IBMのモットー”Think”から考える (その1)

    古い蔵書を整理していて、竹内均東大教授の『私の知的鍛錬法』と言う本を見つけた。1980年の刊行になっており、私が銀行に入り米国に留学して帰国してすぐに読んだ本ではないかと推測される。大阪の支店勤務で時間が取れないなかで本書の副題だった「切れっぱしからの発想」に惹かれて購入したのかもしれない。竹内教授は私が高校の頃から旺文社の参考書やラジオ講座で有名だった。当時刊行され始めた「ニュートン」という科学雑誌の編集長も務めておられ、その多彩な活動ぶりにあこがれていたのも確かだ。

 さて、同書の中に、独創力を磨くくだりがあり、竹内教授はIBMのトマス・ワトソンの逸話を紹介している。その部分を引用する。
 「世界のコンピュータ市場を独占していると言ってよいIBMではどこへ行っても「Think(考えよ)」という標語にお目にかかる。これはIBMの創業者だったトマス・ワトソンが考え出したモットーである。実はワトソンは考える前にいくつかのことを要求している。それを箇条書きにすると、
  1.考える材料を「読め」
  2.考える材料を「聞け」
  3.漠然とした考えを修正し整理するために「討議」せよ
  4.相手又は対象の状況を「観察」せよ
  5.読み、聞き、討議し、観察した内容について「考えよ」 後略」

 私が疑問に思ったのこんな回りくどいことをワトソンが本当に言っているのだろうかと言うことだ。そこでWikipediaやYouTubeでThomas Watsonの発言を調べた。便利な世の中だと痛感する。するとWikipedia で”Think (Slogan)”を検索すると、何とThomas Watsonの肉声でこの辺りの説明を聞くことができた。Watsonの発言を引用すると、
“And we must study through reading, listening, discussing, observing, and thinking. We must not neglect any one of those ways of studying. The trouble with most of us is that we fall down on the latter, thinking, because it’s hard work for people to think.”

 ワトソンの発言は竹内教授の発言ほど詳しくはないが、思考は教授の説明するプロセスを踏んで実行するのが大事だ。飛躍して一度に結論に至るのは良くない。

 ワトソンについて調べる過程で、ワトソンの名言Quoteを知ることが出来た。真っ先に出てきたのは、次のQuoteだった。

“If you stand up and be counted, from time to time you may get yourself knocked down. But remember this: A man flattened by an opponent can get up again. A man flattened by conformity stays down for good.”

“Follow the path of the unsafe, independent thinker. Expose your ideas to the dangers of controversy. Speak your mind and fear less the label of ‘crackpot’ than the stigma of conformity. And on issues that seem important to you, stand up and be counted at any cost. ”

 ワトソンはconformity (behavior that follows the usual standards that are expected by a group or society)(日本語訳は難しいが「予定調和」が最適か?)を心の底から唾棄していた人だったのだ。

 同調圧力が強くイノベーションの途絶えた日本には強烈な発言だ。Think! 肝に銘じたい言葉だ。 

2022年10月23日 日曜日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三日天下」考

三日天下は、明智光秀が織田信長を倒して天下をとってから、わずか13日後に豊臣秀吉に滅ぼされたところから、きわめて短い間だけ権力を握ることを指す。最近では、野球のぺナントレースで首位に立ったもののすぐに陥落するような場合に使われることが多い言葉だ。

もう世界的に知られた例では、期間が少し長くなるが「百日天下」がある。  エルバ島を脱出したナポレオン1世が,1815年3月20日に再び帝位についてから,同年6月22日,帝位を追われるまでの一時的な支配を指す。ウィーン会議における列国の対立に乗じてパリに帰ったナポレオンは再び帝位についたが,ワーテルローの戦いに敗れてその支配は崩れ,セントヘレナに流された。フランス語でLes Cent Joursと言い、英語でもThe 100 Daysで通じるようだ。

