世界の動き 2022年5月19日 木曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より
今日の一言:
「敵の敵は味方」
 The enemy of the enemy is an ally

1.トルコはNATOの拡大を阻むか?
【記事要旨】
 水曜日にスウェーデンとフィンランドはNATO参加要望を正式に発表するが、同日トルコは反対を表明。同国の政治問題、特にトルコ政府がテロリストと見做すクルド人グループへの西側の支持、に国際的な譲歩を引き出し、エルドアン大統領の地盤固めを狙う動き。また、ハンガリーのオルバン首相は西側のロシアからのエネルギー輸入阻止の努力に反対している。
【コメント】
 トルコ(というやや「異分子」)がそもそもNATO加盟国というのが不思議。ロシアはそのころは不満を漏らさなかったのだろうか。いずれにして外国を見ると外交カードの使い方がとても上手。我が国も外交上の揉め事や懸念が数多くあるが、交渉の引き出しの使い方が上手くない。

2.北朝鮮は中国を習う
【記事要旨】
 コロナの感染爆発が発表され金正恩主席は中国に倣えと指令したが、通常の食料確保が困難で医薬品が不足する北朝鮮では中国型のロックダウンは破局をもたらすと専門家は指摘。検査キットの不足する北朝鮮では発熱者を公表しているがすでに数十万人を数える。
【コメント】
 中国からワクチンと治療薬を入れているようだが、国民全員をカバーできるのには長い時間がかかるだろう。

3.中国の新しい検閲
【記事要旨】
 中国政府のインターネット検閲で、発言者の場所がタグ付けされる規制が始まった。海外や地方からの政府批判発言を見つける狙い。政府批判の意見には、国家主義的なユーザーから、反政府主義者、独立派、非愛国者、クズ、といった罵詈雑言が浴びせられている。場所のタグ付けはロシアのウクライナ侵攻以来始まったが、上海でのロックダウンへの批判が噴出するいまは、広く非愛国者を指摘するために使われている。
【コメント】
 ますます統制の強化された生きにくい世界が身近に迫っている。

その他:
ロシアとウクライナの捕虜の取扱い
Russia said that nearly 1,000 fighters had surrendered to Kremlin custody at the Mariupol steel plant.
In a Kyiv court on Wednesday, a Russian soldier pleaded guilty to having shot a civilian, during the first Ukrainian trial for a potential war crime.
日本の観光客入国制限緩和
Japan will admit small groups of fully vaccinated and boosted tourists from the U.S. Thailand, Singapore and Australia as a test before reopening fully.
米国でのインド的な火葬
A small Colorado town maintains the only public outdoor funeral pyre in the U.S., a common practice in India. One man, Dr. Philip Incao, saw in it his own perfect ending.

(2022年5月19日 木曜日)

世界の動き 2022年5月18日 水曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より
今日の一言:
「撤退」か「降伏」か?
 日本の報道でマリウポリの状況について「撤退」か「降伏」か使われる言葉が違っている。以下をみればわかるがタイムズは「撤退」派だ。
 鉄鋼所に残ったウクライナ部隊はロシア軍に投降したのが事実のようだから「降伏」という用語が正しいのではないかと思う。
記者の心境で言葉が選ばれるのは避けられないが、事実に近い用語が尊重されるべきだ。

1.危機のふちをふらふら歩くスリランカ
【記事要旨】
 新首相Ranil Wickremesingheはスリランカの経済状況の現実は30年間の内乱で外見より悪く、石油の輸入のために5百万ドルを使うことも出来ず油槽船が沖待ちしていると表明。国民の多くは食料の確保が困難で燃料は使えす医療品は病院に供給されていない。前政権Rajapaksa一族の支配下で外貨準備は2019年の75億ドルからゼロに減少。他の中低所得国の経済もウクライナの戦争と中国の経済停滞で大打撃を受ける。
【コメント】
 圧政と腐敗という人為的要素が経済を窮地に陥れている。新政権が急に状況を改善するのは困難だから、成長路線に戻れる基本路線を支える国際的な支援と国民の我慢強さが必要だ。

