統合報告書について

 投資対象選定の資料にすべく統合報告書を今調べている。そもそも、統合報告書とは何か。

 「統合報告書とは、企業の売上や資産など法的に開示が定められた財務情報に加え、企業統治や社会的責任(CSR)、知的財産などの非財務情報をまとめたもの。
 欧米を中心とした海外機関投資家が投資の際、企業の社会的責任を重要視し始めたことを契機に、海外の企業で財務情報と非財務情報をまとめて発行するようになった。
 日本でも金融庁と東証が策定したコーポレートガバナンス・コードにおいて、企業側に対し、非財務情報の開示を主体的に取り組むことを促しており、統合報告書を発行する企業が増加している」。(以上、野村証券の説明)

 なぜ統合報告書に注目しているかと言うと、財務諸表だけには現れない企業経営のひだ(ガバナンスの実際のあり方、CSRへの取組、長期的な企業価値の向上を支える理念等)が、よくわかると思われるからだ。

 現在筆者は非上場の飲食チェーンのアドバイザーをしているので、手始めに、飲食業の上場企業ではどこが統合報告書を発行しているか調べてみた。驚くほど少ない。ロイヤルホールディングスと吉野家の2社だけが発行している。発行していることだけで+を差し上げたい。

 比較の詳細説明は省くが、非財務項目として挙げている項目を簡単に比較したい。

 両社が共通して挙げている項目
 ・従業員/パート社員数 (総数の表示にどういう意味があるか不明)
 ・女性管理職比率 (ロイヤル9.4% 吉野家25%)
 ・障害者雇用数/比率 (ロイヤル166人.2.7% 吉野家5.0%)

 一社のみ(吉野家のみ)が挙げている項目
 ・定期健康診断受診率  89.7%
 ・子供食堂への食事提供回数 396回
 ・Co2排出量 100450t(厳密に計算するのは結構大変そうだ)

 ロイヤルの報告書は32ページ、吉野家の報告書は33ページでありコンパクトにまとまっており、投資対象を選ぶ際の参考にすべき内容だと思った。特に吉野家の報告書は読んでいて面白かった。まだ統合報告書を読んだことのない読者には業種のわかりやすさもあり、お勧めだ。

(2022年7月2日 土曜日)

世界の動き 2022年7月1日 金曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より

今日の一言:
「箱根駅伝予選会」
 来年は参加校が関東だけでなく全国に広げられるそうだ。現在駅伝の強豪校は関東勢で独占されている。例えば全国大学駅伝では上位15校を関東勢が占めているそうだ。箱根で走りたいと希望する高校生が関東に集まり関東の大学が強くなる循環だ。
 世界の大学ランキングに話を飛躍させると、知名度の高い英語圏の大学に世界の優秀な若者が集まり英語圏の大学のランキングが高まる循環がある。日本の大学の国際競争力を高めるには箱根予選会の変化に相当する改革が必要でありそうしたうねりを日本が作り出すことが必要だ。参院選の各党公約は「給食の無償化や高校無償化」が中心だ。もう少し世界との教育での競争力強化を考えなければ日本の地盤沈下は止まらない。

1.米環境保護庁EPAの権限に最高裁が制限
【記事要旨】
 米最高裁はEPAの発電所からの炭素ガス排出を制限する権限に制限を加えた。今世紀末までに大気汚染を半減するというバイデン大統領の公約実現を不可能にする動き。保守派6対リベラル3での判断。保守派のロバーツ裁判長は気候変動には触れず、議会はEPAにそのような権限を与えていないと説明。環境に関連するビジネスには良いニュース。Ketanji Brown Jackson女史が黒人女性初の最高裁判事に就任。
【コメント】
 妊娠中絶、銃規制、環境保護について米最高裁は保守的な判断を下している。司法の保守化で三権分立モデルは機能しにくくなっている。

2.習近平が香港を訪問
【記事要旨】
 香港の中国復帰25周年を祝すための訪問。習にとってコロナ後初の海外訪問。訪問化は厳しいコロナ対策が敷かれた。習は復帰後の輝かしい成果を謳うが、50年前に約束された一国二制度は大きく制限されている。
【コメント】
 香港の活力は今どうなっているのだろうか。

3.ウクライナがスネーク島を奪取
【記事要旨】
 ロシア政府は一週間前には島は堅持されていると報道していたが、撤退を発表した。ウクライナにとって黒海へ出るための要衝だが、ロシアは海上封鎖は続けている。G7とNATOの首脳会議で対露政策の一致を確認するがエネルギー価格の高騰は欧州の市民生活を直撃。終戦の見通しは立っていない。NATOの中国は戦略的挑戦と見做す発表に、中国は強烈に反発。
【コメント】
 占領地域の拡大縮小の報道の裏には血を流し戦っている多くの将兵がいる。民主国と専制国の戦いの長期化はどのように展開していくのだろうか。

その他:
フィリピンの新大統領
In his inauguration speech, Ferdinand Marcos Jr., the new president of the Philippines, praised his father’s legacy and spoke about the need to heal a deeply divided country.
北朝鮮の国家的ハッカー
North Korean hackers are stealing cryptocurrency, which they have been using to keep the economy afloat through sanctions and pandemic shutdowns.
弱気な見方が優勢
The U.S. economy is on the cusp of a recession, and its stock market closed its worst first six months of the year since at least 1970.

