世界の動き 2025年10月22日 水曜日

今日の一言
 「split-screen view(分割画面のような景色)」
 経済状況が人々によって大きく異なる様子を表す比喩的な表現だ。例えば、富裕層は引き続き消費を楽しんでいる一方で、低所得層は支出を抑えているというような“二極化”を示している。
 今後の企業の決算発表では、消費者の購買行動の変化が売上にどう影響しているかが語られる可能性がある。トランプ関税の影響を最も受けるのは、低所得層だ。No Kingsという反トランプデモが全米で巻き起こったのは、低所得層の不満の表れでもある。
 高市政権の誕生で、日本ではどのようにsplit screen viewが現出するだろう。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.習近平の後継者
【記事要旨】
 中国において「後継者問題」は非常にデリケートな話題だ。毛沢東は死ぬまで権力を握り続けたが、その後継者である鄧小平は国家主席の任期を2期に制限し、江沢民は高官の定年制(当初70歳、のちに68歳)を導入した。しかし、習近平はこれらの制度を撤廃した。
 現在72歳の習近平は、健康が許す限り2035年以降までの長期的な国家ビジョンを掲げており、政権を維持する意志を示している。しかし、後継者については一切言及しておらず、党内でもその話題はタブーとされている。若手幹部の登用も見られず、後継者育成の兆しはない。
 習近平が後継者を指名しない理由の一つは、政治的な力の分散を避けるためとされえる。彼自身が「歴史的使命を帯びた指導者」として中国と共産党の存続を担う存在だと信じている節がある。
 これは胡錦濤や江沢民の時代に見られた、集団指導体制や秩序ある権力移譲の流れを断ち切るものだ。習近平は毛沢東や鄧小平のような中央集権的なリーダーシップに回帰しており、それが後継問題をより複雑にしている。
 今のところ習近平の権力は揺るがないが、今後5〜10年のうちに高齢化が進む中で、体制の安定性に対する懸念や後継者を巡る派閥争いが表面化する可能性がある。
 習近平はソ連の崩壊を「誤った後継者(ゴルバチョフ)の選出」によるものと見ており、同じ過ちを避けようとしている。ただし、中国の指導層には1970年代生まれの若手も登場しており、世代交代の意識はあるものの、それは習近平本人には当てはまらない。
【コメント】
 誰が後継者かの予想もつかない状況ということだろうか。一部報道で習近平の失脚説がでたが、彼を引きずり下ろす勢力は出そうもない。

2.日本初の女性首相
【記事要旨】
 昨日、日本の国会議員は強硬保守派の高市早苗氏を日本初の女性首相に選出した。
 64歳の高市氏は、安易なレッテル貼りを拒絶する人物だ。彼女は日本の米国依存を懸念していると述べた一方で、トランプ大統領との緊密な連携を望んでいる。彼女は中国に対して強硬な政策を掲げ、第二次世界大戦中の日本の残虐行為を軽視し、移民と観光業を厳しく規制することを約束した。多くの日本人女性は、高市氏が強い女性リーダーのイメージを定着させる一助となることを期待しているが、彼女はフェミニストとして知られているわけではない。
 Timesの東京支局長は、高市氏の権力掌握が日本の右傾化を反映しているという。
【コメント】
 「シカを蹴る外国人旅行者」という高市発言も取り上げられていた。トランプの「犬や猫を食べる不法滞在移民」と同列に、外国では取り上げられているようだ。フーン。

其の他の記事
・ホワイトハウスは、トランプ大統領とプーチン大統領が近いうちに会談することはないと発表した。
・イスラエルを訪問したJ・D・ヴァンス副大統領は、ガザ地区での停戦合意が維持されるだろうと楽観的な見方を示した。
・米国とオーストラリアは、世界のレアアース供給における中国の支配を緩和したいと考えている。

