「現金給付」の経済学 反緊縮で日本はよみがえる 井上智洋著 を読んで

一口で言えば「れいわ新選組」山本太郎氏の議論と同一だなーという印象だった。不況時はヘリコプターマネーが効果的というバーナンキ議長の議論と同一という印象も持った。

 バラまき(井上氏の場合Basic Income(BI)に限定)を政府が国債を原資に行うことで日本はよみがえるという主張で、急に月に6万円とか大掛かりに始めなくても少額から試行するべきだと説く。

 私はBIには賛成できない。BIの必要のない人に金を配るのは無駄だし、貧困問題の解決や格差の是正には、生活保護の充実が正答ではないだろうか。最低時給(1000円)で8時間20日働いてもグロスで16万円にしかならないワーキングプアが辺て生活保護を申請すれば、最低時給の引き上げにも役に立つと思われる。

 国債の発行に関して言えば、自国通貨建ての国債は幾らでも発行できるというのがれいわやMMT論者の論拠だが、民間の余裕資金が上限になり、それ以上の発行は、インフレを必ず誘発する。民間の余資からみて、国債の増刷はこの後せいぜい300兆円ぐらいと予想する。財政支出については本当に「賢い使い方」を心掛けなければならない。アベのマスクの顛末を見ても政府にお金を賢く使うという考えがないのは明白だ。

 井上氏に賛成できる点は、成長が必要だということだ。日本と中国が平和共存し、それが日本にとって「奴隷の平和」にならないためには、経済力と科学技術力の強化が必要不可欠だ、という論には全く同感だ。

(2022.2.5 Saturday)