世界の動き 2023年8月2日 水曜日

今日の言葉:
「ふるさと納税」

 今朝の日経記事だ。『ふるさと納税の拡大が続いている。2022年度の寄付額は1兆円に迫り、3年続けて過去最高を更新した。総務省が1日、発表した。大規模な税収流出が続く大都市も返礼品を拡充し、京都市や名古屋市への寄付は大幅増となった。全国で地域活性化に直接つながらない事務経費は増えており、返礼品ありきの運用の見直しが必要となる。22年度の寄付額は9654億円で前年度から16%増えた。総務省は「制度の定着や新型コロナウイルス下での電子商取引(EC)の広がりが伸びの背景にある」とみる。』

 税金が流出する大都市もふるさと納税獲得に参戦し、日本全体を巻き込んだ税収のゆがみが進んでいる。高額所得者に優しい制度だという批判もある。このまま制度が維持されてゆくのでしょうかね。税金の公共性の根本に係る問題だと思われる。

ニューヨークタイムズ記事より
1.西アフリカでの新たなクーデターが意味するもの
【記事要旨】
ニジェールでの軍事占領からほぼ1週間が経った今でも、誰が本当の責任者なのかについて確実でなく、クーデターは地域紛争を引き起こす恐れがある。
以下はタイムズのアフリカ担当主任特派員の話だ。
『マリとブルキナファソの指導者は火曜日、ニジェールの責任者であると主張する兵士を支持した。 これらの指導者も軍事クーデターで権力を掌握し、その結果、地域同盟である西アフリカ諸国経済共同体からの資格停止につながった。 同同盟は日曜日、追放された大統領が職に復帰しなければニジェールへの軍事介入を主導すると脅迫した。
双方ともに戦争を本気で考えているかどうかは不明だが、これは西アフリカがいかに分断されているかを示している。
最悪の場合、数千人の西側兵士が現地に駐留している国で地域戦争を引き起こし、ロシアのワグナー傭兵がその存在を拡大する新たな機会をもたらす可能性がある。 西側諸国にとって、ニジェールはこの地域におけるイスラム過激派との戦いの最後の砦の一つであり、1,500人のフランス軍と1,100人のアメリカ軍が駐留している。彼らに何が起こるかが、この危機に対する西側諸国の計算の中心にある。
ニジェールのクーデターの背後にはさまざまな要因が潜んでいる。 マリでは汚職と武装勢力が要因となっていた。 スーダンでは軍内部の対立が原因だった。 しかし、共通点もいくつかある。多くの国々が国民、特に若者に多くを提供できていない弱小国家である一方で、イスラム主義者の反乱が苦境にある民主主義に対する国民の信頼を損なっているのだ。』
【コメント】
ニジェールに米軍と仏軍が駐留しているとは知らなかった。地域紛争に両大国がどれだけ積極的に関与するかは不明だが、ワグネルを通じたロシアの影響力拡大を座して見ているわけにも行かないだろう。頭の痛い紛争が顕在化してきている。

2.太陽光発電のサプライチェーンは不透明さを増す
【記事要旨】
太陽光パネルの世界的なサプライチェーンは、中国への過度の依存から脱却し始めている。その一因は、新疆ウイグル自治区は強制労働を含む人権侵害を行っているとして中国が非難されている地域であり、新たな報告書によると、世界中で製造されている太陽光パネルの大部分が、引き続き中国や新疆との重大な関係を持っていることが判明した。
報告書は、世界の5大太陽光発電メーカー(いずれも中国に本社を置く)は新疆ウイグル自治区へのリスクが「高い」または「非常に高い」可能性があると述べた。 米国や欧州にサービスを提供するために設立された「クリーンな」サプライチェーン内であっても、多くの企業は依然として新疆ウイグル自治区との取引があるサプライヤーから原材料を入手しているようだ。
【コメント】
パネルは昔は京セラやサンヨーが先鞭を切っていたが、今は中国企業が独占状態だ。原料の一部は新疆ウイグル地区に依存しているので、ここを避けようとするのは困難だ。異なる地域からの供給に頼るか、違う原料を開発しないと根本的な解決にはならない。

