中国をめぐる2つの記事

 何年かにわたり旧盆の墓参りに行っていない。コロナ感染がおさまるのはいつになるのだろうか。墓は無くならないが、自分も親戚も確実に年はとっていく。

 雨の土曜日にForeign Affairsという雑誌を読んでいた。中国に関する興味深い2つの記事が載っていたので紹介したい。

「アメリカは台湾をめぐる戦争に備える必要がある」by Elbridge Colby
 バイデンは口では台湾を守ると言っているが言葉と行動は異なっている。今すぐに4つの行動(手段)を実行しなければならない。
 それは、
 ・防衛費を増やすこと、
 ・中国との戦いにより適した形で米軍を変革すること、
 ・中国によってもたらされる脅威により焦点を当てた方法で軍隊を使用すること、
 ・米国の同盟国に、直接的または間接的に、より多くの貢献をさせること
である。
(コメント)
 我が国にとって直接関係するのは4番目のポイントだ。軍事費(防衛費)にGDPの2%つぎ込むことがあたかも国際公約のように日本では報道されているが、不要な兵器・装備を米国から購入する愚は避けたい。中国や韓国が国防費を著増させている中で我が国が1%の縛りに囚われるのもナンセンスだ。日本のGDPはここ30年増えていないのだから。
 米国に倣い、我々も自らの4つの行動(手段)を常に心掛けなければならない。「台湾有事は日本の有事」と軽々に口にするなら準備は夢怠れない。

「中国の新しい属国」by Alexander Gabuev
 クライナでの戦争により、ロシアは西側世界の多くから制裁の嵐にさらされ、国際メディアで非難され、世界的な文化イベントから追放されたロシア人は、ますます孤独を感じ、ロシアはユーラシアの巨人に頼らざるを得なくなった。
 ロシアの消費者がますます中国製品に依存する一方で、中国はロシアの輸出品(特に天然資源)にとって不可欠な市場になる。そして、ロシアの苦境を利用して、人民元が支配的な地域通貨であり主要な国際通貨でもあると主張する。
 中国を満足させ続けるために、ロシアの指導者たちは、ビジネス交渉で不利な条件を受け入れ、国連などの国際フォーラムで中国の立場を支持し、さらにはインドやベトナムなど他国とのロシアの関係を縮小する以外に選択肢はほとんどないだろう。
(コメント)
 中国とロシアは、国際秩序を修正しようとしている権威主義的大国として、ペアとして登場することがよくあるが、対等な関係ではない。クレムリンの中国への依存は、中南海のより大きなゲームにおいて、ロシアを有用な手段に変えるだろう。これは、中国政府とワシントンとの競争における巨大な資産である。   この分析でのロシアの描かれ方は滑稽でもある。vassal(属国)、junior partner(格下の相手)、hat in hand(帽子を取って)と言った厳しい表現がロシア人著者によって使われている。
 強いロシア帝国の再興を目指す誇り高きプーチンは、対中国の次の一手をどう指そうとするのだろうか。

(2022年8月13日 土曜日)

世界の動き 2022年8月12日 金曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「8月は6日9日15日」という句があるそうだ。
 加えて今日は日航機の墜落の日だ。37年前のあの日の衝撃は忘れられない。520人が亡くなった史上最大の事故については原因究明もなんとなくうやむやな印象を受ける。その後の日本航空の業績不振から民事再生へと続く展開の序曲になった事件だ。12日も忘れてはならない日だ。

1.米国はトランプへの捜査状を公開
【記事要旨】
 ガーランド司法長官はトランプのフロリダの自宅への捜査状を公開した。トランプは今年の春に召喚状を受取っていたことも明らかにした。FBIの捜査官を送るステップの前に政治への影響を考慮し召喚するステップを司法省が取ったことが伺える。FBIが捜しているのは機密書類とされるが詳細は不明だ。ガーランドは公共の利益のために今回の行動を取ったと公表している。
【コメント】
 トランプはしつこいし、必死だ。岩盤支持層を背景に強硬姿勢で対抗するだろう。どこまで司法省が追いつめることができるかは見物だ。

2.ロシアは公開裁判を準備
【記事要旨】
 ロシアはマリウポリの劇場でウクライナ兵士の裁判をウクライナ独立の日である8月24日から開催する準備を進める。ロシアはマリウポリ製鉄所に地下に籠って抵抗した軍隊に対する主張を世界に広める裁判にすると思われる。ウクライナは国際社会の介入を要請している。
【コメント】
 製鉄所の地下にこもったアゾフ大隊はロシアの言う「ネオナチ」勢力なので、その主張を裏付ける形で裁判は進むだろう。

