世界の動き 2022.1.18 Tuesday

N.Y. Timesの電子版から

1.北京オリンピックの観戦チケットは国内一般客には販売せず
【記事要旨】
 新型コロナウィルスの感染状況に鑑み選手と参加者の安全を確保するため中国のオリンピック委員会は国内一般客に観戦させないことに決定した。
【感想】
 この件は日本でも大きく報道されているのでご存知の方が多いと思われる。
 中国政府のコロナ対策をゼロコロナ政策と日本では説明するが、中国政府はゼロと言っているのではなく「動態清零」という言葉を使って、適切に抑え込むと言っている。また、ロックダウンが全都市封鎖のように説明されているが、政府は感染状況に応じ、封鎖地区と制限地区をキメ細かく決めており全市封鎖しているのではないことを理解する必要がある。(この説明は、興梠一郎氏の説明の受け売りです)

2.中国の出生率が史上最低に
【記事要旨】
 これもご存知の方が多いニュース。
 英文の詳細では、Births fell to 10.6 million in 2021, compared with 12 million the year before. That was fewer even than the number in 1961, when Mao’s Great Leap Forward resulted in widespread famine and death.
 出生数は前年比10%以上減少。中国の成長率は4%台に鈍化が予想される。政府が子供を増やすように奨励しても、女性の社会的地位向上により子供を沢山欲しいという人は減っている。
【感想】
 中国共産党にとって大きな内憂。人口動態はすぐに改善しない。眼をそらすために外に牙をむく戦狼外交を継続する恐れ大。

3.テキサス州のシナゴーグ襲撃事件
【記事要旨】
 事件の理由に、2010年にアフガニスタンで米兵襲撃で逮捕され86年の禁固刑を下されたパキスタン人の女性科学者Aafia Siddiquiの存在がある。
 今回の犯人Malik Faisal AkramはSiddiquiを深く信奉し、襲撃で彼女の釈放を求めていた。
【感想】
 いわゆるイスラム過激派問題は、解決が容易でないFaithの問題。

その他
アジアの記事で、・トンガの海底火山の爆発、・北朝鮮の再度のミサイル発射、・マルコスJrが大統領候補に出馬することは問題ないと裁判所が判断(税務犯罪で有罪だったことがあるので資格がないと反対陣営から訴えられていた)が取り上げられています。

(2022.1.18 Tuesday)

投資の心得。必勝法?

 市場と付き合って30年以上になるが、株式投資では儲かることも損をすることもある。
 野村監督の名言に「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」という言葉がある。
 株に例えれば、理由がはっきりしないのに株価が上がって儲かる場合があるが、株価が下がる場合には確たる理由がある、ということであろう。

 個人的な経験で言おう。ある株を分析して、会社の内容に証拠を基に確信を持てる場合は(英語を言うとconviction)勝てる確率が高く、会社の説明を確証ないままに信用する(英語で言うとfaith)負ける確率が高い。会社の内容に関しては、会社の内部の人間と、外部の投資家の間には大いなる情報の非対称性があるから情報の見極めは至難の業だ。

 最近ある会社の株価の先行きを読み誤った。良い情報を信じ、リスクを軽視した。自分ではconvictionと思っていたのが、実はfaithだったわけだ。悪い情報に片目を閉じたlove だったのかもしれない。(全く別件になりますが、キリスト教の教義では、conviction faith, loveの概念の区別が重要だ。興味のあるかたはgoogleで検索すると沢山説明が出てきます)

 さて、情報の非対称性の下で、
・玉石混交の情報から正しいものを見つけ出すこと。
・その情報が会社の企業価値にどういう影響を与えるか判断すること。
・企業価値の上昇が株価にどういう影響を与えるか見通すこと。
 これらを正しく判断し株価の行方を予想するのはとても難しい。
 神ならぬ人間として、常に謙虚さ(humility)を忘れず投資活動に取り組むことが重要だ、という平凡な結論に帰着する。

(2022.1.17 Monday)

世界の動き 2022.1.17 Monday

N.Y. Times 電子版より

1.ジョコヴィッチ(Djokovic)、オーストラリアの裁判で負ける
【記事要旨】
 この件は日本のメディアで何度も大きく取り上げてので、裁判所がジョコビッチの申し立てを認めず、ジョコビッチは日曜夜に豪州を離れたことは皆さんご存知ですね。
【面白い表現】
 President Aleksandar Vucic (日本語ではアレクサンダル・ヴチッチ)blasted Australia’s legal process as “Orwellian” and said Djokovic would be welcomed home.  オーストラリアの法律手続きがジョージ・オーウェル的だ、というのはとても文学的な表現で感心しました。
 Some legal experts called for changes to the immigration minister’s “godlike” powers. 豪州内でもこんな意見もあるらしい。

2.ロシア、西側諸国、そしてウクライナ
【記事要旨】
 外交交渉での進展がなく、ロシアはウクライナへの圧力を強めている。
 ウクライナを包囲する10万の兵力だけでなく、ウクライナ国内で反政府の動きをひそかに進める部隊や、ウクライナへのサイバー攻撃がすでに盛んにおこなわれている。
 米国内ではトランプ支持者がアフガンでのバイデン政府の失敗をあざけっている。西側諸国は結束してロシアの拡大を阻止すべきだ。
【感想】
 ウクライナ問題の落としどころは本当に難しく、下手をすると第三次世界大戦の引き金になりかねない。
 私は個人的にはロシアの言い分にかなり部があると思う。
・ウクライナの東部3州はロシア人の比重が高く、ロシアの、自国民を保護する、という名目に説得力がある。
・ロシアの暴挙として挙げられるクリミアの併合も、そもそも、クリミアの帰属がいい加減に決められたことが発端だと言われる。ソ連邦内に位置するクリミア半島がロシアに帰属するかウクライナに帰属するか、当時絶対的な権力者だったフルシチョフが、自身がウクライナ出身だったのでウクライナに帰属させたと言われる。だとすると、ロシアの暴挙という言い方はどうかなと思われる。
 このようなロシアの考えに配慮せず、ウクライナにロシアが軍事行動に出た際に(出る可能性が高いと思う)、対抗して経済封鎖はいいが、ウクライナ軍を西側諸国が軍事的に支援すれば第三次世界大戦の引き金になりかねない。
 ではどういう解決策があるかと言われると、「ない」と答えざると得ないところがつらい。