3.インドで宗派間の暴力が激化
【記事要旨】
月曜日、ムンバイ行きの列車内で警察官が上司を射殺した後、非武装のイスラム教徒の乗客3人を殺害した。 同日、ヒンズー教民族主義団体によるイスラム教徒が多数を占める地区での行進は暴動に発展し、デリー方面に広がり、少なくとも5人が死亡したと警察が発表した。
これらの事件は、インドのヒンズー教指導者の党派的な立場が国内の混乱分子に許可を与えている様子を浮き彫りにしている。 インドが9月にニューデリーでG20首脳会議の開催を準備している中、暴力行為の激化は同国にとって厄介な時期に表面化した。
【コメント】
モディ首相のヒンズー優先政策がこうした動きの根っこにある。非ヒンズー教徒に融和的な政策を進めるとガンジーのように狂信的なヒンズー教徒に襲われる恐れもある。21世紀の大国インドにとって、民族問題は建国以来の大きな問題だ。簡単な解決策はない。

その他:
ウクライナの反攻
Russia said a building in central Moscow was hit by a drone attack for the second time in 48 hours, blaming Ukraine.
Ukraine has increased strikes inside Russian borders, making plain that it is targeting military-aligned sites that aid Moscow’s invasion.
スーチーさん6年間減刑
Myanmar’s military government reduced the 33-year prison sentence for Daw Aung San Suu Kyi, the ousted civilian leader, by six years.
日本近海の台風
Typhoon Khanun was approaching southern Japan yesterday, after an earlier tropical cyclone, Doksuri, brought death and destruction to the region.

2023年8月2日 水曜日

世界の動き 2023年8月1日 火曜日

今日の言葉:
「日銀の金融政策」
 効果の見方が分かれている。Bloomberg記事では、『大手資産運用会社は日本銀行が世界で最も大胆な金融緩和の実験から撤退する道を順調に歩んでいるとの確信を深めている。パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)とUBSグローバル・ウェルス・マネジメントは、インフレが高止まりする中、日銀が意外に早く国債利回りの制限を解除する可能性があるとの見方から、円を選好。RBCブルーベイ・アセット・マネジメントは日本国債のショートポジションを最大にしている。一方、日銀のYCC運用柔軟化は政策変更の「中途半端な試み」で、先行き円の重しになるだけだと、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は指摘。ドル・円相場について、1ドル=145円まで確実に上昇すると予想している』
 金利の上昇は希望する範囲にとどめたいが、円相場の下落は避けたい。経済の腰折れは無くし失業率は増やしたくない。日銀は狭い道を歩むかじ取りが求められている。植田総裁の会見からまだ数日だ。効果の見極めのは時間がかかることは理解しておきたい。

ニューヨークタイムズ記事より
1.中国の豪雨
【記事要旨】
 昨日、激しい雨と洪水が北京を襲い、土砂崩れを引き起こし、市郊外で車が流され、少なくとも2人が死亡した。 当局はここ数年で最大規模の洪水だと警告し、非常警報を発令した。
 激しい雨のため、北京市は紫禁城などの観光名所を閉鎖した。 しかし、最悪の影響は市の郊外で感じられており、通常は一年の大半は乾いている河川敷が豪雨に見舞われた。
 当局は、北京市門頭溝区で5,000人以上が自宅から避難していると発表し、報道機関が共有したビデオには、増水した川に車が押し流される様子が映っていた。
 この豪雨は、最近の台風によって北に押し流された湿った空気の塊によって引き起こされたと中国の気象学者は述べた。 気候変動により、大規模な洪水が発生する可能性がさらに高まり激化している。
その他の気候ニュース:
 一方、エネルギー安全保障と雇用への懸念が少なくとも一時的には気候への懸念を上回るため、英国は北海をさらなる石油・ガス探査に開放する予定だ。
 新しい報告書によると、高温により多くの人々が仕事をするのが難しくなり、猛暑により米国経済に数十億ドルの生産性損失がもたらされている。
【コメント】
 屋外で作業する人の多くがファンを内蔵した作業着を着用している。首を冷やす装置も売れているよいだ。下校途上に熱中症で亡くなった女子中学生が出た。
 気候変動は極めて大きな課題で、既存官庁を横断的な組織で対応しなければならないだろう。例えば神宮外苑の再開発の樹木伐採問題などは、事業者の観点だけでなく国家的な観点から再考されるべきだと思う。

