世界の動き 2025年6月2日 月曜日

今日の一言
「中国のハイテク株ファンド」
 マクロの中国経済の苦境は続きそうだ。しかし、中国のハイテク企業は米国からの「制裁」を受けながらもダイナミックに成長しているようだ。
 AIを搭載した軍事ロボットのデモ、ヒト型ロボットのマラソン大会・ボクシング大会、上海モーターショー、BYDのEV軽自動車での日本市場参入、等々のニュースを見聞きすると、中国のハイテク企業は侮れない。米国が孤立主義を進める中で、中国は世界展開を着々と進めている。
 現在余裕資金があれば、中国のハイテク株ファンド・ETFは注目すべき投資対象だ。国営企業を避け、時価総額の小さいものを避けて、選択してゆきたい。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.交渉を前に、ウクライナとロシアは激しい攻防を繰り広げる
【記事要旨】
 ウクライナは昨日、ロシア国内の空軍基地に対し、今戦争中最大規模の攻撃を仕掛けた。ドローンの協調作戦により、シベリアを含む複数の地域で数十機の航空機を破壊したとウクライナ当局者は発表している。
 キエフではロシア軍のミサイルがウクライナ軍訓練基地に着弾し、少なくとも12人の兵士が死亡するなど、甚大な被害を受けた。ロシアは開戦以来最大規模の夜間合同空爆を行った。
 ウクライナとロシアの代表団が本日イスタンブールで停戦交渉に臨む予定だが、戦闘は激化した。
 交渉:イスタンブールで行われた前回の協議で、双方は和平条件を共有することで合意した。それ以来、ウクライナ当局はロシアが交渉を遅らせていると非難している。
【コメント】
 ウクライナはドローンの関しては世界で一番運用能力が高い国になったようだが、ロシアの戦闘拡大能力に少しは影響が与えられたのだろうか。

2.ガザ地区の支援物資配布施設付近で20人以上が死亡
【記事要旨】
 地元保健当局によると、昨日、支援物資配布センターに食料を受け取るために集まっていたパレスチナ人が銃撃を受けた。当局者によると、少なくとも20人が死亡、100人以上が負傷した。ガザ地区保健省は31人というより多い死者数を発表した。
 イスラエル軍は当初、ラファ地区の支援物資配布施設でのイスラエル軍の発砲による負傷者は把握していないと発表していたが、後に軍当局者は犯罪容疑者に向けて威嚇射撃を行ったと発表している。
 赤十字国際委員会(ICRC)は、ラファ地区の野戦病院に179人の患者が搬送されたと発表した。その大半は銃撃や榴散弾による傷で、「患者全員が支援物資配布施設に向かおうとしていたと話していた」という。
 背景:イスラエルが3月にガザ地区への食料、燃料、医薬品の供給を遮断して以来、ガザ地区の人々は食糧難に苦しんでいる。イスラエルは先週、ガザ地区への救援物資の供給に向けた物議を醸す活動を開始し、一部の配給所では混乱が生じている。

ガザ地区のその他のニュース:
・ハマスが戦争の恒久的な終結の保証を求めた後、ホワイトハウスは停戦提案に対するハマスの回答を拒否した。
・イスラエル軍によると、ハマスの最高指導者ムハンマド・シンワル氏が先月、イスラエル軍の空爆で死亡した。
・イスラエル政府は、複数のアラブ諸国の外相が、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区でパレスチナ指導者と会談することを禁止した。
【コメント】
 400か所の配給所を4か所に集約し、食料を受領しようとする飢えたガザ住民に銃撃を加える非道なイスラエルが浮かび上がる。イスラエルにはイスラエルの論理があり、ハマスの全面降伏まで続ける意向だ。誰もそれを止められない。

3.メキシコで初めて裁判官が選出された
【記事要旨】
 メキシコ国民は昨日、最高裁判所やその他数百の地方裁判所の判事を含む約2,700人の判事と治安判事を選出する投票を行った。司法制度改革を目的とした投票は国内初であり、大規模な民主主義国家が試みた司法制度改革の中も、最も大がかりなものの一つとなる。
 ​​今回の選挙は、2期連続で大統領を選出し、議会で超多数派を確保し、野党を存続の危機に追い込んだ左派政党「モレナ」の権力基盤強化につながる可能性がある。モレナの指導者たちは、汚職撲滅のために裁判官を直接選出することを決定したと述べたが、専門家は、この改革は健全な民主主義に求められる抑制と均衡に悪影響を及ぼす可能性があると警告している。投票所では、有権者は長く複雑な投票用紙に苦労した。
【コメント】
 メキシコの司法改革
 「メキシコの司法改革とは、2024年にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が提案した、憲法改正を伴う司法制度の改革案。具体的には、最高裁判所判事の公選制、裁判官の公選制、連邦裁判官審議会の廃止などが含まれている。この改革は、司法の独立性や三権分立を損なう可能性があるとして、国内国外から批判を浴びている。」
 選挙結果に注目したい。

