世界の動き 2025年11月28日 金曜日

今日の一言
「ウィトコフ特使」
 元不動産開発業者で現在「和平交渉役」とされるスティーブ・ウィトコフが面白い動きをしている。
●彼の動き(時系列でまとめる)
– 10月14日
 ウィトコフが、ロシア高官ユーリ・ウシャコフと会談。
→ ウィトコフは「プーチンがトランプに電話すべき」と助言し、会話内容まで提案(トランプをガザ和平で果たした役割を称賛し、ロシアが和平を望んでいると伝えるよう指示)。
– 10月16日
 プーチンが実際にトランプへ電話。通話は2時間以上続き、トランプは「生産的だった」と発言。ブダペストでの会談が検討されたが実現せず。
– 10月17日
 トランプがワシントンでゼレンスキー大統領と会談。
→ トランプは事前にはウクライナ軍へのトマホーク巡航ミサイル売却を示唆していたが、電話後は提供せず。代わりに感情的になり、ウクライナにドネツク州の領土放棄を迫る。これはロシアの長年の要求に沿うもの。
●ウィトコフの動きがもたらしたもの
– ウィトコフの助言によりプーチンがトランプの姿勢を変え、ウクライナへの武器供与が阻止された可能性がある。
– その後、ウィトコフはクレムリン関係者と共に「28項目の和平案」を提示。しかしこれは一時停戦を装い、将来のロシア再侵攻を容易にする内容だった。
– ウィトコフは外交経験がなく、プーチンへの敬意の念やロシアとのビジネス利害が背景にある可能性がある。実際にエネルギーや資源、AI、北極のレアメタル採掘など米国による投資の話もロシア側と進めていた。
●要するに
 ウィトコフの行動は和平促進ではなく、ロシアの立場を強め、戦争を長引かせている。彼の介入はウクライナ人の犠牲と欧州の安全保障危機を拡大させるものであり、通常の米国政権であれば即座に解任されるはずだが、現政権ではそうはなっていない。
●不動産屋の習性
 忘れてはいけないのが、彼は(トランプも)不動産屋だということだ。売り手と買い手から手数料をもらえる日本とは異なり、米国の不動産屋は買い手からしか手数料をもらえない。だからディールを成立させるためには買い手の歓心を買うために何でもするのだ。
 売り手(ウクライナ)には「こんなに良い条件はありませんから早く決めてください」と言って、売り手が条件を呑めば儲けものという感覚だ。彼を、自分たちの代弁者として見るべきではない。ロシアに利益のあるディールをまとめようとするロシアの代弁者とみるべきなのだ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.AIに関する1兆ドルの疑問
 2014年に広まった『The Second Machine Age』という本は、AIが超生産性と豊かさをもたらすユートピア的未来像が描かれていた。 しかし現実には、AIが経済に過度に支配的になる不安と、人間の仕事を本当に置き換えてしまう可能性への懸念が共存している。
– 技術革命に伴う不安
過去の技術革新同様、移行期には雇用喪失や企業倒産が起こり、不安が広がる。問題はその後に何が残るかである。
– AIバブルの可能性
現在のAIブームは「1兆ドル規模の疑問」と言え経済を支えているが、方向性は不透明。利益を出せていない企業も多く、評価額の正当性が問われている。
– 大手企業の優位性
Google、Amazon、Microsoft、MetaはAI関連以外の事業で巨額の利益を上げつつ、AI開発に必要な膨大な計算資源を提供し、他社からの需要で収益を拡大している。
– バブル崩壊の影響
崩壊すれば、ドットコムバブルのように多くの企業が消滅する可能性がある。ただし、2008年の金融危機のような全体経済への深刻な打撃になるかは不明だ。投資家の過剰な借入による「システミックリスク」も懸念されている。
– 成功と失敗の分岐
OpenAIのように数年以内に数百億ドル規模の収益を見込む企業もあるが、開発コストが非常に高く、競争は激しい。勝者と敗者が分かれる構図になる。
– 鉄道ブームとの類似
19世紀の鉄道建設ラッシュのように、現在は各社が巨大データセンターを競って建設している。供給過剰が生じれば、長期的には多くの敗者を生む可能性がある。
【コメント】
 この記事は、AIブームが「ユートピアへの道」か「バブル崩壊」かという両極の可能性を抱えつつ、歴史的な技術革命やバブルとの比較を通じて、その不確実性とリスクを描いている。
 ボストンコンサルティンググループの「成長市場シェアマトリクス」で考えるとわかりやすい。今「問題児」にある分野は、成長力が大きいが絶え間ない追加資金の投入が必要だ。競争で勝てばシェアが高まり「スター」の地位を占めることができる。成長が一段落してキャッシュフローが生まれれば「キャッシュカウ」になり安定する。「問題児」から「スター」、そして「キャッシュカウ」への過程で息切れした多くの企業は淘汰される。
 AI問題の本質はこうしたミクロの企業レベルの話ではなく、人類の生活と存続へのマクロの影響だと思うが、その点は今回は触れられていない。

