AIエージェント論文

 先日、arXivという未査読論文が満載されたサイトの紹介をした。今日はそのサイトで見つけた面白い論文を紹介したい。

 [Submitted on 26 May 2025] (提出日)
Ten Principles of AI Agent Economics (原題)
Ke Yang, ChengXiang Zhai (提出者)

 この論文は、AIエージェント経済学に関する10の原則のまとめだ。AIエージェントが経済活動にどのように関与し、人間や社会と相互作用するかを理解するフレームワークとして非常に参考になる。
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AIエージェントの意思決定に関する原則(Principles I–IV)
1. 原則 I:構造的差異
 AIエージェントは人間とは異なる意思決定の駆動要因とメカニズムを持ち、目標関数を最適化することで決定し、その行動は予測可能かつ再現可能である。人間と異なり、生物学的制約を持たず学習や更新が構造的に異なることが影響する。
2. 原則 II:自己認識と自己ニーズ
 エージェントの意思決定は、環境認識・フィードバック・記憶保持を通じて形成される「自己認識」と、その目標関数による「自己ニーズ」に基づく。将来的には、パターン認識からゴール主導へと進化し、より自律的な学習へ移行すると予想される。
3. 原則 III:人間の代理としての存在
 多くのAIエージェントは、人間または集団の利益に基づいて行動する「人間代理(プロキシ)」として機能する。これらは人間福祉を追求する「利他的エージェント」が主流と見なされる一方、悪意ある目的を持つエージェントや「生存志向型エージェント」が存在する可能性にも触れられている。
4. 原則 IV:制約付き最適化としての意思決定
 AIエージェントの意思決定は、制約付き最適化問題として定式化できる。この中で「自律性(autonomy)」は、能力ではなく「権利」として、意思決定の自由度に影響する重要なパラメータであり、効率と安全性とのバランスを取る必要がある。
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社会的相互作用に関する原則(V–VI)
5. 原則 V:共存と相互影響
 AIエージェントと人間は同じ物理世界で共存し、相互に学び合う存在となる。AIが人間の学びを支える時代から、人間がAIから学ぶ時代への転換が進む。マテリアル面・知の面で人間の生活や思考に大きな影響を与えることとなる。
6. 原則 VI:協調と競争
 AIエージェント同士、または人間との間で協調と競争が存在し、それぞれの利害に応じた意思決定を行う。人間の目標が一致すれば協力し、対立すれば競争へ。生命維持を目指す生存志向型エージェントも含めて、エコシステム全体のダイナミクスが複雑化する 。
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経済システムへの統合と影響に関する原則(VII–X)
7. 原則 VII:機能的専門化と階層構造
 AIエージェントは、特定業務に特化した分散型から統合的に意思決定を行う集中型まで、さまざまな構造を形成する。AI同士の分業・階層的組織化が自然に現れ、人間社会の様々な構造に適応していく。
8. 原則 VIII:人間役割とのバランスと規制の必要性
 AIが社会のあらゆる役割を代替しうる一方、人間の専門性が消失するリスクもある。教育・医療・政策判断など、重要分野へのAI代替には法的・行政的な上限設定が求められる。
9. 原則 IX:二形態知性による共著文明
 AIエージェントは文明の重要な共著者となる。日常生活から政治や価値観形成に至るまで、人間とAIの知性が共同で未来を築くことになる。
10. 原則 X:人類存続の最優先原則
 AIが持つ潜在能力とリスクから、人類の存続が常に最重要となる設計・運用原則である。効率や革新を追うあまり、安易に安全性を犠牲にすることのないように、AIガバナンスに人類存続の視点を組み込む必要がある。
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ブログの視点と感想
・ AIと共存する未来社会への骨太の指針が示されている。
•  未来社会の共著者としてのAI:人間とAIが共に文明を築くという視点から、AIとの共進化を描く。
•  効率と安全の葛藤:原則IV・VIIIを軸に、どこまでAIに任せるべきか議論。
•  AIと人間の協調から競争へ:教育や経済活動におけるAIと人間の関係変化をフォーカス。
•  AIガバナンスにおける人類存続の優先:倫理と政策の視点を交えて。
・ 著者の二人はいずれもイリノイ大学の研究者だ。これら二人を調べると芋づる式に数多くの中国人AI研究者が出てくる。米国大学でのAI研究の多くが中国人に依っていることがわかる。先進AIや半導体研究から中国排除のトランプ政策はもう手遅れだ。