その他の記事
フランス:サッカーチーム、パリ・サンジェルマンのチャンピオンズリーグ優勝を祝う騒ぎが暴徒化し、2人が死亡、200人以上が負傷した。
イラン:国連査察官がイランの核兵器級ウラン備蓄量の急増を報告したことを受け、米国は核合意の要素に関する初の正式提案を提出した。
ポーランド:大統領選決選投票の出口調査では、2人の候補者が僅差で接戦となった。公式結果は本日発表される見込みだ。

インド:インドは米国への留学生数を世界最多に誇る。米国がビザ面接を一時停止したことで、影響を受けている。
健康:新たな研究により、運動ががんの生存率を向上させるというエビデンスがさらに強化された。

ビジネスと経済
関税:米国の経済顧問は、トランプ大統領が最も厳しい関税の90日間一時停止を延長する計画がないことを示唆した。
石油:サウジアラビア、ロシア、およびOPECプラスに加盟する他の6か国は、7月も3カ月連続で増産を維持すると発表しました。
小売:355年前に毛皮商として設立されたハドソン湾会社は、カナダにある80の百貨店を閉鎖すると発表した。
【コメント】
 カナダに暮らしたことのある筆者にとって驚きの記事だった。カナダの最も老舗のデパートだ。
 Yahooニュースの報道。
 「カナダの老舗百貨店「ハドソンズ・ベイ(HUDSON’S BAY)」を展開するハドソンズ・ベイ・カンパニーが、清算セールを終了し全店舗を閉鎖する6月1日までに、従業員の約89%にあたる8347人を解雇する予定であることがわかった。現地時間5月26日に公表されたオンタリオ州高等裁判所による文書で明らかになった。」
 つまり民事再生をあきらめて清算するということで、消費者の消費行動を読み誤った企業に対する教訓だ。

2025年6月2日 月曜日

いわき信用組合第三者委員会報告 監査部について

標記についての言及箇所を、備忘録的メモとして作成する

・・・・・
山野辺 克明 (以下「山野辺氏」)
2009 年 3 月~2014 年 3 月 顧客相談室課長
2014 年 3 月~2018 年 1 月 総務部副部長
2018 年 2 月~2020 年 5 月 監査部長
2020 年 5 月~現在 事務管理部長
2020 年 6 月~現在 常勤理事

職員d 氏
2007 年 7 月頃~2011 年 9 月頃
X1 社グループ専任担当者
2011 年 9 月~2014 年 3 月 郷ヶ丘支店長
2014 年 3 月~2016 年 2 月 審査部課長
2016 年 2 月~2017 年 3 月 審査部副部長
2017 年 3 月~2020 年 2 月 融資部副部長
2020 年 2 月~2024 年 1 月 融資部長
2024 年 1 月~現在 監査部長
三事案の公表前に監査部長の d 氏が全営業店を回り本件無断借名融資に係る資料を回収したとの情報提
供があったことから、念のため防犯カメラ映像をチェックして事実関係の確認を行ったが、公表前に同人
が上記 3 店舗に来訪した映像は確認できなかった。

本部各部署の主な職務分掌は、以下のとおりである。
① 監査部
 監査計画の立案、監査の実施、店内監査の指示及び統括
 事故防止及び事後処理
 監督官庁等検査受検の統括、監督官庁等検査示達書に対する回答
 コンプライアンスの統括
 反社会的勢力との取引管理、マネー・ローンダリング等対策、反社会的勢力対応(不当要求、警察等外部機関対応等)
 不祥事件等の調査・解明及び行政庁への報告