2.香港大火災の生存者捜索
【記事要旨】
 香港の高層マンションが、約70年ぶりの最悪の火災に見舞われた翌日、消防隊員らが住民と遺体を収容した。死者数は少なくとも83人に上った。数十人が依然として行方不明となっており、死者数はさらに増える可能性がある。
 被災者の一人は、妻と二人でかろうじて炎から逃れたと語った。「誰も警告してくれなかった。警報も鳴らなかった。自力で逃げ出したんだ」
 当局は、可燃性の網と発泡スチロール板が火災の燃料になった可能性があると述べている。警察は、これらの資材を設置した建設会社と関係のある3人を逮捕した。うち2人は過失致死の疑いがある。【コメント】
 以前英国の高層アパートで火災があった。やはり可燃性の素材が延焼の原因になった。タワーマンションは怖い。戸建てに住んでいてよかったと思いたいが、佐賀関のようなこともある。火事は本当に怖い。

其の他の記事
・レオ14世はトルコで、教皇就任後初の外遊を開始した。日曜日には、アラブ世界最大のカトリック教徒コミュニティの本拠地であるレバノンへ向かう。
・フランスは、ロシアのウクライナ侵攻以降、軍を強化してきた他の欧州諸国に倣い、新たな兵役制度を発表した。
・米国は、ホワイトハウス近くで州兵2人が銃撃された事件に関与したとしてアフガニスタン人男性が拘束されたことを受け、アフガニスタンからの移民受け入れを一時停止した。男性はアフガニスタン戦争中、CIAの支援を受けた軍部隊に所属していた。
・ギニアビサウ軍は、大統領の側近であるホルタ・インタ将軍を新指導者に任命した。野党は、クーデターは大統領が敗北したと広く信じられている選挙後に行われたものだと主張している。
【ギニアビサウは、アフリカ大陸西部に位置する国で、北をセネガル、南東をギニアに囲まれ、西は大西洋に面しています。旧ポルトガル領ギニアであり、首都はビサウです 】
・ダニエル・ドリスコル米陸軍長官は、ウクライナ和平交渉において異例の積極的な役割を果たしている。ドリスコル長官は、ロシアが長距離ミサイルを備蓄していると欧州諸国に警告し、迅速な合意を促した。
【2024年12月の任命時の記事より:トランプ次期米大統領は4日、陸軍長官に投資家のダニエル・ドリスコル氏を指名すると発表した。ドリスコル氏は元陸軍兵で、イラクで従軍歴がある。退役後はエール大法科大学院を卒業し、投資会社で勤務したほか、バンス次期副大統領の上級顧問も務めてきた】

