5月30日に公表された第三者委員会報告書では内部統制に関してどのような記載があるか見てみたい。備忘録的メモだ。
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内部統制システムの機能不全
三事案(筆者注:甲事案が無断名義借りの組織的不正融資。乙事案は職員による顧客資金の横領。丙事案は職員による支店保管現金の着服。)のいずれにおいても、役員による事案の隠蔽がなされているが、これらは内部統制システム、監督体制が適切に機能していれば、より早期に不正が明らかになっていたはずである。
融資部、監査部、コンプライアンス委員会による監督の不全
しかしながら、甲事案においては、常勤監事や融資部、監査部、コンプライアンス委員会など、本来は不祥事案を防止し、あるいは早期に発見するために機能すべき部門の構成員が不正行為そのものに関与しており、また隠蔽にも積極的であったことから、監督体制が機能することはなかった。
乙事案及び丙事案においても、一部の役員がこれを積極的に隠蔽したことから、監事や監査部、コンプライアンス委員会など、内部組織から不祥事案を是正する機能が果たされなかった。これらのことから、三事案のいずれにおいても、内部統制システム、監督体制の全てが機能していなかったといえる。
甲事案においては、経営の中心となる代表理事が積極的に不正を主導し、その他の役員もこれに積極的に関与しており、本来であれば不正行為を監督して是正すべき融資部、監査部等も、不正の隠蔽に積極的に関与しており、もはや当組合の内部統制システムは全く機能しない状況にあったと言わざるを得ない。
したがって、甲事案のような不祥事案を未然に防止するためには、全役職員のコンプライアンス意識の向上は当然として、実効性ある内部統制システムを構築するとともに、当組合の外部からの監督を効果的に行うことが必要不可欠である。
乙事案及び丙事案は、元の事案自体は特定職員による不正行為であり、一般の職員はその権限も限られていることから、不正行為が実現可能な環境がなければ、その発生を未然に防止することは十分可能である。したがって、乙事案及び丙事案の様な事案の再発防止という観点では、そもそも不正行為が行われないような体制整備を行うことが有効であると考えられる。もちろん、監査部等の内部監査部門による内部統制が実効的に行われることにより、不正行為の防止だけでなく早期発見も可能であるし、甲事案と同様に、外部からの監督機能を強化することも有効な手立てである。
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この第三者委員会報告は、内部統制に関して同じ説明を繰り返している。「内部統制システムが機能していなかった」のが不祥事の原因だったという表現だ。
こうした説明は、合格点が取れなかったから試験に落第したという表現と同じで、何の説明にもなっていない。
内部統制に不備があるとしたら、内部統制の6つの基本的な要素である「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」「ITへの対応」のどこがどのように機能していなかったかを分析しなければならない。
「監査部等の内部監査部門による内部統制が実効的に行われることにより、不正行為の防止だけでなく早期発見も可能である」という記述があり、内部統制の「モニタリング」機能が弱かったとも読める記述がある。
しかし、同組合の場合、組織の気風を決定する「統制環境」や営業部門や管理部門の「統制活動」の状況が重要であり、そこを掘り下げて分析するのが内部統制全体の改善のポイントだ。
2025年6月1日 日曜日