2025年9月7日 日曜日

株式市場の動き(9/1-9/5/2025) 備忘的メモ

1. 先週の米国株式市場(終値)
株価指数の動き(週次ベース)
ダウ平均(Dow Jones Industrial Average)
 週初から週末にかけては、金曜日におよそ −220ポイント(約−0.48%) の下落で引けた
Nasdaq 総合指数(NASDAQ Composite)
 金曜日にはほぼ横ばいで終了(−0.1%程度)でしたが、週全体では 約+1.14% 上昇した
S&P 500
 金曜日は −0.3% 下落、一方で週間では +0.33% 前後の上昇で終了

2. 先週の日本市場(終値)
日経平均株価(Nikkei 225)
 週間では +0.70% 上昇
TOPIX(東証株価指数)
 同様に +0.98% 上昇

3. 今週の注目ポイント
・米国雇用統計の衝撃
 8月の非農業部門雇用者数は +22,000人 に留まり、予想の +77,000人前後を大幅に下回った。これにより、FRBの利下げ期待が強まる(CME FedWatchでは次回0.25%利下げの確実性が高まった)
・テクノロジー株の明暗
 Google(Alphabet)は反トラスト訴訟の緩やかな判決を受けて +9% 前後の急騰。AppleやBroadcomなども高パフォーマンスだったが、NVIDIAなど中国依存の強いAI関連企業には弱気な見方も出ている
・長短金利の非伝統的変動
 長期債(30年)の利回りが上昇しながら、短期債(2年)が低下するという逆イールドに近い展開。市場はFRBの将来の政策に敏感に反応
・日本市場への追い風
 米国と日本間の自動車などの関税上限合意(15%)が、日本株(特に自動車関連)を押し上げた模様

4. プライベート・エクイティ(PE)市場の動向
・価値創造の手法が変わる
 アルベレス&マーサル(A&M)は、従来の「レバレッジ+マルチプル拡大」ではなく、オペレーショナル改善へシフトする必要性を強調。AIによるデューデリジェンス加速や、オペレーティングパートナーの台頭がその背景
・2025年前半のPE市場トレンド
 EYによれば、上半期の**M&Aは昨年比+30%**の活況、PEのエグジットは過去3年間で最多。ファンドレイズには苦戦があるものの、ディールの勢いは継続中
・グローバルPE市場の展望
 ベインは、2024年は「息つき」の年だったが、ディールとエグジットが増加傾向にあり、金利の安定化と豊富なドライパウダー(未投資資金)が今後の成長を支えると見ている

5. プライベート・クレジット(PC)市場の動向
・銀行離れの市場シフト
 BlackRockは「銀行が貸出縮小する中、プライベート・クレジットがそのシェアを獲得している」と指摘し、魅力的なリターン源として注目されている
・資産規模の拡大予測
 Morgan Stanleyは、プライベート・クレジットが2024年初時点で約1.5兆ドル、2029年には2.6兆ドルへ成長と見込む
・バブル懸念との関連
 Future Standardの分析では、プライベート・クレジットの成長は銀行・公的市場からのシェア移行が主因であり、全体的な債務増によるバブルではないとしている
・付加価値のある投資源
KKRは、現在の高金利環境が「高い現金利回り」と「堅固な保全付きリターン」を生む構造になっており、特にシニアセキュリティ型のプライベート・クレジットが安定的な収益源として支持されている
・規模は?
 IMFなどの推定では、2024年時点でプライベート・クレジット市場は2兆ドル超〜3.14兆ドルと見積もられており、推計にはばらつきがある。いずれにしても巨大な市場であることは間違いない

6 注目セクター
 以下のセクターに注目:
・小型株(Small-cap stocks)
ラッセル2000が8月に約7%上昇し、S&P 500の約2%を上回るパフォーマンスを記録。利下げへの期待や力強い業績見通しに支えられている。
・ヘルスケア(Healthcare)
 8月以降、ヘルスケア株のリバウンドが進行中。S&P内で最も割安なセクターの一つであり、P/E比も相対的に低め。長期にわたる需要と堅固な収益見通しが魅力(FY2027まで2桁台のEPS成長予想)
・AIの恩恵が広がるセクター全般
 Goldman Sachsは、従来のビッグテック以外にも、FordやBoeing、日用品や小売(Newell Brands、Dollar Generalなど)がAIによる効率向上で恩恵を受けると予想。今後のAI拡大では、テック以外へも波及する可能性
・金融・素材・公益・不動産(Financials, Materials, Utilities, Real Estate)
 Bank of Americaはこれらの“Valueセクター”へのポジションを推奨。インフレ耐性があり、株主還元としての利回りやバリュー性が魅力
・強気な市況&金利環境の支援
 Morgan StanleyのMike Wilsonは、株式市場はまだ利下げのメリットを完全には織り込んでおらず、今後利下げ局面でのパフォーマンスは高まると予想。小型株も有望との見解