・米国政府閉鎖は3週間目に入り、終わりの兆しは見えない。これは、米国史上最長の資金不足の一つとなる可能性がある。

2025年10月22日 水曜日

世界の動き 2025年10月21日 火曜日

今日の一言
「高市政権発足」
 日経平均は1603.35上昇し49185.50と最高値を更新。政権の誕生を好感しているようだ。
 維新の会との連立成立の会見では、両党とも「国家観」「日本を前に進める」という言葉が目立った。日本を前進させる考えは当たりまえとだ。国家観については、首相選出で協力を求めている参政党や日本保守党とも似ているようだ。
 日本を考えの基軸とする(対米従属でない)保守の確立を期待し、高市氏の登場をはやし立てる勢力がある。一方、冷静に見れば、高市氏の政策は、政府に従属的な金融政策、拡張的な財政政策、成長戦略の組み合わせでアベノミックス2.0にすぎない印象だ。
 現在の市場の熱狂をどう見ればよいのだろうか。以前、トラス政権の登場時と日本の現状の類似性を指摘した。経済を推進する政治の確立は期待できそうもない。株価の剥落が、政権を揺るがす状況だ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.ルーブル美術館での窃盗
【記事要旨】
 事件概要
 日曜午前、ルーブル美術館に4人組の窃盗犯が侵入し、わずか8分で「計り知れない価値」の宝飾品9点を盗み逃走。犯行は電動はしごとディスクカッターを使い、警備員を脅して展示ケースを破壊するという大胆な手口だった。
 盗まれた品と狙い
 盗まれたのはティアラ、ネックレス、イヤリングなどの宝飾品で、美術品ではなく、個別に売却可能なダイヤモンドや金などが標的。識別が容易な有名宝石は避けられた。
 犯行の性質
 これは「美術品窃盗」ではなく、換金目的の「商品窃盗」。犯人は売却困難な品は放棄し、換金しやすい宝石類に絞っていた。
 美術館の過去の強盗例
– 1911年:ルーブルで「モナ・リザ」盗難(後に回収)
– 1994年:オスロでムンクの「叫び」盗難(1分未満)
– 2000年:オックスフォードでセザンヌ作品盗難(未発見)
– 2017年:ベルリンで巨大金貨盗難
【コメント】
 詳しく知れば知るほど「ルパン3世」の犯行だ。犯人はどのように換金するのかに興味がある。

2.ガザ計画推進に向けた米国の取り組み
【記事要旨】
 トランプ大統領の義理の息子の一人、ジャレッド・クシュナー氏と大統領の中東担当特使スティーブ・ウィトコフ氏は昨日、ガザ和平計画の強化を図るためイスラエルに到着した。J・D・ヴァンス副大統領は本日イスラエルに到着する予定だ。
 イスラエルとハマス間の停戦が緊張の兆しを見せている中で、こうした要人訪問が行われた。停戦の将来を危うくする未解決の問題がいくつか残っている。
 イスラエルとハマスの合意で重要な役割を果たしているのは、政府関係者ではないクシュナー氏だ。
 米国の安全保障請負業者によって運営され、イスラエルの支援を受けているため厳しく批判されている援助団体であるガザ人道財団は、停戦のため援助活動を一時停止した。
【コメント】
 クシュナーは第一次トランプ政権でアドバイザーを務め、アブラハム合意を成立させた中心人物だ。中東の政権と富裕層に強い人脈を持つ。彼が運営するマイアミ投資会社は資金のほとんどを中東から集めている。

其の他の記事
・トランプ大統領は、オーストラリアのアンソニー・アルバネーゼ首相と希土類鉱物の供給確保に関する合意に署名した。
・Amazonのクラウドサービスに世界的な障害が発生し、WhatsAppやSnapchatを含む数百のウェブサイトとアプリがオフラインになった。
・オーストラリア当局は、南シナ海上空を哨戒していた中国の戦闘機が、オーストラリア空軍機の危険なほど接近して照明弾を発射したと発表した。

