一隅を照らす、これ、国の宝なり

拙著に「一隅を照らす」と添え書きし
尊敬する友人に謹呈した。

すると標記の最澄法師の言葉を返信でいただいた。
大変嬉しかった。
四字熟語では「一燈照遇万燈照国」とも言う。

どんなポジション・立場に置かれようと、
一隅を照らす心構えで仕事に取り組みたい。

一人の燈は小さくてもきっと世の中全体が良くなると
信じながら。

(2020.10.11)

総合的に俯瞰的に

「総合的に俯瞰的に」検討することが流行りのようだ。
McKinseyやHBSのニュースレターがコロナ禍を経たビジネスの変化をいろいろと論じている。

日本の現状に照らして、総合的に俯瞰的にコロナ禍後の事業環境の変化を考えてみたい。

コロナがあってもなくても日本が直面する大きな潮流は以下の5つにまとめられると思われる。
1.成長志向企業のグローバル化
2.安定志向企業の国内市場深化
3.グリーン化
4.少子高齢化
5.貧富格差拡大
コロナ禍が、かかる環境変化を加速するのは間違いない。

日本で唯一世界的に競争力があると思われる自動車産業を例に事業環境変化の影響を考えてみたい。

1.グローバル化
インド市場へいち早く進出したスズキが好例。
日本の殆どの自動車会社がこの路線。差別化が困難。

2.国内市場深化
自動車産業では例に乏しいが、海外展開は
提携先に任せる三菱自動車が例になるか。
PCでは、PanasonicのLet’s Noteが好例。

1.2.は業界レベルで対応可能かもしれないが、
3.4.5.は業界のみでの対応が難しそう。

3.グリーン化
CO2収支の算出には「車生産に際して排出
されるCO2量」「燃料のグリーン化」等が
考慮されるので、
電気自動車を安価に製造できる企業のみならず
他の競争優位を背景に参入する企業が増加しそう。
エネオス+ヤマダ電機とかイーレックス+SONYとか。

4.少子高齢化
社会インフラとしての交通システムの抜本的な
見直しが必要であり個々の企業が自動運転車を
開発すればよいわけではない。
人材も枯渇する中で各社が競うのは経営資源の
無駄かも。

5.貧富の格差拡大
高級車を所有できる一部の富裕層を狙うか(フェラーリ、ベントレー等)公共財としての運搬手段としての車を提供するかの岐路になる。
高級ブランドの無い日本メーカーは殆どが
安価な下駄を作ることになる。社会不安を背景に米大統領が乗るビーストのような特殊車両のニーズが高まるかも。

トヨタがどのように高収益企業の座を維持して行けるかとても興味深い。

(2020.10.9)

BDCについて

BDCはBusiness Development Companyの略。
日本語訳は、事業開発会社と言う。

事業開発会社(BDC)は、クローズドエンド型投資の一種。中小会社に投資をするた事業者だけでなく中小企業や再生企業といった、他の投資手段ではアクセスできない成長の可能性のある企業に必要な資本へのアクセスを提供する。

クローズドエンド型とは、投資信託協会の説明によると、
投資信託や投資法人のうち、資産を取り崩すことができないタイプのこと。解約できるものをオープンエンド型という。ファンドの発行する証券を、投資家の請求に応じて、純資産価額で取り崩して換金(解約)することが出来ないタイプ。一部解約や減資には応じないもの。クローズドエンド型の投資信託は、流動性に乏しく日々時価評価することが困難であるような資産に対して投資を行う場合に用いられ、換金性を担保するために市場に上場され、投資家は市場で売却することで換金を行う。例として、不動産投資法人や非上場株式に投資する投資法人が挙げられる。

要するに、皆さんの多くが持っているREIT(不動産投資信託)は一般の投資家から集めた資金を不動産に投資している。REITの多くは上場されているから、投資家は換金したいときには証券市場で容易に転売による換金が出来る。
REITと同じ仕組みを使って流動性の低い株式、主に非上場の企業に投資するのがBDCだ。

非上場企業に投資するビジネスで有名なのはプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)だ。
PEファンドの主たる投資家は大手の機関投資家であり、一般投資家には参加の手段がない。

米国で最近好調ばBDCの例としては以下が挙げられており興味深い。(Reality CheckというNews Letterより
Innovative Industrial Properties (IIPR)
大麻関連の不動産・企業の投資する。
大麻合法化の動きを受けて好調。
Compass Diversified Holdings (CODI)
金庫のシェア全米一。
治安の悪化による金庫需要の増加。
増大する拳銃の保管場所としての金庫仕様増加。

