世界の動き 2023年6月27日 火曜日

今日の言葉:
「灰色のサイ」
 動物を使った面白い表現がある。一番有名なのは「ブラックスワン」だろう。従来、すべてのスワン(白鳥)は白色と信じられていたが、17世紀後半にオーストラリアで黒いスワンが発見されたことにより、その常識が大きく覆された事例に因んでいる。市場において、これまでの知識や経験からは事前にはほとんど予想できず、起こりえないと思われていた事柄が現実に起きたときの衝撃が大きく、人々に多大な影響を与えるという意味の言葉だ。
 さて、「灰色のサイ」は、誰でも知っている大きなサイについての表現だ。将来大きな問題を引き起こす可能性が高いにもかかわらず、現時点で軽視されがちな潜在的リスクを示す。 体は大きくても普段はおとなしいサイが、いったん暴走し始めると誰も手を付けられなくなることに由来する。
 中国共産党下の「環球時報」でプリゴジンの乱を「灰色のサイ」に例えているので紹介した次第だ。中国共産党は今回の事態を冷静に分析しているようだ。

ニューヨークタイムズ記事より
1.プーチン大統領が反乱について言及
【記事要旨】
 プーチン大統領は昨日の短いテレビ演説で、プリゴジン率いるワーグナー傭兵集団による週末の反乱について言及した。
 プーチン大統領は、反乱を「脅迫」と非難し、「ロシア社会全体が団結し、全員を結集させた」と主張し、明らかに怒っているようだった。 彼はプリゴジンの名前には言及しなかった。
 「彼らは前線やウクライナの反攻での失敗に対する復讐を夢見て手をこすり合わせ、ロシア人同士が戦うのを望んだ」とプーチンは語った。
 その日の早朝、プリゴジンも土曜日以来初めて公の場で発言した。
「私たちは抗議活動を示すために行ったのであって、国内政府を転覆させるために行ったわけではない」とプリゴジンは語った。 現在、ワーグナーグループの将来は不透明であり、プリゴジンは依然として告訴される可能性がある。
 この反乱はプーチン大統領の23年間の統治の中で最も劇的な挑戦であり、長期的には彼の権力を損なう可能性がある。
 ウクライナ指導者らは、ロシアの混乱に乗じたいと考えているが 反撃は止まりつつある。指導者らは忍耐を呼び掛けており、本格的な攻撃はまだだとしている。
【コメント】
 昨日はやくざの世界での動きに例えたが、プリゴジン若頭の処遇をプーチン親分は決めかねているようだ。

2.パキスタン軍での弾圧
【記事要旨】
 パキスタン軍は、イムラン・カーン元首相を支持する最近の抗議活動中の行為を巡り、上級司令官3名を解雇し、幹部15名を懲戒処分とした。これは軍が自軍に対してここ数十年で取った中で最も強力な行動だ。
 これは、カーン氏への支持は軍内で容認されないというメッセージを送った。 この処罰はまた、カーン氏への支持を打ち消すために軍がますます強力な手段を用いることを強調した。
 先月、カーン氏が汚職容疑で一時逮捕された後、暴力的なデモが勃発したが、カーン氏は容疑を否認していた。 軍報道官は、懲戒処分を受けていた軍関係者らがデモ参加者の攻撃から軍事施設を確保できなかったと述べた。
 抗議活動以来、カーン氏の支持者のうち少なくとも5,000人が逮捕された。 軍報道官は少なくとも102人が軍事法廷で裁判を受けると発表したが、これは人権団体から広範な批判を招いている。
【コメント】
 パキスタンでも政情不安が起きているが、この辺の報道は日本ではほとんどない。核大国であるパキスタンの動向は日本にも無縁ではないので注視する必要がある。

3.米中関係が融資を複雑化
【記事要旨】
 中・低所得国は、長年の低金利で借り入れが増え、返済不可能な債務に苦しんでいるが、中国と米国の対立により、時間通りに救援を受けることが困難になっている。
 何十年もの間、IMFは、資金援助の条件として緊縮財政を要求してきたが、近年、中国は世界中の発展途上国に対する緩い貸出条件での主要な貸し手として台頭しており、貸出条件の厳しい融資に対する需要は減少している。
 IMFとその最も影響力のある参加国である米国は、中国の金融機関が参加する以前に債務ストレス国に救済を与えることに二の足を踏んでいる。 そうでなければ、中国の金融機関は他社が延長した債務免除にただ乗りしていることになるからだ。 しかし、中国政府はますます自己主張を強める一方で、西側に屈することを拒否している。
 その結果、ガーナ、エチオピア、パキスタンなどの国々は、それぞれが債務の増大に直面しているが、その多くは中国の国営金融機関に対するものであり、集中砲火に巻き込まれている。
 例えば、スリナムはIMFから低利融資を提供されているが、IMFは中国の債権者が5億4500万ドルの債権(スリナムが道路や住宅の建設に使っていた融資)を再編することを断固として要求した。 インフレが急上昇し、子供たちが飢えに陥る中、救済が遅れている。
【コメント】
 中国には無限に資金があるように見えるが、打ち出の小づちがあるわけでもあるまい。国内の経済回復と成長のために資金が必要だが、海外での条件の緩い貸し出しがいつまで継続できるか疑問だ。

その他:
ギリシャでの右派政党が勝利
 Kyriakos Mitsotakis, the leader of a conservative Greek party, was sworn in for a second term after a landslide victory. It’s another win for the right in Europe.
ウガンダでは太った人に金を貸す
 A study found that loan officers in Uganda were more likely to offer credit to heavier-looking people. In a place where food can be scarce, obesity can signal financial security.
中森康文さん(海外で有名ですね)
 Yasufumi Nakamori, a senior curator at the Tate Modern in London, will  become director of the Asia Society in New York.

2023年6月27日 火曜日