取締役(特に言及しない限り本項では社外取締役を意味する)に期待される役割は、CEOの信頼できるアドバイザーになり、株主に代わってCEOの働きぶりを監督することである。
こうした役割を果たしているかどうかを確認するために取締役は自問する必要がある。本項では、そうした際に有用と思われる10の質問をまとめてみる。
1.自分はパターンの認識が得意だろうか?
データ、情報、知識を深く理解し、それを戦略的な議論の中で共有できる「なるほど」と思わせる洞察にまとめる能力があるか。
2.自分は取締役会に客観的な視点を持ち込み、物事をありのままにみているか?
プロセスや意思決定はどの程度客観的なデータに基づいているか。顧客、従業員、サプライヤーからのフィードバック・ループが存在するか。悪い知らせがCEOに届く企業文化があるか。
3.自分は経営陣の決断の根底にある前提を問い直しているか?
戦略の90%は失敗する。戦略の根底にある前提の妥当性はどうか。
4.自分のEQ(感情指数)は十分に高いだろうか?
EQの高い人は権威が無くても影響力を行使できる。共感、傾聴、反応のコントロールが基礎。
5.破壊的イノベーションと、それがどう現れるかについて、自分は十分に考えているか?
ビジネスの基本は「破壊するか、破壊されるか」に変化。
6.自分はリスクには強いがチャンスには弱いだろうか?
リスクを軽減することだけでなく、チャンスを求め、それに挑戦することを十分に考えているか。
7.自分は取締役会の会話に積極的に貢献しているか?
取締役会のダイナミズムに貢献する。
8.自分は価値観に基づく信頼できる環境を育んでいるだろうか?
CEOが良いニュースも悪いニュースも安心して共有できる取締役会文化を浸透させる必要がある。
9.自分は戦略的な会話に参加する準備をするために学ぶ時間を取っているか?
ここはCEOに企業の戦略を共有してもらう機会が必要になる。事業展開、収益の源泉、SWOT分析について取締役の理解が不可欠だ。
10.自分はCEOを理解しアドバイスを効果的に提供できているか?
会社の長期的ビジョン、戦略的方向性、市場でのポジショニング、リソース配分の決定、長期的な株主価値と連動した報酬体系、等に関してCEOの目線を理解することが不可欠だ。
取締役の役割は、ガバナンスと監督にとどまらず、企業戦略の策定、市場機会と新たなリスクの特定、資本配分、業績評価、インセンティブ報酬体系の確立、後継者育成計画、清廉潔白な社風の確立等に関して、CEOのアドバイザーとして多様な視点を提供し、建設的なフィードバックを提供することだ。そのためには常に自問しつつ、CEOとの信頼感を確立することが死活的に重要だ。
2024年11月3日 日曜日