【株式市場の動き】
12月8日(月)~12日(金)の週は、日米ともに主要株価指数が総じて堅調で、日本はTOPIX・日経平均ともに上昇、米国はS&P500・ダウが小幅安、NASDAQがやや軟調という流れでした。
日本株式市場の動き
日経平均株価は12月12日終値で50,836.55となり、前週末から約0.7%の上昇でした。
TOPIXは12月12日終値が3,423.83で、週間では約1.8〜2.0%程度の上昇となり、過去最高水準を更新しました。
背景として、米FRBの利下げとその後の米株高を好感した買いが優勢となり、金融や輸出関連中心に幅広い銘柄が買われました。
米国株式市場の動き
ダウ平均は12月12日終値が48,458.05で、週初8日の47,739.32からみるとおおむね1〜1.5%程度の上昇幅にとどまりました(週間では小幅安〜横ばい圏の評価)。
S&P500は12月12日終値が6,827.41で、週初の6,846.51近辺からみるとわずかに下落し、週間では概ね▲0.3%前後のマイナスでした。
NASDAQ総合は12月12日終値が約23,200〜23,500台(例:23,195.17~23,488.87のレンジ)で、週を通してハイテク主導で調整色が強く、1%強の下落となりました。
この週は、利下げ決定後の金利動向とAI関連など大型テック株の利益確定売りが重なり、ハイテク比率の高いNASDAQが相対的に弱い動きとなった一方、景気敏感株やディフェンシブを含むダウ・S&P500は比較的下げが限定的でした。
【金利と為替の動き】
米国の金利動向
米10年国債利回りは、12月8日時点で約4.17%、9日に4.18%といった水準で推移し、その後11日に4.14%とわずかに低下するなど、4.1〜4.2%台でのレンジ内の動きでした。
FOMCは9〜10日に0.25%の利下げを実施したものの、先行きの追加利下げペースには慎重なトーンが示され、長期金利は急低下ではなく「やや上昇気味で高止まり」という反応になっています。
日本の金利動向
日本の10年国債利回りは12月8日に1.965%まで上昇し、2007年6月以来およそ18年ぶりの高水準を更新しました。
12月12日時点でも約1.96%と高止まりしており、インフレの持続や大型補正予算・国債増発、日銀の近い将来の利上げ観測が重なって、長期金利に上昇圧力がかかり続けています。
ドル円(USD/JPY)の動き
ドル円は12月8〜12日の間、概ね1ドル=155円前後を中心に、154円台後半〜156円近辺のレンジで推移した日が多く、高水準の円安は維持しつつも、米利下げ決定と日本金利上昇を受けて一時的に円高方向(ドル安・円高)へ振れる場面も見られました。
【来週の相場見通し】
日銀会合と日本の物価統計、米国の雇用・インフレ関連の遅延データが重なり、「金利と為替をにらみながら、ボラティリティは高めだが下値には押し目買いも入りやすい」という展開が想定されます。
日本株市場の見通し
最大のイベントは18〜19日の日銀金融政策決定会合で、市場は政策金利を0.5%→0.75%に引き上げる可能性をかなり織り込みつつあります。
すでに10年国債利回りが約2%まで上昇しており、「利上げはある程度織り込み済みだが、声明と植田総裁のトーン次第で、銀行・保険など金融株と輸出・グロース株で明暗が分かれる」展開になりやすい局面です。
TOPIX・日経平均とも、高値圏でのイベント待ちからスタートし、日銀が想定通り小幅利上げ+その後のペースに慎重な姿勢なら、金融株主導で指数は底堅いシナリオがメイン、一方「タカ派サプライズ(利上げペースを急がす示唆)」が出れば、円高・金利高を通じて指数全体の調整リスクが意識されます。
米国株市場の見通し
直近のFOMCで0.25%利下げが決定したものの、2026年の利下げ回数を巡り「FRB予測(1回)vs 市場(2回)」のギャップが残っており、来週公表される遅延していた雇用統計や11月CPI、11月小売売上高などが、このギャップを埋めるかどうかが焦点です。
直近ではAI関連を中心にナスダックが大きく調整する一方、ダウやバリュー株・金融株・素材など景気敏感株のパフォーマンスが良く、「グロースからバリュー・循環株へのローテーション」が進行中と見られます。
来週は、マクロ指標が市場予想通り〜やや弱めに収まれば「利下げ期待維持 → 長期金利横ばい〜やや低下 → S&P500・ダウは押し目買い優勢」、逆に強いインフレ・雇用指標が出れば「金利再上昇 → 既に高バリュエーションの米株に再調整圧力」という二方向のリスクが意識されます。
注目セクター
