世界の動き 2025年11月13日 木曜日

今日の一言
「JPモルガンへの巨大な罰金」(少し長いですが事件をまとめました)
 ドイツ金融監督庁(BaFin)は、2025年11月6日にJPモルガンSEに対し、マネーロンダリング対策の不備を理由に過去最高額となる4,500万ユーロ(約80億円)の制裁金を科した。問題の核心は、疑わしい取引の報告義務違反にある。
● 制裁の概要と背景
 対象機関:JPモルガンSE(JPモルガン・チェースのEU統括法人、フランクフルト拠点)
 制裁金額:4,500万ユーロ(約52.5百万ドル)
 違反内容:
 2021年10月4日〜2022年9月30日の間、疑わしい取引報告(SAR)を「遅延なく」提出しなかった。報告義務違反が「組織的かつ継続的」であったとBaFinは判断。
 法的根拠:ドイツのマネーロンダリング防止法(Geldwäschegesetz)に基づき、金融機関は疑わしい取引を即時にFIU(金融情報機関)へ報告する義務がある
● なぜ問題なのか?
 即時報告の重要性:FIUが迅速に捜査や資金凍結を行うためには、報告の「即時性」が不可欠。JPモルガンSEの不備は、内部監視体制の不備や報告プロセスの遅延に起因しており、結果としてドイツのAML(マネロン対策)体制の信頼性を損なうものとされた。
●制裁の意義と影響 
 BaFin史上最大の制裁金:これまでの記録(ドイツ銀行への4,000万ユーロ)を上回る。

 EU AMLA設立直前の象徴的措置:2025年7月にフランクフルトに設立されるEUの新たなAML監督機関(AMLA)を前に、ドイツ当局の姿勢強化を示す動きと解釈されている。
 JPモルガンの対応:
「過去の問題であり、当局の捜査を妨げた事実はない」とコメント。既に内部体制の強化と職員教育の徹底を実施済みと説明。
●今後の注目点
 JPモルガンは2026年にドイツでChaseブランドのデジタル銀行を展開予定であり、今回の制裁はレピュテーションリスク(評判リスク)としても注目されている。国際金融機関に対するローカル規制順守の重要性が改めて浮き彫りになった事例だ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.緊張地域での2件の爆殺事件
【記事要旨】
●インドとパキスタンで相次いだ爆破事件の概要
– 今週、インド(ニューデリー)とパキスタン(イスラマバード)で爆破事件が発生し、両国でそれぞれ約12人が死亡。
– 犯行の直接的関連性はないが、パキスタンではタリバンが犯行声明を出した。
– 両国間の緊張が再び高まり、5月の軍事衝突の再来が懸念されている。
●インドの対応と背景
– インドは慎重な姿勢を保ちつつ、デリーの爆発をテロとして捜査中。犯人は未特定。
– カシミールでの宗教的虐殺事件後、モディ首相はパキスタンへの軍事攻撃を実施し、今後のテロは戦争行為とみなすと宣言。
– インドはISなど複数のテロ組織を警戒している。
●パキスタンの反応と主張
– イスラマバードの裁判所前で自爆テロが発生。パキスタン政府はインドの関与を主張。
– タリバン政権がインドと連携しているとする見方が強まり、国内の暴力行為の責任をインドに転嫁。
– シャリフ首相は複数の攻撃が「インドの扇動」によるものと非難。インド外務省はこれを否定。
●地域情勢と外交の行き詰まり
– 両国の外交関係は近年最低水準。軍・政治指導者の強硬姿勢が目立つ。
– 一部の識者は冷静さを呼びかけており、全面戦争の可能性は低いとする見方も。
– ただし、春の衝突ではトランプ大統領の介入がなければ戦争に発展していた可能性があり、事態の急速なエスカレーションには警戒が必要。
【コメント】
 南アジアで核兵器を保有する2大国の緊張関係の激化だ。トランプに何かの効力があるなら、また出張ってもらおう。平和賞にさらに近づく。

