世界の動き 2022年9月12日 月曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言
「イギリスポンド」
 金曜日の為替相場は1ポンド165.37円だ。私が子供のころは固定相場制で1ポンドは1200円だった。1972年に変動相場制に移行したが、その後の50年間で、価値が7分の1に減少したわけだ。その主たる理由は、英国の調整インフレ政策にあった。第二次大戦後の債務に悩む英国政府はインフレをコントロールすることにより債務の返済が滞らない政策を取ったのだ。成長が阻害され英国経済は長期停滞し、国力は失われた。
 我が国が英国の轍を踏まないことを心から祈っている。

ニューヨークタイムズ記事
1.ウクライナの反攻
【記事要旨】
 ウクライナ軍は北東部ハリキウ州で反攻し州の殆どを奪還している。春に長期戦で占領された交通の要衝イジウム市を奪還したとウクライナが発表。ロシアではプーチンを批判する声も上がり、ウクライナはより多くの武器を西側諸国に求めている。ザポリージャ原発は安全のために停止した。中国はロシアを最大限に支援するとロシアは発表。
【コメント】
 反転攻勢と言うと聞こえが良いが、血みどろの戦いがウクライナでは続いているのだ。嗚呼。

2.中国の新疆でのロックダウン
【記事要旨】
 新疆のYining市の60万人市民は、食料、医薬品、生理用品の欠乏に苦しむ。政府は週に5日食料を配給しているが即席物ばかりで栄養面は考慮されていない。上海は注目されているが新疆の苦境はイスラム系住民が多いこともあり報じられない。国連が先月末に新疆での人権侵害の可能性を報告書にまとめたばかりだ。
【コメント】
 ロックダウンは新疆にも広がっていたのか。1か月もロックダウンが続く生活は想像が出来ない。

3.洪水がパキスタンの収穫を脅かす
【記事要旨】
 パキスタンで1300人以上の死者を出した洪水は、収穫に大打撃を与えている。パキスタンは米と綿花の世界最大の輸出国の一つだが大きな打撃を受けており、大雨は更に数週間見込まれている。経済危機の同国はカーン前首相の失脚以来政治の混乱が続いている。33百万人が避難民化しており、衛生状態の悪化で死者が増加することが懸念される。
【コメント】
 南アジアの主要国の動きは日本では報道されないが、大変な水害になっていたのだ。

その他:
香港での中国の影響
Five speech therapists in Hong Kong who were charged with publishing “seditious” children’s books were sentenced to 19 months in prison.
エリザベス女王の逝去に関して
Queen Elizabeth II’s funeral will be on Sept. 19. Her coffin will be taken to Buckingham Palace tomorrow.
Britain faces overlapping domestic crises and anxiety over its place in the world. But despite internal divides, people mourned together.
9-11がまた巡ってきた
The U.S. remembered the Sept. 11 attacks yesterday. President Biden promised to never forget “the precious lives stolen from us.”

(2022年9月12日 月曜日)

Mr. Yen

Mr. Yenは言わずとしれた元財務官の榊原英資氏だ。私は若いころ国際金融情報センターという組織で榊原さんの薫陶を受けた。氏は、センターのあと財務省に戻り、その後、財務官まで上り詰めた。

 最近YouTube で榊原さんが英語でインタビューされているのを見た。相変わらず説得力のある話し方だ。是非見てください。
 https://www.youtube.com/watch?v=c4-7dHUc6Z0

 榊原さんが財務官の当時、米国ではラリー・サマーズがカウンターパートだったが、TVで中継される議論ではいつも榊原さんが勝っていた印象を受けた。

 乱世に力を発揮する稀有な人だ。彼に比べると、鈴木蔵相や黒田総裁は「平時の人」に見えてしまう。榊原さん、力を貸してください!

