世界の動き 2022年9月7日 水曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「物価問題!」
 日本列島改造論がもたらした物価上昇に対して、田中角栄首相がだみ声で切り出す言葉だ。芸人が真似て広まった。
 狂乱物価の時は経済成長も大きかった。給料も伸びたので、物価上昇がそれほど生活に響いたという記憶はない。今は、所得が増えない中での物価上昇なのが厳しい点だ。

ニューヨークタイムズ記事より
1.韓国は台風被害を免れる
【記事要旨】
 浦項市では少なくとも3人が死に停電が広がったが史上8番目の巨大な台風にしては被害は少なかった。政府の準備を評価する専門家もいる。前回のソウルでの洪水対応を批判された尹大統領は今回は周到な対応を指示した。
【コメント】
 韓国で被害が少なかったのは良かったが、タイムズは随分この台風が好きだ。

2.ロシアは北朝鮮から武器を購入
【記事要旨】
 「大量の弾薬とミサイルを買っている」との米国の情報筋が掴んだ情報だが、国連の対北朝鮮制裁への明白な違反だ。イランからのドローン購入に続く動きだ。北朝鮮は、ドネツクとルハンスクを独立国として承認しているが、ドンバス地方へ労働者を提供するとの予想もある。ロシアは中国からも武器輸入を希望しているが、中国はロシア産の原油を輸入しているものの、武器輸出には慎重だ。
【コメント】
 なるほど。困窮している北朝鮮にとっては渡りに船の機会だ。

3.中国がiPhoneに変化を
【記事要旨】
 今日発表されるiPhone14では、生産を支えるFoxconnは生産の一部を中国からインドに移すと伝えられている。しかし、実際は、パンデミック下の移動制限で、アップルのiPhone生産での中国依存は更に進んでいる。従来はiPhoneはカリフォルニアでデザインされ中国で生産されていたが、現在は二つの国が一緒にデザインし生産するということになっている。当初は低賃金と豊富な労働力で米ハイテク企業を引き付けた中国は、その後の製造技術の成長で、大きなパイを得るようになっている。
【コメント】
 中国をサプライチェーンから切りはなすと言っても一筋縄ではいかないのだ。日本企業が簡単に中国から他国へのシフトを勧められるのは、企業活動の統合が出来ていなかった証左でもある。

その他:
中国の大地震
The death toll after an earthquake in southwestern China has risen to at least 65, state media reports.
インドの洪水
Floods in Bengaluru, India’s Silicon Valley, have forced tech workers to ride boats and tractors to work.
英国の新首相
Liz Truss is now Britain’s prime minister.

(2022年9月7日 水曜日)

世界の動き 2022年9月6日 火曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の言葉:
「企業の目的は、それぞれ企業の外にある。企業は社会の機関であり、目的は社会にある。したがって、事業の目的として有効な定義は一つしかない。顧客の創造である。」
 ピーター・ドラッカー『現代の経営』より
 「マーケティングは、顧客から出発する。すなわち人間、現実、欲求、価値から出発する。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。」
 同 『創造する経営者』より
 マーケティングの覇者「電通」はいまどうなっているのだろうか。

電子版の記事から
1.リズ・トラスが英国の次期首相に
【記事要旨】
 保守党の党首選は外相のトラス57.4%、スナク前蔵相が42.6%の得票でトラスが勝利。低税率と小さな政府の主張が160000人の保守党員に支持された。トラスは6年で4人目、女性で3人目の首相に、明日女王の信任を受けて就任予定。タカ派の外相は、エネルギー価格が80%上昇し、来年までに物価が20%上昇すると見込まれる大変な時期に、経済の立直しに加えジョンソン首相の3年間で分断された保守党の再建に立ち向かうことになる。
【コメント】
 燃料価格と食品の高騰は日本も他人ごとではない。財源の厳しい中で我が国は今年の冬にかけてどういった政策を打ち出せるのだろうか。支持率の下がる岸田政権の命取りになりかねない。
 何れにしても47歳の「鉄の女2.0」の手腕を見守りたい。