2.エプスタイン被告のメール、トランプ大統領が自身の行為を知っていたと主張
【記事要旨】
 民主党議員らは昨日、刑務所で死亡した性犯罪者ジェフリー・エプスタイン被告が、トランプ大統領が自身の性的人身売買組織の被害者の一人と「私の家で何時間も過ごした」と書いたメールを公開した。あるメッセージの中で、エプスタイン被告はトランプ大統領が「少女たちのことを知っていた」と主張していた。
 数時間後、共和党議員らはエプスタイン被告の遺産管理団体から2万3000ページに及ぶ膨大な文書を公開した。共和党は、エプスタイン被告と不和になるまで友人だったトランプ大統領を守ろうとしてきた。しかし同時に、エプスタイン被告と権力者との交流の完全開示を求める有権者の要求にも直面している。
 トランプ大統領は、エプスタイン被告の性的人身売買組織への関与やその知識を断固として否定している。ホワイトハウス報道官は昨日、民主党が「トランプ大統領を中傷するために虚偽の物語をでっち上げようとしている」と非難した。
【コメント】
 これだけ証拠がそろってもトランプは言い逃れることができるのだろうか。たとえ、罪に問われなくても、MAGA層からの支持の低下はまぬかれないとは思う。

其の他の記事
・イスラエルは、ガザ地区北部への国境検問所を再開したと発表した。これは、同地区への支援物資の搬入を目指す団体からの長年の要請だった。
・高市早苗首相は、「過労死death from overwork」の爪痕が残る日本で午前3時に会談を予定したことで批判を浴びた。
・イスラエル大統領は、トランプ大統領から、汚職罪で裁判にかけられているベンヤミン・ネタニヤフ首相の恩赦を求める書簡が届いたと述べた。