(2022年9月11日 日曜日)

「戦略的勇気を持つ」重要性

ブラジルのカーレーサーであったアイルトン・セナはかつて、「晴れた日には15台の車を追い越すことはできないが、雨が降っていれば追い越すことができる」と言った。

ここ数年は雨どころか豪雨に事欠かない。私たちは、新たなショック (ウクライナでの戦争、インフレの再来) が以前のショック (世界的な未知のウィルスの大流行、サプライ チェーンの混乱) に重なる、デジタル化や持続可能性といった大きなトレンド変化が前提になる世界に住んでいる。

こうした時にリーダーは二つのタイプに分かれる。最初のタイプは、ボラティリティと不確実性に対処する際に慎重で防御的な姿勢をとる。身を潜め、今ここでの脅威に集中して対応する。シナリオ計画、レジリエンスの準備、バランスシートの管理、短期的な効率化の推進、慎重なインフレ監視が、彼らの重点分野になる。これらのリーダーは、状況が明らかになるにつれて、戦略的な「様子見」モードに入っていく。現状は、上級管理職の大多数がこのカテゴリーに分類される。

しかし、2 番目のタイプのリーダーも見られる。つまり、ボラティリティに傾倒しながら、すべての適切な防御行動を取り、それを触媒として使用して、新しい機会に向けて行動を活性化するリーダーである。現在の混乱は、大胆に前進するというこれらのリーダーの考え方を活性化し、眠っていた可能性のある戦略の要素を活性化させてる。これらのリーダーは、攻撃と防御の両方でプレーしている、両利きの経営陣である。

両利きの経営陣は、この環境で単に生き残るのではなく、ボラティリティから価値を創造し繁栄しているように見える。慎重かつ大胆なこれらのリーダーは、組織のパフォーマンスに「アルファ」を生み出すために、洞察力、コミットメント、実行力の 3 種類の優位性を磨いている。

CEO と取締役会は、組織が、洞察力、コミットメント、実行力のそれぞれの優位性をどの程度信頼できると主張できるか、またそうでない場合は、どのようにしてそれを迅速に発展させることができるかについて、自社の状況を把握し、挑戦する必要がある。

”Strategic courage in an age of volatility” McKinsey Quarterly
August 29, 2022
By Michael Birshan, Ishaan Seth, and Bob Sternfels から

(2022年9月10日 土曜日)

世界の動き 2022年9月9日 金曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「魚は頭から腐る」
 自民党議員の旧統一教会との関係の調査結果が出た。多くの議員が「深い」関係を築いていたように見える。トップのありようを見て、多くの議員は安心して関係を深めていたようだ。まさに8年8か月の長期政権が為せる業だ。

ニューヨークタイムズ記事
1.エリザべス女王が96歳で逝去
【記事要旨】
 英国の君主として、70年以上の統治期間、戦後の混乱期、冷戦期を経て価値の変化の時代を、英国を英国民を鼓舞してきた。逝去の2日前にトラス首相を任命したばかりだった。チャールズ皇太子がチャールズ3世として即位した。トラスは昨日経済政策を発表したが、英国は物価上昇と燃料の高騰の困難な時期にあたる。
【コメント】
 偉大な女王が亡くなった。女王の存在感が困難な時代に君主制を継続させてきた。国葬に反対するものは誰もいないだろう。

2.ソロモン諸島は総選挙を延期
【記事要旨】
 Manasseh Sogavare首相は2024まで選挙を1年間延期を決定。パシフィック競技会という大きなスポーツ大会の開催が理由だ。中国の影響を懸念する声もある。豪州は予定通り選挙が出来るように資金援助を申し出るが、ソガバレ首相は内政干渉だと非難して拒否している。
【コメント】
 甘い債務の罠が待っているよ、ソガバレさん。

