結局は企業風土の問題

 昨日は「ガババンスにおける社外役員の役割」を、東レにおける伊藤邦雄一橋大学名誉教授のガバナンス委員長の有効性を基に論考した。

 シリコンバレー銀行(SVB)の破綻を契機に金融機関でのリスク管理について焦点が当たっている。リスク管理委員のスキルセットに注目が集まっている。WSJの興味深い記事を見つけたので紹介したい。長文の記事の紹介の最後に私の考えを記載する。

(記事引用)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「銀行の破綻はリスク管理の欠点にスポットライトを当てる」
Wall Street Journal March 22, 2023
Risk & Compliance Journal By Richard Vanderford

(要約)銀行の取締役会には、問題の未然防止を任務とするリスク委員会があります。 しかし、これらの委員会のメンバーは、自分の意見を聞きいれさせるスキルや能力を常に持っているとは限りません。

(記事全文)
 銀行と規制当局は、2007 年から 2008 年の金融危機以来、最も危険な業界の状況への対応を急いでいますが、専門家は、1 つの根本的な問題に注意を払う必要があると述べています。

 多くの銀行の取締役会レベルのリスク委員会は、銀行経営者に反発する力も専門知識も持っていないので、最近の銀行破綻に関連して対処されるべき弱みであるとリスク専門家は言う。

 連結資産が 500 億ドル(水島注:日本では約6.5兆円で地銀16位の足利銀行のレベル)以上の大手銀行は、銀行持ち株会社の取締役会に直接報告するリスク委員会を維持することが法律で義務付けられています。 金融危機後に可決されたドッド・フランク法の修正版によると、これらの委員会には、大手金融機関のリスクエクスポージャーを「特定、評価、および管理」した経験を持つメンバーを少なくとも1人含める必要があります。

 しかし、取締役会レベルのリスク委員会は、多くの場合、その資格のある一人のメンバーを超える能力を持つことはなく、上級管理職に立ち向かうための専門知識が不足している場合があると、シティグループの消費者金融グループの元最高リスク責任者であり、現在はメリーランド大学のロバート H. スミス ビジネス スクールの教授であるクリフォード・ロッシ氏は述べています。

 問題は深刻になる可能性がある、とロッシ博士は言います。 彼の研究では、以前の金融危機の失敗のほとんどは、リスクガバナンスの欠陥に起因する可能性があることがわかりました。 彼の論文は、規制当局や保険機構によるリスク管理の精査を含む、いくつかの政策的解決策を提案しました。

 優れたリスク管理は、極度のストレス時に銀行を保護し、銀行を救うことさえできます。 しかし、その作業は骨の折れる技術的なものであり、潜在的な問題点を探すために事業計画に手を突っ込む必要があります。 最近の銀行のメルトダウンの原因はまだ完全にはわかっていませんが、一部の業界オブザーバーは、リスク管理の緩みを指摘しています。

 SVB をメンバーとして数えている業界団体である Bank Policy Institute は、SVB と Signature Bank の失敗は「主に経営(management)と監督(supervision)の失敗を反映しているように見える」と述べた。 ただし、BPI は、その分析は「初期および部分的な考え」に基づいていると指摘しました。

 リスクの専門家は、今こそ銀行が監視を強化するための目覚ましとして役立つはずだと述べています。

 多くのグローバル機関、さらには米国の地方銀行でさえ、金融危機以来、リスク監視の改善に大きな進歩を遂げてきたと、人材アドバイザリー会社 ZRG Partners のマネージング ディレクターであり、金融業界やその他のビジネスにリスクおよびコンプライアンス人材の供給者として働く Robert M. Iommazzo 氏は述べています。 しかし、銀行取締役会のリスク監視の有効性は「連続性continuum」にかかっていると彼は述べた。

 主にテクノロジーセクターにサービスを提供している一部の新しい銀行は、リスクよりもマーケティングと収益に重点を置いていると、同氏は述べた。 彼は最近、リスクポジションを埋めることを望んでいた銀行のクライアントからの仕事を辞退しました。候補者の専門知識よりも候補者の見方に重点を置いているようだったからでした。

