世界の動き 2025年9月2日 火曜日

今日の言葉
「天候デリバティブ」
 9月になっても暑い日が続いている。天候が自社のビジネスに不都合な状況になるのをヘッジする手段に天候デリバティブがある。
 気温などの天候指標の変動による売上などの損失を金融商品でヘッジする仕組みだ。
 例えば、アイスクリーム製造業者が冷夏(気温が低く売上が落ちるリスク)をヘッジするデリバティブ契約の場合、「一定の気温より低い期間(例:35度未満の日数)」が続くほど補償金を受け取れる設計になる。製造業者はヘッジのための手数料を払う。
具体例
• 契約で「夏の平均気温が○度未満の場合、1度下回るごとに○万円支払う」というようなスキームを設ける。
• 実際に冷夏となり、気温が契約値を大きく下回れば補償金が増え、損失が軽減される。
 35度以上の高温が続く場合の損益はどうなるか。
• 設例のヘッジは「冷夏」=低温リスクに対して設計されているため、猛暑で35度以上の高温が続くと、デリバティブ契約の支払い条件に該当しない(補償金を受け取れない)状態になる。
• この場合は、アイスクリームの需要が増えて売上が伸びるため、ヘッジは発動しない。デリバティブによる損益はゼロ(または手数料分だけマイナス)となる。
 猛暑で、ビールやアイスクリームのデリバティブは不発だったはずだ。前年比の売り上げ発表はどうなるだろうか。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.アフガニスタンの地震で数百人が死亡
【記事要旨】
 昨日、アフガニスタン東部で発生したマグニチュード6.0の地震で、800人以上が死亡、2,500人が負傷した。孤立した山岳地帯への緊急救援活動が開始されたが、死者数はさらに増加する可能性がある。
 村々を孤立させた土砂崩れにより、復旧作業は困難を極めており、タリバン政権への救援を申し出たのは、イラン、インド、日本、EUなど、ごく少数の国にとどまった。
 被害の大部分はパキスタンと国境を接するクナール州で発生しましたが、病院は機能していると、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は述べている。
 人道危機:アフガニスタンは、複数の危機に直面する中で、この地震に見舞われた。国連によると、アフガニスタンの人口4,200万人の半数以上が援助を必要としているが、資金の枯渇と隣国パキスタンとイランから200万人以上のアフガニスタン人が帰還する中で、厳しい冬への備えを迫られている。
【コメント】
 タリバンは2021年8月15日にアフガニスタン全土の実権を握り、現在もアフガニスタンを統治していますが、国連を含むどの国からも正式には承認されていません。タリバン政権下では、女性に対する教育や就労の権利が大きく制限され、人権状況が悪化しています。また、経済危機、食料不足、テロの脅威が続き、国際社会はアフガニスタンがテロの温床となることを懸念しています。(アフガンの現状)

2.ブラジル民主主義の試練
【記事要旨】
 ジャイル・ボルソナーロ前大統領は本日、2022年の選挙で敗北した後、クーデターを企てた罪で裁判にかけられる。有罪判決を受ければ、数十年にわたる懲役刑に処される可能性がある。
 自宅軟禁中のボルソナーロ大統領は、逃亡の恐れから、ブラジリアの自宅を私服警官が厳重に監視している。足首に監視装置を装着しているボルソナーロ大統領は、容疑を否認している。
 わずか40年前に独裁政権から脱却したブラジルは、米国が成し遂げられなかったことを成し遂げることになる。選挙で敗北した後も権力にしがみつこうとした元大統領を、刑事告発によって裁判にかけるというのだ。
 しかし、ブラジルが裁判を確保するために取った方法――並外れた権限を持つ最高裁判所を通して――は、ブラジルが守ろうとした民主主義に関する厄介な疑問を、ブラジルに突きつけることになった。
 詳細:ブラジル最高裁判所での裁判は2週間続くと予想されており、捜査官が約2年かけて収集した証拠が審理される。これには、司法取引の一環として自白したボルソナロ大統領の個人秘書の重要な証言も含まれる。
【コメント】
 トランプ政権は、ボルソナロ前大統領が政治的迫害を受けていると反発し、ブラジルからの輸入品に高い関税を課す方針を示しているほか、前大統領の裁判を担当する最高裁のモラエス判事ら裁判官とその家族に対し、アメリカのビザを取り消す制裁措置をとるなど圧力を強めています。(NHKの8月5日ニュース)