最近の事例で言えば英国のトラス首相のケースが挙げられるだろう。首相に任命されてから辞任表明まで44日間という短さだ。その間、女王の国葬を支援し、ポンドを下落させ、金融市場を混乱させ、運命の逆転に耐えた。保守党の首班に指名される際に掲げた減税案や財政拡大案は今になって悪評のみが上がっている。しかし、保守党員は、トラス候補の政策を支持して彼女を保守党の党首に、更には、内閣の首班になることを支持したはずなのだ。今になっての、党を挙げての手のひら返しは酷い。

誰が次期首相になるかわからないが、日英間の緊密な関係を構築する人になってもらいたい。日本としえは米国一辺倒でないパワーバランスを構築するためにも新しい「日英同盟」が必要だ。

2022年10月22日 土曜日

世界の動き 2022年10月21日 金曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「Paris ne s’est pas fait en un jour.」
 パリは一日にして成らず。日々の努力なしには大きな仕事は成し遂げられないという戒めだ。ローマからの派生だ。1990年8月以来の円安だが、小手先の工夫では改善しない。腰を据えて日本の構造改革に取り組まなければならない。

ニューヨークタイムズ記事
1.トラス首相辞任
【記事要旨】
 首相に任命された際の負託に応えられなかったとして辞任を表明。僅か6週間で、英国歴代首相で最短だ。2016年のEU離脱決定後6年間で5人の首相が変わったことになる。後任には保守党党首選を争ったスヌーク前蔵相、モーダント下院議員等の名前が挙がっている。野党労働党は総選挙を要求している。トラスのように経済の苦境が政治問題へ波及することを各国政府首脳は恐れている。
【コメント】
 英国の民主主義は健全だ。日本では岸田政権はまだ続くだろう。

2.ウクライナで明らかになる拷問
【記事要旨】
 ウクライナが奪還した街ではロシアによる数々の拷問が明らかになっている。生き残った人だけでなく、発見された534の死体にも拷問の跡が見られた。ウクライナによるロシアの戦争犯罪の調査が進んでいる。
【コメント】
 ウクライナは更に領地奪回を進めているが、長く厳しい冬をどのように市民が耐えるのだろうか。

3.台湾の「愛される」外交
【記事要旨】
 中国の圧力が高まる中、台湾は外交努力を続けている。グアテマラとの外交維持のため同国のワシントンのロビイストを支援したり、リトアニアへの謝意を示すためにバルト3国からの輸入品フェアを開催したりしている。愛される台湾を作り多くの友人を作っていくことが必要だと識者は語る。公式な大使館は10年前より少ないが、台湾は多くの国とより安定した関係を築いている。
【コメント】
 台湾に悪印象を抱く人は大変少ないだろう。強面中国と比較すればなおさらだ。

その他:
アフガンから子供を連れ去った?
A couple in Afghanistan accused a Marine of abducting their baby amid the chaotic withdrawal of U.S. troops from the country last year, The Associated Press reports.
ロシア空域閉鎖がフィンランドに影響
When Russia closed its airspace in February, it upended a decades-long strategy that aimed to make Finland a European travel hub to and from Asia.
フロリダのハリケーンの影響は続く
Hurricane Ida has been blamed for a spike in cases in Florida of a potentially deadly bacterial infection sometimes referred to as “flesh-eating bacteria.”

2022年10月21日 金曜日

世界の動き 2022年10月20日 木曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「朋あり遠方より来る また楽しからずや」
 3年ぶりに米国から友人が日本に来た。大ジョッキ2杯を呑みながら政治経済文化のあれこれを居酒屋で話し合う。Zoomでは達成できない楽しい時だった。

ニューヨークタイムズ記事
1.ロシアは占領地で戒厳令
【記事要旨】
 戒厳令は、夜間の行動禁止、住居の強制占拠、住民の強制移住、移民の強制収容、市内でのチェックポイントの設置と住民の30日間の収監、を認める内容だ。この発表と同時にケルソン州のロシア支配地区の知事は六万人の市民を脱出させると発表した。ロシアの支配の弱化を示す動きと思われる。ウクライナから多くのユダヤ人がイスラエルに脱出。ロシアは軍備をシリアからウクライナに転用。モスクワではレストランや商店で成人男性が明らかに少なくなった。徴兵されるか国を脱出したかの影響だ。
【コメント】
 成人男性が目立って少なくなったという観察は興味深い。