 シリコンバレー銀行では、取締役会のリスク委員会のメンバーの何人かは、従来のリスク管理とはかけ離れた経歴を持っていました。 1 人はナパバレーのブドウ園の所有者で、その任命は業界誌であるワイン ビジネスに掲載されていました。 SVB は、有価証券報告書の中核分野の 1 つとして「プレミアム ワイン」を挙げています。 別の役員はコンサルティング会社でキャリアを積んだ。 SVB のリスク委員会の委員長はベンチャー投資家でした。

 SVB のリスク委員会には、リスクのバックグラウンドを持つメンバーが少なくとも 1 人いました。それは、投資会社で数十年の経験を持つ元米国財務省次官の Mary Miller です。 しかし、SVB の最高リスク責任者のポストは、昨年 4 月に前任者がその役職を辞任した後、約 8 か月間空席がありました。

 一部の調査では、銀行の経営者がリスク管理をより重視する傾向にあることが示されています。 U.S. Bank が 11 月に実施した最高財務責任者の調査によると、30% がリスクの特定と軽減の改善を最優先事項として挙げており、前年の 18% から増加しています。

 Iommazzo 氏は、多くの銀行が適格な取締役を獲得していると考えていると語った。 しかし、専門家でいっぱいのリスク委員会でさえ、期待が明確に定義されていなければ、逆風に直面する可能性があります。

 「取締役会のリスク委員会に期待されていることは、率直に言って、まだ非常に初期の段階です」と彼は言いました。 これらの銀行の破綻は、「取締役会のガバナンス全般にスポットライトを当て、取締役会に期待されていることについてのさらなるトレーニングと理解の必要性」を投げかけています。

 米財務省の元高官で、現在は南カリフォルニア大学マーシャル ビジネス スクールでリスク管理教育プログラムを率いるクリステン ジャコーニ氏は、2 つの銀行の破綻の根本原因を簡単に評価することには消極的だと述べています。 多くの銀行は、リスク管理を強化するために少なくともいくつかの措置を講じていますが、それらの措置が成功するかどうかは文化によって決まります。

 「あなたや私は、最近破綻したか繁栄しているかにかかわらず、これらの銀行のいずれにでも訪問することができ、おそらく、巧妙に作成された一連のリスク管理ポリシーと手順を見ることができます」と彼女は言いました。「しかし、最終的にはすべてが文化に帰着します。」

 しかし、部外者はその文化を見ることができないことが多いと彼女は付け加えた。「訴訟がない限り、目に見えることはありません。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(引用終わり)

 いろいろと専門家のコメントを引用し、最終的には「すべてが文化に帰着します」というこの記事の結論には脱力した。

 リスク管理やガバナンスにどれだけ時間をかけて態勢を整え、取締役会に著名な社外役員を揃えても、経営陣が体現する企業文化がすべてを規定するわけだ。

 単純な結論だが真理だ。

2023年4月2日 日曜日

社外取締役はガバナンスの役に立つのか?

 青山学院大学名誉教授で内部監査・内部統制の専門家である八田進二氏が、東レの社外取姉役を務めている伊藤邦雄一橋大学名誉教授を激しく非難している。

 「東レの“お飾り社外取”が会社をダメにした」という見出しが躍る週刊ダイヤモンドオンラインの八田氏へのインタビュー記事だ。

 東レは2017年以来、2022年、2023年と製品の品質不正が明るみに出て、優良企業の評判に傷がついているのだが、同記事によれば、経済産業省の「伊藤レポート」などをまとめ、企業統治の“大家”として知られる伊藤邦雄氏が、東レでは長年にわたって社外取締役やガバナンス委員長などを務めており、八田氏は伊藤氏の責任を問うているのだ。