なお、コンプライアンス部門は、遅くとも 2021 年 7 月末以降は監査部の一部門と位置付けられていたが、2017 年 7 月末時点では総務部の一部門に位置付けられ、2018 年 7 月末時点では総務部から監査部に異動し、さらに 2020 年 7 月末時点では監査部から事務管理部に異動している。これは、当組合の当時の実態として、不祥事件対応や当局対応等のコンプライアンス関連事項については、特定の部署というよりは特定の職員(山野辺氏。2020 年 6 月半ばまでは当組合職員)がその多くを担当しており、同人の部署異動に連動してコンプライアンス部門も異動したことによるものである。

内部監査体制
当組合においては、監査部長が年次監査計画を立案し、理事長の承認を得た上で定例監査(臨店監査)を実施している。定例監査の実施に当たっては、被監査
営業店、監査基準日、監査日程、監査方法等を定めた監査実施計画を別途策定し、理事長に報告する。
定例監査は、各営業店及び本部各部署に対して年 1 回実施され、前回の定例監査の監査基準日の翌日から今回の定例監査の基準日までの間に実行された新規融
資案件については、全件について監査を実施する運用となっている。原則として、監査終了日の翌日に監査講評を実施する。
融資案件の債権書類の監査担当者は、原則として監査部職員2名程度であり、必要な書類の徴求漏れはないか、債権書類・契約書類の不備はないか等をチェッ
クする。

そのような中で、2024 年 12 月 4 日 11 時から、当委員会は、理事長本多氏、常務理事矢吹氏、常勤理事山野辺氏との間で、内部調査状況の説明を受けるためのミーティングを実施した。この場において融資額 1000 万円~5000 万円の全貸付債権書類の監査(「余罪調査」)の実施状況について確認したところ、本多氏は、1000 万円から 5000 万円の融資の全件チェックを進めているが、監査機構の監査や当局への報告対応に時間を要しており、人員の制限や顧客対応の優先により、進展が遅れている(内部調査の本格的な着手は 11 月 20 日頃からであった)と説明した。これを受けて当委員会は、調査内容の詳細や進捗状況について調査担当である監査部から直接に状況説明を受けることとした。
これを受けて、12 月 5 日 13 時より、当委員会は監査部長の d 氏との打ち合わせを実施した。その際に d 氏は、調査対象となる融資のリスト抽出(不正の疑いの乏しい制度資金等の類型を除外する)は行ったものの、それを対象として実際に店舗にある債権書類の確認作業(印鑑証明書が付されているかを中心に確認する)は完了していない(実施していない)と説明した。
ところが、その直後に当組合の常勤理事の山野辺氏より内部調査の状況について再度説明を行いたいとの申し出があり、翌日 12 月 6 日 14 時 30 分から、d 氏に加えて山野辺氏が出席して説明が行われた。その際に当組合は、①1000 万~5000 万円の残高がある現在の債権について印鑑証明書の有無については全て調査完了した、②2322 件(手形+証貸)について、87 件を除き印鑑証明書が全てあることが確認された、③実際の調査は 11 月 22 日から 12 月 4 日にかけて、監査部の職員 3 名が手分けして臨店して確認しており、臨店調査は終了していると説明した。また、そのような調査を行った際に印鑑証明書の有無を確認するためにチェック表を利用したとの説明であったことから、当委員会からは当該チェック表を提供するよう求めた。
その後、当組合からは調査時にチェックをするために利用した資料として「10M⇒50M チェック表(d 氏の検証)」とのファイル名の Excel ファイルが提供さ
れたが、当該ファイルの「作成日時」は「2024 年 12 月 6 日 15 時 31 分」、作成者は「0613」と表示されていた。「0613」は常勤監事の坂本氏のアカウント名である。
また、12 月 9 日には、監査部職員が臨店検査の際に実際にチェックしながら作成した資料であるとして、顧客ごとに確認日、確認者、印鑑証明の有無等をチェックしたリストも提供された。
当委員会としては、12 月 4 日及び 5 日に内部調査は完了していないと説明を受けたにもかかわらず突如として 12 月 6 日になって調査は完了したと説明を受けたことからその信憑性に疑問を持ったほか、提供されたチェック資料である Excel ファイルが 12 月 6 日の打ち合わせにおいてチェック資料の提出を求めた直後に作成されたと思われることからしても、調査完了という説明には信用性がないのではないかとの疑いを深めることとなった。
その後、12 月 11 日に本件アンケート趣旨説明会が開催され、当委員会から役職員に対してアンケートの趣旨をオンラインで説明する機会が設けられた。この際、当委員会からは複数の営業店の支店長に対して、実際に監査部による債権書類の確認作業があったのか、あったとすればいつ臨店があったのかを確認する質問を行った。そうしたところ、複数の支店長より、監査部職員による臨店があったとの説明がなされるとともに、その日付に関する回答がなされた。当委員会としては、臨店の日付に関してまで即答する支店長が複数いたことを不自然に感じつつも、臨店検査に関する説明内容の信憑性については継続して検討を進めることとした。

