AIサイクルと内部監査

AIの導入は業界を問わず加速し続けており、効率性の向上、意思決定の強化、新たな収益源の創出が期待されている。しかしながら、組織はますますAIの運用リスクにさらされており、適切に管理されなければ、財務損失、規制上の罰則、風評被害、倫理違反につながる可能性がある。

これらのリスクは導入段階にとどまらず、データ収集から継続的なモニタリングまで、AIライフサイクルのあらゆる段階に浸透している。効果的なAIガバナンスを実現するには、これらのリスクを包括的に理解し、積極的なリスク管理態勢を構築することが不可欠だ。

ライフサイクルの概要
AIライフサイクルは、以下の5つの重要な段階に分類できる。

1.データ収集と準備:
データ収集と準備段階では、組織はAIのパフォーマンスとコンプライアンスに重大な影響を与える可能性のある複数の運用リスクに直面する。不正確、不完全、または古いデータセットなど、データの品質と整合性が低い場合、モデルの有効性に直接的な影響を及ぼす。また、学習データに埋め込まれた歴史的または人口統計的なバイアスが差別的な結果を生み出す場合、バイアスと公平性に関する懸念が生じる。さらに、個人情報や機密情報の不適切な取り扱いは企業を規制リスクにさらし、保管・転送時のデータセキュリティが不十分だと、信頼が損なわれ、罰則につながる可能性がある。これらのリスクを軽減するために、組織は厳格なデータガバナンス・フレームワークを導入し、データ収集時点でバイアスと公平性の評価を実施し、匿名化または仮名化技術を適用して機密情報を保護する必要がある。

2.モデル開発とトレーニング:
モデル開発とトレーニングのフェーズでは、AIシステムの信頼性と倫理的誠実性を損なう可能性のあるリスクに対処する必要がある。トレーニング・データセットに不均衡や欠陥がある場合、アルゴリズムのバイアスが生じ、差別的な結果が生じる可能性がある。また、過剰適合や不足適合はモデルの精度と一般化可能性を低下させる可能性がある。適切なライセンスを取得せずにサードパーティのコードやデータを使用すると知的財産リスクが発生し、不十分な文書化は説明責任と再現性を阻害する可能性がある。リスク軽減戦略には、堅牢なモデル検証技術の適用、継続的なバイアス監査の実施、モデル開発の徹底的な文書化、知的財産およびライセンス要件への準拠の維持などがある。

3.検証とテスト:
検証とテストの段階では、組織はモデルのパフォーマンスと信頼性に影響を与える重大なリスクに直面する。テストが不十分だと、エラーや意図しない動作が本番環境に波及する可能性がある。また、多様なシナリオにおけるストレステストが不十分だと、システムがエッジケースに対して脆弱になる可能性がある。モデルを適切に検証しないと、規制遵守が損なわれ、利害関係者の信頼を損なう可能性もある。効果的な戦略としては、包括的な検証プロトコルの実装、シナリオベースのストレステストの実施、独立した監査やピアレビューの実施、説明責任と規制上の目的のためのテスト結果の明確な文書化の維持などが挙げられる。

4.導入と統合:
導入と統合の段階では、運用の安定性、システムの互換性、そして実世界におけるパフォーマンスに関連するリスクが生じる。統合の失敗はビジネスプロセスを混乱させる可能性があり、リアルタイム監視なしで導入されたモデルはエラーや意図しない決定を引き起こす可能性がある。組織は、敵対的な攻撃や不正アクセスへの露出などのセキュリティリスクにも直面しており、継続的な規制要件へのコンプライアンスを確保する必要がある。リスク軽減策としては、段階的なロールアウト戦略、継続的なパフォーマンスとセキュリティの監視、堅牢なアクセス制御の実装、必要に応じてAIシステムを更新またはロールバックするための明確な手順の確立などが挙げられる。

5.監視と保守:
監視と保守の段階では、モデルの有効性、倫理遵守、そして利害関係者の信頼を維持するために継続的な監視が不可欠である。モデルのドリフトが発生することがある。
データ分布の変化に伴い、パフォーマンスの低下につながるだけでなく、出力が定期的に監査されていない場合、新たなバイアスが時間の経過とともに発生する可能性がある。また、監視が不十分な場合、エラーが気付かれずに継続すると、規制違反や評判の低下につながる可能性がある。組織は、継続的なパフォーマンス監視を導入し、バイアスと公平性の定期的な監査をスケジュールし、更新と介入の文書を維持し、フィードバックループを実装することで、本番環境におけるモデルの精度と信頼性を継続的に向上させる必要がある。