3.習主席、プーチン大統領、モディ首相が結束を示唆
【記事要旨】
 中国、ロシア、インドの首脳は昨日、中国・天津で行われた首脳会議で、まるで親友のように互いに挨拶を交わし、笑い合った。
 習近平国家主席は演説で米国をあからさまに批判し、「冷戦的思考、ブロック対立、そして威圧」に反対するよう各国首脳に促した。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ戦争の責任を西側諸国に押し付けた。また、モディ首相は「多国間主義と包摂的な世界秩序の推進」、つまりインドのような国々が世界情勢においてより大きな発言権を持つ体制の推進について語った。ロシア国営メディアによると、モディ首相とプーチン大統領はその後、プーチン大統領の車内で50分間会談を行った。
【コメント】
 トランプへの対抗軸が目に見える形で現れた。世界人口のトップ2,核兵器のトップ1が、対米でスクラムを組んでいるように見える。どうするトランプ。

その他の記事
ガザ:イスラエルが停戦交渉の方針を転換し、ガザ市への新たな攻撃を計画していることから、戦闘はすぐに終結する可能性は低い。
ロシア:ブルガリア当局は、EU(欧州連合)のウルズラ・フォン・デア・ライエン議長を乗せた航空機へのGPS妨害はロシアの仕業だと考えている。
オーストラリア:極右の反移民デモが政府当局を不安にさせている。

韓国:18ヶ月に及ぶストライキの後、医師たちが職場復帰を始めた。
ビジネス:世界最大の食品会社ネスレは、部下との非公開の関係を理由にCEOを解任したと発表した。

2025年9月2日 火曜日

世界の動き 2025年9月1日 月曜日

今日の言葉
「ホームタウン」
和製英語の欠陥が露呈した例だ。英語でhometownと言えば、出身地や生まれ育った土地を意味する。Brice Springsteen の名曲 My Hometown を思い出す人も多いだろう。日本語で言う「ふるさと」に近い、やや郷愁を伴う言葉だ。
日本政府は、4つの都市をアフリカ諸国との「ホームタウン」に指名した。アフリカから移民が押し掛けることを危惧し、市への非難の電話が殺到している報道があった。
この報道で思うのは、多くの日本人の狭量さと、「ホームタウン」という言葉を無意識に使う政府の無神経さだ。
「友好都市」 a frendship city というべきだったと思う。和製英語の乱用には注意したい。

ニューヨークタイムズ電子版より
トランプ大統領はアメリカの友好国を遠ざけている。中国は彼らを味方につけることができるだろうか?
【記事要旨】
中国で開催された上海協力機構サミットには過去最多の首脳が集まり、インドのモディ首相やロシアのプーチン大統領に加え、アメリカの友好国であるトルコやエジプトの首脳も出席した。
中国は「アメリカはもはや主導権を握っていない」と示すため、非西側諸国を取り込もうとしている。
トランプ政権の関税政策や同盟軽視が、習近平国家主席に米国の友好国を引き寄せる機会を与えている。
トランプ氏のインド・ロシアへの対応(モディ首相には関税、プーチン大統領には厚遇)は結果的に中国を利する形になっている。
中国は「安定」を提供できる国としてのイメージを強調しつつも、西側の価値観(民主主義・人権)を共有できるパートナーではない。
サミット後の軍事パレードでは、第二次世界大戦における中国の役割を誇示し、軍事力と歴史を使って領土主張や国際的地位の強化を目指すメッセージを国内外に発信している。
【コメント】
日本が降伏した相手は国民党政権であり共産党政権ではなかった、というのは日本の繰り言だろうか。

その他の記事
インドネシア:プラボウォ・スビアント大統領は、抗議活動参加者の要求を受け、議員への手当を削減すると発表した。暴徒たちは昨日、財務大臣の自宅を含む議員や政府関係者の自宅を破壊した。
ガザ:イスラエルは、ガザ市への攻撃でハマス武装組織の報道官アブ・オベイダを殺害したと発表した。オベイダはアラブ世界で最も著名なハマス代表の一人だった。タイムズ紙の映像分析は、イスラエルがハーンユニスの病院を攻撃した理由と矛盾する内容だった。少なくとも20人が死亡し、救急隊員やジャーナリストも含まれていた。
米国:トランプ政権は、ガザ地区外からの参加者を含むパレスチナ人への訪問ビザの発給を停止した。

2025年9月1日 月曜日
今日から9月。「長月」は、夜長月とか稲長月が語源だと言われる。

日本の低失業率は良いことか?

