いわき信用組合が5月30日に公表した第三者委員会報告での「内部監査」についての記載を見てみる。備忘録的メモ
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内部監査体制
当組合においては、監査部長が年次監査計画を立案し、理事長の承認を得た上で定例監査(臨店監査)を実施している。定例監査の実施に当たっては、被監査
営業店、監査基準日、監査日程、監査方法等を定めた監査実施計画を別途策定し、理事長に報告する。
定例監査は、各営業店及び本部各部署に対して年 1 回実施され、前回の定例監査の監査基準日の翌日から今回の定例監査の基準日までの間に実行された新規融
資案件については、全件について監査を実施する運用となっている。
原則として、監査終了日の翌日に監査講評を実施する。
融資案件の債権書類の監査担当者は、原則として監査部職員2名程度であり、必要な書類の徴求漏れはないか、債権書類・契約書類の不備はないか等をチェッ
クする。
内部監査における発覚防止措置
無断借名融資が発覚することのないように、内部監査においても発覚防止措置がとられていた。当組合では、概ね 2 名の監査部担当者により各支店にある債権書類の監査が行われていたが、監査担当者となる者に対しては、無断借名融資に係る債権については監査で指摘を行わないよう前任者からの引き継ぎ又は役員からの指示がなされていたことが確認された。この結果、印鑑証明書が添付されていなかったり、担保が設定されていなかったりするような不備があり、通常の内部監査であれば指摘すべき対象となる問題点がある融資についても指摘せずに意図的に見逃すという取り扱いが継続的に行われていた。
また、前任者の引き継ぎや役員の指示がなかった場合であっても、監査担当者が特定の債権の不備について支店長に確認した際に、上層部からの指示により実行している融資であることが告げられ、それ以上に内部監査手続において不備のあることを指摘することができなかったという事案も確認された。
以上のような取り扱いのために、現在に至るまで無断借名融資に係る債権について内部監査で指摘されたり、それに基づいて無断借名融資の存在が公になったりすることはなかった。
、個人ローンを利用した横領の比率は、融資実行額ベースで見ても全体の 5%未満に過ぎなかったが、後述の預金担保付手形貸付を利用した横領行為と比較した場合、本人確認書類控え等の必要書類自体は一通り全て揃えることが可能であったため、万が一、内部監査等で検査対象になったとしても不正融資と判断される可能性が低いと考え、若干ではあるが横領手口の 1 つとして利用した。また、当該手法の実行時期が比較的早期であること及び 1 件当たりの金額が僅少であることからすると、不正のファーストステップとして利用さ
れ、その後より大胆かつ高額の手口に発展していったものと考えられる。
隠蔽措置への関与
無断借名融資に関する期日案内通知については管理担当役員による抜き取りが行われており、期日案内通知を送付することを担当していた事務管理部としても、そ
のような抜き取りが行われていることは認識していたものと考えられる。
また、預金担保付きの無断借名融資の中には、担保となる定期預金証書が偽造されていた事例が確認されており、指示を受けて定期預金証書を偽造する作業を実施していた役職員が存在した。
監査部担当者による内部監査では、監査担当者への事前の指示に基づいて、印鑑証明書が添付されていないといった不備のある無断借名融資の債権書類を監査した場合にも、意図的に指摘せずに見逃すという取扱いが行われていた。
小括
以上のとおり、本件不正融資の方針決定には当時の代表理事、その他の常勤理事及び常勤監事、X1 社グループへの出向者が深く関与していたほか、無断借名融資の実行及び管理に関しては、名義を提供した役職員、営業店の支店長及び融資担当者、本部の審査担当者、内部監査担当者、償却に関わる自己査定担当者など、より広範囲の役職員が関与していたと認められる。 そして、本件不正融資が長期間にわたり多数実行されていたことから、結果として多数の役職員がこれに関与することとなった。
また、そのようなために、直接的に本件不正融資の方針決定や実行及び管理手続に関与しておらず、また、詳細な手口や内容を正確には認識していないとしても、
何らかの不正融資が存在していると認識していた役職員はより多数に及ぶと考えられる。ただし、その時点における無断借名融資の件数や総額といった全体像は、管理担当役員、管理実務担当者及びそれらの者から説明・報告を受ける代表理事など、限られた役職員のみが認識していたと考えられる。
「行使の目的」については、「当該文書が偽造文書であることを知らない他人」に交付・提示等して、その閲覧に供し、その内容を認識させ又はこれを認識しうる状態に置くことを要するとされている。無断借名融資の実行過程で借入申込書等の文書を目にする当組合の役職員らはいずれもそれが偽造文書であることを認識していたと考えられるが、借入申込書等作成の際には筆跡が全て同じにならないように細工していたりするなど、無断借名融資であることを知らない職員に対して、又は将来的な内部監査や会計監査人監査を含む外部監査の際に融資に実在性を疑わせないための材料とすることも見据えていたことからすると、「行使の目的」が肯定される可能性も十分にある。
内部監査の機能不全
監査部による内部監査においても債権書類を確認する担当は特定の職員に限定されており、その者が不正を黙認していた。また、監査部長はそれ以前から不正行為
に関与している者が代々就任していた。そのため、本来独立性が担保されるべき監査部が機能しなかったものである。
乙事案及び丙事案は、元の事案自体は特定職員による不正行為であり、一般の職員はその権限も限られていることから、不正行為が実現可能な環境がなければ、その発生を未然に防止することは十分可能である。したがって、乙事案及び丙事案の様な事案の再発防止という観点では、そもそも不正行為が行われないような体制整備を行うことが有効であると考えられる。もちろん、監査部等の内部監査部門による内部統制が実効的に行われることにより、不正行為の防止だけでなく早期発見も可能であるし、甲事案と同様に、外部からの監督機能を強化することも有効な手立てである。
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内部監査の機能不全についての記述に終始している。不正事案の片棒を監査部が担いでいる様子も記載されている。
内部監査の有効性を担保する「客観性」「独立性」についての記述はない。絶対的な経営者の主導する不正事案に関し、監査部は員外役員と会計監査人との協働で何か有効な手が打ててのではないかと言う疑問が残る。
2025年6月1日 日曜日