、晩年も両国の関係改善に心を砕いた。
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 社長就任後の質素な暮らしぶりには感心した。権力は必ず腐敗すると述べ、自身も伊藤忠で院政を引くことは無かった。冥福をお祈りしたい。

ニューヨークタイムズ・ニュースレターより
1.トランプを止められる唯一のもの
【記事要旨】
 トランプ大統領はニューヨーク・タイムズのインタビューで、国際法や国際秩序に縛られるつもりはなく、自分を制約できるのは「自分自身の道徳心だけだ」と述べた。
 彼は、米国は望む限りベネズエラを支配し、同国の豊富な石油資源を利用すると語り、グリーンランドについても「所有」こそが重要だと主張した。NATOについては、米国なしでは無意味だと切り捨てた。
 また、ウクライナや台湾への影響について問われても、中国の習近平国家主席は自分の任期中には台湾を攻撃しないだろうと述べた。
 ベネズエラでは、暫定政府が米国に全面協力しているとし、米国が同国を「利益の出る形で再建する」と発言。これを受け、米上院は大統領の軍事行使権限を制限する決議の審議に入った。
 グリーンランドについては、すでに存在する米軍の基地再開の権利だけでは不十分で、的成功には「所有」が必要だと強調し、NATO維持との優先順位は明言しなかった。
 インタビュー中には、コロンビアのペトロ大統領からの電話もあり、同国への攻撃の可能性に対する懸念が示された。
 さらに、ミネアポリスでのICE(移民税関捜査局)職員による女性射撃事件について、トランプ氏は女性が職員を「轢いた」と主張し続けたが、後の映像分析では女性は職員から離れて走行しており、職員は轢かれていなかったことが判明した。
【コメント】
 トランプ氏の考えがこれほど明確になったインタビューは無かった。常軌を逸した人物が世界の常軌を壊しまくっている。

その他の記事
・監視団体によると、イラン政府は抗議活動の弾圧を強化しており、イランでは全国的なインターネット遮断に見舞われている。
・ベネズエラは政治犯の釈放を発表し、カラカスの新政権による変革の兆しとなった。
・ロシアによるウクライナのエネルギー施設への攻撃により、ドニプロ周辺地域では50万世帯以上が暖房と電気の供給を停止した。
・トランプ大統領は、地球温暖化抑制の基盤となる国連気候変動枠組条約からの離脱を発表した。
・サウジアラビアは、アラブ首長国連邦(UAE)がイエメンからの分離主義指導者の逃亡を支援したと非難し、米国の同盟国であるアラブ首長国連邦(UAE)間の対立が激化した。

2026年1月9日 金曜日
やっと2026年と書くのに慣れてきました。