2.ミャンマーで凶悪事件が増加
【記事要旨】
 クーデターへの広範な抵抗に対するミャンマー国軍のテロ作戦が悪化していることが、タイムズの調査で判明した。 4月、5月、6月に報告された軍事空爆の数は、今年の最初の3か月のほぼ2倍だった。
 反政府勢力が勢力を拡大するにつれて、軍は空爆を強化しており、その多くは民間人を攻撃している。
 国連によれば、2021年2月のクーデター以来、軍とその同盟者は少なくとも3,452人を殺害した。
【コメント】
 内戦状態はどの程度深刻なのだろうか。市民の日常政策は影響を受けているのだろうか。ミャンマーの東南アジアでの後進的な地位は内乱状態が続くかぎり不動だ。一番の犠牲者は国民だ。

3.ウクライナ、ロシアに攻撃を警告
【記事要旨】
 昨日、ロシアの攻撃により、ゼレンスキー大統領の故郷であるウクライナのクリヴィイ・リフで6人が死亡した。
 空爆は、ロシアでの攻撃が激化するというゼレンスキー氏の警告への対抗措置として行われた。
 タイムズの分析によると、少なくとも3機のウクライナ製無人機が、モスクワに対する攻撃を含むロシア国内の攻撃に使用された。
【コメント】
 ゼレンスキー大統領が「敢えて虎の尾を踏む」言動を行うのは心配だ。ロシアへの本格的な攻撃は西側諸国は望んでいないだろう。

その他:
パキスタンでのイスラム国の凶行
 The Islamic State Khorasan, or ISIS-K, claimed responsibility for the bombing near Pakistan’s border with Afghanistan on Sunday. At least 54 people died in the attack.
中国の消費刺激策
 China unveiled a long list of measures meant to stimulate consumer spending. But some economists are skeptical of the plans.
トランプ人気は健在
 Donald Trump is dominating the Republican field, according to the first Times/Siena College poll of the 2024 race.
 Bloombergの同趣旨の報道
『2024年米大統領選挙の共和党指名争いでは、トランプ前大統領が支持率で他の候補者に圧倒的なリードを保っている。ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が実施した世論調査で明らかになった。31日公表された同世論調査結果では、共和党予備選の有権者の間ではトランプ氏の支持率は54%。他の候補者では、フロリダ州のデサンティス知事が17%で2位につけ、ペンス前副大統領やニッキー・ヘイリー元国連大使、サウスカロライナ州のティム・スコット上院議員はいずれも3%となっている。』

2023年8月1日 火曜日

世界の動き 2023年7月31日 月曜日

今日の言葉:
「株式市場の行方」
 Bloombergの記事を紹介する。
 『好調な米株式相場を受けて現在トレーダーの間では怖いものなしといった雰囲気も見られるが、一方でそうした状況を背景に売り浴びせが起きる可能性に身構えるストラテジストも一部に存在する。S&P500種株価指数は年初から19%上昇。ドイツ銀行の分析によれば、トレーダーの株式へのエクスポージャーは歴史的に見ても高い水準にある。だが懸念すべき理由はある。リセッション(景気後退)を招くことなくインフレを抑制するという難事業が完全に成し遂げられた例はほとんどない。さらに、8月と9月は時期的にS&P500種指数にとって1年で特にリターンの悪い2カ月となることが多い。』
 株式市場の行方は本当に不透明だ。取引の萎む夏休みの間に、トレーダーはポジションを調整するだろうから、9月には株価は軟調になるかもしれない。ただ、株を売っても資金の持って行く先が株式市場しか無いので、大幅な下げは無いと思われる。