2025年11月13日 木曜日

世界の動き 2025年11月12日 水曜日

今日の一言
「社会民主主義」
 ニューヨークの新市長マムダニ氏は自身を社会民主主義者と標榜している。トランプは彼を共産主義者と批判しているが、どう違うのだろうか。
 社会民主主義とは、議会を通じて資本主義社会の矛盾を解決し、段階的に社会主義を実現しようとする思想だ。共産主義のプロレタリア独裁を否定し、社会保障制度の充実や公正な市場経済の実現、民主的な政策運営を重視する点が特徴だ。
 主な特徴は以下だ。
・議会主義: 共産主義のように革命ではなく、議会を通じた社会政策や民主的な手段で社会変革を目指す。
・混合経済: 公有制と私有制企業が共存する混合経済を肯定する。
・社会保障の重視: 福祉や医療、教育などの公共サービスを充実させ、人々の生活条件の向上を図る。
・市場経済の調整: 市場の機能を認めつつも、格差を放置せず、社会的な規制や監視を通じて公正な市場経済を目指す。
・階級の融和: 階級間の対立を激化させるのではなく、社会の各階級を結束させ、共同の利益を追求する。
 ドイツを中心に一時は欧州を席巻した社会民主主義は衰退してきた。理由はいくつか考えられる。
・冷戦終結と共産主義の終焉:
 1989年の東欧革命と1991年のソ連崩壊により、社会民主主義が目標としてきた平等社会の実現を目指すモデルが、共産主義の挫折と結びつけられるようになった。
・共産主義国家の行き詰まり(特権階級による富の独占、官僚主義、政治的弾圧など)が社会主義全体への不信感につながった側面もある。
・グローバル化への対応の難しさ:
 グローバル化は、資本の移動を容易にし、国内産業の競争力を低下させた。
 社会民主主義が重視してきた、国家による産業保護や再分配といった政策が、グローバルな市場経済の中で制約を受けるようになった。
 経済成長を優先するネオリベラリズム(新自由主義)の台頭と、福祉国家への財政的負担増大も、衰退に拍車をかけた。
・中道左派政党の変化:
 社会民主主義を掲げていた中道左派政党の多くが、市場経済を容認し、財政規律を重視する「第三の道」やネオリベラリズム的な政策へと転換した。
 これは、伝統的な社会民主主義を支持してきた層からの支持を失い、労働者階級という伝統的な支持基盤を弱体化させる結果につながった。
 米国ではトランプの強権政治への対抗策として社会民主主義が再評価されているようだ。日本では参政党による右巻きのブームが発生している。庶民の多くが生活苦を感じる現在、清新なリーダーが率いる社会民主主義政党が注目される時期かと思う。既存政党ではれいわ新選組が近いようだが、今一つ伸びていない。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.女性指導者と右派
【記事要旨】
 ●高市早苗氏の登場とG7の文脈
– 高市氏の自民党党首当選は、日本で約250年ぶりの女性指導者誕生という歴史的快挙。
– G7ではイタリアのメローニ首相と並び、女性指導者は2人に。
– 過去のG7女性指導者の多くは右派出身で、左派はフランスのクレソン氏のみ。
 ●女性指導者の少なさと政治的傾向
– 世界的に女性指導者は少数で、国や時期が異なるため共通パターンの特定は困難。
– G7以外では左派女性指導者も存在(メキシコ、デンマークなど)。
– 先進国では左派政党が女性指導者を輩出できていない傾向がある。
 ●左派の矛盾と右派の台頭
– 左派はジェンダークオータ制など女性進出を推進してきたが、指導者には結びついていない。
– 右派の女性指導者(高市氏、メローニ氏)は、伝統的価値観を支持しつつも、アウトサイダーとして台頭。
 ●政治危機と女性の登場
– 多くの女性指導者は政治的混乱期に登場(サッチャー、メルケル、メイなど)。
– 現代の政治危機の常態化が、異質な存在としての女性指導者に信頼を与える構造を生んでいる。
 ●今後の展望と懸念
– 右派女性議員の増加は鈍化傾向。
– フランスでは極右のルペン氏が高支持率を維持し、2027年の大統領選が注目される。
【コメント】
 日本の地方の首長選では左派系の女性首長も誕生している。山形県知事、仙台市長、杉並区長などがそうだ。国政の自民党のように二世、三世議員が独占する世襲政治から、地方での変化を期待したい。

2.パキスタンの首都で死者を出した攻撃
【記事要旨】
 昨日、イスラマバードの裁判所前で爆弾が爆発した。首都では過去10年間、同様の攻撃はほとんど発生していなかったが、少なくとも12人が死亡、27人が負傷した。
 パキスタン政府に対して激しい反乱を続けているパキスタン・タリバンが犯行に関与したかどうかについては、情報が錯綜している。あるアナリストは、厳重な警備体制が敷かれたイスラマバードでの今回の攻撃は、パキスタンの治安にとって不吉な兆候だと警告した。
 この攻撃は、ニューデリーの地下鉄駅近くで少なくとも8人が死亡した爆発の翌日に発生し、警察はテロ攻撃の可能性もあるとして捜査している。2つの攻撃の関連性を示す証拠はないが、カシミールでのテロ攻撃をきっかけに今年発生したインドとパキスタンの軍事衝突を受け、緊張が高まっている。
【コメント】
 インドとパキスタンで相次いで爆発とくれば、イスラムとヒンズー原理主義の暗躍かと思いがちだが、タリバンという要素もあった。テロの激化を懸念する。

其の他の記事
・イラク国民は、次期政権がイラン支援民兵の武装解除を行うことを望んでいる米国が注視する選挙で、新たな議会を選出した。
・米国上院は、イラク史上最長の政府閉鎖を終わらせる法案を可決し、下院に送付した。
・ソフトバンクは、人工知能(AI)への新たな投資資金を調達するため、保有するNVIDIAの株式すべてを58億ドルで売却した。【コメント:売り時を捉えた印象だ。孫さんはさすがだ】

