世界の動き 2022.5.4 Tuesday

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
 報道の自由の世界ランキングで日本は71位だそうだ。日本について国境のなき記者団は、大企業の影響力が強まり、記者や編集部が都合の悪い情報を報じない「自己検閲」をするようになっている国の例として韓国やオーストラリアとともに言及している。
 N.Y. Timesの記事を読んでいて思うのは、すべての記事が記者の署名記事で、記者が自分の尊厳を掛けて記事にしている。日本のメディアではそういう意識は低い。ニュースの広がりにも日本は欠ける。最近は、ウクライナ、知床の観光船、キャンプ場の少女の話ばかりだ。

1.ロー対ウェイドの終わり
【解説】
ロー対ウェイド時間とは
 ロー対ウェイド事件(Roe v. Wade, 410 U.S. 113 (1973))は、「妊娠を継続するか否かに関する女性の決定は、プライバシー権に含まれる」として、妊娠3カ月まで女性の人工中絶権を全面的に認め、6カ月までも条件付きで認める内容。 この時期まで、女性が人工中絶を選ぶ権利は憲法が保障するものだと認めた。 判決の違法性を訴える裁判で、最高裁は1992年に合憲判断を示している。
【記事要旨】
 米最高裁は妊娠中絶については州ごとの判断を優先するという判決を下すという情報が流出しその内容の正しさを認めた。抗議の市民が最高裁に集まっている。ロバーツ司法長官は司法への信頼が揺らぐと流出についての調査を指示。最終判決までは数か月かかる見込み。
 民主党内は意見が対立し共和党は概して歓迎。バイデン大統領は人工中絶権が守られないと同性婚とか他の憲法判断にも影響するとうったえる。
【感想】
 意図的にリークして世論の反応を見ようという動きか。憲法判断も前例主義にしない米国の司法制度は自由度があるともいえる。

2.マリウポリから退避者が生還
【記事要旨】
 数週間以上製鉄所の地下に閉じ込められていた150人以上の女性と子供がウクライナ支配地域に避難した。退避後ただちに露軍は攻撃を再開。EUはロシアからの原油禁輸を検討。露は中国とインドに大幅値引きで売らざるを得なくなる。露は西側からの支援ルートとウのインフラへの攻撃を強めようとしているが動きが鈍いとの分析も。
【感想】
 まだ1000人以上が地下に閉じ込められているとの報道もある。露ウ政府は救出に全力を尽くしてほしいものだ。露は「ウ軍に囚われた人間の盾を救出した」と宣伝するのだから、もっと人命を救って欲しいものだ。

3.反同性愛殺人への判決が下る
【記事要旨〕
 1988年に米の学生であるScott Johnsonがゲイが良く行く崖の下で死体で見つかった事件。Scott Whiteという男とシドニーのパブで知り合ってそこへ行ったと判明。当初は自殺とされたが、Scottの兄のSteveは、現場での不審死の事例があり、疑念を抱き再審査を請求し今回の12年の有罪判決になった。当時警察はゲイに対する反感強く捜査に積極的ではなかった。
【感想】
 人権がらみはTimesがフォローするニュース。日本ではあまり報道されない類。憲法記念日では改憲・護憲論議はあったが昨年一年間の憲法の係る判決といった視点での報道は無く、国民の憲法理解は深まらない。

その他:
南アジアの酷暑
As extraordinary heat sweeps South Asia, climate scientists are arguing that extreme weather is the new norm.
米でも老害
Democrats privately acknowledge that Senator Dianne Feinstein, 88, has serious memory problems.
香港は食の都
Hong Kong has always been a food city. Now people of all social classes are flocking to bare-bones “two dishes and rice” restaurants. The cheap Cantonese comfort food served up is a welcome respite from two years of political upheaval, economic downturn and seemingly endless pandemic restrictions.

