【米国市場】
1月12日から16日の米国株式市場は、指数ベースでは「高値圏での小幅な上下動」でしたが、個別では決算発表と半導体関連ニュースを中心に物色が進みました。
全体観:高値圏でのもみ合い
S&P500とナスダックは週を通じて史上最高値近辺で推移しつつ、週トータルではわずかに反落しました(S&P500は週間で約0.4%安、ナスダックは約0.7%安)。
一方、小型株のラッセル2000は堅調で、週間では約2%上昇し、連日で過去最高値を更新する場面がありました。
週を通じた主なテーマ
決算シーズン入り:
大手行(ゴールドマン、モルガン・スタンレー)と一部地域銀行の四半期決算が相次ぎ、好決算組は急騰する一方、予想未達の銀行株は下落するなど、銘柄間の明暗が分かれました。
AI・半導体関連への期待:
TSMCの「記録的な四半期」と積極的な設備投資計画が、米国上場の半導体・半導体製造装置株へ波及し、AI関連株に再度資金が向かいました。
マクロ要因:
週間新規失業保険申請件数の予想外の低下などを受け、労働市場の底堅さが意識され、米長期金利はやや上昇、ドル高気味で推移しましたが、株式全体への圧迫は限定的でした。
投資家センチメントの整理
インデックスレベルでは「高値警戒感からの利益確定売り」と「好決算・AI期待による押し目買い」が拮抗している状態でした。
セクターでは半導体・AI関連と一部銀行を中心に成長ストーリー銘柄へ物色が集まる一方、高値警戒感の強い一部大型グロース株や、決算が冴えない金融株には調整売りが入る、という構図が見られました。
【日本の株式市場】
1月12日から16日の日本株市場は、日経平均・TOPIXとも史上最高値圏でもみ合いながら、高市政権の解散観測と円安、日銀会合への思惑が交錯する展開でした。
全体観:高値圏での調整入り
日経平均は5万4千円台を中心に推移し、週末時点でも5万4千円前後を維持しつつ、週トータルでは上昇(週間で日経約3.8%高、TOPIX約4.1%高)。1月上旬の急伸で「PER20倍水準の割高感」が意識され、12〜16日の局面では利益確定売りと押し目買いが交錯する「高値圏での調整」の性格が強まりました。
1月14日まで:解散観測・円安・先物買いで最高値更新
直前の1月14日までに、日経平均は初の5万4千円台に乗せ、3日続伸・連日で史上最高値更新となり、TOPIXも連日で最高値を更新しました。高市首相による早期衆院解散観測が浮上し、「選挙前の株高(いわゆる高市トレード)」期待が先物主導で強まり、海外投資家の先物買いが指数を押し上げたこと。円安進行が輸出株の追い風となり、自動車・機械などグローバル企業に買いが広がったことが挙げられます。
1月15日:日経は4日ぶり反落
15日の現物市場の日経平均は、前日比約230円安の5万4,110円と4営業日ぶりに反落し、TOPIXは3,668.98ポイントと小幅安ながら高値圏を維持しました。前日までの急伸の反動による利益確定売りが優勢となったこと。米国市場でのハイテク株調整や、国内では決算本格化前のポジション調整が意識され、半導体など値がさグロースに売りが出たことが指摘されています。
1月16日:日銀会合・為替介入観測を意識した小反落
16日の日経225(CFDベース)は54,040ポイントと0.13%安、JP225指数ベースでも約0.3%安と小幅続落でしたが、依然として5万4千円近辺と高値圏を維持しました。同日のTOPIX現物は3,658.68と前日比0.28%安で引け、先物清算値は3,668.5ポイントと、やはり小幅安にとどまりました。来週の日本銀行金融政策決定会合を控え、「マイナス金利解除・利上げペース」に対する警戒感から、金融・金利敏感株を中心に持ち高調整が進んだこと。為替市場で円高方向への調整(介入警戒)も意識され、輸出関連に上値の重さが出たことです。
セクターと個別株の動き・テーマ