ニューヨークタイムズ記事より
1.パキスタンの集会で爆発による死亡事故
【記事要旨】
 昨日、北西部で少なくとも43人が死亡し、パキスタンの治安状況悪化の最新の兆候であると当局者が述べた。 死者はさらに増えると予想されており、少なくとも200人が負傷した。
 カイバル・パクトゥンクワ州での攻撃は、イスラム国の関連組織によって組織された可能性があると当局は見ている。 このグループは、イスラム主義政党のメンバーを標的にしており、地元の党指導者が殺害された。
 自爆テロが爆発を引き起こしたが、直ちに犯行声明を出した者はいなかった。
 Tehreek-e-Taliban Pakistan (T.T.P.) として知られるパキスタンの過激派グループの活動が近年はさらに活発になってきている。今年はペシャワールのモスクを襲撃して100人以上を殺害し、カラチでも1時間に及ぶ攻撃を行った。
 パキスタンでの過激派暴力の激化により、秋に予定されている次の総選挙前の選挙活動が停滞し、有権者が投票に行くのを思いとどまる可能性がある。
【コメント】
 イスラム原理主義過激派がイスラム主義政党を攻撃するいつもの構図だ。この辺の考え方は本当に理解できない。沢木幸太郎の「深夜特急」ではカイバル峠を越えてアジアから中東に足を踏み入れる様子が活き活きと描かれている。そのころは若者の夢を掻き立てる地名だったのだが。

2.インドの反対派がモディ首相に民族紛争について話すよう迫る
【記事要旨】
 インドではマニプールでの暴力により150人以上が死亡、6万人が避難民となっており、北東部の州は民族の境界に沿って事実上分断されており、住民らは内戦と表現している。
 しかし、モディ首相は、紛争への言及をほぼ完全に避けている。 先週、野党は議会で不信任案を提出したが、モディ政権に影響はない。
 その代わり、投票を開始した野党指導者のガウラフ・ゴゴイ氏は、投票によってモディ氏に暴力について話すことを望んでいたと述べた。 ゴゴイ氏は、他州への「波及効果」の可能性など国家安全保障上の懸念を引き合いに出し、暴徒が警察の武器庫を略奪した後、約5,000丁の武器が行方不明になっていると指摘した。
 数万人の国家治安部隊が平静を取り戻すために奮闘しているが、多くは主に中国との国境での安全保障を担当する部隊の出身で、インドの軍事資源は逼迫している可能性がある。
 モディ氏個人は、B.J.P.として知られる自身の政党よりも有権者に人気があり、党指導者らは国民の心の中で彼とマニプール州を結びつけることを避けたいと考えている。
【コメント】
 モディは親ヒンズー政策で支持を固めているが、一方その政策がヒンズー教徒による他の宗教少数派への弾圧・暴行を引き起こしている。もデイ首相が自制を呼びかけるのが第一歩と思うのだが、同氏の動きは鈍い。

3.ヘリコプター墜落事故が豪米の軍事協力に影を落とす
【記事要旨】
 オーストラリアは米国向けのミサイル生産を加速し、軍事協力と訓練を拡大する計画だ。 この発表に影を落としたのは、そのような演習中にオーストラリア軍のヘリコプターが墜落したことだった。
 米国は、2025年から米国の防衛産業パートナーと共同で製造される新型ミサイルの迅速なライセンス供与に同意した。両国はまた、オーストラリアでの米軍への後方支援の強化と日米両国の空軍との訓練を強化しながらオーストラリアの2つの空軍基地の改修でも協力する予定だ。
 しかし、中国を抑止するための米国主導の地域訓練の強化は、墜落事故のような大きなリスクをもたらす可能性があると指摘した。
 ウクライナや米国防総省からの要請に応えるのに苦労している米国の防衛産業は、他国の製造支援から恩恵を受ける可能性がある。 オーストラリアは長距離攻撃ミサイルを27億ドルかけて取得しており、米国やウクライナに輸出される可能性がある。
 AUKUSの関係者らが集まった。この合意は、原子力潜水艦の共有や極超音速ミサイル、量子コンピュータやセンサーなどの他の種類の先端技術の開発のためのメカニズムを構築することを目的としている。
【コメント】
 ヘリコプター事故で4名のオーストラリア兵士が行方不明だそうだ。肝心な時にえてしてこのような事故が起きる。米国の傘は強さが弱まり、同盟国の負担と関与の強化が求められている。日本でも対等なパートナーとして米国に改善を求める点が多くある。

その他:
中国のグアム島へのサイバー攻撃
 China embedded malware in networks that control communication systems and power grids used by the military, U.S. officials said.
日本について(防衛白書と金利コントロール弾力化)
 In its annual defense white paper, Japan presents a hard line against China and is rethinking its decades-long commitment to pacifism.
 Japan’s central bank said it would be more flexible in managing its bond market, a step toward allowing interest rates to rise.
香港の司法は自由を守る
 A judge rejected Hong Kong’s attempt to ban online distribution of “Glory to Hong Kong,” an unofficial protest anthem.