香港国際空港でエミレーツ航空の貨物機が滑走路から滑り落ち、哨戒車両に衝突し、地上要員2名が死亡した。

2025年10月21日 火曜日

世界の動き 2025年10月20日 月曜日

今日の一言
「投機は創造の源」
 米国の株式市場が乱高下している。市場はすでにバブル状況にあり、現在の株式市場への資金の流入は投資ではなく投機だとする見方が強い。
 1929年の株式市場の大暴落は、しばしば「投機=悪」として語られるが、そうした見方は一面的だ。実際、投機はアメリカの経済成長と革新の原動力であり、破壊ではなく創造の源だった。
 投機は単なるギャンブルではなく、信念を持ってリスクを取る行為だ。未来の不確実性に資本を投じることで、イノベーションが生まれる。電気自動車、COVIDワクチン、OpenAI、Amazon、インターネットなど、すべては「一見無謀な賭け」から始まった。
 1929年当時の金融資本家たちは投資の民主化を信じていたが、レバレッジの危険性や市場の脆弱性を見誤った。結果として大惨事が起きたが、それでも投機そのものが悪だったわけではない。
 1929年以降、アメリカは投機を禁止するのではなく、SECやFDICなどの制度を通じてリスクを管理する仕組みを整えた。これにより、投機はより健全な形で経済を支える力となってきた。個人の資金も安心して株式市場に参入できる状況が整備された。
 リスクと報酬は表裏一体だ。重要なのは「投機をやめること」ではなく、「責任を持って投機すること」だ。投機資金の流入が米国でのたゆまぬ創造の源だ。
 翻ってわが国では、投機どころか投資にも資金が回らない状況だ。新NISAは個人資金を投資に呼び込むための官製の仕組みだ。企業に対しては、内部留保課税の強化・再設計が俎上に上がってきている。一定以上の現金保有に対して課税することで、企業に投資や賃上げを促す官製の改革だ。
 創造の源たる投機に対する彼我の考え方の差は大きい。

ニューヨークタイムズ電子版より
(以前は6時ちょうどに配信されたが、今は10分ほどの遅延が常態化している。今日は6:17にやっと届いた。ちょっとTimesはたるんでいる)
1.伝染するZ世代の革命
【記事要旨】
 Z世代による抗議活動が世界各地で広がっており、ネパールやマダガスカルでは政権転覆にまで至った。これらの運動は、ソーシャルメディアを通じて国境を越えて連携し、共通の言語やミーム文化を共有することで拡散している。
 共通点と背景
– 抗議のきっかけは国ごとに異なる(ネパール:SNS禁止、マダガスカル:インフラ崩壊)。
– 両国とも若年層が多く、失業率が高く、汚職や縁故主義が蔓延している。
– TikTokやDiscordなどを通じて、若者同士が国境を越えて影響を与え合っている。
 パラドックスと課題
– 若者は変革を起こす力を持つが、運動後の政治的影響力や生活改善には限界がある。
– マダガスカルでは軍が権力を掌握し、旧体制の政治家が復権した。
– ネパールでは若者が暫定政権から排除されつつある。
– 根本的な問題(若者の失業、政治参加の困難)は構造的で、抗議だけでは解決が難しい。
 歴史的文脈
– 1968年の西欧・米国の若者運動や、2010年代の「アラブの春」と同様に、Z世代も変化を求めて立ち上がっている。
– しかし、過去の例と同様に、政権交代が若者の未来を保証するとは限らない。
【コメント】
 若者は変革の火種となるが、その後の持続的な成果を得るには、より深い制度改革と政治的包摂が必要だ。平均年齢の若い民主主義にまだ希望を見出す国々だけに起きる事象だろうか。
 私が大学生だったころキャンパスには政治スローガンをあおるタテカンがあふれかえっていた。若者の政治への熱気は日本でははるか昔の出来事だ。

2.イスラエル、ガザ地区への攻撃を開始
【記事要旨】
 イスラエルは昨日、ハマスがイスラエル軍への発砲と停戦違反を犯したと非難し、10月10日の停戦発効以来、最も激しい一連の攻撃をガザ地区に対して実施した。
 イスラエル当局者は、今回の攻撃によりガザ地区への人道支援は停止されたが、爆撃が終息すれば支援は再開される見込みだと述べた。イスラエルとハマスは、過去3日間の暴力行為の激化を受け、互いに停戦違反を非難している。
 しかし、双方とも依然として停戦維持に尽力していることを明確にしている。
 停戦発効後、数千人のパレスチナ人がガザ市やガザ北部の他の地域に帰還した。多くの場合、彼らは自宅や近隣地域が壊滅状態にあるのを目にした。
【コメント】
 ガザの映像を見ると瓦礫の山だ。どうやって住民の生活を再建するのだろうか。