週を通じては、半導体・製造装置(東京エレクトロン、SCREENなど)と防衛・インフラ関連が強く、「高市政権の積極財政・防衛強化」期待と、世界的なAI・半導体サイクル拡大期待が重なりました。一方、16日には、東京エレクトロンやソフトバンクグループ、重工や自動車の一角に調整売りが入り、値がさ株主導で指数を押し下げる展開となりました。
政局では、高市首相が1月19日に財政・解散方針を含む政策の骨格を示すと見込まれており、「政策期待」と「国債金利上昇・財政悪化懸念」が同時に意識される中で、株式市場のボラティリティ上昇がテーマになりつつあります。
【金利と為替の動き】
日米とも長期金利は「小幅上昇・高止まり」、ドル円は一時159円台まで円安が進んだ後、158円台で引ける展開でした。
米国金利の動き
米10年国債利回りは12〜16日にかけて概ね4.1〜4.2%のレンジで推移し、12日4.19%→15日4.17%とほぼ横ばい圏内での小動きでした。週ベースでも2年・5年・10年とも数bpの上昇にとどまり、「早期大幅利下げ観測は後退しつつも、金利は落ち着いたレンジ相場」という評価が多くなっています。
日本金利の動き
日本の10年国債利回りは12日2.08%前後から16日には2.18%へ上昇し、約1週間で0.1%ポイント程度のじり高となりました。背景として、日銀によるマイナス金利解除・追加利上げ観測と、高市政権の積極財政・解散観測による国債増発懸念が意識され、長期・超長期ゾーンまで利回り上昇圧力がかかっています。
円ドル為替(USD/JPY)の動き
ドル円は12日終値158.15円前後から、14日に一時159.45円近辺まで上昇し、年初来高値圏の円安水準を試しました。その後は円安警戒や介入思惑もあって上値が抑えられ、15日158.54円、16日158.13円と、週末にかけては158円台前半へ小反落しています。
日米金利と為替の関係
米10年金利が4.1〜4.2%で横ばいの一方、日本10年金利が2%台前半まで上昇しても、依然として日米金利差は大きく、ドル高・円安基調の根底は維持されています。もっとも、日本側金利のじり高と日銀のタカ派寄りスタンスが意識され始めており、159円台では当局の口先介入・実弾介入への警戒から、短期的な円買い戻しが入りやすい地合いになっています。
【日本でトラスショックは再現しないか?】
完全に同じ形での「トラスショック再現」は確率が高くはないものの、日本でも条件次第では「債券急落+通貨不安」が起こり得る局面に入っている、というのが現状に近い整理になります。
トラスショックとは何だったか
2022年の英国トラス政権は、大規模減税と歳出拡大を「財源示さず・OBR(独立財政監督)評価なし」で打ち出し、市場の信認を一気に失いました。その結果、長期国債利回り急騰とポンド急落、年金基金のLDI運用に絡む「強制売り連鎖」が起き、英中銀が緊急買入れに追い込まれたのが「トラスショック」です。
日本が似てきていると言われる論点
高市政権の「積極財政+大型補正・防衛費増額」方針を背景に、日本の長期国債利回りは2025〜26年にかけて約2%超まで上昇し、超長期ゾーンも過去数十年で見ない水準まで売られています。
一部海外投資家やストラテジストは、
・債務残高の巨大さ
・金利上昇と円安の同時進行
・独立した財政評価機関の不在
などを挙げ、「日本版トラス・モーメントのリスク」と警鐘を鳴らしています。
日本で「そのまま再現しにくい」理由
日本銀行が国債残高の約半分を保有し、イールドカーブ・コントロールや買入れの微調整によって長期金利の急騰を一定程度抑制し得る構造がある点は、英国と大きく異なります。
年金・生保など国内機関投資家の国債保有がなお厚く、LDI型レバレッジ運用に依存した英国年金のような「短期でのマージンコール連鎖」が起きにくい点も相違です。
それでもリスクが顕在化し得る条件
財政規律への筋の通ったコミットメントが見えないまま、
・さらなる大型補正・防衛費拡大
・国債増発
・日銀の急速な利上げ・国債買入れ縮小
が重なると、「債券売り・円安加速・株安」が同時進行するリスクは高まります。