 インタービュー部分の冒頭を引用する。

 『(記者)不祥事を繰り返している東レですが、ガバナンス論で高名な伊藤邦雄・一橋大学名誉教授らが社外取締役に就いていながら、なぜ不祥事を防げないのでしょうか。

 (八田)社外取締役は、不祥事の端緒を見つけたとき、あるいは発覚したときに、最も真価を発揮する。東京証券取引所に独立役員として届け出ている以上、経営陣に対して中立の立場で物が言える人だから、本来は不祥事が起きたときに、社外取締役がリーダーシップを取って不祥事対応を行うことができます。

 例えば、経営陣の責任にまで至らないような現場サイドだけの不正事案であれば、内部監査部門や、コンプライアンス部門などの社内のけん制機能を使って、社内調査を徹底的にさせる。

 あるいは、東レのように、複数のセグメントで長年にわたって不正が行われていることが明らかな場合は、経営陣にも不正に関与した人がいるかもしれない。そのため、外部のコンサルタントや弁護士を雇ったり、社外取締役の手に負えない場合は、外部調査委員会を設置するなど、不正を追及するためにさまざまなアプローチを取ることが可能です。

 しかし、東レの場合はたびたび品質不正が発覚している。

 その間、在任期間の長い伊藤氏は社外取締役として、こうした度重なる不正にいかに対峙してきたのかが問われるのでしょう。少なくとも社外取締役として機能不全、いわば「お飾り」になっていると言われても致し方ないのではないか。従って、なぜ東レの経営陣の監視・監督をできなかったのか、徹底した責任追及が求められる可能性があります。』

 東レの取締役会は社内8名、社外4名で構成されている。取締役会の構成は8対4で社内が圧倒的多数で、社長の意に沿った決定が可能だ。

 社外取締役は、伊藤氏のほかには、ノーベル化学賞を受賞した野依良治氏、神永晋氏(デフタキャピタル取締役)、二川一男氏(元厚生労働時間)であり、企業経営に詳しいのは伊藤氏と神永氏ぐらいで、経営に関する議論では経営陣にとても太刀打ちできそうもない。

 八田氏が言及しているガバナンス委員会(伊藤氏が委員長)については、東レのコーポレートガバナンス報告書を見ると以下の記載がある。

 『当社は、取締役会の諮問機関として、中長期的に重要な課題を取締役会に答申するために「ガバナンス委員会」を設置しています。
「ガバナンス委員会」は社内取締役3名、社外取締役4名で構成し、委員長は社外取締役としています。「ガバナンス委員会」における
審議の対象は、以下を含む当社のコーポレートガバナンスに関する事項全般とし、指名委員会と報酬委員会双方の機能を担っています。
・取締役会および監査役会の構成
・取締役会の運営に関する評価
・取締役および監査役の指名方針
・役員報酬制度のあり方
・社長を含む経営陣幹部の選解任に関わる基本方針
なお、ガバナンスの客観性および透明性を確保するために、社外取締役および社外監査役の独立性に関する基準を定めています。』

 驚いたことに東レには任意の指名委員会、報酬委員会は無かったのだ。

 ガバナンス委員会は、前述の社外役員4名と、社内からは代表権のある日覚昭廣社長、大矢光雄副社長、萩原識副社長の3名で構成されている。数の上では4対3で勝っているが、社外役員が自分たちの考えを通すのは難しそうだ。

 日覚氏は大変なワンマン社長だそうだが、このガバナンス委員会さえ押さえてしまえば、人事や指名についてうるさいことを言われる心配がないので楽勝だ。

 こんなときには社外取締役はどうしたらよいのだろうか。平時ではない。品質不正問題への対応の話だ。

 私の経験では、社外役員は自分の考えを経営者に実行させる(ような大それた)ことは出来ない。出来るのは、言われたことを実行しない(Noという)ことだ。

 4人の社外役員は、品質不正に(あるいはそのようなことを可能にする企業風土に)気付いたとき、どのように反対の意思表示をしたのだろうか?