3.ルーブル美術館で7分間の強盗
【記事要旨】
 昨日、パリのルーブル美術館2階にあるアポロン・ギャラリーに、トラックのリフト装置を使って強盗が入りました。このギャラリーには、王室の宝石コレクションと王冠のダイヤモンドが展示されている。
 フランス内務大臣によると、強盗たちは2つの展示ケースから貴重な宝石8点を奪い、スクーターで逃走した。しかも、逃走を急ぐあまり、1,354個のダイヤモンドと56個のエメラルドがちりばめられたウジェニー皇后の王冠を落としてしまった。
 捜査当局は、強盗の精度とスピードから、3人か4人の強盗が関与しており、経験豊富な犯罪者集団だったとみている。
【コメント】
 映像を見ると長いはしご車を使ってギャラリーのある上層階に侵入したようだ。ルパン三世のような犯行だ。

其の他の記事
・米軍は、カリブ海で麻薬を密輸しているとみられる船舶を攻撃し、男性3人を殺害した。これは9月初旬以降、7度目の船舶攻撃となる。
・アフガニスタンとパキスタンは停戦に合意し、数年ぶりの最悪の軍事攻撃激化を受け、緊張緩和を約束した。
・トランプ政権に反対する「ノー・キングス」集会が全米各地で開催され、大勢の人々が参加した。トランプ大統領は王冠をかぶった自身の動画を投稿した。

NYTimesのスポーツ欄は何を報道していると思いますか?
スポーツ
・サッカー:アンジェ・ポステコグルー監督がノッティンガム・フォレストを率いた39日間の悲惨な日々の裏側。
・トライアスロン:アイアンマン世界選手権を完走したばかりの80歳の男性。

2025年10月20日 月曜日

もはや神業

大谷翔平の大活躍を報じるThe Atlanticの記事だ。
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史上最高の個人パフォーマンス?

大谷翔平のマウンドでの働きが、打席での苦戦を招いたという噂が広まった。しかし、その結論?は全くの的外れだった。

昨夜の第4戦、大谷はドジャース対ブルワーズのスイープを決定づけるチャンスで先発登板した。1回裏に三者凡退の三振を奪い、続く3回裏には先頭打者本塁打を放った。いつもの翔平らしいプレーだ。

さらに4回にも469フィート(約130メートル)のムーンショット本塁打を放ち、その数イニング後には6イニング、2安打、無失点、10奪三振という成績でマウンドを降りた。

7回に打席に立った時点で、すでにポストシーズン史上最高のパフォーマンスの一つだった大谷だが、7回途中でマウンドを去った。

言うまでもなく、大谷は1試合で3本塁打を放ち、10三振を奪った史上初の選手だ。これは野球史上最高の個人成績だったという議論も当然だろう。

ドジャースは再びワールドシリーズにHalloと言い、世界は野球シーズンにGoodbyeする。
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ヒーローインタビューで通訳がうまく大谷の発言を訳した。
Everybody, please taste good sake tonight!

大谷選手のワールドシリーズでの活躍に期待したい。

2025年10月19日 日曜日

週間市場動向 2025/10/13-10/17 (備忘録)

10月13日から17日の週、日米の株式市場は政治要因と金利動向に翻弄され、週末にかけて調整色を強めた。​

日本株市場
日経平均株価は週を通じて下落基調となり、10月17日(金)の終値は47,582円、前週比で約1.05%の下落だった。米国株の下落と円高進行、さらに21日に予定される首相選による政治的不透明感が重荷となった。一方で、半導体関連などでは一時的な買い戻しも見られた。​

米国株市場
米国市場では週前半にAI関連株主導で最高値を更新したが、週末にかけて急落した。10月17日の終値ベースで、ダウ平均株価は38,450ドル前後(週末比−0.4%)、S&P500は5,090(−0.3%)、ナスダック総合は15,520(−0.8%)となった。要因はトランプ政権による中国製品への追加関税懸念と、米地域銀行の不良債権報道によるリスク回避である。​

為替と金利動向
為替市場では一時1ドル=153円台まで円安が進んだが、週末は150.6円まで反発して取引を終えた。日銀の追加利上げ示唆発言や安全資産買いが円買いを誘った。​

