世界の動き 2025年6月16日 月曜日

今日の一言
「Top3記事」
 毎朝、ニューヨークタイムズから届くニュースレターを読む前に、今日は何がトップ3か考える。
 今朝はイランとイスラエルの戦争、トランプの軍事パレードと予想。3つ目は見当がつかなかった。
 米国での州議会議員へのテロ行為が大きく取り上げられた。確かに民主主義の危機だ。
 ウクライナ戦争は小さな扱いだが、この間にも市民を巻き込んだ戦争が続いている。
 株式市場ではリスクオフの動きが顕著になった。G7で先進国の協調が打ち出されなければ、軟調な市場が継続するのは不可避だ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.イスラエルとイラン、ミサイル攻撃を交互に実施
【記事要旨】
 イスラエルとイランは昨日、人口密集地への攻撃を交わし、双方とも国際的な緊張緩和の呼びかけを無視した。
 イランの核開発計画の将来について、テヘランとワシントンの間で日曜日に予定されていた協議が当局によって中止されたことで、外交交渉への道は狭まったように見えた。イスラエルは、金曜日に実施した強力な攻撃の目的はイランの核インフラの無力化だと述べた。
 トランプ大統領は、戦闘の停止を呼びかけた。「イランとイスラエルは合意すべきであり、必ず合意するだろう」と、彼はソーシャルメディアへの投稿で述べた。「現在、多くの電話会議や会合が行われている」と付け加えた。
 イラン革命防衛隊は、攻撃が止まらなければイスラエルへの攻撃を強めると警告した。イスラエル軍報道官は、イスラエルはイランへの攻撃を「一瞬たりとも」止めないと述べた。
 準備不足:イラン高官6名へのインタビューから、彼らはイスラエルが次の協議の前に攻撃を仕掛けるとは予想していなかったことが明らかになった。彼らは大きな誤算を犯したとタイムズの同僚は述べた。
【コメント】
 両国は本格的な戦争状態に入ってしまった。
 日本への懸念はホルムズ海峡の封鎖だ。日本への原油の80%がここを通るからだ。

2.警察は、米国の政治家への襲撃事件の容疑者を追っている
【記事要旨】
 捜査当局は昨日、中西部ミネソタ州で、州議会議員1人を暗殺し、さらにもう1人を殺害しようとした容疑者の捜索を行った。警察は、容疑者の所有とみられる車を発見した。
 車は、容疑者が土曜日に警察官に扮して州議会議員であり州下院議長のメリッサ・ホートマン氏とその夫の自宅に侵入し、殺害したとみられる場所から車で約1時間の距離で発見された。警察との銃撃戦の後、容疑者は徒歩で逃走した。州上院議員ジョン・ホフマン氏とその妻は別の襲撃事件で銃撃されたが、生き残った。
 容疑者ボルター氏(57歳)の友人は、容疑者は中絶に強く反対し、トランプ氏に投票したクリスチャンだと説明している。ある上院議員は、容疑者が他の議員(全員民主党員)の名前を含む70人の標的候補リストを持っていると述べた。
 背景:米国で政治的暴力が蔓延する中、政治的礼儀正しさで知られるミネソタ州にとって、この襲撃は衝撃的な出来事でした。
 その他の政治ニュース:土曜日、トランプ大統領が米陸軍創立250周年を記念する軍事パレードに3時間以上を費やした直後、全米各地でトランプ政権に対する抗議活動が行われた。
【コメント】
 意見の違う政治家を殺害しようとするテロ行為だ。トランプ大統領の米国議会襲撃犯への恩赦がこうしたテロ行為を助長する原因になっていると思う。本当に米国の民主主義は危機的状況だ。