日本の低失業率は、労働市場の構造・社会慣行・文化的要因が複雑に作用している。いろいろな要因を整理してみよう。
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1. 労働市場の流動性の低さ
• 欧米:失業率は「雇用の出入りの激しさ」の表れ。解雇しやすい反面、再就職もしやすい。
• 日本:長期雇用慣行(終身雇用)と解雇規制により、労働移動が少ない。
→ 企業は簡単に解雇しないので「失業者」として表に出にくい。
• その代わりに「賃金抑制」や「非正規化」で調整するため、失業率が低めに出る。
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2. 低賃金でも職にとどまる傾向
• 「失業状態」よりも「不本意な低賃金・非正規雇用」に甘んじる人が多い。
• 生活保護の利用が少なく、セーフティーネットへの心理的ハードルが高い。
• 失業率統計上は「雇用されている人」にカウントされるため、表面的に失業率は低く出る。
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3. 労働組合の弱体化
• 戦後すぐは強かった労組も、70年代以降は組織率が低下(現在は約16%)。
• 労働者の権利擁護よりも「雇用の維持」を優先する傾向が強まり、賃上げ要求力が弱い。
• 結果、企業は「雇用を守るが賃金は上げない」バランスを取りやすく、失業率は低く抑えられる。
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4. 社会的・文化的要因
• 「職を失う」ことへのスティグマ(社会的烙印)が強い。
• 家族や地域共同体の中で「仕事をしていること」が強い同調圧力になる。
• そのため、労働者自身も低賃金や非正規職を受け入れやすい。
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5. 統計の仕組み
• 総務省「労働力調査」では「就業者=1週間に1時間でも仕事をした人」と定義。
• 非正規・短時間労働者も含まれるため、実態以上に失業率が低く出る。
• 代わりに「不完全就業率(希望する労働時間を得られない人の割合)」でみると、日本は欧米と差が縮まる。
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まとめると、日本の低失業率は
• 労働市場の流動性の低さ
• 低賃金や不本意就業を受け入れる社会的要因
• 労働組合の弱体化による雇用調整バイアス
• 統計上のカウント方法
などが重なって生じていると言える。
 つまり「失業率が低い=雇用が健全」とは限らず、実質的には「低失業率・低賃金・非正規拡大」というトリオでバランスが取られているのが日本の特徴である。つまり、日本の失業率が米国やEUに比べて恒常的に低いのは、日本の経済が彼らより健全だからだ、とはとても言えない状況だ。
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 さらに言えば、低失業率の副作用というべき状況がうかがえる。日本の「低失業率」自体は一見すると健全に見えるが、その裏側には 企業経営のリスク回避姿勢や構造的な硬直性が潜んでおり、ご指摘の「内部留保の蓄積」「イノベーション不足」ともつながっていると言える。整理すると以下のようになる。
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日本の「低失業率」の副作用と企業行動への影響
1. 雇用維持が最優先になりやすい
• 日本企業は「従業員の雇用を守る」ことを社会的責任として重視。
• 解雇を避けるため、不況時には 賃金抑制や新規投資削減 でしのぐ。
• その結果、内部留保は積み上がるが、成長投資には回りにくい。
 リスクをとって新事業に挑戦するより、雇用維持を優先する構造。
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2. 労働市場の硬直性が競争力低下を招く
• 解雇しづらく、流動性が低いため、人材の新陳代謝が進まない。
• 不採算事業の人員を削減できないので、成長分野にリソースを移せない。
• 企業は「余剰人員を抱えるリスク」を恐れ、むしろ投資を控える。
  人材の流動性が低いと、企業も大胆な投資に踏み切れない。
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3. 内部留保の積み上げと投資不足
• 企業は不測の事態(円高・不況・災害など)に備え「現金・預金」を厚く保持。
• OECD統計でも、日本企業の現預金比率は主要国で突出して高い。
• この「守りの財務姿勢」が、研究開発投資やM&Aなどのリスクマネーを抑制。
  「リスクを取るより貯め込む」経営行動が固定化。
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4. 低賃金・非正規拡大が需要不足を招く
• 失業率は低いが、実質賃金は伸びず、可処分所得も伸びない。
• 企業は賃上げに消極的 → 家計消費は伸びず、需要不足 → 投資インセンティブも低下。
• 結果的に「低失業率・低賃金・低成長」が定常化。
  賃金抑制が国内市場の縮小を招き、さらに投資が減る悪循環。
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5. 世界競争における遅れ
• 米国や欧州の企業は「リストラ+新事業投資」で産業構造を更新。
• 日本企業は「現状維持+内部留保」で競争力強化が遅れがち。
• 例:デジタル産業・EV・バイオ分野で、欧米中に比べ劣後。
 低失業率を維持する社会的圧力が、逆に産業の新陳代謝を妨げている。
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  こうして分析してくると以下のように要約できそうだ。
• 日本の「低失業率」は、企業と労働者の双方が「雇用維持」に強く依存した結果。
• しかしその副作用として
    内部留保の過剰蓄積
    イノベーション不足
    産業転換の遅れ
が進んでしまった。