上記を踏まえ、AIライフサイクルにおいて内部監査が注意すべきポイントを以下にまとめて見たい。
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AIライフサイクルにおける内部監査の注意ポイント
●ライフサイクル全体でのリスク監視
• AIの運用リスクは、データ収集から監視・保守まで全段階に及ぶ。
• 継続的な監視とガバナンス体制の構築が不可欠。

1.データ収集・準備段階
• データ品質・整合性の確保:不正確・不完全なデータはモデルの有効性を損なう。
• バイアス・公平性の評価:学習データに潜むバイアスの検出と対策。
• 個人情報・機密情報の管理:適切な匿名化・セキュリティ対策の実施。

2.モデル開発・トレーニング段階
• アルゴリズムのバイアス監査:不均衡なデータや過剰適合・不足適合のリスク。
• 知的財産・ライセンス遵守:サードパーティ資源の利用時はライセンス確認。
• 文書化・説明責任:開発過程の記録と再現性の確保。

3.検証・テスト段階
• 包括的な検証プロトコル:多様なシナリオでのストレステスト。
• 独立監査・ピアレビュー:第三者による評価と透明性の確保。
• テスト結果の文書化:説明責任と規制対応のための記録。

4.導入・統合段階
• 運用安定性・互換性の確認:統合失敗による業務混乱リスク。
• リアルタイム監視体制:エラーや意図しない決定の早期発見。
• セキュリティ対策:アクセス制御・敵対的攻撃への備え。

5.監視・保守段階
• モデルドリフト・バイアスの定期監査:パフォーマンス低下や新たなバイアスの発生リスク。
• 継続的なパフォーマンス監視:異常検知とフィードバックループの構築。
• 監査証跡・文書化:透明性と規制遵守の促進。

●ガバナンス・組織体制
• 明確な所有権・説明責任の割り当て:ガバナンスギャップによるリスク増幅防止。
• 人材育成・専門知識の確保:AI倫理・説明可能性・セキュリティ分野のスキル強化。
• サードパーティ依存リスク管理:クラウドや外部モデル利用時の脆弱性対策。
• 規制対応・コンプライアンス:法令の変化に迅速に適応する体制。

総括
内部監査では、AIライフサイクルの各段階で発生しうるリスクを網羅的に把握し、ガバナンス・監視・文書化・人材育成・規制対応など多面的な観点からチェックすることが重要だ。これにより、AIシステムの信頼性・透明性・コンプライアンスを維持し、組織のレジリエンスを高めることができる。

2025年11月9日 日曜日

週間市場動向 2025年11月3日~8日 備忘録

【株式市場動向】
 11月3日から7日までの米国および日本の株式市場は、両市場とも主要指数が下落し、調整色が強まった週となりました。代表的な指数(NYダウ、NASDAQ総合、S&P500、日経平均225、TOPIX)の終値と週間騰落率は以下の通りです。​

米国市場はAI関連やハイテク中心に調整売りが入り、NASDAQ、S&P500ともに大きく下落。​

日本市場も連休明けの売り先行と米国株安を受け、半導体・AI関連を中心に大幅安。日経平均は節目の5万円を割り込みました。​

TOPIXも日経平均同様調整色が強く、個別物色は一部堅調ながら指数全体では軟調となっています。

主要指数一覧
指数名 週間終値 前週比騰落率
NYダウ 46,912.00 -1.21% ​
NASDAQ総合 23,053.99 -3.04% ​
S&P500 6,728.80 -1.63% ​
日経平均225 50,276.37 -4.07% ​
TOPIX 3,597.74 -3.12% ​

今週(11月10日~14日)は米国・日本ともに重要な経済指標と主要企業決算が予定されており、市場は不安定な値動きが続く見込みです。注目セクターはAI・半導体分野、防衛・インフラ関連、米国では高配当株やサイバーセキュリティ企業が注目されています。​