(2022年7月1日 金曜日)

世界の動き 2022年6月30日 木曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より

今日の一言:
「二つの日本病」
 東大の渡辺努教授(日銀の黒田総裁に消費者の値上げ耐久力で引用された論文の著者)の指摘する二つの日本病は、「慢性デフレ」と「急性インフレ」。確かに大きな課題だ。簡単に解決できるとも思えないが、教授の処方箋はこうだ。
 「日本企業の多くは商品やサービスに同じ価格を過去30年にわたり付け続けてきた。この慣行が、賃金が安く物価も安いバランスを永続させてきた。海外発のインフレが「物価高・賃金高」をもたらすチャンスが出てきた。企業は思い切って価格を挙げ、賃金を上げることが可能になる。政府としては価格補助金でなく所得税の減税で消費者を支援するべきだ。」
 説得力のある論考かと思うので紹介した。

1.より強力なNATOが出現
【記事要旨】
 マドリッドでの首脳会談でNATOはロシアを主敵と、中国を戦略的チャレンジと位置付けた。冷戦後長らくロシア敵視はせず中国は興味の対象外だった状況から大きな転換。フィンランドとスウェーデンの参加を正式に招請した。事務総長は東に位置する8か国でNATOの軍備強化の発言。トルコは2か国の参加反対を撤回し米はトルコへのF-16の売却へ動く。
【コメント】
 軍備での同盟関係強化は無法なロシアに対抗するには不可避の選択だろう。ただし、外交の努力やしたたかさがそれ以上に重要だと思われる。日本はロシアや中国との関係には特に慎重であるべきだ。

2.上海でのロックダウンの影
【記事要旨】
 市民生活は正常に戻りつつあるが2か月のロックダウンが与えた市民への心の影響は大きい。精神的なカウンセリングは前年比3倍になり市民の40%は鬱状態との統計もある。政府のゼロコロナ政策堅持により上海では7月末まで全地域での週末PCR検査が継続される。マカオは患者急増でロックダウン。
【コメント】
 2か月家の中に閉じ込められていれば精神的な影響は大きいだろう。近くのコンビニに行く。本屋で本をパラパラ見る。こうした日常がとても貴重だとわかる。

3.インドでの騒乱が拡大
【記事要旨】
 二人のムスリムがムハンマドを侮辱したヒンズー教徒の洋服屋を虐殺する画像がインド中に拡散される。モディ首相の女性報道官がムハンマドを侮辱するとムスリムが考えるコメントをしたことが今回の騒乱の発端。殺された洋服屋は女性報道官支援をアプリで表明していた。二人のムスリムは彼を殺害することで首相に抗議し次の目標は首相だと警告。
【コメント】
 ヒンズーとイスラムの争いはインド建国以来の宿痾。純粋な一神教と極端な多神教で絶対に折り合えない。お互いに見下しあっており中道を選ぶことができない。

その他:
フィリピンでも言論弾圧か
The Philippine government ordered Rappler, the news site co-founded by the Nobel Peace Prize laureate Maria Ressa, to shut down for violating foreign ownership rules. Ressa vowed to appeal the decision.
スコットランドは分離へ国民投票
Scotland’s first minister announced plans for a referendum next year on Scottish independence, reviving the question over her country’s future.
中国へ情報流出を警戒
A U.S. official called for Google and Apple to remove TikTok from their app stores, citing concerns that the video app, which is Chinese owned, could send American data back to Beijing.

(2022年6月30日 木曜日)

世界の動き 2022年6月29日 水曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より

今日の一言:「ブルウィップ効果」
 ブルウィップ効果とは、サプライチェーンの川下で起きた小さな需要変動が川上に移動するにつれ大きな需要変動になる現象。米国の著名投資家が、米国小売業での川下での需要減が川上での在庫の著増につながり、経済でのデフレ圧力が高まっていると警告している。FRBの金融引締めに変化が現れると予想する見方が出てきたのは興味深い。カラ売り筋には首筋が寒くなる見方だ。

