標記についての言及箇所を、備忘録的メモとして作成する
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山野辺 克明 (以下「山野辺氏」)
2009 年 3 月~2014 年 3 月 顧客相談室課長
2014 年 3 月~2018 年 1 月 総務部副部長
2018 年 2 月~2020 年 5 月 監査部長
2020 年 5 月~現在 事務管理部長
2020 年 6 月~現在 常勤理事
職員d 氏
2007 年 7 月頃~2011 年 9 月頃
X1 社グループ専任担当者
2011 年 9 月~2014 年 3 月 郷ヶ丘支店長
2014 年 3 月~2016 年 2 月 審査部課長
2016 年 2 月~2017 年 3 月 審査部副部長
2017 年 3 月~2020 年 2 月 融資部副部長
2020 年 2 月~2024 年 1 月 融資部長
2024 年 1 月~現在 監査部長
三事案の公表前に監査部長の d 氏が全営業店を回り本件無断借名融資に係る資料を回収したとの情報提
供があったことから、念のため防犯カメラ映像をチェックして事実関係の確認を行ったが、公表前に同人
が上記 3 店舗に来訪した映像は確認できなかった。
本部各部署の主な職務分掌は、以下のとおりである。
① 監査部
監査計画の立案、監査の実施、店内監査の指示及び統括
事故防止及び事後処理
監督官庁等検査受検の統括、監督官庁等検査示達書に対する回答
コンプライアンスの統括
反社会的勢力との取引管理、マネー・ローンダリング等対策、反社会的勢力対応(不当要求、警察等外部機関対応等)
不祥事件等の調査・解明及び行政庁への報告
なお、コンプライアンス部門は、遅くとも 2021 年 7 月末以降は監査部の一部門と位置付けられていたが、2017 年 7 月末時点では総務部の一部門に位置付けられ、2018 年 7 月末時点では総務部から監査部に異動し、さらに 2020 年 7 月末時点では監査部から事務管理部に異動している。これは、当組合の当時の実態として、不祥事件対応や当局対応等のコンプライアンス関連事項については、特定の部署というよりは特定の職員(山野辺氏。2020 年 6 月半ばまでは当組合職員)がその多くを担当しており、同人の部署異動に連動してコンプライアンス部門も異動したことによるものである。
内部監査体制
当組合においては、監査部長が年次監査計画を立案し、理事長の承認を得た上で定例監査(臨店監査)を実施している。定例監査の実施に当たっては、被監査
営業店、監査基準日、監査日程、監査方法等を定めた監査実施計画を別途策定し、理事長に報告する。
定例監査は、各営業店及び本部各部署に対して年 1 回実施され、前回の定例監査の監査基準日の翌日から今回の定例監査の基準日までの間に実行された新規融
資案件については、全件について監査を実施する運用となっている。原則として、監査終了日の翌日に監査講評を実施する。
融資案件の債権書類の監査担当者は、原則として監査部職員2名程度であり、必要な書類の徴求漏れはないか、債権書類・契約書類の不備はないか等をチェッ
クする。
そのような中で、2024 年 12 月 4 日 11 時から、当委員会は、理事長本多氏、常務理事矢吹氏、常勤理事山野辺氏との間で、内部調査状況の説明を受けるためのミーティングを実施した。この場において融資額 1000 万円~5000 万円の全貸付債権書類の監査(「余罪調査」)の実施状況について確認したところ、本多氏は、1000 万円から 5000 万円の融資の全件チェックを進めているが、監査機構の監査や当局への報告対応に時間を要しており、人員の制限や顧客対応の優先により、進展が遅れている(内部調査の本格的な着手は 11 月 20 日頃からであった)と説明した。これを受けて当委員会は、調査内容の詳細や進捗状況について調査担当である監査部から直接に状況説明を受けることとした。
これを受けて、12 月 5 日 13 時より、当委員会は監査部長の d 氏との打ち合わせを実施した。その際に d 氏は、調査対象となる融資のリスト抽出(不正の疑いの乏しい制度資金等の類型を除外する)は行ったものの、それを対象として実際に店舗にある債権書類の確認作業(印鑑証明書が付されているかを中心に確認する)は完了していない(実施していない)と説明した。
ところが、その直後に当組合の常勤理事の山野辺氏より内部調査の状況について再度説明を行いたいとの申し出があり、翌日 12 月 6 日 14 時 30 分から、d 氏に加えて山野辺氏が出席して説明が行われた。その際に当組合は、①1000 万~5000 万円の残高がある現在の債権について印鑑証明書の有無については全て調査完了した、②2322 件(手形+証貸)について、87 件を除き印鑑証明書が全てあることが確認された、③実際の調査は 11 月 22 日から 12 月 4 日にかけて、監査部の職員 3 名が手分けして臨店して確認しており、臨店調査は終了していると説明した。また、そのような調査を行った際に印鑑証明書の有無を確認するためにチェック表を利用したとの説明であったことから、当委員会からは当該チェック表を提供するよう求めた。