 自分たちの考えが経営陣に受け入れてもらえないときは、社外役員を辞するに如くはない。ガバナンスの大家である伊藤教授が突然社外役員を降板すれば、大きな問題提起になったはずだ。

2023年4月1日 土曜日

世界の動き 2023年3月31日 金曜日

今日の言葉:
「AI」
 先日イーロンマスクが1000人の科学者と共にAIの開発に制限を掛けるべきだという書簡を出したという記事を取り扱った。
 AIの開発と進化をとどめることは出来ないだろう。Winners take all. という世界だからだ。技術を善用するか悪用するかは、結局人間のモラルの問題に帰結する。

ニューヨークタイムズ記事より
1.ドナルド・トランプを起訴
【記事要旨】
 ニューヨーク市の大陪審は、ドナルド・トランプ前大統領の調査の証拠を審理し、ポルノスターに口止め料を支払ったとしてドナルド・トランプを起訴することを決定した。 彼は、刑事責任を問われた最初の元米国大統領となった。トランプ氏が立候補する2024年の大統領選を揺るがすだろう。
 マンハッタン地方検事局によって封印された起訴状は、おそらく数日中に発表され、それまでに、地方検事はトランプに罪状認否を求めているだろう。
 具体的な容疑は今のところ不明だが、検察は、トランプと関係があると主張したポルノ女優に13万ドルを支払ったことに焦点を当てていえう。
 当時、トランプの顧問弁護士であったマイケル・コーエンは、2016年の大統領選挙の最終日に支払いを行った。 トランプ・オーガニゼーションの内部記録は、コーエンを経由した支払を訴訟費用として誤って特定した。
 トランプ氏は一貫してすべての不正行為を否定し、民主党が政治的動機による訴追を主導していると非難している。
 今回の起訴により、ほとんどの世論調査でトランプ氏がリードしている共和党の指名争いが未知の領域に突入する可能性がある。起訴が共和党の有権者をトランプの側に集めるか、彼の地位を損なうかどうかは不明だ。
 トランプ氏は何十年にもわたって、刑事告発を回避してきた。 2020 年の選挙での敗北をめぐる彼の行動は、別の連邦捜査の焦点となっている。
【コメント】
 この口止め料を巡る訴訟に持ち込めるか持ち込めないかの法律的な争いはよく理解できない。それほどの重罪と言う印象も持たないが、米国民の受け止めはどうなのだろうか。日本でれば政治資金規正法違反で秘書が書類送検されるレベルの事件だろう。

2.ロシアがアメリカ人ジャーナリストを逮捕
【記事要旨】
 ウォール・ストリート・ジャーナルWSJの特派員であるエヴァン・ゲルシュコビッチは木曜日、ウラル山脈のモスクワから東に約1400キロ離れた都市、エカテリンブルグで拘束されたと、ロシア連邦保安局(FSB)が声明で述べた。 彼はスパイ活動で告発されている。
 今回の逮捕は、モスクワによるウクライナ侵攻が始まって以来、ロシアと外国のメディア組織との緊張が新たに高まっていることを示している。ソ連崩壊後、ロシアでスパイ容疑で逮捕された最初のアメリカ人記者だ。
 WSJは、ロシアの告発を激しく否定し、ゲルシュコビッチの身の安全を懸念していると声明で述べた。 バイデン政権は拘束を非難した。 ホワイトハウスの報道官は「ロシア政府がアメリカ市民を標的にすることは容認できない」という声明を発表した。
 クレムリンのペスコフ報道官は、逮捕を確認し、「私たちは疑惑について話しているのではない。彼は現行犯で捕まった」と述べた。
  過去のいくつかのスパイ事件では、ロシアは西側との捕虜交換を扇動するために外国人を拘束した。 ゲルシコビッチは、ロシアの刑法の下で最大 20 年の懲役に直面している。
ウクライナでの戦争からのその他の進展:
 東部で戦闘の中心となっているバフムト市を占領しようとするロシアの試みに対して、ウクライナ軍の司令官は流れを変えたと信じている。
 トルコはフィンランドのNATO加盟を承認し、北欧諸国の加盟への最後の障害を取り除いた。NATOとロシアとの国境は大幅に拡大した。
 衛星画像は、インフラストラクチャに対するロシアの攻撃によって、ウクライナがどのように暗くなったかを示している。
【コメント】
 西側の記者はいつでもスパイ容疑を受けかねない。ロシアと中国では。