2.韓国は台風に備える
【記事要旨】
 最大風速216k/hを持つ台風Hinnamnor(台風11号)の進路にある韓国に加え中国と日本でも備えが進んでいる。数週まえの洪水で9人が亡くなって間もないソウルでは、台風は30cm以上の降雨をもたらす恐れ。済州島ではすでに水害が報告されている。
【コメント】
 日本からは少しそれたのでやや安心だが、注意は怠れない。

3.中国で更にロックダウンが進む
【記事要旨】
 成都から深圳、更に大慶ヘとロックダウンが進み60百万人が閉じ込められている。3年にわたるコロナ抑え込み政策で経済成長は鈍化し若者の失業率が急増している。無期限のロックダウンが進む成都は干ばつの進む四川省の州都であり地域の混乱を深めている。10月16日の共産党大会で3期目を目指す習主席はコロナ抑え込みの主導者であり誰も異議を唱えることができない。
【コメント】
 3期目以降もコロナ封じ込めを続けるのだろうか。同様な政策を試行して放棄した我が国への教訓は何だろうか。

その他:
アフガンでの自殺テロ
A suicide attack targeted the Russian embassy in Afghanistan, killing two employees and four Afghan civilians. The bombing was the first strike on a diplomatic mission since the Taliban regained control.
カナダでの刺殺事件
At least 10 people were fatally stabbed in an Indigenous community and nearby village in Saskatchewan, Canada. Here are live updates.
チリの新憲法案は否決される
Voters in Chile rejected a left-leaning constitution that would have guaranteed more than 100 rights.

(2022年9月6日 火曜日)

世界の動き 2022年9月5日 月曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の言葉:
「息切れ倒産」
 コロナ下で借り入れにより資金繰りをつけてきた企業の倒産が始まっている。借り入れに頼って何とか生き残りを図ったものの、売上が回復せず力尽きて倒産するパターンだ。安易な貸し出し増を、国策で求められた金融機関が息切れしないか注視する必要がある。多くの地方銀行が危険水域だ。

1.欧州は経済を守る
【記事要旨】
 週末に、ドイツ、スウェーデン、チェコは冬に備えた経済対策を公表した。フランスも追随予定。プラハでは燃料高騰への大規模抗議デモが土曜に発生し、社会不安の広がりが懸念される。ガスプロムは欧州へガスを供給するノードストリーム1の無期限停止を宣言し、G7はロシア産原油に上限をつけることで対抗。
【コメント】
 欧州の6割が500年来の干ばつに苦しんでいるという報道もある。人為的な苦境と天災のダブルパンチだ。

2.チリで新憲法への国民投票
【記事要旨】
 新憲法案は女性や先住民の権利拡大、社会保障の面で国の大幅な役割強化などがうたわれている。投票の結果はわからないが、可決されれば保守的な憲法が世界でも最も左翼的進歩的憲法になる。
【コメント】
 結果はどうなるか興味深い。軍政から急進左派への政策転換が保証される。もし国民投票で可決されれば。

3.インドの電動リキシャ
【記事要旨】
 バイクと三輪リキシャの電動化がインドで進んでいる。国民の平均所得が2400ドルのインドでは1,000ドルほどでこれらの電動車は販売されており、販売台数は43万台に増えている。大気汚染への対抗策として途上国へ輸出もインドは計画している。充電は、バッテリーの交換で行う。ガソリンを満タンにする半額ですむ。
【コメント】
 コスト次第で需要が急増する好事例。HondaやSuzukiはどうしているのだろうか。

その他:
米国は台湾へ武器売却
The U.S. plans to sell more than $1.1 billion worth of arms to Taiwan that are designed to repel a seaborne invasion. Beijing threatened countermeasures.
前大統領がスリランカに戻る(亡命しても簡単に戻れるのか。。)
Gotabaya Rajapaksa, who was ousted as the president of Sri Lanka this summer, returned to the country on Friday.
更に刑が追加される
Aung San Suu Kyi, Myanmar’s ousted civilian leader, was sentenced to three more years in prison, with hard labor, on Friday. She now faces 20 years.