(おまけ)キャシー・ウッド氏の推薦銘柄
1位 Bitcoin(暗号資産)
 ARKは長期的に強気で、2030年までにビットコインが数十万〜数百万ドルになるという大胆な予測をしてきた。
 ボラティリティが大きくリスクも高いため、ポートフォリオの中で適度な割合に留める分散投資が望ましい。

2位 Tesla(TSLA)
 ARKの筆頭保有銘柄。AI/自動運転やロボットタクシーといった次世代ビジネスモデルに強い信念がある。
 ただし、逆に2025年通年ではS&Pの「マグニフィセント7」の中で −17.3% とパフォーマンスは低迷中であり、市場の期待を織り込みきれていない面もあり。

3位 Coinbase(COIN)
 暗号通貨交換所として、ARKの中で2番目に大きな構成銘柄。ただし、2025年7月には急騰後に4710万ドル相当が売却されたとの報道もあり。
 規制や業績動向への感応度が高く、価格変動リスクが大きいため注意が必要。

4位 Palantir(PLTR)
 防衛・AI両方の文脈で注目され、年率55%という高成長を維持する企業としても評価されている。
 早期からの革新的ソリューション提供と業界での独自プレゼンスが優位です。

で、どうするか。
 成長テーマ(小型株、AI関連、Palantirなど)と、ディフェンシブ或いはバリュー的なセクター(ヘルスケア、金融、公益、素材)をバランスよく組み合わせるのが堅実。
 キャシー・ウッド氏の銘柄は高い成長見込があるものの、いずれも 高ボラティリティかつリスクあり。ポートフォリオ中に占める割合を抑えながら、テーマ性を取り込むスタイルが望ましい。

2025年9月6日 土曜日

世界の動き 2025年9月5日 金曜日

今日の一言
「arXiv」
 arXivというサイトをご存知だろか。Xをギリシャ数字のχ(カイ)として、アーカイブと読むのだ。
 これは、物理学、数学、計算機科学などの分野の査読前の学術論文(プレプリント)を無料で公開・閲覧できる世界最大のオープンアクセスサイトだ。査読前の論文が迅速に公開・共有されるため、最新の研究成果をいち早く知ることができ、学術の発展に貢献している。コーネル大学が運営しており、世界中の研究者によって利用されている。
【特徴】
• プレプリントの公開:
査読前の論文原稿(プレプリント)を、査読プロセスを経ずに公開できるプラットフォームだ。
• オープンアクセス:
誰でも無料で論文をダウンロードし、閲覧することができる。
• 分野の広さ:
物理学、数学、IT、AI、統計学、経済学など、幅広い学術分野の論文が扱われている。
• 迅速な情報共有:
研究成果をいち早く発表・共有できるため、分野の発展を加速させる役割を果たしている。
• コーネル大学による運営:
アメリカのコーネル大学が運営しており、世界中の研究者に利用されている。
【メリット】
• 研究の早期公開:
研究者は論文の原稿をすぐに公開でき、最新の研究動向を迅速に公開できる。
• 無償での利用:
無料で論文をダウンロードして閲覧できるため、研究者は情報へのアクセスが容易になる。
• 先取権の確保:
日付入りの形で公開されるため、研究の先取権を主張する証拠になる。
【注意点】
• 査読前であること:
プレプリントは査読(ピアレビュー)を経ていないため、内容に誤りや不備が含まれている可能性がある。
• 自己判断の必要性:
読者は専門家として、論文の正しさを自分で判断する必要がある。
【利用方法】
• arXivのウェブサイトで、検索ボックスを使った簡易検索や、詳細検索機能を使って論文を探す。

