世界の動き 2023年9月1日 金曜日

今日の言葉:
「カーボンクレジット」
環境配慮に関する主張を裏付けるためカーボンクレジットに頼る企業は今、そうしたクレジットの大半が目的に合っていないという「確かで信頼できる」証拠を突き付けられている。学術誌「サイエンス」に掲載された研究が指摘した。以下Bloombergの記事を紹介したい。
研究ではペルー、コロンビア、カンボジア、タンザニア、コンゴ(旧ザイール)での18件のカーボンオフセットプロジェクトを分析。潜在的な8900万のクレジットのうち森林保全を通じた炭素削減効果に結び付いているのは、わずか540万で、割合にすると6%にとどまることが明らかになった。6000万超のカーボンクレジットが、森林伐採をほとんど減らさなかったプロジェクトから創出されている。
同研究の上席著者でケンブリッジ大学の環境経済学・公共政策学の教授、アンドレアス・コントレオン氏はインタビューで、「こうしたカーボンクレジットは、グリーンウォッシュをもたらすのではないかという疑念がある」とコメント。「われわれは今、それらのオフセットのプログラムに欠陥があることを示す確かで信頼できる証拠を手にしている」と述べた。
カーボンクレジットは、風力発電や植林などのプロジェクトにより大気中から削減・除去された二酸化炭素(CO2)を表し、削減単位1トンで認証・発行される。購入者はクレジットを取引したり、自らの排出量を相殺するために使用したりすることができる。
研究結果はカーボンオフセットに絡む「座礁資産」(不良化する恐れのある資産)のリスクを浮き彫りにしている。また、そうしたクレジットに依存する企業のカーボンニュートラルに関連した主張にも、疑問を投げ掛けている。
「REDDプラス」と呼ばれる森林保護プロジェクトは、もはや排出されない炭素が反映されたクレジットを創出する。過去の森林減少やそれに伴う排出量の推移などを参考に、森林の減少や劣化を抑制した場合の排出量を評価する仕組みだ。
「サイエンス」の研究によると、民間主導の同プロジェクトでは2021年、13億ドル(約1900億円)に相当する計1億5000万のクレジットを発行。研究の初期の草稿は1月にオンラインで公開された。
基準を設定する機関のVERRAが公表しているデータを見ると、エネルギー企業の伊ENIや仏トタルエナジーズ、航空会社の英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)、スイスの食品大手ネスレ傘下のネスプレッソなどが、同プロジェクトから創出されたクレジットを購入している。
ENIは500万を優に超えるクレジットを「REDDプラス」から購入。これは約90万世帯の年間の電力使用量に相当する。ENIの広報担当者は、調査結果を強く否定しており同社のカーボンクレジットは最高水準の管理下にあるとした。
BAは、さまざまな気候変動を巡るイニシアチブに取り組んでおり、持続可能な航空燃料への投資など、50年までに排出量を正味ゼロにすることを優先しているとコメント。ネスレ・ネスプレッソはカーボンオフセットへの投資から脱却しており、温室効果ガス排出量の削減とバリューチェーン内の炭素除去によってネットゼロを達成する方針だと説明した。トタルエナジーズはコメントを控えた。
ここにきてカーボンクレジット取引最大手のシンガポールのトラフィグラ・グループは、森林プロジェクトの調査結果を待つ間、「REDDプラス」のクレジットの引き渡しを停止した。

認証機関は不当と主張
調査対象となった18のプロジェクトは21年11月時点で、6200万のカーボンクレジットを発行。このうち1460万については、個人ないし組織による温室効果ガス排出量の相殺に使われてきた。最終的には「これらのプロジェクトは、森林保護で実際に削減した量の3倍に近い炭素を相殺するのに使用された」とコントレオン氏は指摘。「依然として4700万を超えるクレジットが市場に残っている」と話した。
「サイエンス」が詳述したカーボンオフセットは、VERRAが認証した。VERRAはサンプル数が少ないため、調査の方法論について「重大な懸念」があるとしている。
プロジェクトのうち約4分の1しか調査されていない以上、研究の結論を全てに当てはめるのは不当だとVERRAは主張。ウェブサイトの声明で「われわれは今の仕組みに改善すべき点があるのを認識しており、継続的な進化の促進に注力する」とした。
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カーボンクレジットの計算は精緻にしても計算方法により大きく異なる。グリーンウォッシュも避けることが出来ない。安易にカーボンクレジットの取引に依存するのではなく、Co2の排出量を根源的に削減する努力が図られるべきだ。