ここにきてBDCが注目を集めているのは、とりわけ、BDCの配当実績が他の資産クラスを上回っているからだ。低金利下での運用難にBDCが一般投資家を引き付けているのだ。

わが国ではREITは大きく発達したがBDCは未発達だ。
投資対象の多角化の観点から整備が望まれる。

(2020.9/30)

2021年の予算作成における注意点

McKinseyのManaging PartnerであるKevin Sneaderの表題のプレゼンを見た。
コロナ禍で、戦略を価値に変えてゆくために特に注意すべき5つの点を説いている。

英語のまま引用し、私の訳文を付す。

First, stress test scenarios and assumptions to counter uncertainty.
①不確実性に対応するためのシナリオと前提についてストレステストすること。

Two, reimagine the business from a zero base in order to determine key business drivers.
②主要なビジネスの推進力を特定するために事業をゼロベースで再考すること。

Three, hold back some spending centrally, as contingency, to build flexibility and optionality into budgets.
③予算に柔軟性と選択可能性を与えるために一部の支出を不測の事態に備え集中的に控えること。

Four assign finance talent to support the highest priority areas, or topics in order to prevent burnout.
④燃え尽きるのをを防ぐために、優先度が最も高い分野・トピックに対して金融に明るい人材を配すこと。

Five, rethink decision-making with the explicit goal of de-biasing the planning process.
⑤計画プロセスのバイアスを無くすという明確なゴールのを持って意思決定を再考すること。

以前の常識はもう役に立たない可能性が高いが、強靭性と持続可能性を背景に今投資をすることで危機に弱まるのではなく強くなる企業になることが可能であるいう結論で結んでいます。

筆者は、5つのアドバイスはどれも傾聴に値すると思います。投資に際しては、それが企業の強靭性と持続性に効くのかどうかを常に考慮し、Perfect Stromのようなケースを想定しストレステストをするのは、もともとの筆者の主張と同一であり、とても共感しました。

(2020.9.26)

A Little Fellow

”Good to a little fellow. ”「小さな顧客に親切に」
1975年に当時ピープルズバンクをモットーにしていた三和銀行に入行した際に先輩から教えられたBank of Americaの創立者であるGianniniの言葉だ。

イタリア系移民であったGianniniが移民のためにサンフランシスコで作った銀行が小さな顧客を大切にする積み重ねで世界最大の銀行に成長するいきさつは以下に述べられている。(A Little Fellowという伝記映画の説明から引用)
Before banks had a branch on every corner, they were an exclusive service for the wealthy. For the poor, working, and immigrant class, saving money was as unreliable as stashing it under a mattress. But at the turn of the 20th century, A.P. Giannini revolutionized the industry with his small bank in San Francisco.
As a first-generation Italian-American, his goal was to serve “the little fellow” and breed prosperity within his immigrant community. By building trust and giving loans on a simple handshake, he created one of the largest banks in the country – Bank of America.

今日、税金の支払いで家の近くのメガバンクへ行った。窓口が一つしか空いておらず、15分ほど待たされた。半沢直樹を演じる俳優が広告に使われている銀行だが、小さな顧客に目を向けることは少なそうだ。

預金金利は0.001%だから1000万円預けていても利息は年間100円に過ぎない。時間外に預金を引き出せばその手数料の方が大きい。

殆どの銀行は、預金は要らないから投資信託を買ってくれとかラップ口座を開設してくれと言う。フィーに目が言っての勧誘で、顧客のことを考えて勧めているわけではない。

みずほ銀行は来年から通帳の発行手数料を1000円取るそうだ。他のメガバンクも追随するらしい。あんなに豪華な通帳でなくて結構だから無料で通帳を引き続き発行してくれる金融機関に期待したい。

「Bank of Americaのお話のころは小さな預金者を大切にして金利を5%払っても中小企業に10%で貸せば利益を上げることが出来た。ゼロ金利の今は、時代が違う。銀行も赤字になりかねない時代だ。あらゆるコストは回収しなければならない」という説明はよくわかる。

ただ、その根底に、
「小さな顧客を大切にする」という精神が無ければ、そもそも銀行業を行うべきでない。
そうした精神を失った銀行は、顧客からの信頼を勝ち取ることも出来ない。

今一度Gianniniの精神を思い出す時だ。

(2020.9.24)