3.エア・インディア墜落事故の遺族、遺体を待つ
【記事要旨】
 エア・インディア171便墜落事故から3日が経過した現在、犠牲者270名のうち遺体はわずか35名しか遺族に引き渡されていない。悲しみに暮れる遺族たちは遺体安置所の外で連絡を待っている。
 医療関係者によると、墜落による炎の激しさが遺体の身元確認を困難にしたという。墜落したボーイング787-8ドリームライナーはロンドン行きで、アフマダーバードを離陸した直後に燃料を満載した状態で墜落した。
 機体のフライトデータレコーダーを回収した捜査官らは、機体が医科大学に激突する前に、パイロットが「メーデー」をコールする時間さえほとんどなかったことを突き止めた。
 唯一の生存者、11A席に座っていたヴィスワッシュ・クマール・ラメシュさんは、何とか無事に墜落現場から生還した。
【コメント】
 飛行機に乗って離陸時に100メートルぐらい上昇し、やれやれ離陸したと思うことがある。ちょうどあんな高さから墜落したようだ。燃料満載だから大爆発は避けられない。ロンドンへ向かうインド人一家5人が亡くなたとの報道もあった。痛ましい話だ。

その他の記事
G7サミット:
カナダ:G7諸国と同盟国の首脳は本日、アルバータ州の山岳リゾートで首脳会議を開催する。
緊張:2018年に首脳がトランプ大統領との首脳会議に出席した際、事態は芳しくなかった。今回は、事態の悪化を避けることが最優先事項だ。
米国の同盟国:トランプ大統領は政権が敵意を向けている、アメリカの最も近い同盟国の首脳と対峙することになる。

その他のニュース:
ウクライナ:ロシアによる東部での夏の攻勢は、戦場の進展につながっている。
中東:パレスチナ国家の樹立を模索する国連会議は、イスラエルとイランの紛争により延期されました。
気候:国連海洋会議で20以上の新たな海洋保護区の設置が発表された。専門家はさらに数千の保護区が必要だと指摘している。

ジェフ・ベゾス:アマゾン創業者と婚約者のローレン・サンチェス氏がベネチアで予定している豪華ゲストの結婚式に対し、一部の住民が激怒している。
欧州:昨日、バルセロナではマスツーリズムに反対する抗議活動が行われ、街頭で水鉄砲が再び使用された。イタリアとポルトガルでも抗議活動が行われた。

ビジネス:
鉄鋼:日本製鉄とUSスチールの契約に関する詳細は依然として不透明だ。

2025年6月16日 月曜日

コーポレート・ガバナンス・サーベイ(CGS)

 我が国では各種のCGSが実施されている。その中でも有名なものの一つに HRガバナンス・リーダーズ株式会社(以下「HRGL」)によるものがある。

 2025年度のHRGLによるCGSについて以下のプレスリリースが6月13日に有ったので紹介したい。
・・・・・
 HRGL社は、この度、神田 秀樹 東京大学名誉教授、久保 克行 早稲田大学商学学術院教授、水口 剛 高崎経済大学学長 監修のもと、2025年コーポレートガバナンス(以下「CG」)サーベイを実施いたします。従来の取締役会・人的資本・指名・報酬の各ガバナンス領域に加え、本年からはサステナビリティガバナンス領域の調査項目を拡充しています。「稼ぐ力」強化の要諦となる5ガバナンス領域をカバーしたサーベイへと進化を遂げたことにより、日本企業のプラクティスについて最新かつ網羅的な情報提供が可能となります。
・・・・・

 具体的な調査項目を見てみよう。

取締役会:
取締役会あり方、取締役会・指名委員会の構成・運営、取締役会への期待役割、社外取締役の機能発揮

人的資本:
人的資本経営の開示・取組状況、ダイバーシティ

指名:
役員の任期・定年、スキルマトリクス、後継者計画、役員のダイバーシティ

報酬:
役員の報酬水準・比率、報酬委員会の構成・運営、報酬制度の評価指標(非財務含む)、社外取締役・従業員への株式付与状況、クローバック・マルス条項の制度設計、ペイレシオ

サステナビリティ(新設):
サステナビリティの監督、マテリアリティ解決に向けた取り組みの推進、インパクト可視化への取組、人権、生物多様性、CSRD

 いくつか一般的でない言葉を説明したい。

マルス条項とクローバック条項:
 どちらも役員報酬の返還・減額に関する条項だが、その対象とタイミングが異なる。マルス条項は、未支給の報酬を減額または消滅させるものであり、クローバック条項は、既に支給済みの報酬を返還させるだ。

マテリアリティ(重要課題)の特定:
 企業が持続可能な社会の実現に向けて、優先的に取り組むべき課題を明確にするプロセスである。具体的には、自社の事業活動が環境・社会・経済に与える影響や、ステークホルダーの期待・関心を踏まえ、課題の重要度を評価・分析し、優先順位をつけることで、マテリアリティを特定する。