2023年7月31日 月曜日

記憶警察

 小川洋子の作品は「博士の愛した数式」位しか読んだことが無い。ニューヨークタイムズのコラムに彼女の作品が取り上げられており興味深かった。

 In Yōko Ogawa’s 1994 novel “The Memory Police,” things on an unnamed island start to disappear. The first things to go are relatively minor — stamps, perfume, ribbon — but, pretty soon, bigger things begin vanishing. One day, there are no boats. Then no birds. Then no photographs.

 Curiously, most of the island’s inhabitants seem not to notice the losses, forgetting each as though it had never existed. But a select few people are somehow able to remember, and the plot of the book unfolds around their struggle to preserve that memory as the world around them disintegrates.

 英訳の題名は「記憶警察」だが、日本語の原題は「密やかな結晶」だ。Amazonの広告文は以下だ。

 『その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。
 鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、わたしは小説家として言葉を紡いでいた。少しずつ空洞が増え、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。しかしある日、「小説」までもが消滅してしまった。
 有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。』

 とても面白そうなので、密やかな結晶は今注文したところだ。まだ読んでいないのだが、読んでいない本の感想を書くと以下のようになる。

  タイムズの記者は小川洋子の小説からウイグル自治区での中国のウイグル族への弾圧と中国化の強制へと論理を展開している。ジョージ・オーウェルの「1984」のように中央集権的な監視国家が支配するディストピアとしての世界を小川洋子も描いていると言いたそうだ。

 「博士の愛した数式」の博士は10分しか記憶が持たなかった。これは病気のせいだが、遠因は昔のつらい恋愛の経験にあった。「密やかな結晶」では秘密警察が国家に不都合な記憶を消している。多くの人は記憶を消されるが、少数の記憶を保温できる人は、それを隠して潜伏している。「記憶」は二つの小説を結びつける概念だ。小川の作品はずっと私小説的だ。

 記憶は自分たちの自己認識(アイデンティティー)の中核をなす。記憶は個人の精神の「結晶」であり、民族を結びつける「結晶」でもある。自分に閉じ込めれば自分だけの、社会で閉じこもればその社会だけの「密やかな結晶」なのだ。

2023年7月30日 日曜日

他人の不幸は蜜の味

渦中の木原誠二官房副長官は、1970年生まれ。帰国子女であり、武蔵中学高校を経て、東大法学部卒。大蔵官僚を10年つとめた後、2005年の郵政解散で初当選。一度落選したが、通算5期衆議院議員をつとめ、現在は岸田政権を実質的に動かしている実力者。絵に描いたようなエリートだ。
文春砲は、まず同氏が、愛人と子供とでデズニーランドで遊んでいる場面をとらえ、その後は現在の夫人が前夫の不審死との関与、木原氏の捜査もみ消し疑惑へと話が進んでいる。

実直そうな同氏に愛人や子供がいたことは驚きだった。さらに現在の奥さんが再婚で、子供がすでに二人いたこと。ホステスだったこと。木原氏とは出来ちゃった婚だったこと。さらに前夫はヤンキーのような人で、怪死したこと等々、驚くような話のオンパレードだ。

木原氏がこれほどのエリートでなければ、こんなに話が大きくならなかったと思われる。ただ、報道しているのはマイナーなメディアだけで、新聞とTVは報じていないのは、良識か忖度か。

「他人の不幸は蜜の味」と日本ではよく言う。欧米ではこれに相当する表現が見つからない。日本文を直訳すると”The misery of others tastes like honey. ”になる。英語の言い方として”One person’s tragedy is another person’s excitement.”の方が妥当な表現かもしれない。

木原氏は今後どうなるか。

「水に落ちた犬は叩け」中国語では「打落水狛」と言うが魯迅の言葉だという。英語では”Never hit a man when he’s down.”という表現が一般的で、日本語訳すると「倒れた男は叩くな」となり方向が逆になる。

叩くか叩かれないか、水に落ちた(ように見える)木原氏の正念場が始まるが、愛情深い家族の無限のサポートが望めない家庭のようで、そこはとても可哀そうだ。

2023年7月29日 土曜日