2024年1月に公表されたIIAの「グローバル内部監査基準」(GAS)ではドメインIIIに注目だ。以下、月刊監査研究2024年9月号より。
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ドメインIIIは
取締役会による内部監査部門の承認方法
内部監査部門の組織上の独立性
内部監査部門の監督
という三つの基本原則で構成されている。
元来CAEには所属する組織体のガバナンス構造に対する責任はない。責任は取締役会にある。このため、ガバナンス構造についてGASでCAEにたいする要求事項があるのは矛盾していると取れる。なぜ、GASではCAEに手の届かない範囲であるはずのエリアが要求事項となっているのか。
重要なのは、CAEがGASに沿って職務を遂行する上での必須条件を明らかにすることだ。CAEはそのような必須条件が存在することを確認することが取締役会が果たす役割の一部なのだと説明するのにGASを使うことが出来る。
CAEはこうした必須条件が遵守できない場合は、内部監査部門はGASに完全には適合できていないと説明する。「遵守するか説明する comply or explain」という仕組みはCAEに取締役会に対してガバナンス構造を再考させる武器になる。必須条件が完全に満たされなくても、CAEはGASの要求を満たすことになる。
個人経営の同族企業、公共セクター、中小企業など多くの組織体では、必須条件への適合が課題になる可能性がある。しかし、GASの規程により、CAEは不必要なリスクを負ったり、GASに適合しないと言った事態に陥ることなく、取締役会との対話を促進し、ベストプラ区ティスを促進する仕組みが出来たのである。
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(印象)
いったん上場審査をパスしたあとは内部監査を全く省みない同族経営者は多い。監督官庁である金融庁が内部監査の重要性を説いている金融業界ではGASの重要性は経営者、取締役会にも理解されているが、その他の業界では理解は進んでいない。
「GASにこう書いてありますから」と言っても聞く耳をもつ経営者は少ない。
監査役や会計士と協働し内部監査がGASの規程をどのように実施していくかは日本企業での大きな課題だ。
2024年11月2日 土曜日