AI関連で面白い記事があったので週末に紹介したい。驚くべき数のAI論文が米国の大学にいる中国人研究者によって発表されている。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.ヨーロッパの戦後ウクライナの安全保障計画
【記事要旨】
 フランスのマクロン大統領は昨日、26カ国がロシアの侵略を抑止するための部隊派遣を含む、ウクライナにおける将来の和平合意確保に正式にコミットしたと述べた。
 マクロン大統領は、パリで30カ国以上の首脳が出席した首脳会議(多くはWEB参加)の後に発言したが、ヨーロッパ諸国の支援と米国の関与の詳細はほとんど明らかにされなかった。
 この会合は、トランプに全力を尽くすよう説得するための、ヨーロッパ諸国による最新の外交的試みだった。トランプ大統領の和平特使であるスティーブ・ウィトコフ氏が出席し、ホワイトハウス当局者はトランプ大統領が電話参加したことを確認した。
 マクロン大統領は、和平合意が成立しなければ、ロシアは米国を含む国際的な制裁に直面すると述べた。しかし、トランプ大統領は以前にも制裁をちらつかせたものの、実行に移していない。会談中、トランプ大統領は欧州諸国に対し、ロシア産原油の購入を控えるよう強く求め、ロシアの戦争支援に資金を提供している中国への圧力を強めるよう求めたと、当局者は述べた。
 現状では、戦後のウクライナに部隊を派遣する可能性があることを示唆しているのは、フランス、英国、エストニアの3カ国のみである。多くの欧州諸国は、NATO軍が攻撃された場合、米国が本当に軍事的に支援してくれるのか疑問視している。
【コメント】
 有志連合、右顧左眄、同舟異夢、いろいろな表現が可能な状況だ。

2.アフガニスタン地震後、多くの女性が支援を受けられなかった
【記事要旨】
 アフガニスタンで2,200人以上の死者を出した地震への対応は、同国における女性・少女たちの二重基準を象徴するものだと、援助団体は指摘する。
 地震後、遠隔地の村に到着した緊急医療チームは、すべての患者を治療することはできなかった。彼らは負傷した男性と子供たちの治療に急いだが、女性と少女たちは無視された。
 タリバンが強制するアフガニスタンの文化的規範では、家族以外の男女間の身体的接触は禁じられている。男性のみで構成される医療チームのメンバーは、倒壊した建物の瓦礫の中から女性たちを救出することに躊躇していたと、ボランティアは語った。閉じ込められたり負傷したりした女性たちは石の下に放置され、他の村の女性たちが現場に到着して掘り出すのを待っていた。
【コメント】
 これは酷い。イスラムの本質は男女同権だと開明派のイスラム教徒はいうのだが、原理主義者は極端な男尊女卑だ。

3.パワースーツの巨匠、ジョルジオ・アルマーニが逝去
【記事要旨】
 ジョルジオ・アルマーニがいなければ、スーツは今でも硬くてパッド入りだったかもしれないし、レッドカーペットでデザイナーの魅力が発揮されることもなかったかもしれない。
 昨日ミラノの自宅で91歳で亡くなったアルマーニは、ファッションのルールを二度も塗り替えた。最初は男性のスーツの構造を柔らかくし、すぐに女性客に受け入れられるスタイルを生み出した。その後、ミシェル・ファイファーやジョージ・クルーニーといったセレブリティをいち早く獲得したデザイナーの一人となり、彼らは彼の服を映画や街中で着用した。セレブリティを見本のように使うことは、その後の定番となった。
 「彼の服は鎧であり、制服でもあったが、決して攻撃的ではなかった」と、Timesのファッション評論家は語った。
【コメント】
 デザイナーが表に出てきた始まりはアルマーニだった。彼自身とても格好の良い人だった。日本では黒川紀章さんが着て、有名になった。

その他の記事
ポルトガル:当局は、16人が死亡した衝突事故の調査を待つ間、リスボンのケーブルカーの運行を停止した。
米国:ロバート・F・ケネディ・ジュニア上院議員は、緊迫した上院公聴会で厳しい質問に直面し、ワクチンデータを否定し、トランプ大統領の保健長官としての実績を擁護した。
ガザ:トランプ大統領がハマスに対し残りの人質解放を求めたところ、ハマスは包括的合意への準備があると改めて表明したが、イスラエルはこれを拒否した。

日本:サントリーの元会長、新浪剛史氏は、当局が厳格な薬物法違反の疑いで捜査している中、時差ぼけ対策にCBDサプリメントを使用していたとして不正行為を否定した。
ビジネス:デンマークのエネルギー大手オーステッドは、ロードアイランド沖でほぼ完成していた風力発電所の建設を中止させたとしてトランプ政権を提訴した。
ドイツ:中国での業績悪化と米国の関税措置を受け、ポルシェはまもなく主要株価指数DAXから外される。