3.中国の訓練は台湾を怯えさせず
【記事要旨】
 台湾は米中間で、外交、経済、軍事的な独自の立ち位置を維持して独自の治世を継続する努力を続ける意思を固めている。米国には軍事的な支援を求める一方、中国の強圧的な態度を台湾の苦境を世界に知らしめる機会にしている。中国が領空侵犯を繰り返した際は中国への対応は抑制的でG7各国への支援を求めている。
【コメント】
 ウクライナ情勢の展開は中国の台湾への進行の試金石になるので注意深く見守りたい。米国は同盟関係のない国(ウクライナも台湾も)をどのように守るのか。日本はどのように対応すればよいのか。「台湾有事は日本の有事」というのは簡単だが、日本の安全と国益を守るには、知恵と忍耐と交渉力が必要だ。

その他:
北朝鮮はコロナに勝利
Kim Jong-un declared “victory” over North Korea’s coronavirus outbreak, despite a lack of vaccines, state news reported.
香港では人口減
Hong Kong suffered a record 1.6 percent population decline over the past 12 months, the South China Morning Post reports.
中国で新たな感染症ランギャウィルス
A new animal-derived virus, Langya henipavirus, has infected at least 35 people in China’s eastern Shandong and Henan provinces, the BBC reports.

(2022年8月12日 金曜日)

世界の動き 2022年8月11日 木曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「線状降雨」
酷暑の東京から那須へ大きな植木鉢を沢山運んだ。カブリオレの天井を開けてである。那須の自宅から500メートルほどで急に空が曇り雨が降ってきた。家に着いたときは土砂降りだ。慌てて植木鉢を下すが天井から容赦なく雨が降ってくる。鉢を下ろし終わったときには車内に水がたまった。東北の豪雨の南端が那須にかかったのだろう。本格的に線状降雨帯に巻き込まれたら大変なことになることを実感した出来事だった。

1.トランプは尋問を回避
【記事要旨】
トランプ前大統領は米憲法修正5条に従い黙秘権を行使し同氏の企業をめぐる質問に回答しなかった。2019年3月以来ニューヨーク州の司法省はトランプの企業群が不正に企業価値を操作してきた嫌疑で調査してきて今回の召喚になった。月曜にはトランプの別荘が公文書の不法保持嫌疑でFBIに操作されたばかり。
【コメント】
「黙秘権を行使します」で切り受けられるとしたら、米国の民主主義は凄い。もちろん皮肉です。

2.クリミア半島での大規模爆発
【記事要旨】
クリミアでのロシア基地をめぐる一連の爆発でクリミアでは非常事態宣言が発令される。爆発の原因は不明。ウクライナ筋からはパルチザンの活動によるものとの情報も出る。ウクライナの攻撃だとしたら占領地の奪回から攻勢を一歩進めたことになる重大事象。ロシアが占拠する原発近くでミサイル攻撃によりウクライナの死者13人。露は原発の電気をクリミアに供給する方針とウクライナは非難。
【コメント】
米は武器供与に際しウクライナがロシア領内とクリミアは攻撃しないようにウクライナには念を押していたという報道がある。ウクライナはこれを無視しクリミアを攻撃したということだろうか。まずい展開だ。

3.韓国では洪水の死者を悼む
【記事要旨】
大規模な洪水が、アカデミー賞受賞映画「パラサイト」で描かれた都市の貧民層の苦難をあからさまにした。教育や就労の機会を求め半地下室に居住する住民は多数存在する。
【コメント】
昨日に続く続報。タイムズは何に興味を持ったのかに興味がある。

その他:
米軍は台湾海峡での行動を継続
The U.S. said it would continue operating in the Taiwan Strait in response to Chinese military drills that U.S. officials say are evolving into long-term military pressure on the island.
岸田改造内閣は統一教会から距離
Fumio Kishida, Japan’s leader, reshuffled his cabinet yesterday, The Associated Press reported. The move, which happened a month after the assassination of Shinzo Abe, was an effort to distance his government from the controversial Unification Church.
たまには規模の大きな宇宙のニュースを
Astronomers think they have found our galaxy’s youngest planet: It may be just 1.5 million years old, so young that its building blocks of gas and dust are still coming together.

(2022年8月11日 木曜日)

世界の動き 2022年8月10日 水曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
 「内閣改造」
 議会制民主主義を標榜する日本では、閣僚の半数以上は国会議員から選ばれなければならない。当選6回以上とかいう人たちのプールがあり泊付のために大臣にする必要が出てくる。そのため有為な一般の人が大臣になることは稀有だ。行政府各省の長に専門家が就任する米国とは大きく異なり、政治が劣化する要因の一つと思うが如何だろうか。

1.FBIがトランプの自宅を捜索
【記事要旨】
 FBIはフロリダのトランプ前大統領の自宅を捜索した。FBIも司法省も捜査の理由を明らかにしていないがトランプが在任中手に入れた国家の機密文書を違法に保持していることが対象の模様だ。もしトランプがそのようなことをしていれば次回大統領選に出馬できない。トランプ支持の極右勢力はこれは内戦だと表現している。
【コメント】
 トランプ氏は自身の納税状況も設営していない。このような人がプアーホワイトの強い支持を集めるのは何故なのか、民主党は真摯に考えなければならない。トランプなら機密文書の持ち出しは大いにありそう。自伝を書くために収集しているのではないかと推測する。

