タックスヘイブン化するアメリカ

 20年程前に、ケイマンに出張で行ったことがある。日本で投資活動を行うファンドの設置場所をケイマンにしたからだ。ファンドの活動に課税されない無税国であることがケイマン籍にした大きな理由だった。出張時に、現地の人に、国の財政はどうしているのかと聞いたら、ファンドに関する手数料収入と、輸入品に対する関税が国の主たる財源と聞いた。 

 トランプ次期大統領の高関税政策が論議を呼んでいる。中国には60%、その他の国には10-20%の関税をかけようというアイデアだ。

 以下の数字はすべてCopilotが提供してくれたものに依存している。

 米国の中国からの輸入総額 $448.02 billion
 60%の関税をかけると     268.81 billion

  米国の他の国からの輸入総額 $3.38 trillion
  15%の関税をかけると     507 billion

  トランプ関税による収入総額は 775.81 billion

 2023年の米国の連邦税収入総額は   1.2 trillion

そうすると、トランプの高関税策は、連邦レベルの税収の
実に64.7%を賄うことになる。

 トランプは、法人税の減税と所得税の減税も公約にしており、もしそれらの減税と、関税の引き上げが実現すると、米国の税収構造は、あたかもカリブ海のタックスヘイブン諸国と同じようになる。

 世界の警察官としての軍事予算を削減し、ワクチンをはじめとする医療費を減らし、医療保険への政府の関与を減らし、連保政府の支出を20%削減する。国家の役割を対外的にも対内的にも極力抑えようとトランプ政権はしている。

 これらも相まって、トランプの作り上げる米国は、全くタックスヘイブンそのものに見えることになる。

2024年11月17日 日曜日

米民主党はRoad Killされた

 今日は米国の友人からのメールを紹介したい。彼は民主党の熱烈な支持者ではないが、トランプが大統領になればファシズムが始まることを真剣に憂慮していた。このメールは、大きな失望に終わった選挙結果をRoad Killに例えて分析している。

 『アメリカの田舎では、夜間に可愛い狸など、動物が道路を横断しようとして、突然近づいてくる車のヘッドライトに照らされて目が見えなくなることが珍しくありません。反応が間に合わず、動物がついペッタンコになってしまうのです。見て悲しいことです。この現象をロードキルと呼びます。
 カマラ・ハリスは 11 月 5 日、ドナルド・トランプのヘッドライトを巧みに回避できませんでした。彼女の得票数は、2020 年の選挙にバイデンが得た票より 1500 万票も少なく、バイ
デンの得票数を上回った郡は一つもなかったのでした。
 7 つの激戦州全てでトランプに敗れ、中西部の所謂 「青い壁 」も、トランプの猛威の前に崩れ去りました。
 選挙結果地図を見ると、アメリカの大部分は赤に染まり、接
戦ですらなかったのです。大統領職だけでなく、議会も共和
党に奪われてしまいました。彼女は文字通りロードキルの如く潰されたわけです。目撃して悲しかったです。』

 私の友人の民主党の敗因の分析はこの後数ページにわたって続くが、今後どのように勢力を挽回するかについての建設的な議論は、残念ながら、無い。

 今はトランプ劇場が万座の注目を集めているが、第一期のトランプ政権の教訓は、トランプはとんでもない過ちを犯す恐れがあるということだ。今はトランプに尻尾を振っている人たちも離反する可能性は大だ。そうした際には、堅固な民主主義を守る勢力としての民主党に再度注目が集まる状況を期待したいものだ。

2024年11月16日 土曜日

世界の動き 2024年11月15日 金曜日

今日の一言
「関税」
トランプの高関税政策が注目されている。
世界のタックスヘイブン、たとえばケイマン諸島では、所得税も諸費税もない。国は何を国策実施の原資にしているかと言うと関税だ。
国内で殆ど消費財の生産が出来ないケイマンではすべてを輸入に頼っているので、物価は高い。関税を含むからだ。
こうした関税に頼る経済運営は、ケイマンのような小国だけ可能と思っていたが、米国では法人税と所得税を下げ、関税を上げ、政府支出を極小化し、タックスヘイブンのような経済を目指しているように見える。