その後、当組合からは調査時にチェックをするために利用した資料として「10M⇒50M チェック表(d 氏の検証)」とのファイル名の Excel ファイルが提供さ
れたが、当該ファイルの「作成日時」は「2024 年 12 月 6 日 15 時 31 分」、作成者は「0613」と表示されていた。「0613」は常勤監事の坂本氏のアカウント名である。
また、12 月 9 日には、監査部職員が臨店検査の際に実際にチェックしながら作成した資料であるとして、顧客ごとに確認日、確認者、印鑑証明の有無等をチェックしたリストも提供された。
当委員会としては、12 月 4 日及び 5 日に内部調査は完了していないと説明を受けたにもかかわらず突如として 12 月 6 日になって調査は完了したと説明を受けたことからその信憑性に疑問を持ったほか、提供されたチェック資料である Excel ファイルが 12 月 6 日の打ち合わせにおいてチェック資料の提出を求めた直後に作成されたと思われることからしても、調査完了という説明には信用性がないのではないかとの疑いを深めることとなった。
その後、12 月 11 日に本件アンケート趣旨説明会が開催され、当委員会から役職員に対してアンケートの趣旨をオンラインで説明する機会が設けられた。この際、当委員会からは複数の営業店の支店長に対して、実際に監査部による債権書類の確認作業があったのか、あったとすればいつ臨店があったのかを確認する質問を行った。そうしたところ、複数の支店長より、監査部職員による臨店があったとの説明がなされるとともに、その日付に関する回答がなされた。当委員会としては、臨店の日付に関してまで即答する支店長が複数いたことを不自然に感じつつも、臨店検査に関する説明内容の信憑性については継続して検討を進めることとした。
その後当委員会には d 氏が作成して各支店長に送付したとする依頼文(「第三者委員会に関連した調査に対するお願い」と題するもの)が提供されたが、その内容は以下のようなものであった。
① 迂回融資の該当債権とされる債権以外に疑わしい債権の有無について、当組合による内部確認調査が必要であることを第三者委員会より受けて、不祥事の公表
(R6.ll.15) 以降、監査部が貴店を臨店し、全債務者の印鑑証明書の有無について確認作業を終えていることを 12/6 に第三者委へ山野辺部長と d 氏が同席の上、
伝えた
② 別紙の監査部員が担当する営業店に公表日以降、確認調査に臨店し、監査部員の要請により、支店長から融資担当者へ指示し、順次、債権書類を監査部員と受け渡しをおこない監査部員が確認作業をすすめたことでお願いしたい
③ 万一、第三者委員会から営業店支店長又は融資担当役席者がヒアリングを受けることがあった場合、「確認調査をおこなったというシナリオにする」ということ
で代表理事のなかで合意した話である
④ 本文書は速やかに破棄してもらいたい
また、上述したとおり、12 月 9 日には、監査部職員が臨店検査の際に作成した資料であるとして、顧客ごとに確認日、確認者、印鑑証明の有無等をチェックしたリストが提供されたが、本調査によれば、当該チェック資料が事実に反して作成される作業に、山野辺氏が関与していたのではないかと推測される供述も得られている。
内部監査における発覚防止措置
無断借名融資が発覚することのないように、内部監査においても発覚防止措置がとられていた。当組合では、概ね 2 名の監査部担当者により各支店にある債権書類の監査が行われていたが、監査担当者となる者に対しては、無断借名融資に係る債権については監査で指摘を行わないよう前任者からの引き継ぎ又は役員からの指示がなされていたことが確認された。この結果、印鑑証明書が添付されていなかったり、担保が設定されていなかったりするような不備があり、通常の内部監査であれば指摘すべき対象となる問題点がある融資についても指摘せずに意図的に見逃すという取り扱いが継続的に行われていた。
また、前任者の引き継ぎや役員の指示がなかった場合であっても、監査担当者が特定の債権の不備について支店長に確認した際に、上層部からの指示により実行している融資であることが告げられ、それ以上に内部監査手続において不備のあることを指摘することができなかったという事案も確認された。
以上のような取り扱いのために、現在に至るまで無断借名融資に係る債権について内部監査で指摘されたり、それに基づいて無断借名融資の存在が公になったりすることはなかった。
また、Y 氏の横領発覚を受けて、職員による横領の発生を防止するための体制整備や体制の改善等がなされた形跡は伺われなかった。なお、2014 年 2 月頃には定期預金等を顧客から預かる場合の預り証交付の徹底や自店検査・監査部監査の検証徹底等の改善措置が取られているが、これは Y 氏の横領発覚を受けての対応ではなく、別件の g 氏の横領発覚を受けての対応に過ぎない。
2 回目の横領発覚時期、経緯
2014 年 9 月末に当組合の仮決算を控える中、同月初め、本部において q 氏(当時、総務部課長)が、β 支店諸勘定(本件貸引勘定)についてイレギュラーな動き