2.ソウルの洪水で9人が死亡
【記事要旨】
 月曜朝から火曜朝の一日で17インチの豪雨により地下住宅で溺死したり流され死んだ人が少なくとも9人にのぼる。更なる豪雨が予想され、高層化され保水性の低いソウルでのさらなる被害が懸念される。
【コメント】
 映画であった地下室に暮らす人たちは大変なんだろうな。ソウルも日本と同じモンスーン地帯だから集中豪雨や台風の被害はあるはずだが、知らなかった。

3.ケニアでの緊迫する選挙
【記事要旨】
 3選が禁じられているため現職のケニヤッタ大統領は立候補せず、ウィリアム・ルト副大統領(55)と野党指導者のライラ・オディンガ元首相(77)による一騎打ち。オディンガはルオ族の出身で副大統領候補には女性を立てる。ケニアでの選挙には暴動がつきものだが、一応民主的な選挙が実行されれば他の圧政国への模範になる。
【コメント】
 この辺りのニュースが全くないので理解するのが難しい。現大統領はオディンガ候補を支持しているらしい。

その他:
ウクライナの原発が危険
An official at Ukraine’s atomic energy company said that international inspectors should visit the Zaporizhzhia power plant, where shellfire damaged a nuclear fuel storage facility.
米国はアフリカの民主主義を支援
The U.S. plans to promote democracy in Africa, Secretary of State Antony Blinken said during a visit to South Africa.
セリーナ・ウィリアムスの引退
Serena Williams, the 23-time Grand Slam champion, said in an article in Vogue that she planned to retire from tennis after this year’s U.S. Open.

(2022年8月10日 水曜日)

世界の動き 2022年8月9日 火曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「国葬」
 是非についての議論が喧しいが、時期について比較したい。
 吉田茂 1967年10月20日没 国葬1967年10月31日
 シャルル・アズナブール 2018年10月1日没 国葬2018年10月5日
 安倍晋三 2022年7月8日没 国葬予定2022年9月27日
 どう思われますか?

1.中国は台湾近海で更なる軍事演習を実施
【記事要旨】
 台湾を包囲する演習で海空での台湾へのアクセスを制限する狙い。合湾軍は、中国艦船40隻が台湾周囲で活動し内21隻は非公式の台湾海峡の中間線を犯し台湾側に侵入と発表。中国はペロシ訪台への報復と言うが、日本のような台湾支援国への警告であり、すぐにも武力侵攻可能という示威行動。習近平は秋の共産党大会での3選を狙い強いリーダーのイメージを示す。
【コメント】
 習近平はイメージ作りを狙っているのだろうか。そういう人なのだと見るほうが妥当だ。私は人殺しの真似をしていると言って殺人を犯せば、その人は殺人者だ。

2.ウクライナでの戦争の日常化
【記事要旨】
 タイムズのウクライナ人レポーターがドンバス地域で死者を埋葬する大規模墓地の状況を報告している。死者を越えてくる風が死臭を記者の胸に送る。キエフに戻れば親友がミサイル攻撃で死亡し葬儀に参加しなければならない。ロシアの戦争開始から5か月経過し、ウクライナではどこにも安全な場所が無い日常だ。
【コメント】
 英文ではこう表現されている。 deaths are an “inescapable reality that feels like the very air in your lungs”

3.崖っぷちのアフガニスタン
【記事要旨】
 米軍の撤退後1年経ち、アフガンは貧困にあえぐ。西側諸国からの1000億ドル以上の支援にかかわらずアフガンは援助に依存する最貧国の一つ。タリバン政権の女性への教育抑制、ブルカの着用の強制等の政策が西側の好意を抑制している。勧善懲悪省による文化政策には政権内からも批判が出ている。先週バイデン大統領はアルカイダのリーダーであるザワヒリ師をドローンで殺害したと発表したが、大統領は同師の役割を過大に発表。
【コメント】
 この辺りは常にきな臭い。ソ連が、そして米軍でさえ撤退した地域に、どこの国が支援を積極化して行けるのだろうか。

その他:
米国連邦海事委員会がインフレ退治に機能するか?
The Federal Maritime Commission is an obscure U.S. institution charged with regulating the massive global shipping industry — and now, taming inflation.
予算案は可決したが人気は?
Passing climate, health care and tax provisions has President Biden on a sudden roll, but whether the efforts will mark a turning point in his presidency remains to be seen.
経済弱者は物価高のあと失業?
In today’s profoundly unequal economy, low-income people could face inflation now and job losses later.

(2022年8月9日 火曜日)