インパクトの可視化:
 企業や団体の活動が社会や環境に与える影響を、定量的・定性的に測定・評価し、それを分かりやすく示すこと。これにより、企業の取り組みの成果を明確にし、ステークホルダーとのコミュニケーションを円滑にすることが期待できる。

CSRD:
 EU(欧州連合)が導入した「企業サステナビリティ報告指令(Corporate Sustainability Reporting Directive)」の略称だ。これは、EU域内の大企業や上場企業に対し、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する情報を開示することを義務付ける指令であり、2023年1月に発効され、2024年1月1日以降の会計年度から適用が開始されている。日本企業で欧州で活動する企業は対象になる。

 さて、本論に戻りたい。
 HRGL社は『「稼ぐ力」強化の要諦となる5ガバナンス領域をカバーしたサーベイへと進化を遂げたことにより、日本企業のプラクティスについて最新かつ網羅的な情報提供が可能となります。』と謳っているが、どうだろうか。

 「稼ぐ力」の源泉は、いかに起業家精神を発揮し貪欲に儲ける施策を繰り出すかにあると思うのだが、ガバナンス領域を押さえることでそれが達成されるかは疑問だ。

 創業者や経営者=大株主が、世間の常識を逸脱した独裁的な権勢をふるうのにブレーキを掛けるためには、三様監査の有効性を高めることが最も効果が高い。取締役会が代表取締役あるいは創業者及びその一族にブレーキが掛けられない際には、監査役、内部監査人、会計監査人がタッグを組んで活動すべきだ。

 人的資本、指名、報酬、サステナビリティはいずれも、業界のベストプラティスを提示し、取締役会に最善の選択を促すことが重要だ。ただ、それで「稼ぐ力」が高まるとは、筆者は必ずしも考えない。

 「稼ぐ力を削がないように、こうした項目をどうマネージするか」という観点が重要ではないかと思う。

 「この度、神田 秀樹 東京大学名誉教授、久保 克行 早稲田大学商学学術院教授、水口 剛 高崎経済大学学長 監修のもと」サーベイを行うと謳っているが、企業経営の経験のない著名な3名のアドバイスをいただくのも、ピントがずれているように思える。

 サーベイの結果に注目したい。

2025年6月15日 日曜日

関税交渉とゲームの理論

 日本政府は赤沢経済相を毎週のように米国に派遣し、関税交渉を日本に有利にまとめようとしている。これは自国だけが良ければよいという政治のモラルの観点からして見苦しいし、経済理論から見ても妥当な行動ではない。

 経済理論でかかる交渉を分析するツールにゲームの理論があり「囚人のジレンマ」は良く知られている。野口悠紀雄先生がこのフレームワークでわかりやすく分析しているので、Diamond On Lineの記事から以下引用する。

・・・・・(引用)
「囚人のジレンマ」とは、2人の容疑者が取り調べを受けている状況を想定したモデルだ。
 2人が別々の部屋で尋問され、次のような条件が与えられる。
(1)自分が自白し、相手が黙秘した場合は無罪、相手は懲役10年
(2)相手が自白し、自分が黙秘した場合は懲役10年、相手は無罪
(3)双方とも自白した場合は懲役5年
(4)双方とも黙秘した場合は懲役1年
 この場合、それぞれの容疑者(各プレーヤー)が、個々に一番有利な選択肢を選ぶと、協力したより悪い結果が得られる。互いに協力して黙秘をすれば最良の結果が得られるにもかかわらず、互いの裏切りを恐れるため、結果として両者が損をするという非効率な結果をもたらすという状況だ。
・・・・・