3.カンボジアのデジタル規制
【記事要旨】
 すべてのインターネット通信は政府のポータルを経由しなければならない規制をカンボジアで政府は導入した。
 中国的な公権力による規制で、表現の自由は失われる恐れがある。
【感想】
 東南アジア諸国の多くが「中国的民主主義」の傘下に入りつつある。
 Cambodia’s legal process is Orwellian. ということですね。

(2022.1.17 Monday)

BYOB とWWJD

最近海外のニュースレターでよく目にする英語の略語を二つ紹介したい。

一つ目はBYOB.
 英ジョンソン首相が2020年の外出禁止期間中に公邸でパーティを再三開いていた件でよく出てくる。この言葉はご存知の方が多いかもしれない。
 Bring Your Own Booz, 或いは Bring Your Own Bottles, Bring Your Own Beer の頭文字を取ったものだ。パーティで主催者はアルコールを用意しないので自分が好きなアルコール飲料を持ってきてね、という英米でよくあるパーティのスタイルだ。
 翻って、毎年末の横須賀高校8組の同窓会は、同窓生が経営する寿司屋でやるのに、会費千円でビール1杯付、それ以上のビールは1杯500円、ビール以外のアルコールは各自持参、食料も持参、というものだ。Bring Your Own Booz and Food, BYOBF とでもいうのですかね。。

二つ目はWWJD
 元来は、ある倫理的な判断を伴う行為をする際に、What Will Jesus Do, (キリストであればどうするだろうか)と自分の心に聞き返す言葉だ。
 今、市場関係者の中でこの言葉が復活している。What Will Jerome Do (ジェローム・パウエルFRB議長は何をするだろうか)という意味だ。急速なインフレの増嵩とオミクロン株の感染状況にどう対処するかに世界の注目が集まっている。
 さてわが国では、WWKD What Will Kuroda Do? 日銀の打つ手は、現状維持しかないと見透かされているので、こうした疑問は日本の中では、あがってこない。インフレが増嵩しても、政府の財政破綻に直結する恐れが大きい金融引締めの選択肢は我が国にはない。ああ。。

(2022.1.16 Sunday)

「無言館」について

読みそびれていた文庫本『無言館 戦没画学生の青春』(窪島誠一郎著 河出文庫)を読んだ。また、たまたま今日のTVで野見山暁治画伯が取り上げられていたことで、急に無言館を思い出した。

 信州上田市の郊外にある無言館は、戦没した画学生の絵を集めた美術館である。1997年に、主に窪島誠一郎の努力で全国の画学生の遺族から集められた絵を収めた鎮魂の館ともいうべきものだ。文化勲章受章者である野見山画伯が、もともと集めた戦没画学生の絵を、小さな作品集にまとめたものが窪島氏の目に留まり、無言館を作ろうという動きになって行く。当初は野見山画伯も窪島氏と一緒に遺族を回り、絵を集めた経緯がある。

 『無言館 戦没画学生の青春』は、美術館の創設を思い立った窪島氏が、全国の画学生の遺族を訪ね、苦労して絵を集めたいきさつが、タテ糸になっている。収集の過程での遺族との会話からわかってくる戦没画学生の子供時代や美大時代のエピソード、結婚した人であれば妻とのエピソード、戦死の状況や、さらには遺族の現在の生活に、窪島氏の暖かい眼が注がれている。

 一方、窪島氏の生い立ちがヨコ糸である。貧しい少年時代。父母を養父母と知ったときの驚愕、貧しさへの絶望と養父母への嫌悪、実父を捜す孤独な営為、実父(作家水上勉)との再会(1977年に実現)等、陰影に富んだ個人の歴史である。

 今日のEテレ(心の時代?)で100歳を過ぎた野見山画伯がまだ元気に絵筆をとっているのを拝見。「自分の中から、絵の完成を急がせる声が聞こえる。『時間がない。早く早く。』と。すると良い絵が描けない」というような発言をされていた。

 さて、無言館である。私が行ったのはもう10年以上前になるのではないか。記憶を呼び覚ましてみよう。
 駐車場から近づくとコンクリートの打ちっぱなしの教会のような建物が見える。建物は上から見ると十字架の形をしている。館内は静寂に包まれ空気が冷たい。
 作品一つ一つに画学生の経歴と戦死の状況、絵の説明が付されている。
 私は伊沢洋「家族」という絵が特に気になった。一張羅を着込んだ家族がテーブルを囲んでいる。果物が並び紅茶が湯気を立てている。画家が経験した一家団欒の様子だろうか。
 しかし、遺族の説明では、「これは空想画だ。百姓仕事で忙しい一家に団欒などなかった。洋はこういう風景にあこがれていたのでしょうね。」 私は思わず落涙した。

 無言館の近くには信州の名湯、別所温泉もある。是非、無言館を訪れてください。戦没画学生の無念を思えば、どんなにつらい人生でも、生きているだけで幸せだ、と感じられることだろう。 

(2022.1.15 Saturday)