・日本を代表する映画スターの一人で、「乱」での演技で知られる仲代達矢さんが92歳で亡くなった。

2025年11月12日 水曜日

世界の動き 2025年11月11日 火曜日

今日の一言
「 ペルソナ・ノン・グラータ(persona non grata)」
 この言葉は、ラテン語で「好ましからざる人物」という意味である。
– 外交関係に関するウィーン条約(1961年)第9条に基づき、受け入れ国が外交官の受け入れを拒否または撤回する際に使う正式な表現だ。指定する側は、指定する理由を述べる必要はない。
– 指定された外交官は通常、一定期間内に退去しなければならず、退去しない場合は外交特権を失う可能性がある。
 中国の中日大阪公使の「汚い首を切る」という発言をめぐり、これを適用すべしという議論が起きている。高市さんは首相でなければ当然そうした議論を展開していたはずだ、
 しかし、いざ、首相になると慎重な対応が必要になる。中国は、日本の外交官に同じ対応をすることは第一歩で、駐日公使を英雄視する論調を中国内で広める、対日世論をあおり日本企業や日本製品のボイコットにつながることする、といった対応が容易に予想できる。
 2024年の日本の名目GDPは609兆円(約4.0兆米ドル)、中国の名目GDPは134兆9084億元(約18.7兆米ドル)で、中国は日本の4.5倍だ。2010年に追い抜かれてから、15年間でこれだけ差をつけられた。“Wealth attracts many friends.” という箴言がある。Global Southで中国が頼られる所以だ。
 「臥薪嘗胆」という言葉もある。日本が再び「世界の真ん中で咲き誇る」まで、腹の虫を収める対応が必要な時期だ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.BBCに対する批判
【記事要旨】
・幹部辞任の直接原因
– BBCが1月6日の米議会襲撃前のトランプ大統領の演説を誤解を招く形で編集したことが発覚。
– これにより、BBCのティム・デイビー局長とニュース部門CEOデボラ・ターネスが辞任。
・背景にある構造的問題
– BBCは世界的な公共放送局として、政治的偏向(特に左派寄り)や報道姿勢をめぐり、英国内外から継続的な批判を受けている。
– 特に保守派や外国政府(米国、インドなど)との摩擦が多く、報道の中立性が問われている。
・過去の論争と批判
– 性的不品行への対応遅れ、難民政策批判キャスターの停職、料理番組司会者の不適切行動への対応不足など、複数のスキャンダルがBBCを揺るがした。
– イスラエル・ハマス戦争関連の報道では、現地のナレーターの父親がハマス関係者だったことが問題視され、番組配信停止に。
– グラストンベリー・フェスティバルでの反イスラエル発言の放送継続も批判の的に。
・トランプ政権との関係
– トランプ大統領はBBCの報道姿勢に強い不満を示し、ナイジェル・ファラージ氏との会談でもBBC批判を展開。
– 英国内でもボリス・ジョンソン前首相ら保守派がBBCの改革や解体を求めている。
・信頼と今後の展望
– ピュー・リサーチによると、BBCは米国の主要ネットワークよりも視聴者からの信頼が高い。
– 英国政府はBBCへの支援を条件付きで継続する姿勢だが、スターマー首相はトランプとの対立を避けるため慎重な対応を迫られている。
– メディア専門家は「BBCは現状をリセットし、政治的偏向の克服に取り組むべき」と提言。
【コメント】
 ​​幹部らが辞任したのは、BBCが1月6日の米国議会議事堂暴動に先立つトランプ大統領の演説を誤解を招く形で編集し、実際には約50分離れた発言をつなぎ合わせていたという、流出したメモを受けたためだ。大きな印象操作を報道で行ったことになり、辞任に値すると思う。

