世界の動き 2025年8月20日 水曜日

今日の言葉
「戦争に関する頻出語句」ウクライナ戦争ですっかり
おなじみになった言葉だ。
日本語  英語
軍事侵攻 Military invasion
軍事攻撃 Military attack
紛争・危機 Conflict / Crisis
戦争   War
停戦 Ceasefire
停戦協議 Ceasefire talks
制裁 Sanctions
難民 Refugee(s)
同盟国 Allies
爆撃 Bombing
標的 Target
陥落   Fall
そして、最後に
平和  Peace

ニューヨークタイムズ電子版より
1.首脳らはウクライナ和平への道筋を模索
【記事要旨】
トランプ大統領は昨日、ウクライナに米軍を派遣しないと表明し、ホワイトハウス報道官はロシアのプーチン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と会談することで合意したと述べた。しかし、ロシア側は会談を認めていない。
ホワイトハウスでの会合でウクライナ戦争終結に向けた具体的な進展を示す公的な兆候がほとんど見られなかった翌日、欧州各国首脳らは会談を行った。
最新情報と外交努力の方向性について見てみよう。
軍事支援:ゼレンスキー大統領は、ウクライナが切実に必要としている防空システムや戦闘機を含む、米国から900億ドル相当の兵器を受け取ると述べた。ウクライナの費用負担方法は依然として不明である。費用の大部分は欧州諸国とNATO加盟国が負担する可能性が高い。
安全保障:ホワイトハウスでの会合はウクライナの安全保障に関する正式な合意に至らず、欧州各国首脳は昨日、具体的な合意内容の詰めに奔走した。トランプ大統領は、ウクライナに地上部隊を派遣することはないが、航空支援など他の方法で支援できると述べた。英国のキア・スターマー首相は、数百人から数万人規模の国際部隊をウクライナに駐留させるよう求めた。トランプ大統領は、ロシアが欧州軍の派遣を受け入れる可能性を示唆したが、ロシアはこの提案を拒否している。
成功:ゼレンスキー氏をはじめとする欧州各国の首脳は、トランプ大統領との協力の仕方を学んだ。今年初めのホワイトハウス訪問では、ゼレンスキー氏は叱責され退去を求められたが、今回は、温かい歓迎を受け、米国への武器売却の約束や、プーチン大統領との直接会談実現に向けた更なる努力の約束を受けた。
ロシアは今夜も、数百機のドローンとミサイルでウクライナを爆撃した。
【コメント】
トランプの発言はいつも信憑性が薄い。これは悪意や無知によるものではなく、生来の不動産ブローカーとしての習性だ。
交渉がまとまるまでは自分に有利な情報を信じ込み、参加者にはこんなに素晴らしいディールは無いと説明し、うまくいかなければあいつらはバカschmack
だと言って席を蹴ればよいのだ。

2.ネタニヤフ首相、ガザ停戦案をめぐり圧力にさらされる
【記事要旨】
イスラエル与党連合の一部極右メンバーはハマスとの人質取引案を否定したが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はまだ立場を明らかにしていない。
この取引は、ガザに拘束されている残りの人質の一部を解放し、パレスチナ人捕虜と引き換えるものだ。停戦が成立すれば、ネタニヤフ首相のガザ侵攻計画は事実上阻止されることになる。
関連:イスラエルは、ガザからのパレスチナ人の大量受け入れについて南スーダンと協議を行っている。
【コメント】
南スーダンは、内戦や政情不安、深刻な洪水の影響で、国内避難民や難民が多数発生し、食糧不足や基礎サービスの欠如など、厳しい状況に置かれています。国内では治安も悪化しており、外務省は全域に退避勧告を発出しています。(外務省)
スーダンはエジプトの南、南スーダンはそのまた南の内陸国だ。

3.インドネシアの熱帯雨林がアメリカのRV車製造のために伐採されている
【記事要旨】
アメリカで人気が高まっているRV車(キャンピングカー)は、重要な輸入品であるラワンと呼ばれるインドネシア産の木材を主原料とする合板に依存している。
RVメーカーは、軽量で耐湿性があり、柔軟性に優れたラワンを、キャビネットや内壁などの部材に欠かせないものとしている。しかし、環境保護団体は、この業界のラワン需要がボルネオ島の森林破壊を加速させていると指摘している。ボルネオでは過去5年間で熱帯雨林が伐採されている。
【コメント】
トヨタのランドクルーザーにも使われているのだろうか。