ニューヨークタイムス電子版よりTop3記事
1.トランプ人事、共和党も驚かす
【記事要旨】
共和党議員たちは、次期大統領ドナルド・トランプ氏の政権の重要な役職に対する指名に驚きと失望を示した。特に、司法省のトップにマット・ゲーツ氏を指名したことに対しては懐疑的な反応があった。ゲーツ氏は性的不正行為などの倫理調査の対象となっている元下院議員であり、一部の共和党議員からは「まともな候補者ではない」と評されている。
トランプ氏は経験豊富な候補者ではなく、声高な支持者を選ぶことでワシントンの規範を打ち破ろうとしている。彼の指名は、上院共和党に対する最初の力の誇示でもあり、彼らは指名を承認するために大きな圧力を受けることになります。
また、トランプ氏は国防長官にフォックスニュースのホストであるピート・ヘグセス氏を、国家情報長官に元民主党議員のトゥルシー・ギャバード氏を指名しました。これらの指名も注目を集めています。
共和党 は下院の支配権を確保し、トランプ氏が就任する1月にはワシントンでの上下両院を支配することになる。
【コメント】
お友達を集めて好き放題にすると言うスタンスが明らかだ。しかし大統領選でトランプに投票した人はこれを望んでいたはずだ。

2.イスラエルで記録が改ざんされていたか
【記事要旨】
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近が、10月7日のハマスによる攻撃の朝に将軍からの電話記録を改ざんした疑いで調査されている。この将軍は、数百人のハマス戦闘員が侵入準備をしていることを首相に知らせようとしていた。
この疑惑は、最近ネタニヤフ首相の側近に対して提起された複数の疑惑の一つであり、ネタニヤフ首相自身はこの調査の対象ではない。
他の中東ニュース:
イスラエルはガザの人道的ゾーンに指定されたテントキャンプを爆撃し、ダマスカスのパレスチナ・イスラム聖戦(PIJ)に関連する場所を空爆した。これにより少なくとも15人が死亡した。
【コメント】
米大統領が就任する1月までイスラエルは攻撃の手を緩めることは無いだろう。市民の死傷者は増える一方だ。

3.気温目標は達成困難
【記事要旨】
過去1年間で国々は温室効果ガスの排出を十分に削減できず、地球温暖化が危険なレベルに向かって進んでいるという報告が、国連気候サミットで発表された。2015年のパリ協定では、世界の指導者たちは、工業革命前の水準から2度の上昇を目指すかなり緩い目標達成を約束したが、この目標はますます達成困難になっている。現在の気候政策に基づいて、気温は2100年までに約2.7度(4.9度ファーレンハイト)上昇すると、気候変動追跡グループ(Climate Action Tracker)は推定している。
【コメント】
目標未達成でもペナルティがあるわけでは無く、所詮努力目標だ。必死に達成するというインセンティブが無い。企業や消費者を市場システムでインセンティブを与えるのが唯一の手だが、上手いやり方が見つからない。

その他の記事
ノルウェー:
議会は、サーミ人や他の先住民を沈黙させ、彼らの子供たちを寄宿学校に強制した政策について謝罪した。
テクノロジー:
EUは、Facebook Marketplaceで競争法に違反したとしてMetaに約8億4000万ドルの罰金を科した。
ニューヨーク:
知事は、マンハッタンの最も混雑した地域へのドライバーの進入に料金を課す渋滞料金プログラムを復活させた。

野球:
大谷翔平選手の50本目のホームランボールが現在、台湾で最も高いビルである台北101内で厳重な警備の下展示されている。

2024年11月15日 金曜日

世界の動き 2024年11月14日 木曜日

今日の一言
「D.O.G.E.」
いま注目を集めている言葉だ。以下BBCの記事から。
『トランプ次期大統領は12日、自らの新政権で「政府効率化省(DOGE)」を新設し、そのトップに実業家イーロン・マスク氏を起用すると発表した。
マスク氏は、政府予算のほぼ3分の1に当たる少なくとも2兆ドル(約310兆円)を、連邦政府の支出から減らすよう求めた(具体的に何を減らすべきかには言及していない)。また、連邦政府機関には責任の範囲が重なっているものが多いとし、何百かの機関を廃止するよう提案している。
トランプ氏は、バイオテクノロジー分野の投資家ヴィヴェク・ラマスワミ氏も、政府効率化省でマスク氏と仕事をすることになると説明した。ラマスワミ氏は予備選で、連邦政府職員の75%以上を解雇し、教育省や連邦捜査局(FBI)、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局など、いくつかの主要連邦機関を閉鎖すると主張していた。
トランプ氏は、ホワイトハウスや行政管理予算局と協力し、年間6兆5000億ドル(約1000兆円)の政府支出における「大規模な無駄や不正」と闘うとした。』
筆者がニューヨークで都銀の支店に勤務していた時に内部監査の責任者として米国当局の監督を受けた。州の銀行局と連邦準備銀行FRBが監督官庁だった。預金を受け入れているとこれにFDIC(連邦預金保険公社)の監査を受ける。
随分検査負担が大きかった記憶があるが、連邦レベルの監督・監査を削減し州に一元化するようなことになれば楽にはなるが、それぞれの当局により規制の狙いが少しづつ違うので、監督の目の粗さが出ないか気になるところだ。