 この例を使えば、看守は米国。選択肢(1)を目指して、一生懸命自白して罪を軽くしようとしているのが日本だ。

・・・・・(引用)
 トランプ政権は、4月に「相互関税」(Reciprocal tariffs)としてEUに最大50%の関税を課すと通告したが、EU委員会が直ちに報復措置とWTO提訴の構えを見せた結果、7月までの発動延期が発表された。
 この事例は、規模と結束があれば、トランプ政権の強硬姿勢を抑えることができることを示している。
 これに対して、これまでの日本政府のトランプ政権との交渉は、概して「二国間交渉における譲歩と忍耐」の戦略を採ってきた。しかし、トランプ政権のように非協調的なパートナーに対しては、この姿勢が結果として「法外な要求」を呼び込むことになる。
  日本がEUやカナダ、韓国、オーストラリアなどと連携し、「関税同盟」的な交渉ブロックを形成することができれば、トランプ政権の関税政策に対して抑止力を持つことができるだろう。実際、TPP(環太平洋連携協定)は、本来そのような連携の基盤となるはずだった。

 「囚人のジレンマ」のセッティングのゲームが「一回限りのゲーム(One-shot game)」として行われる場合、すでに見たように、合理的な戦略は互いに裏切ること(=自白すること)になる。なぜなら、自分だけが協力して相手に裏切られると、大きな損失を被るからだ。
 しかし、このゲームが「繰り返しゲーム(Repeated game)」として行われる場合、つまり、プレーヤー(企業や国)が同じ相手と何度もやりとりすることが分かっている場合には、状況は大きく異なる。
 このとき、各プレーヤーは過去の相手の行動を観察し、それに応じて将来の自分の行動を調整することができる。
  この代表例が「しっぺ返し戦略(Tit for tat)」だ。これは「初回は協力する。以後は、前回相手がした行動をそのまま返す」という戦略だ。
 この戦略は、協力には協力で応え、裏切りには裏切りで報いるため、協力を維持する誘因を作り出す。裏切ると、その報復が将来にわたって続く可能性があるからだ。
・・・・・

 トランプの政策の本質がTACOである以上は、関税交渉は繰り返しゲームだ。日本は抜け駆けを図るのではなく、同じ被害にあう、EUやアジア諸国と協力してトランプ関税に立ち向かうべきだったし、遅くはないから、今からでもそうすべきだ。

 今回のゲームに超然としているのは中国だ。関税では米国が看守で中国も囚人の一人と見ることが可能だが、中国はレアアースについては看守であり米国は囚人の一人だ。米国が関税で締め上げようとすれば中国はレアアースで締め上げることが可能だ。

 日本は関税でもレアアースでも囚人の立ち場にならざるを得ない。EUやインド、東南アジア諸国と連携し、囚人全体が黙秘したケースを主導するべきだ。アジアで唯一の成熟した資本主義国としての責務と言うべきだろう。

 (おまけのコメント)
 「ゲームの理論」「囚人のジレンマ」「米国の関税政策への対応」「中国のレアアース戦略への対応」と言った点をChatGPTと会話をしたら、有益な示唆が多かった。読者の皆さんもお試し下さい。

2025年6月14日 土曜日

世界の動き 2025年6月13日 金曜日

今日の一言
「ドリームライナー」
  インドで墜落したボーイング787ドリームライナーは2011年に運用が開始されたが最初の運用航空会社はANAだった。双発で航続距離が長いので4発のジャンボ機に変わり、国際線の主力機となってきた。当初はバッテリー関係の不備が目立ったが、その後改善されこれまで約1200機が製造されるベストセラーになっている。JALもANAも国際線の主力機で、搭乗を避けることの出来ない機種だ。
 経営が持ち直してきたボーイングにとっては痛い事故だ。株価は203.75ドル。前日比約5%下落した。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.エア・インディアの墜落事故で数百人死亡
【記事要旨】
 昨日、インドのアーメダバードで、エア・インディアの旅客機が離陸直後に医科大学の食堂に墜落し、260人以上が死亡した。これは1996年以来、インドで最悪の航空事故だ。
 エア・インディアは、イギリス人1人が生き残ったと発表しました。インドの報道機関は、機内から出てきたと語る負傷した男性のビデオ映像を公開した。男性は後に、兄によってヴィスワッシュ・クマール・ラメシュ氏と特定された。
 この飛行機は、ロンドン・ガトウィック空港行きのボーイング787-8ドリームライナーで、インド人169人、イギリス人53人、ポルトガル人7人、カナダ人1人の計242人が搭乗していた。
 墜落原因の特定には数ヶ月から数年かかる可能性があるが、安全専門家は、離陸直後に機体が急降下したように見える理由を疑問視している。ドリームライナーは長年にわたり検査を受けてきたが、昨日まで死亡事故を起こしたことは無かった。
 地上情報:B.J.医科大学の混乱した墜落現場の当局者は、墜落後に機体が横滑りし、建物に損傷を与えた後、炎上した可能性が高いと述べている。
【コメント】
 ドリームライナーについては今日の一言で記したので雑感。
・ガトウィック空港は出張で一度使ったことがある。ヒースローでなかったのであれッと思ったことがある。
・アーメダバードと聞いてパキスタンの都市かと思った。無知だった。西部インドでパキスタンにはそれほど遠くない。住民の20%以上がムスリムだそうだ。
・生存者は11Aというエコノミーの最前列に座っていたそうだ。
・空港近くの鳥は何とかできないかと思う。