3.郭文貴の盛衰
【記事要旨】
 中国の億万長者で亡命中の 郭文貴Guo Wengui は、何千人もの投資家から 10 億ドル以上をだまし取った罪で、米国での裁判を待っている。
 何千人ものオンラインフォロワーをだますための複雑な計画に関与したとして告発された郭は、9,000平方フィートのニューヨークのアパートで今月逮捕された。彼は無罪を主張した。
 郭は貧困から立ち上がり、全国的な不動産帝国を築いた。 中国での汚職の取り締まりにより、2015 年に彼は米国に逃れ、中国共産党を力強く批判することで熱心な支持者を見つけた。 右翼のアメリカの政治家は彼を受け入れた。 郭は、ビジネス ベンチャーのために数百万ドルを調達し、陰謀論を推進した。
 郭に対する詐欺の申し立てが積み重なるにつれて、すべてが解明され始めた。 被害者はますます訴訟を起こした。 郭の支持者は、彼の批判者を対象とした嫌がらせキャンペーンを行った。米国の規制当局は、郭に関連する 3 つの企業に対して訴訟を起こし、違法な証券募集を行っていると非難した。 詐欺罪で有罪判決を受けた場合、郭は何十年もの禁固刑に直面する可能性がある。
【コメント】
 中国であれ米国であれ事業の進め方の本質は変わらなかったということだろう。騙される人も悪い。

その他:

札幌五輪招致
 Japan’s bid to host the 2030 Winter Olympics in Sapporo is in jeopardy amid a still-unfolding corruption scandal linked to the 2020 Tokyo Summer Olympics.
メキシコでの移民施設火災
 Mexico is investigating the deaths of at least 39 people at a migrant detention center near the U.S. border as a homicide case.
フランシス法王の健康
 Pope Francis, 86, is “gradually improving” after a night in the hospital in Rome, where he is being treated for a respiratory infection.

2023年3月31日 金曜日

世界の動き 2023年3月30日 木曜日

今日の言葉:
「少子化対策費8兆円」
 異次元の少子化対策だそうで、子供を持つのに躊躇している夫婦を資金面で後押しする支出項目が並ぶ。
 少子化の本質は、中低所得の若者が将来の生活不安で結婚できないことだろう。日本の先行きに希望を持ち家庭を作る若者が増えなければ少子化は止まらない。
 就業人口が1000万人不足するという報道もあった。移民問題も避けて通れない。日本のグランドデザインなしに、「産ませる」議論だけしても不毛だ。

ニューヨークタイムズ記事より
1.モディは裁判所をどのように使用するか
【記事要旨】
 モディ首相は、政権与党を保護し、ライバルを標的にするために司法に依存することで、インドの民主主義に対する彼の支配を強化した、と批評家やアナリストは言う。
 先週、裁判所は、インドで最も有名な野党指導者であるラフル ガンジーに、名誉毀損罪で懲役 2 年の判決を下した。
 法律の専門家は、2019 年の演説でモディを同じ名字の著名な「泥棒」に例えたように見えるガンジーに対する訴訟は根拠薄弱なものだと述べた。 それでも、ガンジーが今後何年も選挙に出られなくなる可能性がある。
 モディの絶大な人気は、ヒンズー教のナショナリズムと広範な福祉提供の組み合わせによって築かれ、彼の政府は圧力と誘導を通じて司法制度を曲げることを可能にした. 従順であると見なされる裁判官は、議会、知事、または政府委員会への任命で優遇され、独立の筋を通す人は、キャリアの停滞に直面している。
 モディは、制度を曲げたと彼を非難した人々は、それらの制度の「信頼性を終わらせる」ことを意図した「陰謀」に関与していると述べた。
 モディは、1970 年代に布告によって統治し、反対派を投獄したラフル ガンジーの祖母であるインディラ ガンジーほどには強権をふるっていないが、彼のやり方は、インドの民主主義制度を維持しつつ自分の意志に曲げることで、彼は国内と西側の同盟国の両方で支持を得ている。
【コメント】
 インドは世界最大の民主主義国だと言うが、内実はモディ首相が強権政治を行っているのがよくわかる記事だ。あまりに過ぎると「暗殺」の危機が高まる。