 つまり、低失業率は一種の「安定の罠」であり、短期的には安心だが、長期的には世界的競争力の低下を招く構造的要因になっているのだ。

 さて、日本の低失業率の副作用を解消するにはどうすればよいのだろうか。外的要因で変化せざるを得なくなりそうだ。トランプ関税、AIの飛躍的な発展でホワイトカラーの職業の多くが不要になること、日本の労働力不足解消のための外国人労働者の流入といった要因で、労働市場は大きく変動しそうだ。内的要因はどうだろうか。日本人がリスクを取ってジョブホッピングをするような心持になるだろうか。中学生に「将来なりたい職業は」と聞くと、会社員や公務員が上位に来るそうだ。外的要因を先取りして、自らが自分の道を切り開いて行ける個人が確立すると良いのだが、どうなるだろうか。

2025年8月31日 日曜日

2025年8月の市場動向 (備忘メモ)

1) 株式市場 月間リターン(8/1–8/30,)

米国
S&P 500(終値6460.26): +1.9%、NASDAQ(同21705): +1.6%、ダウ平均(同45636.90): +3.2%。8月最終週はパウエル講演を受けて長期金利が低下、月次でもプラスで終了。
日本
TOPIX(3075.18): +4.49%、日経225(42718.47): +約4%。月中にTOPIX初の3000超え・日経も史上高値圏(4.3万台)に到達、その後は持ち高調整でやや鈍化。

2) 8月の主な出来事と株価への影響
・ジャクソンホール(8/22):パウエル議長が労働市場の下振れリスクに言及し「慎重な緩和」へ含み。これで9月利下げ観測が台頭、株高・長期金利低下・ドル安に反応。
【本当に利下げの環境が整うのだろうか】
・米インフレ指標:7月PCEは概ね想定線、一方で7月PPIは強めのシグナルもあり、利下げのペースにはなお議論余地。
・ビッグテック/AI関連決算:NVIDIAは好決算でAIテーマを再点火、月末にはDell・Marvellがガイダンスを嫌気され軟調、AI関連は強弱混在で物色の回転が発生。
【利食い100人力。今は半分は利食いの時期】
・日本株の高値更新:TOPIXが過去最高、日経は史上高値圏。円安追い風と海外資金の流入が背景。月末は利益確定で一服。

3) 金利の動き(8月)
米国金利:10年国債利回りは4.22%近辺(8/29)まで低下。パウエル講演・ウォーラー理事の利下げ示唆でカーブは低下基調に。
日本金利:10年JGBは1.6%前後で推移。超長期ゾーンの需給不安で上振れする場面もあったが、月末は落ち着き。 BOJの国債買入れ漸減も続く。
【更なる金利上昇には要注意】

4) 為替(8月のドル/円・ドル指数)
ドル/円:月後半まで147–148円台中心、パウエル講演後は147円前後までドル安/円高に振れる局面。
ドル指数(DXY):月間で下落(約▲2%)。利下げ観測強まりドル安基調。

5) 今後の主なイベント(9月以降)と株価の推定
米国
CPI(8月分):9/11(米東部)。コアの減速が確認できれば利下げコンセンサスを後押し→グロース/AI・内需(住宅/小売)に追い風。逆に粘着なら金利再上昇で高PER株に逆風。
FOMC:9/16–17。足元は9月25bp利下げ観測が優勢。利下げ開始=短期は株式にポジティブ、ただし**「景気減速が理由の利下げ」なら景気敏感は選別**に。
日本
BOJの買入れ・長期金利:10年1.6%台が続くと銀行・保険に相対追い風、金利上振れはバリュー優位/グロース調整のシナリオに。超長期の需給・入札結果は引き続き要監視。