ニューヨークタイムス電子版よりTop3記事
1.トランプ氏、ワシントンで勝利の行進
【記事要旨】
トランプ次期大統領は昨日、ホワイトハウスに凱旋し、大統領執務室でバイデン大統領と短時間会談した。
「おかえりなさい」とバイデン氏は述べた。これはトランプ氏の政権復帰を阻止できなかったことを認める発言だった。
バイデン氏との会談前、トランプ氏は歓喜に沸く共和党議員の前で演説した。
ランプ氏と一緒にいたのは、イーロン・マスク氏だった。

国防長官:トランプ氏は、フォックス・ニュースの司会者で軍経験のあるピート・ヘグゼス氏を国防長官に指名したが、これは異例の選択だ。
アメリカ第一主義チーム:トランプ氏はまた、フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員を国務長官に、元民主党下院議員のトゥルシ・ガバード氏を国家情報長官に指名した。彼らはアメリカ第一主義を優先するチームを編成している。

トランプ氏についての動き:
・上院共和党は、トランプ氏が指名したリック・スコット氏を退け、ミッチ・マコーネル氏に代わる院内総務にジョン・スーン氏を選出した。
・トランプ氏は、人身売買の疑いで捜査を受けているマット・ゲーツ下院議員を司法長官に指名すると述べた。
・選挙運動中、トランプ氏は教育省の閉鎖を提案したが可能だろうか?
・下院は共和党が僅差で過半数を獲得する可能性が高い。

(今、下院も共和党が過半数と言う報道があった。大統領、上院、下院すべてを共和党が支配することになった。民主党は嫌われたものだと言えるし、米国民は劇薬の服用を選んだとも言える。)

・ファッションとワイン業界は、関税引き上げに備えている。
【コメント】
トランプは言ったことは必ずやる人だ。楽観視せずに準備が必要だ。

2.ウクライナは平和の優先順位を変えつつある
【記事要旨】
トランプ大統領がウクライナ戦争の早期終結を推し進める中、ロシアが占領している領土の譲渡を何カ月も拒否してきたウクライナ当局は、現在停戦の保証を優先している。
「領土問題は極めて重要だが、第一の問題は安全保証だ」とウクライナの高官は語った。
キエフの当局者は、ロシアからの新たな攻撃を防ぐため、NATO加盟を求めている。クレムリンは、そのような動きは停戦協定の交渉を決裂させると示唆している。西側諸国の当局者は、ウクライナのNATO加盟を望んでいるが、急速な加盟を望んでいないと示唆している。
今後の動向:ブリンケン国務長官がNATO本部を訪問し、バイデン政権後の将来計画を協議した。
地上では、ロシアがキエフにミサイル一斉射撃を行い、首都への2か月以上続いた攻撃の休止に終止符を打った。
【コメント】
ウクライナにさえ自助あるいは欧州での共助を要請するトランプは台湾有事にはどう反応するのだろうか。尖閣への安保条約の適用も定かでない。

3.ネタニヤフ首相は予定通り証言しなければならないと裁判所が判決
【記事要旨】
イスラエルの裁判所は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が12月2日に予定している汚職裁判での証言を延期するよう求める新たな要請を却下した。
ネタニヤフ首相は、自身と家族への贈り物や同情的なメディア報道と引き換えに大物実業家に便宜を図ったとの容疑で、贈収賄、詐欺、背任の罪で起訴されている。同首相は容疑を否認している。

その他の中東のニュース:
・米国が先月、援助の流入が増えなければイスラエルへの軍事援助を削減すると脅したにもかかわらず、ガザへの援助は依然として低い。
・過激派グループは、10月7日にハマスに人質に取られたイスラエルとロシアの二重国籍を持つサーシャ・トルファノフのビデオを公開した。
・CIA職員が、イスラエルのイランへの報復計画を示すと思われる機密文書を漏洩した罪で起訴された。
【コメント】
ネタニヤフもトランプ同様に刑事事件を抱えている。何としても権力を維持したい誘引がある。

その他の記事
インド:
最高裁は、報復として国家当局が人々の家や事業所、特にイスラム教徒の家を破壊する「ブルドーザー司法」を違法とした。
フランス:
壊滅的な火災から5年を経て、パリのノートルダム大聖堂は12月7日に一般公開を再開する。
気候:
COP29サミットの交渉担当者は、低所得国の適応を支援するために数兆ドルが必要だと合意している。誰が支払うべきかで合意に至っていない。

