馬に水を飲ますには

You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.
というイギリスのことわざが日本でも「馬を水辺に連れていくことは出来るが水を飲ませることは出来ない」という表現で広まっている。

確かにそうだ、と思う人が多いと思われる。

小さな子に勉強の大切さを言い聞かせても聞き分けよく勉強する子は少ない、という経験を持っ親は多かろう。

ビジネスでも、同じだ。立ち上がりのベンチャー企業で、自分で目標をきちんと立て、地道に実行して行ける企業は少ない。
ある顧問先企業での話。PDCAのフォーマットを作る時間が無いというのでこちらで作成したところ、記入する時間が無いとの説明。 椅子からずり落ちそうになる。

どうすればよいか。名案はない。

子供であれば、やっぱり勉強しておいたほうがよさそうだと自分で気づくか、ゲーム感覚で相手に勝ちたいと思うような状況が現出しないと難しかろう。

ベンチャー企業であれば、可能性のある計画を立て、計画を実現することはステークホルダーへのコミットメントの実現だという心持ちを経営者が持たない限り無理だ。

ヒンヒン鳴きながら走りまわる馬は多いが、長距離を走るためにゆっくり水を飲むことのできる馬は非常に少ない。
さてさて「しっぽの短い馬」を見つけるのは難しい。

(2020.622)

If you build it, he will come.

この言葉はKevin Costner主演のField of Dreamsで神の啓示のように主人公に聞こえる言葉だ。この映画を見た人には終生耳に残る言葉と成ると思う。

It は主人公が持つトウモロコシ畑を切り開いて作る野球場を指す。
Heが誰を指すかは是非映画を見て下さい。
筆者は映画の舞台を訪ねてアイオワ州の片田舎を訪問した。

この映画は、野球場を作ると彼が現れ、おしまいには野球場に試合を見に来る車の列が映し出され、破産して農場を取られそうだった主人公が何とか切り抜けられそうだというハッピーエンドに終わる。

さて、現実世界でもこの言葉が当てはまるだろうか。

筆者が支援するあるスタートアップ企業。
技術には自信あり。ただ見込み顧客の要望を聞きたがらない。
自分たちの技術がデファクトスタンダードになれば
カスタマイズはミニマムで済むと強気だ。

If you build it, they will come.になるかどうか。
Let’s wait and see. Time will tell.

(2020,6,21)

ガバナンス3形態の優劣

今年の株主総会では株主還元より会社のガバナンスの整備を求める声が強かったと日経新聞が報じていた。

日本の会社のガバナンス形態には3つあるのはご高尚のとおり。
指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社、監査役会設置会社の3つである。

指名委員会等設置会社:
巷間、欧米のスタンダードに近く、最も進んだだ形態と言われるが、日本企業で先行した東芝は不正会計疑惑にまみれ、ソニーは極度の業績不振に見舞われた。
形式だけ先進っぽくしてもそれが実際に先進のガバナンスをもたらすわけではないことは自明である。

監査等委員会設置会社:
ガバナンス・コードの基準の社外取締役を複数任命要請にこたえるべく、既に複数存在した社外監査役を社外取締役に替えることが可能な簡便な制度である。
従来の監査役が監査等委員になるので、しっかりした監査役会であれば有効な形態たりうる。
また、指名委員会のように3つの委員会を正式に走らせるわけではないので会社のオペレーションの負担はずっと少なくて済むメリットがある。

監査役会設置会社:
実は監査役の権限は強いのです。
取締役は取締役会決議の際しては一票を持つのみです。
正論でも、多数決では負けることが大いにあり得ます。
監査役は独任制だから、監査役が一人でも納得しなければ、
決議に同意しないことが可能です。
最終的な手段として監査役監査報告を発行したい手があります。

結論:従って、結論としては「どの形態が優れているか一概には言えない」ということになる。

数字考 その2 1000羽に一羽

「椋鳥は1000羽に一羽毒がある」

江戸時代の儒学者野中兼山が害虫を駆除する椋鳥を農民が捕食しないようにと語った言葉だと言われる。
100羽に一羽では、椋鳥の毒にあたった事例が無いとおかしいし、10000羽に一羽では恐ろしくなくて農民は椋鳥を捕食し続けるだろう。
1000羽に一羽(つまり0.1%)というのは人を怖がらせるのに絶妙な効果を持つ数字であることがわかる。

厚生労働省の抗体検査の結果、東京都での抗体保持者は0.1%だったそうだ。怖がるには絶妙な数字だろう。
東京ドームに観客が50000人集まると、感染者が50人いることになる。怖いと思うかどうか微妙な数字だ。

東京アラートで言われていた1週間の新規感染者が一日平均20人以下というのは、100000人当たり0.5%と説明されていたが、ドイツの100倍の厳しさとも言われている。

アラートに使うのにどういう数字が妥当性を持つか一概に言えないが、日本の経験則、1000羽に一羽を適用してみよう。

1000万東京都民の0.1%がコロナに罹患しているとして10000人。10000人を365で割ると、一日の新規感染者が30人程度で収まれば許容範囲。
40人を超えると少々注意したほうがよかろう、というのが皮膚感覚がもたらす結論ではないだろうか。

(2020.6.19)

数字考 その1 2週間に一度

今から30年以上前にバンコクに勤務したことがある。
当時のバンコクは夜の歓楽街が有名で日本の本社から来る出張者や接遇を依頼された取引先を案内することが無かったと言えばうそになる。
女性を抱えた店で客引きが言っていたのは「うちの女の子は安心ですよ。2週間に一度病気の検査をしていますからね」というものだった。

2週間に一度の検査というのは絶妙な設定だ。
1週間に一度というとそんな頻度でほんとにやっているか信憑性に欠ける。
1か月に一度だと、間が空きすぎてちょっと怖い。お客が病気に移る可能性がある気がする。

今回、歌舞伎町のホストクラブで新型コロナのクラスターが発生し、ホストに2週間に一度のPCR検査を義務付けると言っていたのには驚いた。
ああそうか、ホストというのはバンコクの女性のように肉体を酷使して働いている人たちなのだ。

読売巨人軍の選手で2人の「微陽性」の感染者が出たあと、巨人軍が発表した、「全選手を2週間に一度PCR検査する」という方針には笑った。
野球選手もそんなに肉体を酷使する職業なのだろうか。

何れにしても、「2週間に一度」というのは
何となくしっかりやっている印象を与える便利な表現なのだ。
曰く、2週間に一度PDCAを確認しよう、とか
2週間に一度フォローアップミーティングしようとか、である。
ビジネスへの展開も容易だ。

(2020.6.17)