(2022年9月5日 月曜日)

稲盛和夫さんのこと

 稲盛和夫さんが2022年8月24日に90歳で逝去された。1989年に部下8人とで創業した京都セラミックを時価総額2.8兆円(8月末)に育て上げた日本を代表する企業家だ。

 稲盛さんの経営は詰めるところ「アメーバ経営」と理解している。

 (京セラHPより)「アメーバ経営は、稲盛和夫の「会社経営とは一部の経営トップのみで行うものではなく、全社員が関わって行うものだ」という考えが貫かれています。組織をアメーバと呼ばれる独立採算で運営する小集団に分け、その小さな小集団にリーダーを任命し、共同経営のような形で会社を経営していきます。各アメーバの活動の成果を分かりやすく示すことで、リーダーを中心に全社員が自分たちの収支を意識するようになり、それぞれの持ち場・立場で持てる能力を発揮し、利益確保に取り組むようになります。こうしてアメーバ経営は経営者意識を持ったリーダーを社内に育成すると同時に、全従業員が経営に参画する「全員参加経営」を実現します。」と言うことだ。

 金融機関に勤め、預かった預金が勝手に収益を生み出す商売にどっぷりつかっていたので「アメーバ経営」の理念は新鮮だった、銀行を退職後は、なるべく組織の末端まで収益とコスト意識を持たせる努力をしてきた。そういう意味では私も実践者の一人でもある。

 一度稲盛さんにお目にかかったことがある。友人に「盛和塾」の熱心な会員がいて、私を紹介して下さったのだ。その時はいろいろ忙しくて入会しなかった。謦咳に触れる機会を失ったのは残念だった。ご冥福をお祈りしたい。

(2022年9月4日 日曜日)

FOREIGN AFFAIRS 2022年/9-10月号 「妄想のスパイラル」より

原題は ”Spirals of Delusion”
How AI Distorts Decision-Making and Makes Dictators More Dangerous 

この論考は面白過ぎるのでぜひ一読を勧めたい。

イントロの3段落を示すと、
『人工知能に関する議論は常に、技術の覇権をめぐる中国と米国の対決をめぐるものになる。重要なリソースがデータである場合、10 億人を超える市民を抱え、国家の監視に対する保護が緩い中国が勝つ運命にあるようだ。有名なコンピューター科学者であるカイフー・リーは、データは新しい石油であり、中国は新しい OPEC であると主張している。しかし、優れたテクノロジーが優位性を提供するものであるとすれば、世界一の大学制度と高度な労働力を備えた米国には、依然として優位に立つチャンスがある。どちらの国でも、専門家は、AI の優位性がより広範な経済的および軍事的優位性に自然につながると想定している。

 しかし、覇権競争という観点からAIを考えること は、AI が世界の政治を変えるるより根本的な方法を見落としている。AI は対抗相手への競争を変えるのではなく、ラ自陣営を変える。米国は民主主義国家で、中国は独裁政権であるが、機械学習はそれぞれの政治体制に独自の方法で挑戦する。

米国などの民主主義国家への挑戦はあまりにも目に見えている。機械学習は二極化を促進する可能性があります。つまり、オンラインの世界を通じて政治的分裂を促進する可能性がある。確実にデマが増え、説得力のある偽のスピーチが大規模に生成される。独裁政権への挑戦はより微妙だが、おそらくより腐食性がある。機械学習が民主主義の分裂を反映し強化するのと同じように、独裁政治を混乱させ、コンセンサスの誤った外観を作り出し、根底にある社会の亀裂を手遅れになるまで隠してしまう可能性がある。』

 これから気鋭の学者3人が議論を展開するのであるが、結論部分は以下だ。

『広範な国際的な規制原則を作成することは、AI の政治的リスクに関する知識を広めるのに役立つ可能性がある。この協力的なアプローチは、米中の競争が激化している状況では奇妙に思えるかもしれないが、慎重に調整された政策は、米国と同盟国に役立つかもしれない. 危険な道の 1 つは、米国が AI の優位性をめぐる競争に巻き込まれることだ。これにより、競争関係がさらに拡大します。もう1つは、権威主義の不健全なフィードバック問題を悪化させようとすることだ。どちらも大惨事と戦争の危険がある。したがって、すべての政府が AI の共有リスクを認識し、協力してそれらを軽減する方がはるかに安全だ。』

 FOREIGN AFFAIRSはタダでかなり読めるし日本語翻訳ソフトも使える。
 この論考で寂しいのは日本の存在感が皆無なことだ。

(2022年9月3日 土曜日)