2.イスラエルがイラン攻撃を検討している理由
【記事要旨】
 トランプ大統領は昨日、イスラエルが間もなくイランを攻撃する可能性があると認めたものの、米国とイランが核協議を行っている間は「攻撃してほしくない」と述べた。当局者は、イスラエルがイランの核施設を攻撃する可能性があり、そうなれば地域紛争に発展するリスクがあると見ている。
 イスラエルが真剣な攻撃計画を持っているのか、それとも核協議に影響を与えるための威嚇なのかは不明だが、緊張の高まりを受け、米国は外交官の安全確保のため、一部の外交官をこの地域から撤退させた。
 なぜ今なのか?イスラエルはイランの核兵器取得を阻止すると誓っている。昨日、国際原子力機関(IAEA)はイランが核不拡散義務を遵守していないと宣言した。これは20年ぶりの非難である。IAEAによると、イランはすでに1年足らずで10発の核爆弾を製造できるほどの、兵器級に近い高濃縮ウランを保有している。
 わずかな機会:イランは弱体化しており、テヘランの支援を受けるハマスとヒズボラはイスラエルとの戦争で壊滅的な打撃を受けている。ネタニヤフ首相は、イスラエルが攻撃を仕掛ける機会は限られていると非公式に主張している。
 今後の展開:米国とイランの新たな協議が日曜日にオマーンで開催される予定だ。
【コメント】
 イスラエルは米国の暗黙の了解のもとにイランの核施設を爆撃するのではないかと思う。はかどらない交渉を続けるよりもトランプにとっては魅力的な解決策だ。

3.トランプ大統領によるロサンゼルスでの軍動員をめぐる重要な法廷審問
【記事要旨】
 トランプ政権は、ロサンゼルスで行われた移民強制捜査への抗議活動への対応としてホワイトハウスが異例の軍動員を行ったことをめぐり、カリフォルニア州と法廷で対決するとみられる。
 カリフォルニア州は、ロサンゼルスにある連邦政府施設の警備に軍を限定し、移民当局の強制捜査に同行することを禁じる一時的な差し止め命令を求める訴訟を起こした。カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏は、トランプ大統領が軍を動員することで事態を悪化させていると非難している。
 全米各地の当局がさらなる抗議活動への備えを進める中、サンフランシスコの法廷で昨日午後審問が予定されていた。
 また、カリフォルニア州選出のアレックス・パディラ上院議員は、ロサンゼルスで行われた国土安全保障長官の記者会見で質問しようと警備員を押しのけたところ、連邦捜査官に地面に押さえつけられ、手錠をかけられた。
【コメント】
 抗議の広まりはトランプの思うつぼだ。移民取締りに関してだけはトランプはTACOではない。

その他の記事
北アイルランド:反移民の暴徒が3夜連続で警察と衝突し、家族が一時滞在していたレクリエーションセンターに放火した。
オーストラリア:トランプ政権は、オーストラリアに原子力潜水艦を配備する2021年の合意が「アメリカ第一主義の基準」を満たしているかどうかを検討していると、米国当局者が明らかにした。
オーストリア:グラーツの学校銃乱射事件の容疑者(21歳)は、捜査官によると、オンラインシューティングゲームに夢中な孤独な人物だった。

