2月21日に東京ドームで武藤敬司(60)の引退試合が行われた。
武藤は。自らラストマッチの相手に指名した新日本プロレスの内藤哲也(40)と対戦し11年ぶりの一騎打ちで魂をぶつけあったが、28分58秒にデスティーノを決められて敗戦。
その後は「まだ灰になっていない。もう一つやり残したことがある」と、解説席の「闘魂三銃士」の同期、蝶野正洋(59)を指名し、サプライズマッチを実現させた。STFでギブアップし、派手な2連敗で、完全燃焼した。
東京ドームの中心で大の字になった武藤は「広いなぁ。天井は…」。長い旅路の果て、「ゴールできてよかった。多くのレスラーが引退試合できていない中で、本当に俺は幸せなプロレス生活だった」と振り返った。
かつては、ジュニアヘビー級並みの空中殺法と規格外のパワーを誇った姿はそこにはない。内藤戦で2度挑戦する姿勢を見せたムーンサルトでは、ロープに足を掛けるたびに苦悶)の表情を浮かべ中断した。「闘魂三銃士」の盟友、橋本のけさ斬りチョップからDDT、ライバル三沢のエメラルドフロウジョンも決め、引退試合ができなかった仲間たちに捧げた。
プロレスはショーではなくアートだと多くのファンに納得させる幕切れだった。デビューから38年4カ月と16日。リングからはおりたが、プロレスラー武藤は終わっても「武藤敬司」の人生は終わりのないドラマだ。
2023年2月26日 土曜日