10月13日から17日の週、日米の株式市場は政治要因と金利動向に翻弄され、週末にかけて調整色を強めた。
日本株市場
日経平均株価は週を通じて下落基調となり、10月17日(金)の終値は47,582円、前週比で約1.05%の下落だった。米国株の下落と円高進行、さらに21日に予定される首相選による政治的不透明感が重荷となった。一方で、半導体関連などでは一時的な買い戻しも見られた。
米国株市場
米国市場では週前半にAI関連株主導で最高値を更新したが、週末にかけて急落した。10月17日の終値ベースで、ダウ平均株価は38,450ドル前後(週末比−0.4%)、S&P500は5,090(−0.3%)、ナスダック総合は15,520(−0.8%)となった。要因はトランプ政権による中国製品への追加関税懸念と、米地域銀行の不良債権報道によるリスク回避である。
為替と金利動向
為替市場では一時1ドル=153円台まで円安が進んだが、週末は150.6円まで反発して取引を終えた。日銀の追加利上げ示唆発言や安全資産買いが円買いを誘った。
日米金利は方向感が分かれた。日本の10年国債利回りは1.63%(前週比−0.03pt)と小幅低下した。米10年債利回りは4.10%前後まで低下し、安全資産需要が強まった。短期金利では日銀が緩やかな正常化姿勢を維持しつつも、FRBは利下げ観測を遠ざける発言を続けている。
今週(10月20日週)の注目点
今週は米企業決算(テクノロジー・金融セクター)と10月FOMC議事要旨が焦点となる。日本では新首相選出を控えた政治動向が株価に影響を与える見込み。為替は150円水準を中心にドル円のレンジ推移が想定され、植田総裁の発言が注目される。
PE市場の動向
プライベート・エクイティ市場では、2025年前半の出口環境が停滞し、LP(投資家)側がセカンダリー取引で流動性確保を図る動きが顕著となっている。大型買収案件は減少傾向だが、中堅市場(ミッドマーケット)でAI活用型のコスト削減・再編案件が増加している。
プライベート・クレジット市場の動向
2025年上半期だけで1,240億ドルの資金調達があり、前年同期比50%増と好調を維持している。直接融資(ダイレクトレンディング)が主流だが、金利上昇下で借り手のカバレッジ比率低下(平均1.5倍未満)が見られ、信用リスクへの警戒が高まっている。
総じて、先週は金利低下と円の反発を背景に、調整基調が強い週であった。今週は政治決定と決算発表を通じてリスク選好の方向性が試される局面にある。
特記事項
2025年10月中旬、米国の中小銀行と自動車部品セクターにおいて信用不安が広がり、金融市場全体に再び緊張感が走っている。
自動車部品会社の破綻
9月末に米自動車部品大手First Brands Groupがテキサス州で連邦倒産法第11章(チャプター11)の適用を申請し、10月に入ってから債権者への影響が顕在化した。同社はアフターマーケット向けブレーキ、フィルター、潤滑製品を製造しており、負債総額は100億〜500億ドルに達するとされる。倒産の背景には、EV市場の冷え込み、関税引き上げ、資金繰りの逼迫、さらには約23億ドルに上る「オフバランス取引」の不正疑惑がある。
特に注目されているのは、日本の農林中央金庫(Nochu)および三井物産との合弁会社JA三井リース(JA Mitsui Leasing)傘下のKatsumi Globalが同社への売掛債権買取取引(ファクタリング)を通じて17.5億ドル(約2,600億円)ものエクスポージャーを抱えている点である。この損失懸念は日本の金融株にも波及し、国内の信用リスク認識を高めた。さらに、同業のMarelli Holdings(旧カルソニックカンセイ)も春に米国で破綻手続に入り、この分野全体に構造的な再編圧力が強まっている。
米国地方銀行の信用不安
一方米国では、地域銀行(regional banks)の与信リスク懸念が再燃している。原因の一つは、上述のFirst Brands破綻に加え、Zions Bancorp(ユタ州)とWestern Alliance Bank(アリゾナ州)が商業ローンに関する損失や不正融資問題を公表したことにある。Zionsは5,000万ドルの貸倒損失を第3四半期に計上し、Western Allianceは融資先「Cantor Group V LLC」への詐欺被害を発表した。これを受け、両行の株価は一日で約10〜12%急落した。
加えて、Jefferies Financial GroupがFirst Brands関連の負債5.9億ドルを保有していると明かし、マーケット全体の信用リスク不安を一段と高めた。こうした報道を受けて、銀行業界株価指数であるKBW Bank Indexは10月中旬だけで7%下落し、金融市場は2023年の中堅銀行危機以来の警戒ムードに包まれた。
分析と影響
今回の一連の事象は、信用市場の透明性欠如と民間債務過多を改めて浮き彫りにしている。米地域銀行は依然として商業不動産や産業ローンに高い集中度を持ち、利上げ後の信用コスト上昇に耐えきれない構造的脆弱性が残る。また、自動車サプライチェーンにおける金利上昇・需要鈍化・貿易摩擦が重なり、サプライヤーの倒産連鎖リスクが拡大している。
総じて、自動車関連金融と地域銀行の与信の両面から「信用リスクの再燃」が顕在化した週であり、今後の市場の焦点はこれが一過性の調整か、あるいは広範な資本市場リスクに発展するかに向かっている。
2025年10月18日 土曜日