(異常取引)があることを発見した。q 氏は、当時所属していた総務部の上席であった坪井氏(当時、総務部長)及び山野辺氏(当時、総務部副部長)にこの件を
報告した。
当該報告は猪狩氏(当時、監査部長)に上げられ、Y 氏による昨年の横領があったことから、猪狩氏から山野辺氏に対し、再度、Y 氏による横領の可能性を含めて
調査するよう指示が出された。
山野辺氏に置いて、1 回目の横領調査時と同様に Y 市へのヒアリングを実施したところ、Y 氏が 2 回目の横領に及んだことを認めたことから再度の横領が発覚した。
監査部担当者による内部監査では、監査担当者への事前の指示に基づいて、印鑑証明書が添付されていないといった不備のある無断借名融資の債権書類を監査した場合にも、意図的に指摘せずに見逃すという取扱いが行われていた。
融資部、監査部、コンプライアンス委員会による監督の不全
しかしながら、甲事案においては、常勤監事や融資部、監査部、コンプライアンス委員会など、本来は不祥事案を防止し、あるいは早期に発見するために機能すべき部門の構成員が不正行為そのものに関与しており、また隠蔽にも積極的であったことから、監督体制が機能することはなかった。乙事案及び丙事案においても、一部の役員がこれを積極的に隠蔽したことから、監事や監査部、コンプライアンス委員会など、内部組織から不祥事案を是正する機能が果たされなかった。これらのことから、三事案のいずれにおいても、内部統制システム、監督体制の全てが機能していなかったといえる。
内部監査の機能不全
監査部による内部監査においても債権書類を確認する担当は特定の職員に限定されており、その者が不正を黙認していた。また、監査部長はそれ以前から不正行為
に関与している者が代々就任していた。そのため、本来独立性が担保されるべき監査部が機能しなかったものである。
このように、甲事案においては、経営の中心となる代表理事が積極的に不正を主導し、その他の役員もこれに積極的に関与しており、本来であれば不正行為を
監督して是正すべき融資部、監査部等も、不正の隠蔽に積極的に関与しており、もはや当組合の内部統制システムは全く機能しない状況にあったと言わざるを得ない。したがって、甲事案のような不祥事案を未然に防止するためには、全役職員のコンプライアンス意識の向上は当然として、実効性ある内部統制システムを構築するとともに、当組合の外部からの監督を効果的に行うことが必要不可欠である。
乙事案及び丙事案は、元の事案自体は特定職員による不正行為であり、一般の職員はその権限も限られていることから、不正行為が実現可能な環境がなければ、その発生を未然に防止することは十分可能である。したがって、乙事案及び丙事案の様な事案の再発防止という観点では、そもそも不正行為が行われないような体制整備を行うことが有効であると考えられる。もちろん、監査部等の内部監査部門による内部統制が実効的に行われることにより、不正行為の防止だけでなく早期発見も可能であるし、甲事案と同様に、外部からの監督機能を強化することも有効な手立てである。
具体的には、常勤の員外監事を新たに選任して監視機能を高めることが期待される。加えて、新たに選任された常勤の員外監事が監視機能を適切かつ十分に発揮できるよう、員内監事及び監査部等との密な情報共有による連携の強化、当組合の一切のデータ及び資料類へのアクセス権の保障、適切な資料提供等が行われる必要がある
監査部の組織上の位置付け
当組合の監査部は、当組合の全ての業務及び連結対象子会社の業務を監査対象とするとされており、その組織上の位置付けについては、理事長直属の部署とされている(監査規程 2 条、3 条)。
そのため、監査の実施により事故等が判明した場合の報告先は理事長とされており(監査規程 14 条)、また監査報告書の提出先も理事長とされている(監査規程 17条 1 項)。さらに、監査部長は、監査結果を定期的に常務会に報告し(監査規程 17条 2 項)、また理事長は、監査結果を定期的に理事会に報告することとされているが(同条 3 項)、「経営に重大な影響を与えると認められる問題点が発見された場合」についても「速やかに理事会に報告する」とされていて、監査部長から直接監事への報告義務は規定されていない。
監事に期待される役割に鑑みれば、監査部が把握した当組合業務に関する問題点については、可及的速やかに監事にも共有すべきであり、特に甲事案のような役員主導の不祥事案に対して員外監事の監督機能を強化するためには、そのような組織内の連携は不可欠であると思われる。
したがって、監査部と監事との連携方法を新たに構築することを検討すべきである。
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歴代の監査部長が甲案件にずっぽりと漬かっている状況がよくわかる。
・三様監査の実質的な連携を図り効力を高める。
・監査部長の報告を理事長と監事のダブルレポーティングラインにする。
・員外監事に経験豊富な剛腕の者を登用する。
と言ったような、標準的な打ち手でも、監査体制と内部統制は改善されそうだ。
2025年6月1日 日曜日