(2022.5.4 Tuesday)

世界の動き 2022.5.3 Tuesday

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
 今日は「憲法記念日」であり母の命日でもあります。
「母の忌に 咲き始めたる ハナズオウ」

1.北京で隔離センターが再開
【記事要旨】
 小湯山リハビリテーション医院という1000床を有する隔離施設が再開された。22百万人の北京での陽性者は月曜に50人。上海での隔離施設の不評を避ける狙い。短期でのコロナ制圧を迫られる北京市は、会食の禁止、学校の無期限閉鎖、公共施設・公営交通利用にはワクチン接種証明の提示、を課す。
【感想】
 サプライチェーンへの更なる影響が懸念される。

2.マリウポリからの避難民が到着
【記事要旨】
 マリウポリからの避難民が、露の「濾過センター」を経由して、140マイル北西のザポリシアに到着。救出の努力を継続するとウ政府高官は語る。EU首脳は露へのエネルギー依存を減らす方策を、米上院はバイデンの330億ドルのウ支援プランを協議。
 ウからのヒマワリ油の輸出は減少。世界各国で食料の確保の動きが出ている。
英は露軍の損害の大きさを指摘。米国防総省は東部での露軍は不活発で遅滞と分析。
【感想】
 露軍の苦境が核の使用につながらなければ良いが。

3.バングラディッシュはロヒンギャの学校を閉鎖
【記事要旨】
 30以上の地方で運営されている学校が対象で政府のロヒンギャ弾圧強化政策の一環。政府は難民キャンプにいるロヒンギャが永住するのを恐れているが、難民の多くはミャンマーに帰りたいと希望している。2017年以来ミャンマーからのロヒンギャ難民は700000人以上で、うち400000人18歳以下とUNICEFは発表。
【感想】
 YouTubeを立ち上げるたびにロヒンギャ難民支援のCMが流れる。大変だなーと思うが、なんともしようがない。

その他:
英の難民輸出策
Rights groups have widely criticized the U.K.’s plan to send asylum seekers to Rwanda.
タイムカプセル
Ireland is giving people room on census forms to leave messages or drawings, which will be kept as “time capsules” to be opened in 100 years.
タッカー・カールソンってご存知ですか
The Fox News host Tucker Carlson built what might be the most racist show in the history of cable news while embracing Trumpism without Trump, a Times investigation found.

(2022.5.3 Tuesday)

世界の動き 2022.5.2 Monday

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
 今日は5月2日で連休の間の平日。調べたら、ロシアの専制君主エカテリーナ2世の誕生日だった。ウクライナを地図から消したりポーランドやバルト3国へ領土を拡大したり、プーチンの模範となる女帝ぶりだった人だ。1796年に亡くなったがロマノフ王朝は1917年の革命まで100年以上存続した。この辺もプーチンがあこがれる理由だろう。

1.ペロシはウクライナで米の支援を約す
【記事要旨】
 ペロシ下院議長がウを訪問し開戦以来キエフを訪問する米の最高位の高官となった。ポーランドに安着してから公表された。東部では300マイルの戦線で露が攻勢をかけ露国防省は800か所を攻撃と発表。露が支配を進める南部のカルソン周辺ではルーブルの使用が強制される。マリウポリで女性と子供の退避が日曜に開始される。露軍内の外国人の死亡が統制の取れない傭兵の参戦を明るみに。
【感想】
 日本はGWで浮かれているが、ロシアウクライナの戦争は深刻化している。露は「開戦」するそうだ。大量動員をかけるプーチンの意向だそうだが、露の反戦世論は高まらないのだろうか。

2.中国のコロナとの闘いは揺るがず
【記事要旨】
 上海での25百万人都市のロックダウンについて習は発言していない。ゼロコロナは自分に忠実な部下を固め第3期を目指す習の政策だが、経済的な影響が拡大すれば習への支持が揺らぐ恐れもある。北京ではレストランでの会食禁止と公共施設へ入るにはPCR検査証明が必要になる。
【感想】
 政治は経済に優先する。更に毛沢東に似てきた。