2.上海ではロックダウン継続
【記事要旨】
 市保健局は上海は「社会的ゼロ(コロナ)」を達成したと発表したが、住民はロックダウンの継続と不満をWeiboで発表している。一部ビジネス、バス交通は再開するが、感染テストを強制され移動できず日用品に事欠く市民の不満は高まる。市当局は6月までに制限は全廃と言うが、学校や文化施設の閉鎖は続いている。
【コメント】
 世界の動きから見ると明らかに「非合理」な政策をどのように剛腕中国政府が軟着陸させるかは見もの。話はそれるが、日本での入国制限の緩和は大きな混乱を招きそう。「統一感」も「剛腕」も無いので。

3.インドのヘルスワーカーの状況
【記事要旨】
 100万人の女性がインドの女性・子供という弱者にヘルスケアを提供している。パンデック下での激務後、これらのワーカーは現状月40ドルほどの給与の150ドルへの引き上げを要望している。インドでは公的医療は貧弱で医師60万人、看護師2百万人が不足していると言われる。これらワーカーは僻地医療を支えワクチン接種の推進に大きな役割を果たした。
【コメント】
 こうした一部の人たちの英雄的努力に支えられるいるのは、日本でも同様なのかなと思う。医療制度のメッシュを見回して、足らずを補いダブりを無くす努力を政府にはしてほしい。それが出来るのは政府だけだ。

その他:
ヒズボラってまだ勢力を持っていたのか
Hezbollah lost its majority in Lebanon after voters pulled for independent candidates in parliamentary elections.
マリウポリの状況
Ukraine declared an end to its combat mission in Mariupol and ordered some soldiers at the steel plant to surrender to Russian forces.
カナダの英王室への考え
Canadians widely respect Queen Elizabeth II, the ailing 96-year-old British monarch. But many are increasingly skeptical of the monarchy and also dislike Prince Charles, who is touring the country this week to celebrate her Platinum Jubilee.
“The general approach now in Canada is that the monarchy is there, it’s not broken,” one expert said. “Don’t deal with it, but also don’t give it any more room than it actually needs.”

(2022年5月18日 水曜日)

世界の動き 2022年5月17日 火曜日

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
 日経新聞に「身代金要求ウィルス」が大きなビジネスに育っているとの報道があった。毎日メールを開くを数多くのフィッシングメールが届く。便利な道具には危機が忍ばされているのだ。
 「感度を高め引っかからないように個人的な努力を続ける」ことしか有効な対策はなさそうだ。ジャンクメール・フィッシングメールをしっかり押さえてくれる対策ソフトはまだない。有効なソフトが開発されれば巨大なビジネスになるだろう。

1.ロシアでは東部での攻勢を弱める
【記事要旨】
 米ISW研究所の発表ではロシアは侵攻当初の計画を縮小しドンバス地域の確保を目標にしているがそれにも頓挫している。日曜にウクライナ軍はウクライナ第二の都市カルキウ近郊でロシア国境に到達した映像を公開。NATOはフィンランドとスウェーデンの加盟を早期に承認の見込み。NATO14か国からの軍隊がエストニアで大規模演習を実施。ロシアでは戦争可能な予備役も払底し民間企業や私的軍隊を動員。ロシア国民の多くにはそうした状況は知らされていない。
【コメント】
 NATOに対抗しプーチンはロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)のサミット開催した。参加諸国からの積極的な支持は得られなかった模様。プーチンの表情に精彩が欠ける。健康不安説は本当だろうか。

2.オーストラリアでの山火事がもたらすもの
【記事要旨】
 2019年から2000年に発生した山火事で焼失した家宅はまだ10分の1しか再建されていない。政権にある保守同盟は議会で1議席の多数を有するのみ。従来都市部は弱く、地方で支持を得ていたが、山火事で、日曜の総選挙では、保守が大敗する可能性がある。
【コメント】
 気候変動が直接政治への変化をもたらす事例だ。日本でも集中豪雨や台風の激化があるが、それが政治に変化を求めるまでには至っていない。日本の政治環境は緩くそれが現政権を安定させている。