日米金利は方向感が分かれた。日本の10年国債利回りは1.63%(前週比−0.03pt)と小幅低下した。米10年債利回りは4.10%前後まで低下し、安全資産需要が強まった。短期金利では日銀が緩やかな正常化姿勢を維持しつつも、FRBは利下げ観測を遠ざける発言を続けている。​

今週(10月20日週)の注目点
今週は米企業決算(テクノロジー・金融セクター)と10月FOMC議事要旨が焦点となる。日本では新首相選出を控えた政治動向が株価に影響を与える見込み。為替は150円水準を中心にドル円のレンジ推移が想定され、植田総裁の発言が注目される。​

PE市場の動向
プライベート・エクイティ市場では、2025年前半の出口環境が停滞し、LP(投資家)側がセカンダリー取引で流動性確保を図る動きが顕著となっている。大型買収案件は減少傾向だが、中堅市場(ミッドマーケット)でAI活用型のコスト削減・再編案件が増加している。​

プライベート・クレジット市場の動向
2025年上半期だけで1,240億ドルの資金調達があり、前年同期比50%増と好調を維持している。直接融資(ダイレクトレンディング)が主流だが、金利上昇下で借り手のカバレッジ比率低下(平均1.5倍未満)が見られ、信用リスクへの警戒が高まっている。​

総じて、先週は金利低下と円の反発を背景に、調整基調が強い週であった。今週は政治決定と決算発表を通じてリスク選好の方向性が試される局面にある。

特記事項
2025年10月中旬、米国の中小銀行と自動車部品セクターにおいて信用不安が広がり、金融市場全体に再び緊張感が走っている。​

自動車部品会社の破綻
9月末に米自動車部品大手First Brands Groupがテキサス州で連邦倒産法第11章(チャプター11)の適用を申請し、10月に入ってから債権者への影響が顕在化した。同社はアフターマーケット向けブレーキ、フィルター、潤滑製品を製造しており、負債総額は100億〜500億ドルに達するとされる。倒産の背景には、EV市場の冷え込み、関税引き上げ、資金繰りの逼迫、さらには約23億ドルに上る「オフバランス取引」の不正疑惑がある。​

特に注目されているのは、日本の農林中央金庫(Nochu)および三井物産との合弁会社JA三井リース(JA Mitsui Leasing)傘下のKatsumi Globalが同社への売掛債権買取取引(ファクタリング)を通じて17.5億ドル(約2,600億円)ものエクスポージャーを抱えている点である。この損失懸念は日本の金融株にも波及し、国内の信用リスク認識を高めた。さらに、同業のMarelli Holdings(旧カルソニックカンセイ)も春に米国で破綻手続に入り、この分野全体に構造的な再編圧力が強まっている。​

米国地方銀行の信用不安
一方米国では、地域銀行(regional banks)の与信リスク懸念が再燃している。原因の一つは、上述のFirst Brands破綻に加え、Zions Bancorp(ユタ州)とWestern Alliance Bank(アリゾナ州)が商業ローンに関する損失や不正融資問題を公表したことにある。Zionsは5,000万ドルの貸倒損失を第3四半期に計上し、Western Allianceは融資先「Cantor Group V LLC」への詐欺被害を発表した。これを受け、両行の株価は一日で約10〜12%急落した。​

加えて、Jefferies Financial GroupがFirst Brands関連の負債5.9億ドルを保有していると明かし、マーケット全体の信用リスク不安を一段と高めた。こうした報道を受けて、銀行業界株価指数であるKBW Bank Indexは10月中旬だけで7%下落し、金融市場は2023年の中堅銀行危機以来の警戒ムードに包まれた。​

分析と影響
今回の一連の事象は、信用市場の透明性欠如と民間債務過多を改めて浮き彫りにしている。米地域銀行は依然として商業不動産や産業ローンに高い集中度を持ち、利上げ後の信用コスト上昇に耐えきれない構造的脆弱性が残る。また、自動車サプライチェーンにおける金利上昇・需要鈍化・貿易摩擦が重なり、サプライヤーの倒産連鎖リスクが拡大している。​

総じて、自動車関連金融と地域銀行の与信の両面から「信用リスクの再燃」が顕在化した週であり、今後の市場の焦点はこれが一過性の調整か、あるいは広範な資本市場リスクに発展するかに向かっている。

2025年10月18日 土曜日