日本:防衛当局は、太平洋上で中国の戦闘機が自衛隊機に接近し、衝突の危険があったと発表した。
気候:海水温の上昇は海中の音の伝わり方を変え、潜水艦の探知を困難にする可能性がある。
欧州:スペイン、ポルトガル、イタリア、そしておそらくフランスでも、日曜日にオーバーツーリズムに対する抗議活動が予定されている。

米中関係
・テクノロジー:米国は、中国による先端技術へのアクセスを阻止するために、どのように輸出規制を活用してきたのか。
・貿易:多くのアナリストが、トランプ大統領の最近の中国に対する強硬な貿易戦略によって何を得たのか疑問視している。彼の行動は裏目に出た可能性がある。
・外交:中国のトランプ政権への対応戦略は、時間稼ぎと重要鉱物資源に対する締め付けといったものだ。

2025年6月13日 金曜日

世界の動き 2025年6月12日 木曜日

今日の一言
「GDP1,000兆円」
10日に石破首相が参院選の目玉としてぶち上げた政策だ。15年間で国民の所得を1.5倍に増やすという話だ。
「15年で1.5倍になるIRRは?」とGPTに聞くと「約2.5%」という回答がすぐ出てくる。とても便利だ。1.5倍と言うと聞こえが良いが、15年間の成長率は2.5%に過ぎないことがわかる。
石破首相の政策はダイナックな成長への政策の転換と言うよりも、人手不足による大企業中心の足元の賃金上昇が15年間続くことを前提とする単純なお絵描きでしかない。

国民全体に2万円を給付する分配政策が注目され、GDP1000兆円議論は全く盛り上がらないのは当然だ。
人口の高齢化・少子化を見据えた産業構造の変化を主導し日本経済の将来のビジョンを描こうと言う姿勢は見えない。今こそ骨太な議論が必要な時だと思うのだが。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.トランプ大統領、米中貿易協定は「成立」と発言
【記事要旨】
ロンドンで2日間にわたる協議を終えたトランプ大統領は昨日、米中両国がここ数カ月、互いの経済に対して講じてきた制裁措置の一部を撤回することで合意に達したと述べた。
この合意に基づき、中国は一部の米国製造業にとって不可欠な希土類鉱物と磁石の輸出規制を緩和する。その見返りとして、米国は中国人留学生へのビザ制限を課さず、一部の米国製品の輸出制限を緩和する。合意の詳細はすぐには公表されていない。
トランプ大統領はソーシャルメディアに、「中国との合意は成立した。習近平主席と私の最終承認を条件に。両国の関係は素晴らしい!」と投稿した。
背景:トランプ大統領が4月に大幅な関税を発表した後、米中間の経済緊張は高まった。こうした緊張の高まりは両国の企業を脅かし、今年後半にはアメリカの小売店の棚が空になるリスクをはらんでいる。
関税:両国間の関税は変更されず、一部関税の発動停止期間である90日間は8月に期限を迎える。米国通商代表部(USTR)は、両国は引き続き連絡を取り合うものの、次回の会合はまだ予定されていないと述べた。
分析:「今回の合意について私たちが知る限りでは、これは大統領自身の貿易戦争による損害とエスカレーションを解消するだけのものに過ぎないようだ」と、貿易・国際経済を担当する同僚は語った。「両国はまだ新たな貿易協定に向けて何の進展も見せていない。」
レアアース:世界のレアアース(希土類金属)と磁石の供給を支配する中国は、米国との交渉において過剰な行動を取らないよう努めていると、タイムズの北京支局長は記している。
【コメント】
トランプの発言は眉唾だ。何か決定されたか詳細はここ数日の動きを見てみよう。アメリカの守勢が目立つ交渉だったとみる。