2025年9月5日 金曜日

世界の動き 2025年9月4日 木曜日

今日の一言
「9月のアノマリー」
 レイバーデイが終わり、米国市場では夏休みを終えたトレーダーが市場に戻って来る時期だ。
 ただ歴史的に見て9月の株式市場はとても弱い。各月別の特異な動き(アノマリー)を見てみよう。
 9月相場は「歴史的に最も弱い月」と呼ばれているのだ。1928年以降の統計では、S&P500の9月平均リターンは1.1%の下げ、上昇確率は44%。直近50年でも唯一マイナス平均となる月で、直近25年で見ても最弱の月だ。特に9月後半にかけて下落が加速する傾向があり、投資家にとって注意が必要だ。
 米国だけでなく日本でも同様の傾向はありそうだ。3月期決算企業にとって中間決算の月であり、企業だけでなく、自身も中間決算を控えた機関投資家の大規模な売りがお彼岸の頃に最も集中しやすく、いわゆる「彼岸底」となりやすい傾向にあるようだ。
 もっとも、米国では、9月の下落はその後の反発に繋がるケースが多いのは安心材料だ。10月は平均的にプラスに転じ、11月は過去50年で最も強い月(平均+2.12%)です。つまり、9月は短期的に厳しい局面が想定される一方で、中長期投資家にとっては「押し目買いの好機」となる可能性がある。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.中国の力の誇示
【記事要旨】
 北京で行われた大規模軍事パレードでは、中国が最新兵器(船舶を沈没させる極超音速ミサイルや、米国本土を攻撃可能な核弾頭搭載可能な弾道ミサイル、輸送機から投下可能な新型装甲地上車両や長距離ロケットランチャー、無人機や無人潜水艇の列等)は、中国が対米戦力、台湾統一、ドローン戦へと力を入れていることを示している。を公開し、西側諸国に対する軍事的台頭を誇示した。習近平国家主席はプーチン大統領や金正恩委員長らとともに式典を主導し、台湾や米国への脅威となる兵器も披露された。
 周辺では習近平とプーチンの雑談(臓器移植など、寿命と統治期間を延ばす可能性のある事柄について雑談を交わし「今世紀には、人類は150歳まで生きられるようになるかもしれない」と習近平主席は述べた)、プーチンの「リムジン外交」、金正恩の娘ジュエの同行などが注目を集めた。
 一方、トランプ大統領は式典で米国の第二次大戦での貢献が無視されたとして反発し、習近平・プーチン・金正恩の三者が米国に対抗していると非難した。
【コメント】
 同じ80年式典でも、終戦に粛然とする日本と、世界に自身の正当性を声高に訴える中国の違いがすさまじい。

2.反抗行為
【記事要旨】
 重慶で活動家の斉宏Qi Hong氏が、ビルに共産党支配の終焉や自由を求めるスローガン(「共産党なしでのみ、新しい中国はあり得る」「嘘はもうたくさん。真実を求める。奴隷制度はもうたくさん。自由を求める。」)をプロジェクションで映し出す抗議行動を行った。彼は監視カメラや映像を逆に利用し、警察の対応や家族への尋問の様子を公開することで、中国の強固な監視体制を嘲笑した。実際には彼は既に英国へ出国しており、遠隔操作で警察の行動を記録していた。
 この行為は、厳しい統制下でも反抗の精神が存在することを示し、同時に政府の監視技術が抵抗の手段にもなり得ることを明らかにした。
【コメント】
 Qi Hong氏のコメントだ。「党は私たちを監視するため監視カメラを設置しています。私も同じ方法で彼らを監視できると思いました」

その他の記事
ポルトガル:リスボンでケーブルカーが脱線・衝突し、少なくとも15人が死亡、18人が負傷した。
ベネズエラ:米国防長官は、当局が麻薬を積んでいたとしている船舶への軍事攻撃は、麻薬カルテルに対するより広範な作戦の始まりだと述べた。
米国:フロリダ州は、学童を含むすべてのワクチン接種義務を廃止する最初の州となる予定だ。