主要イベント
米国:CPI(消費者物価指数)、小売売上高、PPI(卸売物価指数)発表、政府機関閉鎖リスク、シスコ・システムズの決算等。​

日本:ソフトバンクG(連結決算)、三菱瓦斯化学、西松建設の決算。​

中国:「独身の日」(11月11日)消費拡大がテーマに。​

市場の動き予想
米国はインフレ指標の結果次第で金利動向が左右され、依然としてハイテク株の調整が続く可能性。​

日本市場は米国株に連動しつつも、日経平均は48,000~51,000円のレンジで不安定な動き。​強気は影を潜め弱気の虫が増加中。

決算発表による個別物色、エネルギー政策や政府支援など政策テーマ企業に資金が集まりやすい。​

注目セクター
AI・半導体関連(国内外)​
ディフェンシブ銘柄(医薬品、インフラ、防衛関連)​
サイバーセキュリティ・デジタル化・クラウド(米国中心)​
エネルギー(再生可能、地熱、電力関連)​

注目銘柄
銘柄名 市場テーマ コメント
ソニーグループ エンタメ・知財支援 政府支援増額期待・アニメ/コンテンツ関連​
三菱瓦斯化学 地熱・エネルギー 地熱推進政策の恩恵・天然ガス製品​
西松建設 建設・インフラ ドローン活用による効率化・インフラ保全​
セールスフォース AI・クラウド 業務デジタル化・先進IT企業(米国)​
クラウドストライク サイバーセキュリティ IT安全・成長期待(米国)

これらの要素から今週は指数先導の乱高下・イベント/決算による個別銘柄への注目、再生エネルギーや防衛・DX分野の企業が材料視される展開となる可能性が高いです能性が高いです。

【金利。為替の動き】
 2025年11月のドル円為替レートは154円前後で推移しており、依然として高水準の円安傾向が続いています。背景には日米金利差の拡大があります。米FRBはここ2回の会合で0.25%ずつ連続利下げを実施し現在3.75~4.00%ですが、日銀は10月に政策金利を0.5%で据え置き、6会合連続で追加利上げを見送っています。​

為替・金利の現在の動き
ドル円は11月5日時点で154円前後、TTSで154.49円・TTBで152.49円となっています。​

近時一時160円を突破したものの、10月以降は150~155円台で比較的安定しています。​

米国は利下げ局面に入りましたが、日米金利差は依然大きく、円の上昇圧力は弱い状況が続いています。​

日銀はインフレ目標と経済不透明感を理由に、直近の利上げは見送っているため、金利差による円安が持続しています。​

円安に歯止めがかかる条件
米国の利下げペースが今後さらに加速し、政策金利差が縮小する場合。​
日銀が予想外に早期または大幅な利上げに踏み切った場合。ただし12月の日銀会合でも利上げの可能性は低いとの見方が優勢です。​
日本の通貨当局による為替介入や円安進行への“けん制”発言が続いており、155円台付近では介入警戒感が高まっています。​

米国経済の減速や政府閉鎖リスク台頭により、リスクオフの円買いが強まる場合も転換要因となります。​

今後の見通し
専門家や金融機関は2025年末時点でドル円が140円台半ばへとやや円高方向に戻るシナリオを挙げていますが、決定的な転換には“日米金利差の縮小”と“日銀の政策変更”が不可欠です。​

日米双方の金融政策やインフレ・雇用統計発表が短期的な急変動をもたらす可能性もあるため、注目が集まっています。​

現時点では円安歯止めの決定打が乏しく、日銀の政策転換・米国の急速な利下げが顕在化しない限り、円安基調が続くとみられていますいます。

【PE,プライベートクレジット市場動向】
 PE(プライベート・エクイティ)市場とプライベートクレジット市場は、両者とも2025年に入ってから成長が継続しています。投資・エグジット・資金調達で回復傾向が鮮明になりつつあり、特にスポンサー間売却(PE同士の取引)やM&A件数増加が目立つ一方、プライベートクレジット市場は多様な投資ソリューションと個人投資家の参入拡大で規模を拡大しています。​