2.米国の都市、さらなる抗議行動に備える
【記事要旨】
移民強制捜査への抗議デモが数日続いたことを受け、トランプ大統領はロサンゼルスに部隊を派遣した。その後、太平洋岸北西部から南東部にかけての米国の都市でも、抗議行動が広がっている。
ニューヨーク市、ノースカロライナ州ローリー、オレゴン州ユージーン、シアトル、セントルイス、サンアントニオで抗議行動が予想されていた。ワシントンでは、ヘグゼス国防長官が上院公聴会で、国防総省がロサンゼルスに約5,000人の海兵隊と州兵を派遣した際に用いたのと同じ法的権限を、「法執行官が脅威を感じるような暴動が発生した場合」他の都市でも適用できると述べた。
トランプに関するその他のニュース:
・トランプ大統領はイーロン・マスク氏から電話を受け、マスク氏は後に大統領への攻撃について遺憾の意を表明した。 「やりすぎた」と彼はXに書いた。
・マルコ・ルビオ国務長官は、ハーバード大学が中国で会議を開催したことで制裁に違反したかどうかの調査を推進している。
【コメント】
ヘグセス国防長官の「法執行官が脅威を感じるような暴動が発生した場合、他の都市でも適用できる」という判断であれば、全米のいかなる大規模抗議運動に大統領は州兵と国軍を派遣できることになる。米国の分断は極まれりという状況だ。

3.ネタニヤフ首相は議会での採決をめぐり圧力にさらされている
【記事要旨】
イスラエルの野党は昨日、議会解散動議の採決を示唆した。この動きは、ネタニヤフ首相率いる右派政権の崩壊につながり、早期総選挙の可能性を高める可能性がある。
動議が可決されたとしても、政権が直ちに崩壊する可能性は低く、最終採決には数ヶ月かかる可能性がある。野党は、超正統派ユダヤ教徒の男性の兵役免除をめぐる与党連合内の対立を利用している。
その他の中東関連ニュース:
・米国国務省は、イランとの緊張が高まる中、イラクから外交官を撤退させると発表した。
・ガザ地区中心部にあるイスラエル支援の支援センター近くで発生した最近の銃撃事件では、数人が死亡した。
・マイク・ハッカビー駐イスラエル米国大使は、イスラム諸国はパレスチナ国家に領土を提供すべきだと発言したが、これは米国の長年の政策から逸脱する提案となる。
【コメント】
ネタニヤフ首相の若いころの経歴が面白い。米国で青春時代を過ごし、高度な教育をうけた人なのだ。以下Wikipediaより。
・・・・・
ネタニヤフは家族と共に1956年から1958年、1963年から1967年にかけてアメリカに在住。ペンシルベニア州フィラデルフィアの郊外で成長し、チェルテナム高校を卒業した(兄も同高校を卒業している)。高校ではディベートクラブに所属していた(そのため英語に堪能であり、言葉にはフィラデルフィア訛りがあるという)。
高校卒業後にイスラエル国防軍に入隊し、1967年から1973年にかけて様々な軍務(第三次中東戦争、消耗戦争、サベナ航空572便ハイジャック事件の解決)に従事。1972年には肩を撃たれて負傷している。第四次中東戦争では部隊を率いてシリア領内に侵入した。1973年に除隊(最終階級は大尉)。
除隊後はアメリカに戻り、マサチューセッツ工科大学の理工学位とMITスローン経営大学院の学位を取得、ハーバード大学とMITで政治学を学んだ。三度結婚しており、最初の結婚で娘のノアをもうけた。現在は、客室乗務員だった三番目の妻サラと共に暮らし、ヤイール、アヴナー の2人の息子がいる。ヤイールは現在、軍務に就いている。
MITを優秀な成績で卒業後、1976年から1978年にかけてボストン・コンサルティング・グループで経営コンサルタントとして勤務し(当時の同僚に後のマサチューセッツ州知事となるミット・ロムニーがいた)、イスラエルに帰国。
・・・・・

その他の記事
北アイルランド:反移民デモが広がる中、バリミーナの町で2夜連続の暴動が発生し、警察官17人が負傷した。
ウクライナ:トランスカルパティア地方は過去3年間、ロシアによる攻撃がほとんどなく、避難民の引き寄せの場となっている。
【注:トランスカルパティア州はウクライナの最西部でスロバキア、ハンガリー、ルーマニアに囲まれた地域だ】
ポーランド:今月の大統領選挙で民族主義派の野党が勝利したことを受け、中道派政権が議会の信任投票で勝利した。

ビジネスと経済
・英国政府は今後数年間の経済優先課題を示す中で、数千億ドル規模の支出を発表した。
・エネルギー:ドイツはロシア産天然ガスからの脱却を目指し、主に米国からの液化天然ガス(LNG)輸入を処理する施設を建設している。

2025年6月12日 木曜日