3.北京大学でコロナ対策へ抗議
【記事要旨】
 学生によれば、「教師や家族が自由にキャンパスの出入りが出来るのに、学生は食料に不足し孤立している。この状況はジョークだ。」 抗議に対し当局は壁の設置て対応。当局は情報の拡散を押さえるが、北京大学は従来文化と政治面で特殊な地位を占め動向が注視される。
【コメント】
 天安門事件も北京大学の学生の動きが発端だった。今は小さな動きかも知れないが北京でどのように動きが広まるか続報に期待したい。

その他:
フランスの首相は左派から
President Emmanuel Macron of France named a new, left-leaning and climate-focused prime minister: Élisabeth Borne. Currently the minister of labor, she will be the second woman to occupy the position.
バッファローでの銃乱射事件の理論的根拠
Some right-wing politicians have helped promote “replacement theory,” the racist ideology that the gunman espoused. In recent years, other perpetrators of mass shootings have also cited the idea, popularized on Tucker Carlson’s Fox News show.
修道女の生活が見られる?
Nuns are joining TikTok, offering a window into their cloistered experiences. “We’re not all grim old ladies reading the Bible,” one said.

(2022年5月17日 火曜日)

世界の動き 2022年5月16日 月曜日

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
 沖縄復帰から50年。私が20歳の時の出来事だったが、その時の興奮は良く覚えている。佐藤首相の名言「核抜き、本土並み」も。
 国際情勢は米軍基地を簡単に減らせない状況にあるが、基地機能の集約化、日米地位協定の改訂を進めてもらいたいものだ。

1.北朝鮮での感染爆発続く
【記事要旨】
 政府は発熱症状のあるコロナ患者は金曜の18000人から土曜には174400人になったと発表。先月来の累計は524400人。北朝鮮では一部エリート以外はワクチン接種が進んでいない。韓国は検査キット、ワクチンや治療薬の支援を表明。
【感想】
 あれだけ厳格なゼロコロナ策を取ってきてもウィルスの侵入は防げず、一度侵入されたらワクチン未接種の国民にあっという間に広がる。26百万を擁する国家での舵取りが注目される。経済政策と違い部下の責任には出来ないだろうから金政権を揺らがせる事態になりかねない。

2.インドは小麦輸出を禁止
【記事要旨】
 世界的な食糧需給の不安定に対応し世界第二位の小麦生産国であるインドの食糧相は輸出禁止を発表。4月にモディ首相はバイデン大統領に小麦備蓄の放出を約したのにこの決定発表。ウクライナとロシアの戦争、黒海の封鎖、インドの熱波、中国の豪雨が重なり小麦生産は打撃を受けている。
【感想】
 前にも書いたがリスクはいくつか同時に顕在化するとコントロールが急に困難になる。人の努力で解決できるのは「戦争」だ。世界の指導者が努力してウクライナでの戦争を止めることが「今」求められている。

3.韓国で手術室の録画が義務化
【記事要旨】
 韓国は全身麻酔下で手術する際は録画を義務化する数か国の一つになった。医師の監督がない手術が過去8年で5件の死亡事故をもたらした。医師が手術を看護師に代役させ手術手続きを膨らませ収益の最大化を目指していると監視グループは語る。倫理学者と医師からは、患者のプライバシーの保護、医師のモラル維持、危険のある手術への取組へのしり込み、といった問題があるという指摘がある。
【感想】
 国立大学の付属病院で不慣れな医師が患者を何人も死なせた事件があったが、その後の議論はどうなっているのだろうか。喉元すぎれば日本のマスコミは取り上げない。

その他:
NATO加盟
Finland’s government and Sweden’s governing party confirmed that they would seek NATO membership on Sunday, another strategic setback for Russia.
UAEの指導者
The U.A.E. has a new leader, Sheikh Mohammed bin Zayed Al Nahyan. His half brother Sheikh Khalifa bin Zayed died on Friday, after leading the Persian Gulf country for 18 years.
K-Tatooですか。
Tattooing without a medical license is illegal in South Korea, where decorative body art has long been associated with organized crime. But the law is crashing into rising international demand for what are known as “k-tattoos,” and the country’s tattoo artists argue that it’s time to end the stigma against their business.

