再読したのは私ではない。著者Michael Lewisが再読したのだ。1989年にWall Streetの内幕暴露本としてベストセラーになったこの本をルイスは刊行以来再読したことが無かったという。再読しての感想をN.Y. Timesの記者がインタビューしたのだ。
私自身は「ライアーズ・ポーカー」は随分前に読んだ記憶がある。全体としては面白いエピソード満載だが、ボンドトレーダーのビジネスについては何故か記述が薄い印象だった。記憶に残ったエピソードは、大金を稼ぐ人こそが”Big Swinging Dick”として尊敬を集めるということ。Solomon Brothersのトレーディングルームが喧騒に包まれ卑語が飛び交っていたこと。ルイスが入社3年にして中核トレーダーとして活躍していたこと。出張する同僚のスーツケースの中身を抜いて派手な女性のパンティで一杯にしていたこと。等だ。ライアーズ・ポーカーがどんなゲームだったかも覚えていない。
ルイスは、永続しない蜃気楼のようなBrigadoonを描いたと言っており、自分のような市場のことを知らずお金の使い方もわからない人間に何千万円も払う世界をBrigaddonと称している。マイケル・ミルケンが逮捕され、社会がWallStreetを抑え込もうとしていたので、ビジネスの金融化は下火になると思っていたがそうならなかった。ただ、従業員を酷使する環境は変わった。今はトレーディングフロアはPCに向かう従業員ばかりで全くの無音だ。
ルイスは、Wall Streetは嫌いではないが、何かを締め上げる・失敗させるシステムが組み込まれているところはいやだ。1990年にはこの本を読めと言うボスはいなかったが、今ではWall Streetを理解するのに役に立つと言われるのは不思議だ、と言っている。
さて、私はルイスの著書ではMoney Ballの方が好きだ。弱小チームを求人戦略で強化するやり方はビジネスにも通じるところがある。
(2022.2.6 Sunday)