2.A.I. の一時停止を求める
【記事要旨】
 イーロン マスクは、他の 1,000 人以上のテクノロジ リーダー達と共に、「社会と人類に対する深刻なリスク」を警告する公開書簡で、人工知能の開発の停止を求めた。
 書簡は、マスクが共同設立した OpenAI によって今月導入されたチャットボットである GPT-4 よりも強力なシステムを公開することの一時停止を求め、AI の「共有安全プロトコル」を実装する時間が提供されるべきだと述べた。 さらに、「そのような一時停止がすぐに制定できない場合、政府は介入してモラトリアムを敷くことが必要だ」と付け加えた。
 「A.I. の開発者は、誰も、作成者でさえも理解、予測、または確実に制御できない、これまで以上に強力なデジタルマインドを開発および展開するための制御不能な競争に閉じ込められている」と、テクノロジリーダー達は書いている。
 非営利団体のフューチャー オブ ライフ インスティテュートが発行したこの書簡には、アップルの共同創設者であるスティーブ ウォズニアックと、原子力科学者会報の代表であるレイチェル ブロンソンも署名している。
 専門家は、悪意のある人物が AI を使用する可能性があることを懸念している。 Aiが偽情報を広め、人々は医学的および情緒的なアドバイスを求めこれらのシステムに依存するようになる。このツールは、詳細が間違っていると批判されてきた。
 A.I. はすでに 2024 年の米国大統領選挙に影響を与えており、ドナルド トランプ氏が逮捕される偽の画像や、バイデン大統領の声をまねた動画が作成されていた。
【コメント】
 原子力と双璧を為す「制御できない」能力を我々は手に入れてしまったのかもしれない。

3.気候変動について国を訴えることはできるか?
【記事要旨】
 海面上昇の最前線にある小さな太平洋の島国であるバヌアツは、国連で世界の最高裁判所に重大な問題を提起した。
 国連総会は水曜日に全会一致でこの措置を採択した。 国連は今後、国際司法裁判所に対し、各国政府が気候変動の危険から人々を守る「法的義務」を負っているかどうかについて意見を出すよう要請する予定だ。
 裁判所の意見は拘束力を持たないが、パリ協定の下で各国が行った自発的な誓約を、法的義務に変えることができ、新たな法的請求の土台となる可能性がある。
 数年前にマーシャル諸島とパラオでも同様のアイデアが浮かんだが、米国等の強力な国の反対により実現しなかった。
【コメント】
 「化石賞」をもらった日本も訴えられる可能性があるわけだ。

その他:
中国を巡る動き
 China threatened retaliation over the Taiwanese president’s planned meetings with a top U.S. legislator next week.
 European leaders are heading to Beijing even as the U.S. intensifies pressure to choose between the two superpowers. France’s president, Emmanuel Macron, will be there next week.
ロシアとインドは接近
 A top Russian security adviser met with Modi in Delhi as Moscow seeks closer ties with India.
ミャンマーは反対政党を解党
 Myanmar dissolved dozens of opposition parties, setting the stage for an upcoming election that will almost certainly keep the junta in power.

2023年3月30日 木曜日

世界の動き 2023年3月29日 水曜日

今日の言葉:
「114兆円予算案成立」
高市大臣の発言にのみ焦点が当たり、増大する社会保障費、著増した防衛費、金利上昇下の国債費について、議論が深まらないまま巨大予算が成立した。