レンジ想定(1か月程度)
S&P500:+2%〜−3%のレンジ(CPIとFOMCの組み合わせ次第)。インフレ鈍化×利下げ示唆なら上限トライ、粘着インフレなら金利上振れ→テック主導の調整も。
日経225/TOPIX:円安一服なら輸出主導の上値はやや重く。一方、国内金利の高止まりは金融・商社・エネルギーに資金が回りやすい。

6) 注目セクター/個別トピック
米国
・AI関連の二極化:半導体(NVIDIA)は好業績で牽引、一方でAIサーバー需給や顧客集中を巡りサプライチェーン銘柄(例:Dell、Marvell)は決算敏感。**「コア(設計・最上流)」>「装置・部材・周辺」>「完成機」**の順で選別色。
・金利低下で:住宅関連、ディフェンシブ(ヘルスケア/公益)に資金回帰の余地。パウエル講演後のリリーフ局面では高PERの過熱感に注意。
日本
・金融(銀行・保険):イールド拡大の恩恵、超長期のボラはあるが中期で追い風。
・自動車・機械等の輸出:円安→利益率改善の継続テーマ。高値圏ゆえイベント前の利確圧力には注意。
・インフラ・エネルギー:国内金利の上昇・資源高局面では商社/エネルギーの相対優位が出やすい(選別)。

7) プライベートエクイティ(PE)&プライベートクレジット(PC)市況
PE
・ファンドレイズは鈍化継続(H1 2025で減速、Q2は前期比▲4.6%)。ただしセカンダリーや大型旗艦は引き合いが残る。北米偏重、クロージングまでの期間は平均17か月と長期化。分配の滞りがLPの新規コミットを抑制。
・ディール/エグジットは件数は伸び悩みも、金額は前年上半期比で回復。ストラテジック売却の復調が下支え。

プライベートクレジット
・AUMは高水準だが、未投資比率(ドライパウダー)が約24%との推計も。大型案件参加やセカンダリーの活性化で消化を狙う動き。利回り妙味は維持も、流動性・エクスポージャー集中など新たなリスクに注意。

一部機関投資家はPC配分のテンポを調整し、ヘッジファンド等へ回帰の兆しというサーベイ結果も。

2025年8月30日

世界の動き 2025年8月29日 金曜日

今日の言葉
「日銀の政策目標」
FRB(米連邦準備制度)の政策目標は、FOMCの度ごとに日本で詳しく報道されるので、ご存知の方が多いだろう。
法律(Federal Reserve Act)で明記されていて、いわゆる「デュアル・マンデート」:
• 物価の安定(インフレーション抑制)
• 最大限の雇用(maximum employment)
となっている。
では、日本銀行の政策目標はどうなっているのか。
日銀の場合も、法律(日本銀行法)に基づいている。
日本銀行法第2条には次のように書かれている:
日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うにあたっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
つまり公式の政策目標は 「物価の安定」 であり、FRBのように「雇用」までは明示されていない。
雇用状況を日米比較すると、
日本では確かに失業率が長期にわたり2〜3%台と低水準で推移しており、完全雇用に近い状態。(現在の失業率は2.5%) そのため日銀は 雇用水準を政策目標に掲げる必然性が低い。
逆に米国は労働市場の変動が大きいため、「最大雇用」がFRBの政策目標として制度的に組み込まれている。(現在の失業率は4.2%)  ということが言えそうだ。
日本の失業率の低さについてはまた稿を改めたい。現在の日本の地盤沈下の原因と考えるからだ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.ロシアによるキエフへの最大規模の攻撃
【記事要旨】
昨日、キエフに向けて数時間にわたるミサイルとドローンの集中攻撃が行われ、4人の子供を含む少なくとも18人が死亡した。トランプ大統領がプーチン大統領と会談してから2週間足らずでのキエフへの最大規模の攻撃は、アメリカの最近の外交努力がロシアとウクライナの平和に全く近づいていないことを示している。
「ロシアは交渉のテーブルに着く代わりに弾道ミサイルを選んだ。戦争を終わらせる代わりに、殺戮を続けることを選んだ。」とゼレンスキー大統領は述べた。」
トランプ大統領は、プーチン大統領によるウクライナへの攻撃に不満を表明しているが、ロシアに対する新たな制裁を課すという脅しは実行に移していない。
キエフにあるEUミッションとブリティッシュ・カウンシルの建物が攻撃で被害を受けた。英国は、ロシア大使を召喚し、攻撃に抗議したと発表した。
ゼレンスキー大統領は、首席補佐官と安全保障会議議長が本日ニューヨークでトランプ大統領のチームと会談し、将来の和平協定に含まれる安全保障上の保証について協議すると述べた。
ロシアとその同盟国は、米国とその同盟国がドイツ経由で軍事物資を輸送するために使用しているルート上空で偵察ドローンで飛行させている。
【コメント】
プーチン大統領に自制は無い。あるのはトランプの弱腰に乗じて、最大限の譲歩をウクライナから獲得することだ。アラスカ会談が開催されたので、トランプの和平への熱はすっかり冷めているようだ。