その他の記事
パキスタン:6月下旬にモンスーンシーズンが始まって以来、少なくとも660人が雨に関連した事故で死亡している。
ロシア:ある研究機関の報告書によると、モスクワは重要インフラへの攻撃によってヨーロッパの不安定化を狙っていたとのことです。
健康:蚊媒介性ウイルスであるチクングニア熱は、中国を含む新たな地域に急速に広がっており、中国では初めて感染者が確認されています。

欧州:米国当局者は、新たな貿易協定の下では、EUからのアルコールは米国の関税対象から除外されない可能性が高いと述べました。

2025年8月20日 水曜日

世界の動き 2025年8月19日 火曜日

今日の一言
「ジャクソンホール会議」
 米国のカンザスシティー連邦準備銀行がワイオミング州のジャクソンホールで毎年夏に開く金融・経済シンポジウム。 米連邦準備制度理事会(FRB)議長など各国中央銀行の要人や経済学者らが出席し、議論することで知られている。 会議でのFRB議長の講演は、米国の金融政策を占う手掛かりとして注目される。
 パウエルFRB議長は22日午前の基調講演を担当する予定で、テーマは「Econmic Outlook and Framework Review」(経済見通しとフレームワークレビュー)となっている。
 ポイントは9月の金利引き下げを明示的に示すかどうかで、総裁の発言で株式市場の趨勢が決まることになる。
 筆者が米国にいたころは、現地の上位職員が、業界団体のトップセミナーに参加することがよくあった。夏は涼しいアスペン、冬は温暖なディズニーワールドでという感じで、要はフリンジベネフィットの一環だった。日本人にはこうした特典は無く、逆差別状態だった。
 植田総裁には、せっかくの機会に、是非英気を養って、秋の政局に対峙してほしいものだ。

ニューヨークタイムズ電子版より
ウクライナに和平合意は成立するのか?
【記事要旨】
 ウクライナのゼレンスキー大統領と欧州7カ国の首脳は昨日、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、ウクライナ戦争終結に向けた重要な協議を行った。トランプ大統領は、ホワイトハウスでの会談後、ロシアのプーチン大統領に電話し、和平合意につながる米露ウクライナ会談の開催について協議すると述べた。
 大統領執務室では、ゼレンスキー大統領とトランプ大統領は、かつての緊張関係の兆候はほとんど見られない様子だった。両氏は、ウクライナの安全保障における米国の役割について前向きな姿勢を示した。これは、現在議論されている最も複雑な問題の一つであり、ロシアが和平合意に合意した後に戦争を再開させないよう確保するためのものだ。
 主な議題は以下の通り。
安全保障:トランプ大統領は、米国はウクライナに「非常に優れた保護と安全保障」を提供すると述べたが、具体的な内容には言及しなかった。米国は何らかの形で支援を行うと述べ、米軍の投入も否定しなかった。ウクライナがどのような安全保障を求めているのかとの質問に対し、ゼレンスキー氏は「全てだ」と答えた。
領土交換:先週アラスカでプーチン大統領と会談した後、トランプ大統領は和平合意の一環として領土交換を支持する姿勢を示した。トランプ大統領は昨日、両首脳は「領土交換の可能性」について協議し、現在の「戦線」を考慮すると述べた。ゼレンスキー氏は会談の中で「ところで、地図をありがとう」と述べており、領土交換問題が詳細に議論されたことを示唆している。
三国会談:ゼレンスキー氏はトランプ大統領とプーチン大統領との会談を繰り返し希望しているが、クレムリンはこれに同意していない。「もし今日全てがうまくいけば、三国会談が実現するだろう。そうすれば、戦争を終結させる可能性は十分にあると思う」とトランプ大統領は述べた。
要点:重要なのは、停戦の可能性と領土譲歩という、最も論争の的となっている二つの問題が未解決のまま残されたことだ。トランプ氏とゼレンスキー氏は共に、停戦の可能性や領土交渉について、まだ想定されていないゼレンスキー氏とプーチン大統領の直接会談で、トランプ氏も同席する可能性を示唆した。ゼレンスキー氏の支持を受けたトランプ氏は、そのような会談が迅速に実現することを望んでいると述べている。しかし、クレムリンはこの問題について沈黙を守っている。
 結局のところ、ワシントンとアラスカでの会談は、全ての側が不満を表明し、立場を表明する機会を提供したようだ。しかし、どの側も、少なくとも公の場では、どのような譲歩をする用意が、もしあるとすればあるか、具体的には示さなかった。
 攻撃:ゼレンスキー氏の訪問開始の数時間前、ロシアの攻撃によりウクライナで少なくとも14人が死亡した。
【コメント】
 チェスにおける「千日手」は、将棋の千日手と同様に、同一局面が3回繰り返されると引き分けとなるルールだ。チェスでは「スリーフォールド・レピティション (Threefold repetition)」または単に「レペティション」と呼ばれる。
 チェスでは引き分けでいいが、ウクライナ戦争ではウクライナ国民の死傷者が増え続ける。