2.議会はトラス首相に圧力
【記事要旨】
 英国のブレイバーマン内相が19日、辞任した。移民制限に消極的なトラス首相を暗に批判した形での辞任となる。首相はブレイバーマン氏の辞任は政府規則の「技術的な」違反としているが、14日に解任されたクワーテング元財務相に続き、トラス首相は主要閣僚2人を失った。消費者物価は14%上昇し40年来の上昇率だ。
【コメント】
 支持率は7%に低下したとの報道もあり、本当に苦境だ。

3.中国共産党内での女性
【記事要旨】
 中国で最も有名な女性政治家Sun Chunlan (孙春兰; born 24 May 1950)が引退する。Sunは強力なゼロコロナ推進者で彼女が来るのはその街にとって不吉だと言われてきた。共産党大会に参加する組成は3分の1以下で、政治局員になれるのは3人の見込みだ。1949年以来、25人の政治局員になれた女性は8人に過ぎなかった。

その他:
韓国での混乱
The intensifying rivalry between Washington and Beijing is causing jitters in South Korea, where security ties and economic priorities are not always aligned.
もう一つ韓国の記事
A suite of apps called Kakao went down this weekend in South Korea, halting messaging, payments, ride-hailing and other essential services. The havoc stirred a reckoning over the country’s dependency on Big Tech.
学生に仕事を与える動き
As the number of immigrant students not eligible to work legally in the U.S. soars, a new campaign has urged the University of California system to employ undocumented students.

2022年10月20日 木曜日

世界の動き 2022年10月19日 水曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「アニー・エルノー」
 今年のノーベル文学賞の受賞者だ。邦訳は少ない。「シンプルな情熱」を読んだが女性が主人公の私小説だ。愛人との逢瀬のことだけ考える女性の独白だ。ストーリーの深みも乏しい。村上春樹の方が受賞にふさわしいと思うのだが。

ニューヨークタイムズ記事
1.ウクライナで広がる停電
【記事要旨】
 8日連続のロシアの攻撃でウクライナの発電能力の30%が失われ大規模な停電が起きている。暖房と水のない冬が多くの市民を訪れる。WHOは市民の生存の危機を警告する。ロシアが天然ガスの供給をすべて停止する事態にEUは備える。
【コメント】
 厳しい冬に暖房が無いとは。。本当に生存の危機だ。生活の危機はあるが生存の危機は無い日本は、まだましだ。

2.米国中間選挙での論点は何か
【記事要旨】
 下院の435議席すべてと上院の100議席中の35議席、50州知事の36知事の選挙が行われる。中間選挙では政権党が弱く経済状況が悪い場合は野党が有利だが、2022年は妊娠中絶を巡る論議や共和党へのトランプの影響力の是非で、事態は流動的だ。タイムズの調査では共和党が優勢で、無党派層でも10%以上支持率でリードしている。
【コメント】
 選挙は11月8日に迫っている。全世界に影響を与える選挙であり結果が注目される。

3.中国の経済は不透明
【記事要旨】
 統計発表の遅れは経済状況の把握が中国では困難なことを示す。政府発表の経済統計は従来からその信ぴょう性を疑われていた。これまでは、建設費、鉄道建設、公共投資と言った傍証になる数字が発表されてきたが、近時はいくつかの数字の発表が停止されており中国の情報非公開化は進む見込みだ。
【コメント】
 共産党首脳の口の中は真っ黒だ。鉛筆をなめまくっているからですよ。

その他:
イランのヒジャブを取ったアスリート
An Iranian athlete who competed in the Asian Championships in Seoul did so without a hijab, breaching the Islamic Republic’s rules for women athletes and raising concerns for her safety.
アルジェリアでも洪水
Floods in Nigeria, the country’s worst in a decade, have killed hundreds of people and displaced more than a million.
フランスでは大規模デモ
Strikes in France that began in the oil sector have grown to include students and transit workers, in what has become the biggest test so far of President Emmanuel Macron’s second term.

2022年10月19日 水曜日