上場企業の会計不正の動向

日本会計士協会が例年の「上場会社等における会計不正の動向」(2025年版)を7月24日に公表している。

日経新聞が記事にしているのでそれを参考に会計不正について考えたい。

(日経記事より)・・・・・・・・・・
上場企業の会計不正が増えている。2024年度(25年4月16日までの約1年間)に公表したのは56社と前の年度より24%増え、過去10年間で最多となった。ガバナンス(企業統治)改革によりあぶり出される例が目立つ。日本の資本市場に対する投資家の信頼を損ないかねず、一段の統治改革が欠かせない。
日本公認会計士協会が24日発表した。同協会は財務諸表に意図的な虚偽表示をする「粉飾決算」と、企業の資産を経営者や従業員が私的に使う「資産の流用」を会計不正と定義しており、調査報告書などで判明した事案を集計した。会計不正を公表した上場企業は4年連続で増えた。・・・・・・・・

不正が見つかるのは「内部統制」と内部者・外部者からの「タレコミ」による。日本版JSOXの導入から始まった日本の内部統制整備の動きが少しは役に立ったということだろうか。社内で、不正についての問題意識が共有されない場合、不正を経営層が握りつぶしたり、経営層が不正を主導している場合には、タレコミによる発見が多くなる。

内部統制の強化では、会計監査人、監査役(監査等委員)、内部監査による三様監査の強化が効果的だ。企業に「企業理念」がある場合は、それと見比べて現在の経営は理念に沿ったものになっているかどうか、年に一度は見比べるのも役に立つ。

最近は情報技術の進化で、常時、会計の動きが把握できるようになった。生成AIを使って会計の異常を常時検証できるようになった。

(日経記事より)・・・・・・・・・・
会計不正を早期に発見する上で期待されるのが人工知能(AI)の活用だ。大手会計事務所は不正リスク対応への活用を進めている。KPMGジャパンは財務データやテキストデータを使い異常取引などを検知するサービスを始めた。あずさ監査法人の神保桂一郎パートナーは「AIを活用すれば全ての会計処理を精査できる。会計不正をけん制する効果がある」と話す。・・・・・・・・・・

粉飾や不正が起こりやすいのは「プロフェッショナルな判断(professional judgement)」が必要な状況だ。会計分野では、専門的な知識や経験に基づいて、状況を評価し、適切な会計処理や開示を行うことを指す。収入と支出の認識時期や、資産と負債の実在性や評価等が代表的だが、明確なルールがない場合や、複数の解釈が可能で、どちらの選択肢も妥当な場合に特に重要になる。

AIもここまで役に立てる状況には未だ至っていないようだ。内部統制のプロの腕の見せ所だ。

2025年7月26日 土曜日