ハマス、新たな停戦提案に同意
【記事要旨】
 ハマスは昨日、イスラエル人人質とパレスチナ人捕虜の一部解放を含むガザ地区における新たな停戦提案を受け入れたと当局者が発表した。イスラエルのネタニヤフ首相がこの条件に同意するかどうかは不明である。
 ハマスの声明によると、この提案は、地域調停機関であるカタールとエジプトが日曜日の協議で提示した。カタールとエジプトは、イスラエルによるガザ地区への地上作戦の可能性に備えて、調停活動を強化している。
 イスラエル当局者は昨日、同国は提案の詳細を受け取っていないと述べた。イスラエルは過去にも同様の条件に同意したことがあるが、先週、ネタニヤフ首相は人質の一部のみを解放する合意にはもはや関心がないと示唆した。
 イスラエル:テルアビブで今週行われた大規模集会は、ネタニヤフ首相とガザ紛争に対するイスラエル国民の不満の高まりを示した。
【コメント】
 反ネタニヤフデモが起きているが、一方将来の禍根を断つためにガザ全域を支配するという首相への支持も根強い。

その他の主要記事
スペイン:ヨーロッパ諸国は、制御不能な火災23件への消火活動に奔走する緊急チームを支援するため、消防隊員と資機材を急派した。特に北西部で発生している火災は深刻だ。
カナダ:労働関係委員会は、エア・カナダの客室乗務員1万人によるストライキを違法と宣言したが、組合は組合員がストライキを継続すると述べた。
インド:トランプ大統領の関税は、特にカーペット産業に大きな打撃を与え、インドを中国との経済協力関係の強化へと回帰させる可能性がある。

ケニア:10年にわたる研究で、貧困家庭に1,000ドルを寄付すると乳児死亡率がほぼ半減することが判明しました。

2025年8月19日 火曜日

世界の動き 2025年8月18日 月曜日

今日の一言
「キッシンジャー博士の慧眼」
キッシンジャーは100歳で2023年11月に亡くなった。彼が最晩年に力を振り絞って行ったウクライナ和平の提言がある。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻の初期段階においてキッシンジャーは停戦計画を提唱し、大きな注目を集め、議論を巻き起こした。彼の2022年5月の提案は、以下の主要な点を掲げていた。
• ロシアは、2022年2月24日の本格侵攻以前に存在していた最前線(すなわち、今回の攻勢以前のいわゆる「接触線」)まで部隊を撤退させるべきである。
• ロシアが2014年に併合したクリミアの将来の地位については、停戦協定の中で直ちに決定されるべきではなく、別途交渉されるべきである。
このアプローチは、少なくとも更なる交渉が行われるまでは、ウクライナがクリミアとドンバスの一部に対するロシアの支配を一時的に受け入れることを意味する。
キッシンジャーはこれを、当面の戦闘を停止させ、より包括的な協議への道を開く現実的な方法だと考えていた。キッシンジャーは、交渉なしに紛争を長期化させれば、より大規模な戦争へとエスカレートする可能性があると懸念を表明した。
しかし、彼の計画は、ウクライナ領土を犠牲にして平和を実現するという「宥和政策」を示唆しているように思われるとして、ウクライナと西側諸国から激しく批判された。ウクライナの指導者たちは、いかなる領土の譲渡にも断固として反対し、クリミアとドンバスを含むロシアの完全撤退こそが公正な平和の実現に必要だと主張した。
ドローンがこれだけ安価に製造できる時代になると、ロシアがウクライナへの攻勢を弱める可能性は低く、いつまでもロシアの殺戮が続く可能性が大だ。ウクライナがロシア国内への長距離攻撃能力を拡大すればロシアは核兵器の使用をちらつかせることになる。そういった意味では我々は第三次世界大戦のとば口にある。
トランプの提唱する今回のディールは、キッシンジャーのプランの焼き直しだ。しかし、開戦当初も今も、これ以上の惨禍を防ぐ唯一の方法に思える。博士の慧眼に思いを致す。
ところで、キッシンジャー博士とはニューヨークの街角ですれ違ったことがある。ブランド商品のディスカウントショップの回転ドアで、入ろうとする私と出ようとする博士の視線があった。背丈は私と同じくらい。恰幅がよく、眼光の鋭い紳士だった。