2.シリア大統領、ホワイトハウスで歓迎される
【記事要旨】
 シリアのアハメド・アル=シャラ大統領は昨日、トランプ大統領と会談した。シリアの国家元首としてホワイトハウスを訪問したのは初めてだ。
 かつて米国からテロリストに指定されたイスラム主義の元反政府勢力指導者であるアル=シャラ氏は、シリアを国際社会に復帰させ、14年近く続いた内戦を経て国を再建したいと考えている。トランプ大統領は彼を温かく迎え入れ、対シリア制裁の解除を約束した。
 イラクで米兵を殺害しようと企んだジハード主義者から、今日の洗練された融和主義の指導者へと変貌を遂げたアル=シャラ氏の転換がどれほど完全なものなのか疑問視する人もいる。
【コメント】
 ネズミを捕るのは良い猫だ。同氏の手腕に期待したい。

其の他の記事
・ニューデリーの夕方のラッシュアワー時に混雑した地区で車が爆発し、少なくとも8人が死亡した。
・タイは、係争中の国境地帯で地雷が爆発し、タイ兵士2人が負傷したことを受け、カンボジアとの和平交渉を中断した。
・米国上院は、史上最長の政府閉鎖を終わらせる法案を採決するとみられていた。
・ウクライナの汚職対策当局は、国営原子力エネルギー会社が関与する大規模な賄賂詐欺を摘発したと発表した。
・米国最高裁判所は、2015年に同性婚を合法化する画期的な判決の覆しを検討するよう求める申し立てを却下した。

2025年11月11日 火曜日

世界の動き 2025年11月10日 月曜日

今日の一言
「ドバイが一番」 以下Bloombergの記事より。
  ドバイが富裕層に最も魅力的な都市に選出
 不動産会社サヴィルズの調査によると、世界30都市の中でアラブ首長国連邦(UAE)のドバイが、富裕層にとって最も暮らしやすい都市として1位に選ばれた。 Top5は、ドバイ、ニューヨーク、シンガポール、香港、アブダビになった。東京は24位で、アジアの都市では、北京14位、上海16位、バンコク17位の後塵を拝している。
 ドバイが選ばれる理由:
– 税制優遇:相続税・キャピタルゲイン税・資産税がゼロ
– 家族向けインフラ:教育・医療などが充実
– 高い安全性
– 「ゴールデンビザ」制度:約8300万円の投資で10年間の居住権と低課税が得られる
 世界の富裕層動向:
– 世界の富は2022年の低迷から回復中
– アジア太平洋地域が最も急速に成長
– 富裕層の移住先は伝統的金融都市からテクノロジー都市へ移行中(例:深圳(27位)、ベンガルール(ランク外)
🏆 ランキング上位都市の特徴:
– ドバイとニューヨーク(2位)は、ビジネス環境・税制・地政学的安定性で高評価
– ロンドン(9位)はライフスタイル面で評価されるも、相続税の高さが足かせとなり順位を下げた
 東京はライフスタイルは世界で上位だが、相続税の高さが順位を大きく下げる要因だ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.気候変動に米国抜きで戦えるか
【記事要旨】
 過去10年で排出量の増加が鈍化し、気温上昇の予測も改善傾向にあるものの、アメリカの不参加や政策転換は世界の気候変動対策に大きな影響を与えている。
 一方、中国は再生可能エネルギー分野で世界をリードし、安価なクリーンテクノロジーの輸出によって多くの国の脱炭素化を後押ししている。
 しかし、気温上昇は続き、特に貧しい国々や脆弱な人々への支援が不足している現状も指摘されています。
 結論として、アメリカの協力がなくても世界は行動を起こす必要があり、気候変動への適応と対策は全人類の課題である。
【コメント】
 米国だけではない。中国、ロシア、日本の首脳は出席しない。オーストラリア、インドネシア、トルコの首脳も同様だ。
 個人的なコメントで少数派だ。Co2と気温の上昇は、因果関係だろうか。いまだに、単なる相関関係だと思えてならない。

2.超大型台風がフィリピンを襲った
【記事要旨】
 フィリピンを脅かす今年最大の超大型台風に分類される台風フンウォンは、最大風速195キロメートルでルソン島本島に上陸した。100万人以上が自宅から避難した。この台風は、200人以上の死者を出した台風カルマエギからわずか1週間後に発生した。
【コメント】
 これも温暖化の影響だろうか。