PE市場の主な動向
世界のPE取引額は2024年に前年比23%増加し、約1.7兆ドル、取引件数は年間約19,000件強に伸びました。​

投資・エグジットともに活発化、スポンサー間売却が増加し、1件あたりの平均取引額も年率で約48%拡大しています。​

マクロ経済環境改善に伴い、IPO市場も一部復活し、資本還流のルートが多様化。​

資金調達は2024年もなお減少傾向で、2021年ピーク時より4割減と資金循環の課題も残っています。​

プライベートクレジット市場の主な動向
市場規模は世界で約1.7兆ドルに達し、今後年率約9.9%で拡大する見込み。​

従来の銀行貸出が縮小する中、ミドルマーケット企業へのダイレクトレンディングなど多彩なソリューションが拡大。​

パブリック市場とプライベート市場の融合が進み、ブロードリー・シンジケート・ローン(BSL)やCLOエクイティなど新しい分野への拡張も顕著。​

AI・インフラ投資や企業の成長資金需要増に伴い、クレジット市場の裾野がさらに広がる。​

個人投資家(富裕層・インターバルファンドなど)が新たな主要資金源となっていることも特徴です。​

今後の展望
PE市場は引き続きディールの大型化・スポンサー間取引中心に拡大する見通し。​

プライベートクレジット市場は金利高・信用基準厳格化を背景に成長余地が大きく、AIやデジタルインフラ分野への貸付が注目。​

個人投資家の参加拡大、財務制限条項強化によるリスク管理強化が今後の主要なテーマです。​

両市場とも投資環境が改善しつつあり、クロスボーダーのM&A活動や新技術分野への資金供給が増加していますています。​

2025年11月8日 土曜日

世界の動き 2025年11月7日 金曜日

今日の一言
「支持率」
 高市首相の支持率は80%越え、トランプ大統領の支持率は40%すれすれ、という支持率の報道が相次ぐ。
 もし私に支持率調査の電話がかかってきたらどう応えるだろうか。首相の経済政策や安保政策、外国人対策のすべてに同意できないが、前任の石破首相よりまだましだという判断で、支持すると答えるかもしれない。
 同じ議員内閣制を採用している英国やカナダでは、二択でない支持率調査が一般的だ。英国では、ONS(国家統計局)の「オピニオンとライフスタイル調査」が広く使われている。回答形式は、賛成・反対だけでなく「どちらとも言えない」「わからない」など複数選択肢になっている。カナダでは、PSPC(公共事業調達省)傘下のPORD(世論調査局)が、賛否に加え「中立」「未定」「関心なし」などを含む選択肢だ。
 二択では、支持と不支持の間を世論が大きく揺れ動くことになる。日本の大新聞も、ちょっとした工夫が必要だと思うのだが。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.私は燃えている:テストステロンの期待と危険性
【記事要旨】
 テストステロン療法をめぐって女性たちの期待と葛藤がある。
1. 背景と変化
– スーザン・ドミナスの過去の記事が、更年期とホルモン療法に対する誤解を正し、議論を活性化。
– ソーシャルメディアや医師の発信により、ホルモン療法への関心が高まり、テストステロン療法を試す女性も増加。
2. テストステロン療法の実態
– 一部の女性は高用量のテストステロンを使用し、性生活や活力に劇的な変化を経験。
– しかし、こうした用量は本来の生理的レベルを大きく超えており、科学的な裏付けは乏しい。
3. 副作用とリスク
– 攻撃性の増加、脱毛などの副作用が報告されている。
– テストステロンペレットは一度挿入すると3か月間除去できず、予期せぬ反応に苦しむケースも。
– 長期的な健康リスク(がん・心疾患など)は未解明で、低用量でも十分なデータはない。
4. 文化的な視点と変革
– 更年期女性のセクシュアリティが再評価されつつあり、「性的存在としての権利」への理解が広がっている。
– イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどがホルモン療法の普及と安全性向上に積極的。
– アメリカでは保守的な文化背景が変化を遅らせており、女性の不満が高まっている。
【コメント】
 アメリカが保守的なら日本は超保守的だ。
 日本では ホルモン補充療法(HRT)の普及率は2%未満とされ、欧米(米国40%、スウェーデン医療従事者80%)と比べて極めて低い。 「更年期は病気ではない」「気の持ちよう」といった文化的な価値観が普及を妨げてきた。
  日本産婦人科医会のガイドラインでは、テストステロンは女性への治療薬として承認されておらず、使用例もほとんどない。 更年期障害に対しては、エストロゲン製剤(貼り薬・飲み薬・腟錠)と黄体ホルモン製剤の併用が基本だ。
 遅ればせながら、普及が進むのだろうか。