巨額な予備費がお財布として使われた。
この国の将来をどうするのかグランドデザインを議論する機会がまた失われた。

ニューヨークタイムズ記事より
1.中国が救済措置に乗り出す
【記事要旨】
何十年もの間、IMFと米国は世界の最後の貸し手だったが、現在、中国が、トルコ、アルゼンチン、スリランカなどの国に、より多くの緊急融資を提供するために介入している。
米国と欧州の調査によると、中国は2010年のゼロから2014年に100憶ドル、2021 年には405 億ドルの緊急融資を実施した。IMFは、2021 年に財政難にある国に 686 億ドルを貸し出した。
多くの点で、中国は頼りになる資金源として米国に取って代わっている。米国が中所得国に行った最後の大規模な救済融資は、2002 年にウルグアイに供与された 15 億ドルの融資だったが、中国はしばしば、戦略的に重要な国や豊富な天然資源を持つ国を優先し支援している。
インフラ整備のために何年にもわたって北京から多額の借り入れを行ってきた多くの国は、現在、債務の支払いに苦労している。米当局者は、中国企業が実施する建設プロジェクトのために過剰な債務を抱えた国を苦しめることで、中国が「債務の罠外交」に関与していると非難している。
中国は、困窮している中所得国への緊急融資に、IMF からの融資の 2% と比較して、5% のやや高い金利を課している。中国の緊急融資は、中国の国営銀行に多額の債務を負っている中所得国にほぼ完全に向けられている。
中国はまもなく自国内の債務危機に直面する可能性がある。 大規模なインフラスプロジェクトのために多額の借入を行ってきた中国の地方政府は、財務上の混乱に陥っており、中国の厳格なパンデミック政策の施行により財源が枯渇している。それでも、彼らは支出を続けている。
【コメント】
改めて中国の世界経済に占める巨大さを思い起こさせる記事だ。中国は世界経済の巨大な(古い言葉を使うと)「サラ金」のような存在だ。

2.アリババの激変
【記事要旨】
中国の e コマース大手であるアリババは、持ち株会社の下に編成された 6 つの異なるビジネス グループに再編成される。
この動きは、中国のハイテク大手の力に対する政府の懸念を反映している。 アリババの事例は,大企業を屈服させようとしてきた同国の与党共産党に異議を唱えることの危険性についての警鐘だ。
政府は、アリババの億万長者の創業者であるジャック・マー氏が世間の目から姿を消した3 年間の激動の後、テクノロジー部門に対する規制の緩和を行っているようだ。
マー氏は2020 年に中国の規制当局がイノベーションを抑制していると批判した後、今週中国本土に戻った。 規制当局は、2021 年にアリババに 28 億ドルの罰金を独占的支配を乱用したことなどで
科した。
中国政府は経済の活性化に注力していることを示したいと考えている。
【コメント】
ハイテクは中国の世界競争力の源泉だから、ハイテク企業への規制は緩まざるを得ない。

3.ロシアの東部攻勢で都市が野原に
【記事要旨】
住民が地下室に集まっているウクライナ東部の都市アヴディウカでは、砲撃が止むことは無かった。
1 年以上前に始まったロシアの攻撃は、ここ数週間でエスカレートした。ジャーナリストの訪問が許され訪れた NY Timesの記者が見つけたのは荒れ地だった。
戦前の人口 30,000 人のうち、アヴディウカには数百人しか住んでいないという。
その他の進展:
国連の核監視機関の責任者は、ロシア軍が管理するザポリージャ原子力発電所の安全上のリスクについて警告を発した。
ウクライナと国境を接するロシアの緊密な同盟国であるベラルーシ外務省は、ロシアの核兵器を保有する意思があると述べた。
国際オリンピック委員会は、ロシアとベラルーシの選手が2024年のオリンピックに出場できるかどうかについて決定を下すことを拒否した。

【コメント】

「国破れて山河あり」とは「都市は破壊され荒地あり」だったかと思う。

その他:
EV生産に関する日米合意
The U.S. and Japan reached a trade deal over minerals used to make electric vehicle batteries.
ミャンマーで政党解散
The junta in Myanmar dissolved the political party led by the ousted leader Aung San Suu Kyi, The Associated Press reports.
AIが仕事を奪うか
ChatGPT is worrying some workers who wonder if A.I. will take their jobs.

2023年3月29日 水曜日