其の他の記事
・BBCの局長とニュース担当最高責任者は、ドキュメンタリー番組がトランプ大統領が1月6日の攻撃を扇動したと誤解を招くように編集されていたとの疑惑を受け、辞任した。
・昨日、米国の主要空港で1,600便以上が欠航となった。ショーン・ダフィー運輸長官は「事態はさらに悪化するだけだ」と述べた。
・ハマスは、2014年からパレスチナ武装勢力に拘束されていたイスラエル兵、ハダル・ゴールディン中尉の遺体を引き渡した。
・イラン当局は、深刻な干ばつが深刻化する中、テヘランで水の配給を開始した。

2025年11月10日 月曜日

AIサイクルと内部監査

AIの導入は業界を問わず加速し続けており、効率性の向上、意思決定の強化、新たな収益源の創出が期待されている。しかしながら、組織はますますAIの運用リスクにさらされており、適切に管理されなければ、財務損失、規制上の罰則、風評被害、倫理違反につながる可能性がある。

これらのリスクは導入段階にとどまらず、データ収集から継続的なモニタリングまで、AIライフサイクルのあらゆる段階に浸透している。効果的なAIガバナンスを実現するには、これらのリスクを包括的に理解し、積極的なリスク管理態勢を構築することが不可欠だ。

ライフサイクルの概要
AIライフサイクルは、以下の5つの重要な段階に分類できる。

1.データ収集と準備:
データ収集と準備段階では、組織はAIのパフォーマンスとコンプライアンスに重大な影響を与える可能性のある複数の運用リスクに直面する。不正確、不完全、または古いデータセットなど、データの品質と整合性が低い場合、モデルの有効性に直接的な影響を及ぼす。また、学習データに埋め込まれた歴史的または人口統計的なバイアスが差別的な結果を生み出す場合、バイアスと公平性に関する懸念が生じる。さらに、個人情報や機密情報の不適切な取り扱いは企業を規制リスクにさらし、保管・転送時のデータセキュリティが不十分だと、信頼が損なわれ、罰則につながる可能性がある。これらのリスクを軽減するために、組織は厳格なデータガバナンス・フレームワークを導入し、データ収集時点でバイアスと公平性の評価を実施し、匿名化または仮名化技術を適用して機密情報を保護する必要がある。

2.モデル開発とトレーニング:
モデル開発とトレーニングのフェーズでは、AIシステムの信頼性と倫理的誠実性を損なう可能性のあるリスクに対処する必要がある。トレーニング・データセットに不均衡や欠陥がある場合、アルゴリズムのバイアスが生じ、差別的な結果が生じる可能性がある。また、過剰適合や不足適合はモデルの精度と一般化可能性を低下させる可能性がある。適切なライセンスを取得せずにサードパーティのコードやデータを使用すると知的財産リスクが発生し、不十分な文書化は説明責任と再現性を阻害する可能性がある。リスク軽減戦略には、堅牢なモデル検証技術の適用、継続的なバイアス監査の実施、モデル開発の徹底的な文書化、知的財産およびライセンス要件への準拠の維持などがある。

3.検証とテスト:
検証とテストの段階では、組織はモデルのパフォーマンスと信頼性に影響を与える重大なリスクに直面する。テストが不十分だと、エラーや意図しない動作が本番環境に波及する可能性がある。また、多様なシナリオにおけるストレステストが不十分だと、システムがエッジケースに対して脆弱になる可能性がある。モデルを適切に検証しないと、規制遵守が損なわれ、利害関係者の信頼を損なう可能性もある。効果的な戦略としては、包括的な検証プロトコルの実装、シナリオベースのストレステストの実施、独立した監査やピアレビューの実施、説明責任と規制上の目的のためのテスト結果の明確な文書化の維持などが挙げられる。