2.アマゾン気候サミット
【記事要旨】
 外交官や首脳らは昨日、アマゾン熱帯雨林の端に位置するベレン市で、毎年恒例の国連気候変動会議を開会した。
 ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、中国製のEV(電気自動車)を多数乗り入れて会場に到着し、中国の技術が世界中でどのように発展してきたかを強調した。こうした車両の選択は、トランプ政権が今年の気候変動会議に出席していないことを浮き彫りにした。一部の参加者にとっては、それで十分だった。
 COP30として知られるこの会議は、今年も世界中で記録的な猛暑と異常気象に見舞われている最中に開催される。
【コメント】
 COP30は「理念から実行へ」の転換点とされ、企業や自治体のESG戦略にも直結する内容が多く含まれている。
 ただし、決議の実効性は、資金の透明性・KPI評価指標の運用・各国の政治的意思に依存している現状だ。

3.なぜトランプ大統領はナイジェリアで軍事行動を脅かしているのか?
【記事要旨】
 トランプ大統領とその支持者たちは、ナイジェリアではキリスト教徒が宗教を理由に殺害されていると主張している。
 Timesの同僚によると、ナイジェリアでは様々な地域で様々な種類の暴力が発生しており、宗教は多くの要因の一つだという。都合の良い事件だけを取り上げて、まるで国全体が混乱状態にあるかのように見せるのは簡単だが、実際にはそれだけが全てではない。
【コメント】
 簡単に勝てる戦争には手を出しそうなトランプだ。

其の他の記事
・台風カルマエギはベトナムへ移動し、フィリピンでの死者数は117人に上った。
・ロシアはウクライナの戦略都市ポクロフスクを占領しようとしており、これは2023年以来最大の戦利品となる。
・政府閉鎖による米国の航空交通量の削減は、主要40空港へのフライトに影響を与える。そのリストは以下の通り。
・スーダンの準軍事組織RSFは、自国軍による残虐行為に対する国際社会からの圧力の高まりを受け、米国主導の仲介者グループによる停戦提案を受け入れた。

2025年11月7日 金曜日

世界の動き 2025年11月6日 木曜日

今日の一言
「熊がいない場所」
いたるところで熊が出没する状況だ。熊のいない所を捜してみた。
本州で熊がいない県が身近にある。千葉県は「クマが生息していない唯一の県」とされている。千葉県にクマがいない理由は以下だ。
– 地理的な隔絶性
房総半島は他の大きな山塊と連続しておらず、ツキノワグマが移動してくる「通り道」が存在しにくい構造だ。
– 森林の規模と構造
千葉県内の山域・森林は、クマが定着・繁殖するには規模が小さく、周囲が海・平野・河川に囲まれているため、他地域からの拡散が困難だ。
– 縄文時代からの痕跡の欠如
遺跡調査でも、イノシシやシカの骨は見つかる一方で、クマの骨や化石はほとんど発見されていない。これは古代からクマが定着していなかった可能性を示唆する。
– 都市化と人口密度の高さ
千葉県は都市部が広がっており、人間の活動が活発な地域が多いため、クマが安全に生活できる環境が限られている。
世界を見ると、日本と似通った地形を持つイギリスにも熊がいない。かつてはヒグマがいたものの、約3000〜1500年前に絶滅したと考えられている。
イギリスにクマがいない理由は以下だ。
約7000年前にはイギリス全土にヒグマが広く分布しており、シカやバイソンなどを捕食していた。
– 地理的な孤立化
約8500年前の氷河期終焉により、イギリスはヨーロッパ大陸から切り離され、クマの移動が不可能になった。
– 環境変化と森林伐採
気候変動により森林が牧草地へと変化。クマの生息環境が失われ、食糧源も減少した。
– 人間による狩猟と定住拡大
狩猟と土地開発により、ヒグマは徐々に数を減らし、中世初期には絶滅したとされる。
– 絶滅時期には諸説あり
考古学的調査では、新石器時代後期(約3000年前)または中世初期(約1500年前)に絶滅した可能性があるとされている。
さあ、安心して千葉県とイギリスに旅行しましょう。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.ゾーラン・マムダニのアフリカのルーツ
【記事要旨】
人物概要
– 34歳の民主社会主義者で、ニューヨーク市長に選出された。
– ウガンダ生まれ、インド系イスラム教徒の家庭出身。
– 幼少期はウガンダで過ごし、その後マンハッタンで育つ。
– 両親は知識人(父:政治学者マフムード・マムダニ、母:映画監督ミーラー・ナイル)。