2025年11月28日 金曜日

世界の動き 2025年11月27日 木曜日

今日の一言
「まだ、ほんの始まり」
 今のAI主導の強気相場が懸念される中、超強気で知られるKeith  Fitz-Geraldの相場見通しを紹介したい。
 短期的には、サンタクロース・ラリーは神話ではない。S&P 500は、12月の最後の5営業日と1月の最初の2営業日において、約80%の確率で上昇して取引を終えている。市場心理が改善している状態でこの時期を迎えると、上昇の可能性は通常さらに高まる。
 2026年については、利下げがシステム全体に浸透し、次のイノベーションが本格化すれば、2026年は力強い年になる可能性がある。
 長期的には、イノベーションがもたらす急成長のまだ入り口にいるに過ぎない。AIは、新たな「豊かさの時代」と呼ぶ時代へと私たちを導こうとしている。最初は、それをどう定義すればいいのかまだわからないため、混乱し、不安を感じるかもしれないが、AIは医療から仕事、お金、生産性、アイデンティティに至るまで、あらゆるものを変革する。
 変化の例を挙げる。モルガン・スタンレーは、AIを全面的に導入することで、企業は年間1兆ドル近くのコスト削減が可能になると推定している。スタンフォード大学の最新データによると、世界の企業の78%が業務にAIを活用しており、わずか1年前の55%から増加している。生成型AIを活用する企業は、テクノロジー分野で最も高いリターンを得ている。マッキンゼーの調査によると、企業は1ドルの投資に対して約4ドルの価値を得ているという。彼の結語は以下だ。
 Don’t chase yesterday’s trends. Instead, position for tomorrow’s inevitabilities. 過去のトレンドを追うな。明日の必然に備えよう。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.アジア太平洋の外交対立
【記事要旨】
– 背景
米国トランプ大統領は中国の習近平国家主席、日本の高市早苗首相と相次いで電話会談。台湾をめぐる安全保障問題で米国の立場が注目されている。
– 日本の強硬姿勢
– 高市首相は「台湾封鎖や侵攻は日本の生存問題」と国会で発言。これは自衛隊の動員を可能にする法的意味を持つ。
– 中国は日本に対し経済制裁(海産物輸入停止、観光・留学制限)、軍事的示威(艦船・ドローン接近)、外交的圧力(国連での批判要求)を展開。
– 日本は反論を提出し、与那国島に対空ミサイル配備を決定。中国ドローンに対し戦闘機を緊急発進させるなど防衛を強化。
– 中国の戦略的言説
– 習近平は「中国と米国は第二次世界大戦で共に戦った」と強調し、台湾防衛を戦後秩序への挑戦と位置づけ。
– 中国は戦後秩序の「保証者」として自らを描き直し、軍事パレードではロシア・北朝鮮と連携を誇示。
– 対立軸は核保有国(中・露・北) vs 非核保有国(日・韓・台)という構図も浮かび上がる。
– 米国の立場
– 歴史的に米国は台湾支持と日米同盟を維持してきたが、トランプは従来の方針を覆す可能性があり、台湾への姿勢を曖昧にしている。
– 現時点では中国の圧力に応じるか否か明言せず、4月に北京訪問予定。
【コメント】
 日本の強硬姿勢(tough stand)についての部分は以下だ。
 So few observers expected Takaichi to immediately take a tough stance. But this month, she told Parliament that an effort by China to blockade or invade Taiwan would be a “survival” issue for Japan. That term has legal implications, because it permits the mobilization of Japan’s military. Takaichi’s comments were among the strongest ever by a Japanese leader about helping to defend Taiwan.
 存立危機事態の前提が、米軍が台湾防衛のために出動し、日本の自衛隊は米軍を支援するために出動するという視点は欠落している。そのため、台湾をめぐり日本が戦後最も強硬な姿勢を示していると見られている。ややこしい国内法が対外説明を困難にしている。