1.彼らは私を傷つけようとはしていない
【記事要旨】
 Jan6の暴動のヒアリングでトランプ前大統領が武器の携行を探知する議会の警備を解除するように指示したことが明らかになった。暴徒は私を傷つけに来たのではない、というのが理由だ。暴動後メドーズ首席補佐官とジュリアーニ顧問はトランプ大統領に恩赦を要請したことも明らかになった。これらの証言はトランプが暴動を扇動した証拠になるとの見方が出ている。
【コメント】
 米国での公聴会の進め方がよく理解できない。証言をいろいろな立場の人間から集めているが物的証拠なしにトランプをどのように追い詰めることが可能になるのだろうか。

2.少なくとも50人が死亡
【記事要旨】
 テキサス州で発見されたトレーラーの中で50人が死亡し16人が病院へ運ばれた。メキシコからの不法移民と見られる。トレーラにはエアコンなく、コロナ下で米国への入国が厳しくなったため危険を冒し潜入を測る中南米の人が増えている。
【コメント】
 命を失うリスクを犯しても米国に入りたいという人たちの気持ちは理解できない。

3.トルコは2か国のNATO参加を許容へ
【記事要旨】
 トルコの判断を受けてマドリッドでのNATO首脳会談でスウェーデンとフィンランドの参加を正式に招請する見込み。NATO会議に先行しドイツでのG7首脳会合では原油価格へのキャップ制度の導入と世界の食糧危機への対応が決議される。プーチン大統領は中央アジア首脳会議参加で孤立化に対抗。ロシアはウクライナのショッピングセンターをミサイル攻撃し死者は18人。インドのモディ首相はG7に参加し、自身を貧しい国々の代表と位置づけ、制裁は最貧国に最も打撃があると述べる。NATOはウクライナへの軍事支援と東方への兵力展開を決議予定。プーチンはクレムリンでインドネシアのジョコ大統領と面談予定。
【コメント】
 外交交渉が錯綜している。外交に強い岸田首相の腕の見せ所だろう。

その他:
中国は入国時の規制緩和
China cut its required quarantine time in half for international arrivals to seven days in a facility, followed by three days of home isolation.
日本の尼崎のUSB事件
After a night of drinking, a Japanese man lost two USB sticks containing the personal information of 460,000 people — the entire population of a city. Two days later, the drives were found.
まだナチの追求がされているのか
A German court convicted a 101-year-old former Nazi concentration camp guard of being an accessory to more than 3,500 murders.

(2022年6月29日 水曜日)

世界の動き 2022年6月28日 火曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より

今日の言葉:「一物一価」
一物一価の法則( law of one price)とは、自由な市場経済において同一の市場の同一時点における同一の商品は同一の価格である」が成り立つという経済原則。
ロシア原油への価格制限はこの原則に反する。これだけ情報化の進んだ世界経済で有効に機能するかは疑問だ。

1.G7のドイツでの首脳会談
【記事要旨】
ロシア原油に上限をつける案が検討される。需給を緩和し価格を抑える効果を見込む。中国に対抗し開発途上国のインフラ投資策も協議。中国は「債務の罠」との非難に反論。NATOはロシアへの対抗兵力を40000人から300000人に増加し危機に備える。
【コメント】

G7の動きは鈍く弱い。世界経済での力の低下は明らかだ。
食糧危機や激化する天災への備えはどのように議論されたのだろうか。

2.ロシア対外債務をデフォルト
【記事要旨】
日曜に30日の猶予期間の終わる1億ドルの利払いが出来ずデフォルトの見込み。ロシアは「5月に支払いをしているが西側決済期間がストップしている」と非難。デフォルトはロシアの調達コストの増加につながるが、ロシアはエネルギー輸出で潤沢な支払資金があり正式なデフォルトになるかは未定。
【コメント】
デフォルトを表明して得をするのは誰もいないので正式表明は無いと予想する。

3.輝きを失うニュージーランド首相
【記事要旨】
食料、燃料、家賃の上昇と増加するギャングの暴行で、アーダーン首相の中道左派政権は5年来で最低の支持率。コロナ対策で支持を集め2020年の選挙で単独多数を獲得したが、コロナが収まった現在、政権の公約未実現が問題になっている。
【コメント】
外から見ると輝ける星だが国民の見方は厳しい。おとなしい国民に支えられる日本の政権は楽だな。

その他:
コロンビアでスタジアムが崩落
At least six people were killed and more than a hundred injured at a bullfighting festival in El Espinal, Colombia, when wooden spectator stands collapsed.
EVで高級ブランド価値をどう維持するか
Italian car manufacturers Lamborghini and Ferrari are wrestling with how to design electric sports cars that will inspire the same passion and command the same prices as their cars with the throaty 12-cylinder engines.
これも保守的な動きか
The U.S. Supreme Court ruled that a high school football coach had a constitutional right to pray at the 50-yard line after his team’s games.

(2022年6月28日 火曜日)