とくに海外投資家が「日本国債はインフレと財政の両面で懸念が高まった」と判断すると、日米欧の長期金利との差以上にリスクプレミアムを要求し、金利のボラティリティが跳ねる可能性があります。
実務的な見方のヒント
トラスショック型の「一週間で市場が崩れる」ような劇的展開より、数カ月〜数年かけたJGB利回りのじり高、円安・インフレ持続
を通じた「ゆっくり進む財政・金利ショック」の方が日本では現実的との見方が有力です。
ウォッチすべき指標としては、
・10年超(20・30・40年)のJGB利回りとスプレッド
・新発・増発の国債入札の応札状況(テールの拡大など)
・政府予算・補正予算の規模と税収見通し
・政府・日銀によるインフレ目標と財政健全化へのメッセージ
が挙げられます。
したがって、「英国と同じ轍をそのまま踏む」確率より、「財政・金利・為替のじわじわした不安定化」が日本流トラスショックとして現れる可能性を意識しておく、というスタンスが現実的だと考えられます。
【PE市場、プライベートクレジット市場の動向】
直近のPE市場は「ファンドレイズは弱いが投資とエグジットは持ち直し」、プライベートクレジット市場は「資金流入が続く高利回り資産」として拡大が続いています。
PE市場:ファンドレイズ減速、投資は高水準
2025年のグローバルPEファンドレイズ額は約4,800億ドルと前年比約13%減で、募資は引き続き鈍い一方、大手・実績豊富なGPへの「資金集中」が鮮明になっています。
取引面では、2025年のPE投資額は2025年第3四半期時点で累計約1.5兆ドルと、Q2の一時減速から再加速し、大型パブリック・トゥ・プライベート案件(米ゲーム・航空リースなど)が全体を押し上げています。
PEのエグジット・分配の状況
IPO再開やM&A市場の回復で、2022〜23年の「ディストリビューション・ドライ」からは徐々に脱しつつあり、「最悪期は過ぎた」とする機関投資家向けリサーチも増えています。
ただし、バリュエーション調整や金利水準を踏まえ、売却タイミングを選びながらの部分回復であり、中堅・小型ファンドやニッチ戦略では依然としてエグジットの出遅れが目立つ状況です。
プライベートクレジット:資金流入と「フライト・トゥ・クオリティ」
プライベートクレジットは2024年に約2,100億ドルのファンドレイズ、2025年上期だけで1,240億ドルを集めるなど、年ベースで2024年超えペースの資金流入が続いています。
サブ戦略では、シニア・セキュアード中心のダイレクトレンディングが全体の約6〜7割を占める一方、それ以外の戦略(ディストレスト、メザニンなど)はボリューム減少と「安全志向」による選別が強まっています。
リスク・与信環境
高金利長期化の影響で、借り手企業のインタレスト・カバレッジは低下し、PIK(金利の元本化)や期限延長を伴う「ライアビリティ・マネジメント」案件が増加しており、表面上のデフォルト率はまだ低いものの、クレジットの質にはばらつきが出ています。
一方で、シニア担保・強いコベナンツ・優良スポンサー案件を中心としたダイレクトレンディングは、レバレッジドローン、に対して約200〜300bp程度のイールドプレミアムを維持しており、オルタ投資家にとっては依然「相対的に魅力的な収益源」と位置づけられています。
2026年に向けた全体トーン
オルタナティブ全体のアウトルックでは、PE・プライベートクレジット・インフラ・不動産などのうち、特にプライベートクレジットとインフラが「安定キャッシュフロー+インフレ耐性」で高く評価されており、PEについては「選別色を強めつつも再加速フェーズ」に入るとの見方が多くなっています。
実務的には、LP側の資金配分は
PE:メガ/グロース/セカンダリーの一部に集中
プライベートクレジット:シニア・ダイレクトレンディング+一部オポチュニスティック
という「質とスケール重視」の傾向が強まっており、新興GPや高レバレッジ戦略には逆風が続いています。
2026年1月17日 土曜日