ニューヨークタイムズ電子版より(今日から以前のTop3記事で配信しています)
1.ウクライナとEU首脳がホワイトハウスを訪問
【記事要旨】
ウクライナのゼレンスキー大統領は本日、トランプ大統領と会談する予定です。この会談は、トランプ大統領がロシアのプーチン大統領と会談し、同盟国との交渉を決裂し、プーチンの提案する和平案を支持した直後に行われました。この和平案は、ウクライナに相当量の領土を割譲させるものだ。
ドイツのメルツ首相、フランスのマクロン大統領、英国のスターマー首相を含む欧州の首脳は、ゼレンスキー大統領に同調し、連帯を示すと述べた。
金曜日にアラスカで行われたトランプ大統領とプーチン大統領の友好的な会談は、ウクライナと欧州同盟国にとって痛手となった。しかし、キエフにはわずかな希望の光が残った。それは、将来のロシアの侵略を抑止するために、ウクライナに安全保障上の保証を与えるという米国の提案です。
背景:ロシアの戦争終結に向けた提案は、ウクライナに対し、東部のロシア語圏工業地帯であるドンバス地方を放棄するよう説得することに重点を置いている。
現地の状況:ロシアの空爆によって故郷を追われたウクライナ人は、トランプ・プーチン首脳会談を侮辱だと非難した。
【コメント】
キッシンジャーの慧眼に私の考えは述べています。

2.米国、ガザ地区への医療ビザ発給を停止
【記事要旨】
トランプ政権は、ガザ地区出身者への訪問ビザの発給を停止したと発表した。これは、重篤な症状を抱える幼児を含む、米国で医療を求める人々にとって痛手だ。
この動きは、右翼活動家ローラ・ルーマー氏による激しいロビー活動を受けて行われた。ルーマーは、SNSへの投稿で、ガザ地区からの航空機を「国家安全保障上の脅威」と非難した。ルーマー氏はトランプ政権の決定において並外れた影響力を行使している。
オハイオ州に拠点を置く、パレスチナ人の家族と子供たちを支援する団体は、今月、ガザ地区で手足を失った11人の子供たちを米国の病院に避難させるため、このビザを利用したと発表した。
イスラエル:軍が攻勢拡大の準備を進める中、数十万人がガザ地区で即時停戦と人質解放を求めて抗議活動を行った。
【コメント】
極右の活動家として知られるインフルエンサーのローラ・ルーマー(31)はトランプに強い影響力を持つ。同氏)からの助言を受け、今年4月には、国家安全保障会議(NSC)の数人の職員と米サイバー軍のトップが解任された。

3.ボリビアの幻の大統領候補
【記事要旨】
エボ・モラレス前大統領は出馬を禁じられ、15歳の少女を妊娠させた容疑で告発されているものの、依然として選挙結果に影響を与えようとしている。同氏は、ボリビア国民が大統領選挙の第1回投票を行う中、森の中の別荘で影の選挙活動を展開している。
忠実な支持者に囲まれたモラレス氏は、支持者に対し抗議として無効票を投じるよう呼びかけている。かつての左派の同盟者たちは、この戦術は、中道右派の実業家サミュエル・ドリア・メディナ氏、あるいは保守派のホルヘ・「トゥト」・キロガ元大統領に有利に働く可能性があると指摘する。
背景:ボリビア初の先住民指導者であるモラレス氏は、疎外されたボリビア国民に発言権を与えることで、政治情勢を一変させた。しかし、4期目を目指した彼の試みは、混乱と一時的な亡命という形で幕を閉じた。
【コメント】
ボリビアといってもどこにあるか知る人は少ないだろう。地理に太平洋への出口を塞がれた内陸国で首都ラパスは高度3600メートルにある世界最高の首都だ。
近時はウユニ塩湖で日本でも知られるようになった。歴史を見ると革命、暴動、動乱が継続し、豊富な資源を生かせない「玉座に座る貧民」という言い方があるそうだ。