ルーツと価値観形成
– ウガンダでは南アジア系住民が黒人ウガンダ人よりも裕福で、1972年にイディ・アミン政権によって父が追放された経験がある。
– 幼少期に人種・階級の分断を体感し、帝国主義の影響を強く意識。
– 「私はインド人ではない。ウガンダ人だ」と語った逸話も。
– 音楽活動を通じて植民地主義の影響を表現。

政策と政治的立場
– 住宅の手頃さ、無料バス、ユニバーサル・チャイルドケア、市営食料品店、家賃凍結などを公約。
– 親パレスチナ政策を掲げ、イスラエルでは反発を招く一方、パレスチナでは歓迎された。
– 民主社会主義の象徴的存在として、世界中の若者や移民に共感を呼ぶ。

国際的反響
– インドやトルコなどで「自分を重ねる存在」として注目。
– 一部ではバラク・オバマと比較されるが、アフリカ生まれのため米大統領にはなれない。
– ウガンダでは知名度は低いが、彼の勝利は世界的な政治的波紋を呼んでいる。
【コメント】
マムダニ氏は多くの公約を掲げているが、財源はどうするのか。
具体的には、州法人税を7.25%から11.5%に引き上げ、ニューヨーク市で年収100万ドル以上の3万4000人の住民に一律2%の税率を導入したいと考えている。これらの政策によって100億ドルの歳入が見込まれ、60億ドルのユニバーサル・チャイルドケアの費用と8億ドルのバス無料乗車券の費用を賄うのに十分な額になると彼は主張している。
ただ、州法人税の引き上げには、ニューヨーク州議会とキャシー・ホークル知事の承認が必要だ。ホークル知事は来年再選を控えているため、は特に困難だと思われる。次に、市議会と州議会の両方が、年収100万ドル以上の住民への追加税を承認する必要がある。最後に、これらの措置はニューヨーク市の金融界からの大きな反対に直面するだろう。彼らの多くは、マムダニ氏の主な対立候補である元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏を支持していた。
彼が公約をどのように実現するか、今後の行方に注目したい。

2.殺人ドローンからの逃走
【記事要旨】
ロシアとウクライナは共に、戦場を監視し、標的を発見次第追跡する遠隔操縦ドローンを運用している。しかし、この新たな形態の戦争では、依然として運が重要な要素となる。
​​兵士の集団を発見した場合、ほとんどのドローンは全員を攻撃することはできない。パイロットは判断を迫られる。「この人?」「あの人?」「つまずいて逃げている兵士で、簡単に仕留められるかもしれない人?」それとも、一緒に走っている二人組で、一撃で倒せるかもしれない人?」
ドローンが蔓延する前線からウクライナ兵士を救出することが、かつてないほど困難になっていることをTimesの同僚はハリコフ州から報告した。
【コメント】
まだドローンは人が操縦している。これがAIに置き換わられるのは時間の問題だろう。本当に怖い状況だ。

其の他の記事
・米国最高裁判所は、トランプ大統領が緊急権限を行使して広範な関税を課すことに懐疑的な見方を示した。
・ベネズエラは、米国からのいかなる攻撃にも対応できるよう、ロシア製の兵器と武装民間人を保有している。
・フランスは、オンライン小売業者Sheinが小児型セックスドールを販売していたことを受け、同社のアクセスを遮断した。
・ブラジルは、熱帯林の保全に尽力する各国に資金を提供する新たな気候変動基金を発表する予定だ。