ニューヨークタイムズ記事より
1.南アフリカでここ数年で最悪の死者数を記録した住宅火災
【記事要旨】
昨日、ヨハネスブルグで不法占拠者が住んでいた建物が全焼した火災で、十数人の子供を含む少なくとも74人が死亡したと市当局者が発表した。 南アフリカの歴史の中で最も死者数の多い住宅火災の一つでした。
治安を監督するヨハネスブルグ市議会議員は、建物に到着すると人々が窓から飛び降りて逃げようとしていたと語った。
この建物はかつてアパルトヘイト時代に黒人労働者のための政府の検問所だったが、つい最近まで女性シェルターとして使われていた。 この建物はヨハネスブルグに放置されている多くの建物のうちの1つで、犯罪組織によって乗っ取られ、家賃は徴収するもののサービスは提供せず、垂直型のスラム街と化しているという。
シリル・ラマポーザ大統領は昨日火災現場を訪れ、こうした犯罪者を取り締まり、「都心部の住宅事情に取り組み始めるよう警鐘を鳴らすものです」と語った。
この火災は、ヨハネスブルグで手頃な価格の住宅が深刻に不足しているという政治危機を如実に表している。
「長年にわたる汚職と政治の麻痺のため、市内ではこのような事件が増えており、ヨハネスブルグは崩壊しつつあるようだ。街を歩いていると、ここ数年、失望と悲しみと挫折感がある」とタイムズの記者は語っている。
【コメント】
ヨハネスブルグは世界で最も治安の悪い都市として有名だった。状況は改善していないようだ。

2.米国はタリバンとのさらなる接触を求める声に抵抗
【記事要旨】
2年前に米国がアフガニスタンを撤退し、タリバンの支配を許容して以来、世界はアフガニスタンにおける人権の悪夢に備えていた。 国際監視団によると、それは現実となり、タリバン政府は復讐殺人、拷問、誘拐を実行し、アフガニスタン女性への職や教育も拒否している。
しかし、タリバン支配の諸側面は、一部の米政府関係者をやや驚かせている。 タリバン指導者らは、バイデン大統領の最優先課題であるテロ対策に応え、タリバンはアルカイダの抑制に貢献する一方、イスラム国の地元支部とも戦っている。
しかし、バイデン氏に米国からアフガンへの支援を回復するよう説得するには十分ではなかった。 一部の米当局者は依然として深い不信感を抱いており、タリバンは米国の刺激を避けるために短期的にアルカイダを封じ込めているだけではないかと懸念している。
【コメント】
敵の敵は味方と見做すことも出来るかもしれないが、そもそも敵であることに変わりはないのだ。

3.中国の偽情報が福島の水に対する怒りを煽っている
【記事要旨】
中国は、日本が廃墟となった福島第一原子力発電所から海洋に放出した処理済み放射性水(中国政府は「核汚染廃水」と呼んでいる)の安全性についての偽情報を広めるキャンペーンを展開している。
科学者らは、日本の水放出が人間の健康や環境に及ぼす影響は非常に低いだろうと述べている。 しかし、偽情報対策に貢献するテクノロジー系新興企業によると、中国国営メディアや当局者、親中派の影響力者による福島に言及したソーシャルメディア投稿は年初から15倍に増加したという。 専門家らは、中国は日本の信頼性に疑問を植え付けようとしていると指摘する。
【コメント】
中国の情報拡散の動きは強力だ。日本の漁業者は中国・香港への依存度を避け輸出先を拡大する努力をするべきで、政府の支援も望まれる。

その他:
ウクライナの反転攻勢の成果
After breaking through a major first line of Russian defenses in the south, Ukraine appears to hold it securely enough to press on with the next phase of its counteroffensive.
LGBT運動に制限
Canada cautioned L.G.B.T.Q. citizens visiting the U.S., in response to rules this year restricting transgender care, drag shows and sports participation.
Jan6の暴動で判決
Joseph Biggs, a onetime lieutenant in the Proud Boys, was sentenced to 17 years in prison in a Jan. 6 sedition case.

2023年9月1日 金曜日