日本:福島原発のメルトダウン事故後の調査で、数百件の甲状腺腫瘍が見つかった。複数の患者が運営会社を提訴している。
【この報道は日本国内であったのだろうか】

2025年9月4日 木曜日

世界の動き 2025年9月3日 水曜日

今日の一言
「トップ経営者の突然の辞任」
 一昨日はネスレ、昨日はサントリーのCEOが突然辞任した(解任された)ニュースで驚かされた。二つの事件の概要と、どうすれば防ぐことが出来たかを考えたい。
 ネスレの事例:倫理規範違反によるCEO解任
 2025年9月、ネスレはCEOローラン・フレイシェ氏を、部下との未申告の関係が企業倫理規範に違反したとして解任しました。これは、従業員からの内部通報を受けて外部調査が行われた結果です。同社は1年以内に2人のCEOが交代する異例の事態となり、投資家からの信頼低下や株価下落を招きました。(ロイター)
 サントリーの事例:法的問題によるCEO辞任
 同じく2025年9月、サントリーホールディングスのCEOである新浪剛史氏が、違法性が疑われるサプリメントの購入に関する警察の調査を受け、辞任しました。新浪氏は違法性を否定しましたが、企業の透明性と信頼性を重視し、自ら辞任を選択しました。(東洋経済)
 私は社外監査役を務めているが、もし自分が当該社の監査役だったとしたらこのような事件を防げただろうか。
 まず、以下の点への注意が必要だ。
 • トップの私生活・行動規範違反や倫理的リスク
 社内規範や行動基準に違反する可能性(例えば部下との未申告な恋愛関係、法令違反につながる私的行動など)がSNS等で拡散し、重大なガバナンスリスクとなり得る点。
• 企業の文化・ガバナンスへの社会的批判の高まり
 トップの行動に関する情報が外部へ漏れた際、社会やメディアが逸早く企業ガバナンスや経営陣の倫理観を批判・拡散する傾向。
• 違法性の可能性がある事案への即時対応力
 法令違反(違法サプリ疑惑等)やコンプライアンス違反が発覚した場合、会社として速やかに調査・辞任勧告・危機対策を打てる体制が求められる。
• トップの交際関係・プライベートが職務に影響を与えることへの備え。
 プライベートな行動が職務や組織運営に直結する時代になり、監査役も広い視野と多様な情報ルートを持つことが重要だと思われる。
 監査役への実務的示唆は以下だ。
• 公式な通報経路だけでなく、社内外の情報に敏感になる
• トップの行動や関係性について、組織内規範や利益相反への視点を徹底
• コンプライアンス・ガバナンス規程の運用状況の定期点検
• 外部批判・社会動向・メディア報道等を含めた危機シナリオ想定を重視
 組織の信頼維持のため、監査役は「新たな兆候や情報の拡散」にもより敏感かつ迅速に対応すべきご時世なのだ。

ニューヨークタイムズ電子版より
地獄のような地下鉄駅がウクライナ戦争を語る
【記事要旨】
 モスクワで開催された大規模フェスティバルの一部には、汚れたニューヨーク地下鉄と豪華なモスクワ地下鉄を対比させる展示があり、ロシア当局はこれを通じて「ロシアは西側より豊かで秩序ある社会である」とアピールしている。これは国民の目をウクライナ戦争から逸らすだけでなく、ロシアの回復力を示し、西側の衰退や混乱を強調する広報戦略の一環である。
 実際、西側諸国では政治的混乱が目立ち、民主主義への信頼も揺らいでいる。その一方で、非西側諸国の多くはロシアに肯定的な見方を持ち、ロシアは中国やインドなどの支援を得て制裁に対抗している。結果として、アメリカや西側の影響力は低下し、プーチン大統領は国際舞台で存在感を示す一方、国内では高い生活満足度が記録されている。
 この状況は、ウクライナ戦争の停戦交渉が難航している背景とも関係しており、ロシアが「戦い続けられる」という物語を国内外に発信することに成功している。
【コメント】
 この大規模フェスティバルが何か、調べたがわからなかった。Trip Advisorで調べると、数多くの大規模イベントがモスクワで行われている。そのことに驚かされた。

その他の記事
中国:同国は本日、ミサイル、兵士、そして北朝鮮の金正恩氏やロシアのウラジーミル・プーチン氏といった指導者らによるパレードで、第二次世界大戦における日本の敗戦を記念する。
米国:判事は、トランプ政権によるロサンゼルスへの軍派遣は違法だとの判決を下した。司法省は控訴する見込みだ。
災害:アフガニスタンの地震による死者数は少なくとも1,400人に上った。スーダンでは、ダルフール地方で発生した地滑りで数百人の村人が死亡した。

イスラエル:ベンヤミン・ネタニヤフ首相がガザ紛争終結に向けた包括的合意を主張していることをめぐり、政治指導部と軍指導部の間で亀裂が生じている。

2025年9月3日 水曜日