3.中国の大物が国を去る
【記事要旨】
 潘石屹(Pān Shiyì )と张欣;(Zhāng Xīn)は不動産大手SOHOの経営者で中国で最も有名な実業家たちだが、SOHOのCEOを辞任した。すでにパンデミックの時期に二人は米国に移りリモートで経営していた。自由な資本主義社会から国家の制限が厳しい経済への移行が彼らの動きの背景にある。アリババのJack Ma, TikTokのZhang Yimingなどの動きに続くもの。ロックダウンで上海からカナダに逃れたZhou Hangは習政権のロックダウン方針を批判している。
【コメント】
 中国人の名前はいつも漢字で確認してきたが、最近はローマ字の標記だけで理解できる実業家が増えてきた。中国経済の国際化が進んだ象徴だ。

その他:
豪州の気候変動対策法
Australia passed a new cimate bill that codified a pledge to cut its carbon emissions by 43 percent by 2030, and to be net zero by 2050, BBC reports.
ウクライナ原発危機深まる
The head of the Ukrainian national energy company said conditions at the Zaporizhzhia nuclear power plant were getting “worse and worse and worse.”
EUもインフレと戦う
Europe is suffering through economic turmoil. Yesterday, the European Central Bank raised interest rates, an aggressive move to fight inflation.

(2022年9月9日 金曜日)

世界の動き 2022年9月8日 木曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「円安が止まらない」
 金利を上げられない日銀をあざ笑うように投機筋の円売りが進む。日本の投資家の行動としても、円売りドル買い(安い円を売って金利の高いドルへ投資する)が合理的だ。本質的には、日本の国際的なプレゼンスの弱さ・日本経済の弱体化・日本政治の劣化と混乱が原因だろう。国葬をめぐる混乱、旧統一教会と自民党の関係は世界中に喧伝されている。円安が止まる要因は見当たらない。

ニューヨークタイムズ記事
1.プーチンと習が来週会談予定
【記事要旨】
 9月15日16日にウズベキスタンで開催されるアジアの首脳会議で会談予定とロシアは発表するが、中国政府は確認していない。実現すればコロナ感染拡大後初の実会談になる。欧米の制裁でアジア志向を強めるロシアは中国へのパイプラインを建設するモンゴルの大統領とも会談を予定する。
【コメント】
 中露が接近する好ましくない動きだが止められない。

2.インドの強力な経済
【記事要旨】
 世界の主要国の成長が落ち込む中で、インドは今年の成長率を7%と予想する。国際経済から比較的切り離され国内需要に依存し、政府のコロナ対策の経済政策効果(投資の増加と借入の補償)、ロシアからの原油輸入価格の低下等が要因だ。インドの経済規模は英国を抜いて現在世界5位。
【コメント】
 全般に好調だが、若年層の雇用は大変なようだ。インド人は語学能力も高い。日本で大幅に不足するソフト技術者をインドから迎い入れるべきだろう。

3.中国のゼロコロナ政策
【記事要旨】
 数千万人の市民がロックダウンに苦しんでいる。特に若者の失業率は20%に達している。国産ワクチンは有効性が低いと言われるが、老齢者の接種率は低い。10月に3期目の目指す習主席はゼロコロナ政策を堅持している。
【コメント】
 中国は中国で独自の政策を取るのは結構だが国際的なサプライチェーンの混乱には対応が必要だ。中国を「工場」としてみていた企業は対応が楽だ。「製造拠点」「販売市場」としてみてきた企業は対応が大変だ。

その他:
モヘンジョダロって世界遺産だったんですね
Flooding in Pakistan damaged Mohenjo-daro, a UNESCO World Heritage site that is at least 4,500 years old, The South China Morning Post reports. Reuters reports that Shehbaz Sharif, the prime minister, said some areas look “like a sea.”
円安が続く
The Japanese yen continues to slide, Bloomberg reports. It is on track for its worst year on record.
英国のカラフルな新内閣
Liz Truss, Britain’s new prime minister, is assembling a racially diverse but ideologically uniform cabinet. Most are conservatives loyal to her.

(2022年9月8日 木曜日)