2.香港の高層マンション火災
【記事要旨】
 昨日、香港の複数の高層マンションで火災が発生し、数百人の消防士が消火に奔走した。少なくとも36人が死亡、279人が行方不明となっている。警察と消防は、建物内に閉じ込められた住民から多数の救助要請があったと発表した。
 火災の原因は判明していない。大埔地区の1棟の建物で発生したとみられるが、火災発生から6時間以上が経過した夜遅くまで、建物は炎に包まれていた。
【コメント】
 まさにTowering Infernoだ。竹の足場が延焼をもたらしたのだろうか。

其の他の記事
・ギニアビサウの軍報道官は、大統領選挙の結果発表前日に、軍が国を掌握したと発表した。【どこにあるかわかりますか】
・ワシントンD.C.のホワイトハウス付近で、州兵2人が銃撃された。【一人は重体。犯人は逮捕された】
・英国政府は、主に個人所得税関連の政策を通じて、2030年までに約260億ポンドの増税を計画している。
・判事は、2020年の大統領選挙に関連するトランプ大統領に対する最後の刑事訴訟を棄却した。
・ウクライナ当局は、米国が支援するロシアに有利な和平提案を緩和しようと躍起になっている。今、問題は、ウラジーミル・プーチン大統領がこれを受け入れるかどうかだ。
・米国大統領選に選出された最高齢の人物であるトランプ氏には老化の兆候が表れている。
【コメント:具体的な「老いの兆候」としては、公務スケジュールの短縮、居眠りのような場面、国内活動の減少、健康情報の不透明さが挙げられている。ただし、本人はこれを全面的に否定し、むしろ精力的に活動していると強調している。】

2025年11月27日 木曜日

世界の動き 2025年11月26日 水曜日

今日の一言

ニューヨークタイムズ電子版より
「紅葉」
 昨日は自宅近くの九品仏へ紅葉を見に行った。京都の名刹に匹敵する紅葉のグラデーションに、銀杏の巨木の黄葉とその下に黄色の絨毯が広がっている。
 あまり知られていないのか訪問する人が少ないのが嬉しい。巨大な阿弥陀様がまつられる本堂では七五三を祝う読経が響いていた。
 10月に東京で再開した米国の友人からメールと写真が届いた。I made it home just in time to marvel at the beauty of the fall season. The red, brown, and yellow leaves of New England are nearly gone now, but I have included a couple of photos taken near our home.
 落葉の美しさを愛でる感情は洋の東西を問わないようだ。竹内まりやの歌ではないが、あと何回楽しめるのだろうか。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.ウクライナ問題で揺れるヨーロッパ
【記事要旨】
– フランスの発言と反響
フランス陸軍司令官マンドン将軍が「ヨーロッパ防衛のために若者が命を落とす可能性を受け入れるべき」と訴えたが、国内では好戦的だと批判を浴びた。
– 欧州防衛の現状
– 冷戦後、欧州主要国は軍事費を削減し兵力も縮小。
– ロシアの侵攻後、防衛費増加や再軍備が進むが、経済低迷の中で国民の支持は限定的。
– 世論調査では「自国のために戦う」と答えたEU市民は3分の1未満。ドイツでは23%。
– 一方、ロシアに近い国々(ポーランド、フィンランド、バルト三国など)は徴兵制や軍事訓練を維持・拡大。
– 外交と軍事力の乖離
ドイツ・フランス・イギリスが外交交渉を主導し、トランプ大統領の親ロシア的和平案を修正する動きが見られる。しかし、欧州の外交努力は十分な軍事力に裏付けられていないため、持続的効果には疑問が残る。
– ウクライナの立場
ゼレンスキー大統領は欧州の外交的支援を頼りにしてきたが、軍事的裏付けの不足に不満を抱いている。欧州の高尚なレトリックが交渉の場でどのような意味を持つかは今後の展開次第。
– 最新の動き
ロシアはキエフにミサイル・ドローン攻撃を行い死者が発生。米国とロシアはアブダビで協議。トランプ大統領の和平案は「ロシア寄り」と批判され、修正案が模索されているが、米議会内でも意見が分裂している。
【コメント】
 ヨーロッパは外交的には積極的に動いているが、防衛力や市民の戦意の不足が大きな課題。ウクライナ支援の実効性は、欧州がどこまで軍事的裏付けを整えられるかにかかっている。防衛はアメリカの軍事力頼みなのがアキレス腱だ。