(2022年5月16日 月曜日)

コロナ後遺症をめぐる労務問題

5月14日付のニューヨークタイムズによれば、米国では約700万人がコロナの後遺症で就業不能に陥り、大きな社会問題になっているとのことだ。

 米国での最近までの陽性確認数の累計は8240万人だから、感染者の約8.5%が後遺症に苦しんでいることになる。タイムズの記事によれば、症状が軽かった若者が仕事に戻ってほどなく後遺症に苦しむ事例が多いそうだ。後遺症での休職は失業保険の対象だそうだが、後遺症かどうかの認定が簡単ではなく、保険をもらえずに職場に居づらくなって退職する若者が多い。米国で採用しようにもできない仕事のうちの15%がこういったコロナ後遺症で充足できないのだという。後遺症はワクチン接種率の低い南部で多く見られ、接種の進む北東部との新たな南北問題の発生という見かたも出て来ている。

 日本の感染者累計は833万人。米国の約10分の1だ。さすれば、我国でも、70万人ぐらいはコロナ後遺症に悩む若者がいてもよさそうだが、日本では後遺症に関する報道は極めて少なく、詳細はやぶの中だ。

 厚生労働省のHPを見ると以下の記述がある。
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<感染し休業する場合>
問1 新型コロナウイルスに感染したため会社を休む場合、休業手当は支払われますか。
回答: 新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当は支払われません。 なお、被用者保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。 具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。 具体的な申請手続き等の詳細については、加入する保険者に確認ください。
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一方、後遺症についての厚生労働省の説明は以下だ。
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<感染後の職場復帰>
問2 新型コロナウイルス感染症に感染し、治療・療養が終わりましたが疲労感、息苦しさなどの症状が続いています。どうしたらよいでしょうか。
回答:新型コロナウイルス感染症になった後、治療や療養が終わっても一部の症状が長引く人がいることが分かってきております。長引く症状(いわゆる後遺症)については、令和3年6月16日に以下の様に3つの研究班から報告されており、詳細は参考からご確認頂けます。今後も引き続き研究を進め、新たに分かってきた情報については順次明らかにして参ります。
療養後にもこのような症状が継続している場合には、使用者は労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮を行うこととされていることなどを踏まえ、主治医等の意見を聞いた上で、会社の担当者等に勤務時間の短縮やテレワークの活用等の負担軽減の措置がとれないかご相談いただくことが重要です。
① 2020年9月~2021年5月にCOVID-19で入院した中等症以上の例において、退院3ヶ月後に肺CT画像上で何らかの画像所見があった者は353例中190例、肺機能検査の結果では肺拡散能(DLCO)が障害されやすい、自覚症状はとして筋力低下と息苦しさは明確に重症度に依存
② 2020年1月~2021年2月にCOVID-19 PCR検査もしくは抗原検査陽性で入院した症例のうち、診断後6ヶ月経過した246例において症状が残っている人の割合は、疲労感・倦怠感21%、息苦しさ13%、睡眠障害・思考力や集中力低下11%、脱毛10%、筋力低下・頭痛・嗅覚味覚障害9%
③ 2021年2月~2021年5月に病院入院中、ホテル療養中の無症状・軽症・中等症のCOVID-19患者(20歳~59歳)の参加希望者において、1か月後までの改善率は嗅覚障害が60%、味覚障害が84%であり多くの味覚障害例は嗅覚障害に伴う風味障害の可能性が高い
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この回答は長いが、労災が適用されるかどうかの説明がなく、核心からずれている。結局は、日本でもルールははっきりしていないと考えるのが妥当なのだろう。

 業務に関連してコロナに罹患すれば労災に認定され、後遺症も労災に認定されるが、空気感染するコロナでは、業務由来の感染かどうか判断が難しいケースが多そうだ。

 労使間で話し合いをしっかり行い、コロナ後遺症への対応を整備しておくべきだろう。「うちの会社はここまで社員の面倒をしっかり見てくれる」という従業員の意識こそが、企業の生産性向上の要だろうと思われるからだ。

(2022年5月15日 日曜日)