4.導入と統合:
導入と統合の段階では、運用の安定性、システムの互換性、そして実世界におけるパフォーマンスに関連するリスクが生じる。統合の失敗はビジネスプロセスを混乱させる可能性があり、リアルタイム監視なしで導入されたモデルはエラーや意図しない決定を引き起こす可能性がある。組織は、敵対的な攻撃や不正アクセスへの露出などのセキュリティリスクにも直面しており、継続的な規制要件へのコンプライアンスを確保する必要がある。リスク軽減策としては、段階的なロールアウト戦略、継続的なパフォーマンスとセキュリティの監視、堅牢なアクセス制御の実装、必要に応じてAIシステムを更新またはロールバックするための明確な手順の確立などが挙げられる。

5.監視と保守:
監視と保守の段階では、モデルの有効性、倫理遵守、そして利害関係者の信頼を維持するために継続的な監視が不可欠である。モデルのドリフトが発生することがある。
データ分布の変化に伴い、パフォーマンスの低下につながるだけでなく、出力が定期的に監査されていない場合、新たなバイアスが時間の経過とともに発生する可能性がある。また、監視が不十分な場合、エラーが気付かれずに継続すると、規制違反や評判の低下につながる可能性がある。組織は、継続的なパフォーマンス監視を導入し、バイアスと公平性の定期的な監査をスケジュールし、更新と介入の文書を維持し、フィードバックループを実装することで、本番環境におけるモデルの精度と信頼性を継続的に向上させる必要がある。

上記を踏まえ、AIライフサイクルにおいて内部監査が注意すべきポイントを以下にまとめて見たい。
________________________________________
AIライフサイクルにおける内部監査の注意ポイント
●ライフサイクル全体でのリスク監視
• AIの運用リスクは、データ収集から監視・保守まで全段階に及ぶ。
• 継続的な監視とガバナンス体制の構築が不可欠。

1.データ収集・準備段階
• データ品質・整合性の確保:不正確・不完全なデータはモデルの有効性を損なう。
• バイアス・公平性の評価:学習データに潜むバイアスの検出と対策。
• 個人情報・機密情報の管理:適切な匿名化・セキュリティ対策の実施。

2.モデル開発・トレーニング段階
• アルゴリズムのバイアス監査:不均衡なデータや過剰適合・不足適合のリスク。
• 知的財産・ライセンス遵守:サードパーティ資源の利用時はライセンス確認。
• 文書化・説明責任:開発過程の記録と再現性の確保。

3.検証・テスト段階
• 包括的な検証プロトコル:多様なシナリオでのストレステスト。
• 独立監査・ピアレビュー:第三者による評価と透明性の確保。
• テスト結果の文書化:説明責任と規制対応のための記録。

4.導入・統合段階
• 運用安定性・互換性の確認:統合失敗による業務混乱リスク。
• リアルタイム監視体制:エラーや意図しない決定の早期発見。
• セキュリティ対策:アクセス制御・敵対的攻撃への備え。

5.監視・保守段階
• モデルドリフト・バイアスの定期監査:パフォーマンス低下や新たなバイアスの発生リスク。
• 継続的なパフォーマンス監視:異常検知とフィードバックループの構築。
• 監査証跡・文書化:透明性と規制遵守の促進。

●ガバナンス・組織体制
• 明確な所有権・説明責任の割り当て:ガバナンスギャップによるリスク増幅防止。
• 人材育成・専門知識の確保:AI倫理・説明可能性・セキュリティ分野のスキル強化。
• サードパーティ依存リスク管理:クラウドや外部モデル利用時の脆弱性対策。
• 規制対応・コンプライアンス:法令の変化に迅速に適応する体制。

総括
内部監査では、AIライフサイクルの各段階で発生しうるリスクを網羅的に把握し、ガバナンス・監視・文書化・人材育成・規制対応など多面的な観点からチェックすることが重要だ。これにより、AIシステムの信頼性・透明性・コンプライアンスを維持し、組織のレジリエンスを高めることができる。

2025年11月9日 日曜日