その他の記事
カナダ:ストライキ中のエア・カナダの客室乗務員は、交通混乱が続く中、裁判所の職場復帰命令に従わないと表明した。
パキスタン:鉄砲水により1日で少なくとも194人が死亡し、壊滅的なモンスーンシーズンによる死者数は増加の一途を辿っている。
トルコ:数十人の野党幹部が汚職容疑で逮捕された。批評家はこれをレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領による政治的弾圧だと非難している。

プラスチック:世界的なプラスチック汚染防止条約をめぐる交渉は、米国を含む石油生産国の反対により決裂した。
米国:抗議者たちは、トランプ大統領による州兵派遣に反対する平和的なデモを行い、ワシントンD.C.の路上を埋め尽くした。

2025年8月18日 月曜日

戦後80年の時代認識

 寺島実郎氏によると現在は100年前の第一次世界大戦終結直後に類似しているそうだ。同氏の主張する1920年代と現代の共通点を以下に要約する。
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・アメリカの内向き志向と「アメリカファースト」
 第一次世界大戦後、アメリカは大きな犠牲を払いながら欧州に兵を派遣するが、戦争への反感や内向的な気運が国内で高まり、ウッドロー・ウィルソン大統領が提唱した国際連盟構想にも最終的に米国自身は加盟しなかった。その後、共和党政権が三代続き、当時のスローガンが「アメリカファースト」だった点は、今日のトランプ政権および現代アメリカにも通じる。
・資本主義の繁栄と「貯蓄から投資へ」
 1920年代の米国は大量生産・大量消費社会が隆盛し、自動車を中心とした消費拡大が経済成長を牽引した。フォーディズムの台頭や「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズも当時の特徴であり、現代のデジタル資本主義や金融資本主義のような米国経済の構造と重なる。
・歴史の教訓と警告
 第一次大戦後は国際協調の理想(国際連盟)も挫折し、各国が内向きになり、経済的にもブロック化が進んだ。寺島氏は、現代も米中対立や新たな分断、難民問題など「内向き」や「分断」の潮流が強まりつつあり、100年前の空気が現代に再現しつつあると警告している。
・次の危機への懸念
 1920年代の繁栄の果てに襲ったのが1929年の世界大恐慌だった。寺島氏は、現在のデジタル資本主義や分断された国際秩序も、同様に大きなリスクを孕んでいるとみている。
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 日米の株式市場は最高値を更新中だが、寺島氏のアナロジーで行けば、1929年の世界大恐慌に匹敵する激震が市場を襲うことになるのだろうか。

 また、強権中国の拡大と、自国利益中心主義の米国と対峙してゆくにはどうしたらよいのだろうか。

 以下は、寺島氏の分析を基に、AIとの会話で導き出した結論だ。
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【具体的な政策提言】
経済安全保障の実態重視
 食料、エネルギー、技術など国民生活の基盤となるリソース調達の多角化や強化。単なる「中国封じ込め」論に流されず、冷静に自国経済の強靭化と本質的安全保障を追求すること。
 特に日本が緊密な関係を築くべきアジア諸国は、中国と緊密な経済関係にあるので、単純な中国敵視が受け入れられるはずがない。

国際ルール形成への積極参画
 一方的な対立に乗るのではなく、国際秩序づくりやルール作り(環境政策、データ流通、人権など)に日本が主体的に関与することで影響力を高めていく。米中両国が事実上協力・競争する場面では、日本も独自の価値観や基準を提案できるポジションを取る。

「全体知」に基づく戦略的判断
 通俗的な「米中冷戦」論や、米国への過剰依存、感情的敵対に陥らず、状況全体を俯瞰する知見の構築と、それに基づく外交・経済政策の体系化(DX・産業競争力強化、アジア基軸技術への投資など)。
 日本の影響力が強いアジア開発銀行や日本のODAを国家戦略を支える形で活用すべきだ。

アジアでの責任あるプレゼンス確保
 日本は民主主義・技術・産業力・ソフトパワーを武器に、アジア太平洋地域における安定、安全、持続可能な発展に具体的な貢献を増やす。また、「米中のどちらにつくか」という単純な選択ではなく、独自外交の余地を最大限活用し、アジア地域のリーダーとして実質的な信頼と影響力を培う例として医療・環境・インフラ支援を行う。
 アジアで唯一の安定した自由民主主義大国として強権中国への歯止め役の機能を果たすべきだ。