2024年11月14日 木曜日

世界の動き 2024年11月13日 水曜日

今日の一言
「孫正義さん」
SOFTBANKグループの収益が大きく改善している。以下NYタイムズの記事だ。
『ソフトバンクの利益は、ビジョンファンド部門の大きな帳簿上の利益を受けて急増(筆者注:約1兆円)。孫正氏のハイテク投資大手は、最初のビジョンファンドが複数のポートフォリオ企業の評価額​​上昇(筆者注:約6000億円)の恩恵を受けた後、2年ぶりの四半期利益を記録した。ソフトバンクのさらなる立て直しを主導しようとしてきた孫氏にとっては朗報だが、利益の急増が物言う投資家のエリオット・マネジメントをなだめるのに十分かどうかは不明だ。』
現在日本を代表する経済人としては孫さんがナンバーワンだ。ただ、投資の目効きとして有名だが実業を率いているわけでは無い。実業の孫さんが出てこないと日本の再浮上は厳しいと思う。

ニューヨークタイムス電子版よりTop3記事
(6時半現在タイムズからの配信はありません。そこで
今日は勝手に私が3つの記事をいろいろなメディアから選びます)
1.トランプのAI規制(GZEROAIより)
【記事要旨】
アメリカ進歩センターのミーガン・シャヒ氏は、トランプ政権の規制緩和がAI企業にとって複雑なシステムを生み出すと述べています。規制を可決する州に住む人々には有益かもしれませんが、規制のない州の人々には有害です。国家基準の設定が期待されていますが、すぐには実現しそうにありません。トランプ氏は介入せず、技術アジェンダの多くを信頼できるイーロンマスクのような同盟者に委ねると予想されています。
【コメント】
バイデンの国レベルでの規制努力は廃止されるのだろうか。

2.イーロンマスク(Bloombergより)
【記事要旨】
トランプ次期米大統領と各国首脳との電話会談に、イーロン・マスク氏が再び参加した。セルビアのブチッチ大統領は、トランプ氏と10日に行った電話会談にマスク氏も参加していたと明らかにした。トランプ氏が先週、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した際にもマスク氏は参加していた。自身の富と影響力でトランプ陣営を支えたマスク氏の立場がうかがえる。
【コメント】
なるほど。凄い影響力だ。トランプとマスクはケミストリーがピッタリ合うのだろう。今のところは。

3.トランプトレードを阻止できるものはあるだろうか?
(NYタイムズより)
【記事要旨】
投資家は次期大統領が税金や官僚主義を削減し、成長を強化するとの期待からトランプトレードの上昇に飛びついている。
しかしウォール街の経済学者の中には、ドナルド・トランプの関税と減税の計画がインフレを再燃させ、財政赤字を増やすと警告し続けている者もいる。そして、彼の同盟者たちは、市場の上昇は伝統的な専門家が間違っていることを示していると言っている。
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者リサ・シャレット氏は昨日の顧客向けメモに記した。同氏は、債券投資家はインフレ率の上昇と債務調達コストの上昇(35兆ドルの債務の山も一因)を懸念しており、これが新政権の足かせになる可能性があると指摘する。
【コメント】
ビットコイン、テスラ、ナスダック銀行指数はここ数年で最高の上昇を見せており、アナリストはさらなる上昇が見込まれるとみている。証券会社のセールスやトレーダーのボーナスか株価上昇で大きく潤う。彼らのポジショントークを真に受けるのは危険だが、目の前の上昇に手をこまねいているのもなんだかなーという感じだ。

いま6時45分、やっとタイムズから配信がありました。
その他の記事
ロシア:
議員らは、出生率低下を逆転させようとするクレムリンの広範な取り組みの一環として、「子供を産まない」という考え方を宣伝することを禁止した。
中国:
南部の珠海市で、男が車で群衆に突っ込み、少なくとも35人が死亡した。
ドイツ:
オラフ・ショルツ首相の連立政権が崩壊し、2月23日に総選挙が実施される。
気候:
国連の気候サミットで、英国は先進国の中で最も迅速かつ野心的な気候目標を発表した。
英国:
米国の裁判所に提出された書類によると、元従業員はモハメド・アルファイド氏がハロッズを所有していたときに人身売買され、レイプされたと訴えている。
オランダ:
控訴裁判所は、シェル社に対し、2030年までに二酸化炭素排出量を45%削減するよう命じる判決を覆した。
宗教:
ルイジアナ州の連邦判事は、すべての公立学校の教室に十戒を掲示することを義務付ける州法を差し止めた。

2024年11月13日 水曜日