3.フィリピンの若者は選挙を覆す
【記事要旨】
 数百万人の若者が大統領選挙の行方を変えるべくボランティアとして働いている。ドテルテ大統領の暴力と強権に抗議する若者(18-30歳)は65百万人有権者の半分を占めるが、レニ・ロブレド副大統領を支持。ボンボンというあだ名で人気を集めるマルコス候補の支持率が独走しているが、所得税・不動産税の不正や学歴詐称問題が噴出してきている。若者はマルコス時代の美化やロブレドへの中傷といったメディア操作を批判している。
【感想】
 ロブレドは全く知りませんでした。1965年生まれの女性議員です。汚職や不正撲滅に努力してきた人だそうです。フィリピンでは大統領と副大統領がペアで選ばれるのではなく別々に選ばれるので(ロブレドは2016年にベグニノ・アキノ陣営で出馬)大統領と副大統領が反目し合うことがあるのだと理解。

その他:
アフガンでの混乱が拡大
Pakistani airstrikes killed at least 45 people in eastern Afghanistan, stoking fears of a violent resurgence of the conflict on the border.
At least 100 people have died in terrorist attacks over the past two weeks, as ISIS begins a bloody new chapter in Afghanistan.
アイルランドでも混乱が起きそう
A win of the most seats in parliamentary elections on Thursday by the Irish nationalist party, Sinn Fein, could upend the power-sharing arrangements that have kept a fragile peace in Northern Ireland for two decades.
お祈りもデジタル化ですか
Many Muslims around the world have long used prayer beads for religious recitations and praises. The practice, which is in addition to the five daily prayers most perform, infuses religious remembrance into their days. Increasingly, Palestinians have turned to digital prayer counters to track their recitations.

(2022.5.2 Monday)

21 Lessons for the 21st Century 再読(2)

 昨日についでハラリの本を再読。
 21のレッスンの最後は、何とMeditationだ。

 ハラリ自身は1日に最低1時間を瞑想にあてているとインタビューで述べている。

 ・瞑想が、自分の考えに明晰さと集中をもたらしてくれる。
 ・心はfictionやstoryを常に作り出すが、瞑想することがそれらを消し去りrealityに導く。

 瞑想がハラリの思索の基礎にあるのなら、試してみる価値はありそうだ。

(2022.5.1 Sunday)

“21 Lessons for the 21st Century” 再読

Yuval Harariの名著を再読した。特に11章のWarの部分をだ。
 副題が”Never underestimate human stupidity”となっている。

 前回この本を読んだ時は(多分2018年)、Warについての記述はピンとこなかった。

 ハラリ氏の主張を要約すれば、以下のようになる。
「第二次大戦の開戦時と違って武力で領土を拡張することを正当化できる理由は、侵攻する側の国にとってもまったくないので、武力侵攻は普通に考えれば起こる可能性はない。
 近時の武力進行で成功したと思えるのはロシアのクリミア併合だが、これとて、軍事面での成功はその後の経済制裁で全く帳消しになった。
 経済制裁を受けているロシアと受けなかった中国の成長率の違いを見れば、戦争が、割に合わないのは明らかだ。
 ただ、核戦争の脅威はなくならない。人間の馬鹿さ加減を見くびることは出来ないからだ。」

 この主張を読んで、私は、今どき核戦争など考えられないのに慎重な結論だと思っていた。クリミア併合の事例にも注意を払わなかった。

 しかし、今読むと、

・事実として、制裁による経済的な打撃を考慮せず軍事攻撃を実行する国があるのだ。

・制裁を受けても、核戦争をちらつかせ世界を脅す大国があるのだ。
 再読して、ハラリ氏の慧眼に驚かされた。

 さて、ハラリ氏は戦争について結論的に何と言っているのか?
 ・戦争は不可避と考えず緊張を緩和する努力をすること。
 ・人間の愚かさを考えれば戦争が絶対に起きないとみなすことは出来ない。
 ・自分たちの国家、宗教、文化が、他国のそれより優れているという考えを持たないように、国家、宗教、文化を、現実的で控えめな位置に置く努力をすること。 と述べている。 

 3つ目のポイントはそのとうりだが実行するのは難しい。今後しばらくはますます国家意識が高まり、自国の宗教や文化に他国が口出しするのを認めない風潮が高まっていくのだろう。日本でも世界的にもだ。

(2022.4.30 Saturday)