対中国・対米国との実際的な向き合い方
・米中の「本音」と綱引き構造を正確に見抜く
 米国は中国を封じ込める以上に、アジアでの影響力を最大化しつつ、両者をバランスよく動かす外交を展開している。日本はこの現実を理解し、米中の「覇権争い」イメージに流されず、長期的な国益と地域安定を最優先に。
・イデオロギー対立からの脱却
 「民主主義vs権威主義」という単純な二分法に依存せず、状況に応じて実利・国益を重視し、必要であれば対話・協調路線も柔軟に取り入れる。対米依存一辺倒、過剰な対中警戒ではなく、多角的な選択肢を持ち続ける。

危機管理体制の拡充と国民合意
 安全保障/外交政策は国民的コンセンサスと透明性が強く求められる分野だ。合意形成のためには、国民的対話を通じた質の高い政策意思決定が不可欠だ。
 国防予算は現状中国の10分の1で、GDP比2%になっても5分の1に過ぎない。エマニュアル・トッドではないが、核武装の是非についてもどこかで議論を始めることが必要だ。
 トランプの米国が安定性と信頼性が欠ける中、日本はAUKUS(豪英米)に加わり安全保障体制を強化することが第一歩になるだろう。

2025年8月17日 日曜日

ポーランド旅行

8月上旬に1週間のポーランドツアーに参加した。往復LOT(ポーランド航空)のワルシャワ直行便で楽だった。飛行機は、成田ー北京ーウルムチーバクーー黒海を回り込んでーワルシャワという経路で約14時間、飛行した。機内画面の航路図ではドンバス上空を通る経路が示されたが、ロシアの領土を避け、黒海も避けたルートだった。

クラクフ、アウシュビッツ、ワルシャワと一筆書きで動くコンパクトな旅だった。最高気温が26度ぐらいで湿度が低く快適な気候だった。ポーランドは国土の広さは日本の5分の4。人口は3800万人。一人当たりGDPは25000ドルで、日本の33000ドルに近付いている。

旅で一番印象に残ったのはアウシュビッツ訪問だった。アウシュビッツはドイツ人が設置した最大規模の強制収容所で、火葬場、絶滅収容所、および強制労働収容所がある強制収容所の集合体だった。クラクフ近郊にあったポーランド陸軍の兵舎を改造した捕虜収容所が、ユダヤ人を抹殺する施設へ拡大していったものだ。現在は、アウシュビッツ第1強制収容所、アウシュビッツ第2強制収容所(ビルケナウ)が見学の対象になり、言語別ツアー専門のガイドさんが案内してくれる。日本人の訪問者はコロナ前が年間32000人ほど。今は8000人ほどに減少しているとのことだ。

収容されていたユダヤ人の10人中9人、100万人を超える人々がアウシュビッツで命を失った。4つの巨大なガス室は、それぞれ同時に2,000人が入れた。シャワーを浴びさせるという名目で裸にして毒ガスで殺害しすぐに遺体を焼却した。

収容所の入り口に掲げられている看板には「ARBEIT MACHT FREI」と書かれている。これは「働けば自由になる」という意味だが、実際は、その全く逆で、貨車で送り込まれた大量のユダヤ人で強制労働に耐えられそうな者を除き、ほとんどのユダヤ人はすぐにガス室に送られた。

ナチスによるユダヤ人抹殺の狂気はヒトラー個人の思想を基にするものだったが、大量虐殺を実施したのはナチス党の幹部とそれに従う官僚機構だった。

「関心領域」という映画で扱われたルドルフ・ヘスというアウシュビッツ所長の住宅が残っている。彼は、官僚として大量のユダヤ人の処理を何のためらいもなく粛々と実行したのだ。人間の大衆心理による狂気は動き始めたら止めるのは困難だ。ドイツの現政権が、極右のAfDの台頭に神経をそばだてるのは理解できる気がした。

さて、ポーランドの3大偉人は、ショパン、キュリー夫人、コペルニクス。ワルシャワではショパンの心臓が収められている教会を見、公園でオープンコンサートを見、郊外の生家を訪ねた。

英語のジョークで「世界で最も短い3冊の本は何だ」というのがある。正解は、

Polish Who’s Who
Italian War Hero
Jewish Work Ethics

というのだが、ポーランドの偉人3人は凄い。日本でこれに匹敵する偉人としては誰を挙げられるだろうか。

ポーランドの夏を楽しんで、ワルシャワ・ショパン空港から帰路についた。

2025年8月16日 土曜日