2.イスラエル予備役、ガザ攻撃に不参加?
【記事要旨】
イスラエルはガザ市攻撃のために数千人の予備役兵を招集する準備を進めている。しかし、当局はどれだけの人が戦闘に復帰するか確信が持てない。
ここ数ヶ月、イスラエル予備役兵の兵役不参加が増加している。戦争に幻滅した者もいれば、レバノン、シリア、ヨルダン川西岸といった複数の戦線での長期にわたる派遣と戦闘で疲弊した者もいる。
イスラエル政府は軍がガザ市への全面攻撃を計画していると発表したが、兵士はまだ市の大部分に展開していない。しかし、ガザ市のザイトゥーン地区では数週間前から作戦を展開し、それまでほぼ無傷だったザイトゥーンはイスラエル軍の爆撃によって壊滅状態にある。
【コメント】
なるほど。予備役の人たちも喜んで戦場に向かているわけではないのか。超正統派の扱いと並んで政府にとっては頭の痛い問題のようだ。

3.欧州諸国、対イラン制裁の復活へ
【記事要旨】
英国、フランス、ドイツは昨日、国連に対し、イランが2015年の核合意に違反したため、合意に基づき停止されていた制裁を復活させる計画だと報告した。
国連決議で概説されている「スナップバック制裁」への動きは、制裁が復活する前に30日間の交渉期間を設けるものだ。イランはこの動きを違法とし、国連の核監視機関との「継続的な対話プロセス」を損なうものだと主張した。
【コメント】
「スナップバック」は、2015年にイランと欧米などとの間で成立した国際的な取り決め、「核合意」によって解除されたイランに対する国連の制裁を再開させる措置です。
核合意の参加国がイランに合意違反があると判断した場合、国連安全保障理事会に通知したうえで、手続きを経て制裁を再開させるもので、措置の発動期限は、ことし10月18日までとなっています。
国連の制裁が再開された場合、イランはウラン濃縮活動の停止を求められるほか、金融や武器の取り引きなどが制限されることになります。(以上NHKより)

その他の記事
米国:FRB理事のリサ・クック氏は、トランプ大統領による解任決定を理由に訴訟を起こした。CDC長官のスーザン・モナレス氏は、ホワイトハウスが解任を表明したにもかかわらず、辞任を拒否した。
北朝鮮:金正恩委員長は来週、他の世界の指導者らと共に軍事パレードに参加するため北京を訪問する。
香港:メディア王のジミー・ライ氏の裁判は昨日終結したが、釈放されるかどうかは政治的な判断となる可能性がある。

インド:新たな50%の関税は、同国の新興太陽光発電産業を打撃を与えている。
小売業:トランプ大統領の高関税は、かつてはブラジルとインドを製造の安全な選択肢と見ていた米国の中小企業に大打撃を与えている。

文化
『K-POPデーモンハンターズ』の秘密
悪魔のようなボーイズバンドに立ち向かう3人のポップスターを描いたアニメミュージカル『K-POPデーモンハンターズ』は、じわじわと人気が高まり、一大現象へと発展しました。Netflix史上最も視聴された映画です。
同僚によると、この成功の最も知られていない側面の一つは、映画がファン層を理解している点です。この映画は、アニメやK-POPといったニッチなファン層を巧みに捉えています。ファンの存在は、映画のキャッチーな楽曲がポップチャートを駆け上がるのに貢献しました。ファン層は物語の重要な推進力でもあり、コンサートシーンでは熱狂的なファンのショットが数多く登場します。

2025年8月29日 金曜日