2025年11月6日 木曜日

世界の動き 2025年11月4日 火曜日

今日の一言
「次は何か」
 2018年にNVIDIA株の高騰を、2020年にはAIの興隆を予言したアナリストで投資家であるStephen McBrideは今何を言っているのか?
 NVIDIAはあまりに高くなりすぎで注意すべきだという見方だ。彼が今注目しているのは、AIブームを支える裏方企業だ。AIデータセンターは人類史上最大の建築プロジェクトであり、今後も高成長が見込まれるとしている。
 個別株ではSuper Micro Computerの名前を挙げている。ただ、この会社は内部統制に大きな懸念がありそうだ。ETFでは、iShare Best AIやGlobal X AI &Big Dataなどが面白そうだ。これらは彼が推奨しているわけではないが、日本で上場しているので簡単に購入できる。
 アメリカのゴールドラッシュで誰が一番儲けたのか。金鉱を掘り当てた人たちではなかった。彼らにつるはしやバケツを売った人たちだったという話と似た発想だ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.インド女子クリケットの男世界での躍進
【記事要旨】
– 歴史的快挙:インド女子クリケット代表がワールドカップで優勝。ムンバイのスタジアムには4万人が集まり、全国で祝賀ムードに包まれた。
– 男子中心の構造:これまでクリケットは男性中心のスポーツであり、経済的・社会的恩恵も男性に集中していた。
– 女子クリケットの変化:
– 数年前まで女子選手はセミプロ扱いだったが、5億ドルの民間投資により女子プレミアリーグが設立。
– スミリティ・マンダナなど一部選手は月50万ドル近くを稼ぎ、スポンサー契約も急増。
– とはいえ、報酬は男子の10分の1以下で格差は依然存在。
– 社会的インパクト:
– 女性の労働参加率が低いインドにおいて、女子クリケットの成功は性別役割の固定観念を揺るがす可能性がある。
– 地方出身の選手が活躍することで、地方の少女たちに希望を与え、家族の価値観にも影響を与える。
– 試合会場には家族連れが多く、父親が娘に技術的助言をするなど、世代を超えた関心が見られた。
– SNSの反応:
– 一部では性差別的な投稿もあったが、インドが強豪オーストラリアを破ったことで、投稿者が謝罪する場面も。
【コメント】
 この勝利は、インドにおける女性の社会的地位や可能性に新たな光を当てる出来事となった。クリケットは世界で最大規模の競技人口だそうだが、ルールもよくわかりません。

2.ニューヨーク市民が次期市長を選ぶ
【記事要旨】
ドナルド・トランプを世界に輩出したニューヨーク市は本日、民主社会主義者で政界の新人、ゾーラン・マムダニ氏を次期市長に選出する見通しだ。同氏は、同市を率いる初のイスラム教徒でミレニアル世代となる。
 ​​選挙運動中、自身の信仰、インド系ウガンダ人のルーツ、そして親パレスチナ活動について語ってきた34歳のマムダニ氏は、圧倒的な有力候補だ。マムダニ氏は、民主党予備選でマムダニ氏に敗れ無所属で出馬する元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏と、共和党候補のカーティス・スリワ氏に2桁の支持率差をつけている。
 マムダニ氏は、住宅価格の高さを選挙運動の主要課題に掲げ、市バスの運行無料化と国民皆保険の実現を目指している。批判的な声は、彼の政治経験の少なさを指摘している。トランプ氏はマムダニ氏を「私の小さな共産主義者」と呼び、市への連邦政府の資金拠出を停止すると警告している。
【コメント】
 彼の急進的な政策は実現するのだろうか。彼の当選は米国全体の政治にどのような影響を与えるのだろうか。注目だ。

其の他の記事
・アフガニスタン北部で発生した大地震により、少なくとも20人が死亡し、マザリシャリーフの有名なブルーモスクが損壊した。
・トランプ大統領は、米国はベネズエラとの戦争を計画していないと述べたものの、同国のニコラス・マドゥロ大統領は退任すべき時だと示唆した。
・OpenAIは、Amazonから380億ドル相当のクラウドコンピューティングサービスを購入することに合意した。

・キンバリー・クラークは、タイレノールの製造元であるケンビューを400億ドルで買収することに合意した。同社は、トランプ政権によるタイレノールと自閉症との関連性に関する未証明の主張に異議を唱えている。
・テスラの株主は今週、イーロン・マスクに約1兆ドル相当の株式を付与するかどうかを決定する予定だ。

2025年11月4日 火曜日