其の他の記事
・トランプ政権は、イスラエルが支配するガザ地区におけるパレスチナ人のための住宅団地の急速な建設を推進している。
・英国政府は本日、年次予算を発表する。これは労働党と、財務大臣として苦難の日々を送ってきたレイチェル・リーブス氏にとって大きな試練となる。
・エチオピアで噴火した火山は、アジア全域に噴出した灰雲を噴き出し、インドでは航空便に乱れを生じた。
・ブラジルの最高裁判所は、クーデター未遂事件を指揮したとして、ジャイル・ボルソナーロ前大統領に懲役27年の刑期開始を命じた。
・リッツ・カールトンはケニアに1泊3,500ドルのサファリキャンプを開設した。マサイ族の一部は、これが野生動物の回廊を塞いでいると批判している。

2025年11月26日 水曜日

世界の動き 2025年11月25日 火曜日

今日の一言
「米株の売り一巡か」Bloombergの記事より
 「米国株についてUBS証券のトレーディング部門は、売り一巡の可能性があり、年末にかけて上昇局面に入る可能性があるとの見方を示した。
 S&P500種株価指数とナスダック100指数は先週、10月下旬に付けた過去最高値からそれぞれ約4%、7%下落し、100日移動平均線まで値を下げた。
 UBS証券は、11月の売りがポジション調整を進める結果となり、上昇再開の土台が整ったと指摘。S&P500は年末にかけて7000近くまで上昇する可能性があるとの見通しを示した。」
 大手証券会社からのポジショントーク的なコメントだ。こうなってほしいという願望に近いと見たほうが良い。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.ウクライナとロシアにとっての和平案の見方
【記事要旨】
●戦争の現状
– 紛争は4年近く続き、2014年のクリミア併合から数えると11年。
– 当初の「ロシアがすぐ勝利する」という予測は外れ、ウクライナは抵抗を続けている。
– 西側制裁でロシアは資金難に直面する一方、戦況は消耗戦化しロシアが徐々に前進。
●双方のレッドライン
– ウクライナ:領土保全と信頼できる安全保障の保証が不可欠。ロシアの再侵攻を防ぐ仕組みが必要。
– ロシア:ウクライナのNATO加盟を永久に拒否。ドンバスなどの領土確保、NATO軍駐留の拒否。
●領土問題と妥協案
– ウクライナは現在の前線に沿った停戦を受け入れたが、ドネツク地域の一部は譲れない。
– 妥協案として「非武装地帯」化が検討されるが、国民に受け入れさせるには安全保障の保証が不可欠。
●安全保障モデルの選択肢
– ドニプロ川以西への欧州軍派遣(少数の象徴的存在)。
– トリップワイヤー・モデル(欧州域内に軍の大規模配備)。
– NATO第5条を参考にした西側諸国の防衛保証(ただしNATOは直接関与せず)。
●NATO問題
– ロシアはウクライナのNATO接近を脅威とみなし侵攻を正当化。
– NATO加盟は現実的に困難で、EU主導の平和維持部隊案が前例として検討される。
●交渉の余地
– ウクライナ軍の規模縮小など、軍事面では妥協可能。
– 双方とも国内で「勝利」として説明できる合意が必要。
●国際的な仲介
– トランプ氏の交渉関与はウクライナ国内で意外な支持を得ている。バイデン政権の対応への不満が背景。
– 完全解決ではなくとも「和解の兆し」が希望を生んでいる。
【コメント】
 和平交渉の最大の障害は、ウクライナの安全保証とロシアのNATO拒否という両立しない要求だ。妥協の可能性は「非武装地帯」や「欧州主導の安全保障モデル」にあり、双方が国内に「勝利」として示せる形を模索している。