来週は「AI・半導体などハイテクは一旦調整継続リスク、金融・ディフェンシブ・一部景気敏感と日本の銀行株に物色がシフト」という構図がメインシナリオになりやすい状況です。
日本:利上げ局面での注目セクター
金融(銀行・保険)
日銀の0.75%利上げ観測と10年国債利回り2%前後という環境から、利ざや拡大が意識されるメガバンク・地方銀行、長期金利上昇の恩恵を受けやすい保険株は引き続き物色対象になりやすいと見られます。
内需ディフェンシブ
利上げと円高リスクを意識すると、電力・ガス、通信、食品・医薬品など景気感応度が相対的に低いセクターへの資金シフトも想定されます。
中長期でのエクスポージャー
構造改革と政策支援の文脈から、自動車(電動化・グローバル再編)、半導体・AI関連、ITサービス、防衛・インフラなどは、短期のボラティリティを許容できる前提で中長期の注目テーマとされています。
米国:バリュー・金融・ディフェンシブと“調整中ハイテク”
バリュー株・金融・小型株
直近はAI関連・大型テックの調整でナスダックが売られる一方、ダウ構成銘柄中心のバリュー株と金融株、小型株指数が相対的にアウトパフォームしており、「グロース→バリュー・小型」へのローテーションが示唆されています。
金利が高止まりしつつも利下げ方向にある局面では、銀行・保険・一部小売などの金利・景気敏感バリュー株が引き続き注目されやすいとの指摘があります。
ディフェンシブ(生活必需品・ヘルスケア)
AIバブル懸念とバリュエーション負担からハイテクが売られる中、生活必需品などディフェンシブセクターが物色され、S&Pの11セクターのうち消費安定(Staples)が上昇した日も報告されています。
調整局面のAI・大型テック
AIバブル懸念で半導体・AI関連が一斉安となっている一方、フェアバリュー比では一部のメガキャップ(例:AIインフラ・クラウド・サイバーセキュリティ銘柄)は割安に近づきつつあるとの評価も出ており、中長期投資家にとっては「拾い場候補」との見方があります。短期はイベント前後のボラティリティが高く、来週に関してはトレーディング前提のハイベータ枠としての位置づけが現実的です。
【PE、プライベートクレジット市場】
PE(プライベート・エクイティ)市場
ディール・エグジット
2024年からの回復が続き、2025年はM&A・IPOの再開でディールバリューはコロナ後で最も高い水準に接近しつつあります(Q1だけで約4,950億ドル、Q3までで約1.5兆ドル超など)。
一方で件数はパンデミック前より少なく、「メガディール中心・大型優良案件に資金が集中」という傾向が鮮明です。
ファンドレイズとセカンダリー
2025年YTD(9月時点)のグローバルPEファンドレイズは約4,560億ドルと、前年同期比で金額▲23%・本数▲13%と減少しており、3年連続の減少という統計も出ています。
プライマリーの厳しさを補う形で、2024〜25年にセカンダリー取引が過去最高近辺まで拡大し、「流動性確保と資産の持ち越し(GP主導セカンダリー、継続ファンド)」が大きなテーマになっています。
戦略とリターンドライバー
低レバレッジ・高金利環境を前提に、「マルチプル拡大ではなくオペレーショナルな価値創造」がリターン源泉という見方が主流で、特に中堅ミドルマーケット・成長株(グロースエクイティ)で妙味が大きいとするレポートが多いです。
プライベートクレジット市場
市場規模と成長
プライベートクレジット残高は2024年初に約1.5兆ドル、2029年に2.6兆ドルに達するとの試算があり、銀行規制強化・銀行融資の慎重化を背景に2025年も構造的な拡大トレンドが続いています。
2025年上期だけで約1,240億ドルの新規ファンドレイズが行われ、2024年通年を上回るペースとの指摘もあります。
収益性とリスク
変動金利ローンへの高金利が続いたことで、2025年もダイレクトレンディングを中心に高いキャリーが続き、レバレッジドローン市場の予想リターンは7.5〜8%程度といった見方があります。
ただし借り手サイドでは、インタレストカバレッジ低下やPIK(金利の元本繰入れ)の増加など「表面化しにくいストレス」の兆候もあり、ヘルスケアやコンシューマー・ディスクリショナリーなど一部セクターで業績二極化が指摘されています。
今後の方向性
FRBの漸進的な利下げとM&A・LBOの回復により、2026年にかけてディール・貸出ボリューム増加が見込まれる一方、スプレッドはややタイト化し、リターンは「まだ魅力的だが、与信選別がより重要」という環境が続くとの予測が多いです。
2025年12月13日 土曜日