2.トランプ大統領にとって大きな痛手
【記事要旨】
 連邦判事は昨日、ジェームズ・コミー前FBI長官とレティシア・ジェームズニューヨーク州司法長官に対する訴追を棄却した。この判決は、トランプ大統領が自らの敵と見なす者に対し刑事司法制度を行使しようと試みる上で、大きな敗北となった。
 判事は、検察官の任命は無効であり、コミー前FBI長官とジェームズ前FBI長官は大統領の最も著名な標的である両氏を起訴する「合法的な権限」を有していないと判断した。この判決により、政府は訴追を再申し立てできる可能性がある。
【コメント】
 この事件は日本でほとんど報道されていないので以下に説明します。
 この記事は、トランプ大統領が政敵とみなす人物に対して訴訟を仕掛けたが、裁判所で退けられたという出来事を伝えている。
1. 訴訟の理由
– 対象者
– ジェームズ・コミー(元FBI長官)
– レティシア・ジェームズ(ニューヨーク州司法長官)
– 訴訟の背景
– トランプ大統領は両氏を「敵」とみなし、刑事訴追を通じて政治的に打撃を与えようとした。
– 記事では具体的な罪状は明記されていませんが、文脈から「政敵を標的にした訴訟」であることが強調されています。
2. 今回の判断の理由
– 裁判所の判断
– 訴追を担当した検察官の任命が「無効」であるとされた。
– そのため、検察官には「合法的な権限」がなく、コミー氏やジェームズ氏を起訴することはできないと判断された。
– 結果
– 訴訟は棄却され、両氏に対する起訴は取り消し。
– 政府側は理論上、改めて有効な手続きで起訴し直すことは可能だが、今回の判断はトランプ大統領にとって大きな敗北。

其の他の記事
・ベトナムでは、今年に入って14回の台風に見舞われており、過去1週間で洪水と地滑りにより90人以上が死亡した。
・トランプ大統領は、中国の習近平国家主席から4月に北京を訪問するという招待を受け入れたと述べた。
・イスラエル軍参謀総長は、2023年10月7日の攻撃における失敗を理由に、約12人の指揮官に対し、解任または懲戒処分の可能性があると通告した。
・マレーシアは、来年から16歳未満の児童のソーシャルメディア利用を禁止する予定だ。
・今週米国と会談する欧州の貿易当局者は、ワインや蒸留酒、鉄鋼、パスタなどを含む品目について、より良い貿易協定の締結を期待している。

2025年11月25日 火曜日

世界の動き 2025年11月24日 月曜日

今日の一言
「6-7」
 アメリカのGen Alphaで流行している現象だ。TikTok発のミームで、特定の意味はなく「面白いから言う」だけのスラングだ。YouTubeにたくさん載っているので見ると、両方の手のひらを上に向けてふりながら、「6-7」と叫ぶ画像が多数出てくる。
起源
 - ラッパーSkrillaの曲「Doot Doot (6 7)」が発端。歌詞に「6-7」が登場するが、本人も「意味は特にない」と語っている。
 - TikTokでこのフレーズが切り取られ、NBA選手ラメロ・ボール(身長6’7”=約201cm)の映像と組み合わせて拡散された。
広まり方
 - Gen Alpha(小中高生世代)がTikTokやInstagram Reelsで「6-7」をランダムに叫んだり、コメントに入れたりして遊ぶ。
 - ジェスチャー(手を上下に動かす仕草)と組み合わせて「まあまあ」「適当」なニュアンスで使うこともある。
 - バスケ選手やインフルエンサーが繰り返し使ったことで「校内スラング」として定着。
 - 2025年には「67 Kid」と呼ばれる少年が試合で叫ぶ動画がバズり、さらに拡散。
意味合い
 - 固定された意味はない。ただの「ノリ」で使われる。
 - 文脈によって「背が高い」「まあまあ」「ランダムな数字ジョーク」などに変化。
 - Gen Alphaにとっては「スキビディ」「シグマ」「rizz」などと同じく、意味よりも共有感・遊び心が重要。
文化的背景
 - 一部メディアは「brain rot(脳の腐敗)」現象の一例と評しており、質よりも「バズること」が優先されるデジタル文化の象徴とされる。
 - 同時に、Gen Alphaがネット文化に存在感を増している証拠とも見られている。

【コメント】6-7もGen αも知りませんでした。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.デンマークの試験
【記事要旨】
– 英国労働党政権の新規則
 難民申請者の地位を頻繁に審査し、永住権取得に20年を要するなど、長期滞在を困難にする厳しい制度を導入。宝石没収などの政策は批判も受けている。背景には、極右「改革UK」の支持拡大があり、移民問題への対応が急務となっている。
– デンマークモデルからの着想
 デンマーク左派政権は移民制限を福祉国家維持の前提と位置づけ、難民申請者の生活を困難にする抑止策を実施。結果として申請者数は大幅に減少し、極右の勢いを抑える効果を発揮したとされる。英国や他の欧州諸国もこのモデルに注目している。
– 成果と限界
 デンマークでは一時的に政治的成果を上げ、政権維持に成功した。しかし、給付金削減による貧困や犯罪増加、合法移民への悪影響など副作用も顕在化。最近の市議会選挙では左派からの反発が強まり、首都コペンハーゲンで社会民主党が敗北した。
– 今後の展望
 デンマーク社会民主党は、富裕層や若者、都市部人口が多いコペンハーゲンでの敗北を、全国のより保守的な有権者の支持で補えると期待している。試金石となるのは2026年の国政選挙であり、他の欧州諸国の政府もその行方を注視している。
– モデルの適用可能性への疑問
 デンマークは人口約600万人で比較的均質な社会構成を持つため、英国のように多様な人口構成や移民依存度が高い国では同じ手法が通用するかは不透明。移民流入抑制と国内統合の間で緊張が生じる可能性が高い。
【コメント】
 左派であれ右派であれ、移民の流入に規制をかける政策が支持を集めるようだ。日本でも、参政党が注目される所以であり、政策の素地は整っている。

2.ウクライナに対する米国の和平案
【記事要旨】
 米国とウクライナの当局者は、昨日ジュネーブで行われたトランプ大統領の対ロシア戦争終結計画に関する協議で進展があったと発表した。
 トランプ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、木曜日までに和平案に同意するよう求めた。当局者らの会談中、トランプ大統領はソーシャルメディア上でウクライナ指導者らを批判し、恩知らずingratitudeだと非難した。28項目からなるこの提案は、ウクライナがロシアの要求の大半に屈服することを求めており、戦場で失っていない領土の放棄、軍の規模制限、そしてウクライナのNATO加盟の拒否などを盛り込んでいる。
【コメント】
 ゼレンスキー大統領にとって、これはまたしても成否を分ける局面だ。彼はこの状況を乗り越えられるだろうか?

其の他の記事
・イスラエル軍は、レバノンのベイルート郊外で行われた空爆でヒズボラの幹部司令官を暗殺したと発表した。レバノン当局によると、この攻撃で少なくとも5人が死亡した。
・ブラジルで開催された気候変動に関する国際会議は、地球温暖化の主な要因である化石燃料について直接言及しない、骨抜きの決議で閉幕した。
・ブラジル警察は、クーデター未遂事件での服役を逃れるため自宅軟禁を逃れる恐れがあるとして、ジャイル・ボルソナーロ前大統領を逮捕した。
・マージョリー・テイラー・グリーン下院議員の辞任は共和党に打撃を与え、右派の不満を露呈させた。

2025年11月24日 月曜日