その後当委員会には d 氏が作成して各支店長に送付したとする依頼文(「第三者委員会に関連した調査に対するお願い」と題するもの)が提供されたが、その内容は以下のようなものであった。
① 迂回融資の該当債権とされる債権以外に疑わしい債権の有無について、当組合による内部確認調査が必要であることを第三者委員会より受けて、不祥事の公表
(R6.ll.15) 以降、監査部が貴店を臨店し、全債務者の印鑑証明書の有無について確認作業を終えていることを 12/6 に第三者委へ山野辺部長と d 氏が同席の上、
伝えた
② 別紙の監査部員が担当する営業店に公表日以降、確認調査に臨店し、監査部員の要請により、支店長から融資担当者へ指示し、順次、債権書類を監査部員と受け渡しをおこない監査部員が確認作業をすすめたことでお願いしたい
③ 万一、第三者委員会から営業店支店長又は融資担当役席者がヒアリングを受けることがあった場合、「確認調査をおこなったというシナリオにする」ということ
で代表理事のなかで合意した話である
④ 本文書は速やかに破棄してもらいたい

また、上述したとおり、12 月 9 日には、監査部職員が臨店検査の際に作成した資料であるとして、顧客ごとに確認日、確認者、印鑑証明の有無等をチェックしたリストが提供されたが、本調査によれば、当該チェック資料が事実に反して作成される作業に、山野辺氏が関与していたのではないかと推測される供述も得られている。

内部監査における発覚防止措置
無断借名融資が発覚することのないように、内部監査においても発覚防止措置がとられていた。当組合では、概ね 2 名の監査部担当者により各支店にある債権書類の監査が行われていたが、監査担当者となる者に対しては、無断借名融資に係る債権については監査で指摘を行わないよう前任者からの引き継ぎ又は役員からの指示がなされていたことが確認された。この結果、印鑑証明書が添付されていなかったり、担保が設定されていなかったりするような不備があり、通常の内部監査であれば指摘すべき対象となる問題点がある融資についても指摘せずに意図的に見逃すという取り扱いが継続的に行われていた。
また、前任者の引き継ぎや役員の指示がなかった場合であっても、監査担当者が特定の債権の不備について支店長に確認した際に、上層部からの指示により実行している融資であることが告げられ、それ以上に内部監査手続において不備のあることを指摘することができなかったという事案も確認された。
以上のような取り扱いのために、現在に至るまで無断借名融資に係る債権について内部監査で指摘されたり、それに基づいて無断借名融資の存在が公になったりすることはなかった。

また、Y 氏の横領発覚を受けて、職員による横領の発生を防止するための体制整備や体制の改善等がなされた形跡は伺われなかった。なお、2014 年 2 月頃には定期預金等を顧客から預かる場合の預り証交付の徹底や自店検査・監査部監査の検証徹底等の改善措置が取られているが、これは Y 氏の横領発覚を受けての対応ではなく、別件の g 氏の横領発覚を受けての対応に過ぎない。

2 回目の横領発覚時期、経緯
2014 年 9 月末に当組合の仮決算を控える中、同月初め、本部において q 氏(当時、総務部課長)が、β 支店諸勘定(本件貸引勘定)についてイレギュラーな動き
(異常取引)があることを発見した。q 氏は、当時所属していた総務部の上席であった坪井氏(当時、総務部長)及び山野辺氏(当時、総務部副部長)にこの件を
報告した。
当該報告は猪狩氏(当時、監査部長)に上げられ、Y 氏による昨年の横領があったことから、猪狩氏から山野辺氏に対し、再度、Y 氏による横領の可能性を含めて
調査するよう指示が出された。
山野辺氏に置いて、1 回目の横領調査時と同様に Y 市へのヒアリングを実施したところ、Y 氏が 2 回目の横領に及んだことを認めたことから再度の横領が発覚した。

監査部担当者による内部監査では、監査担当者への事前の指示に基づいて、印鑑証明書が添付されていないといった不備のある無断借名融資の債権書類を監査した場合にも、意図的に指摘せずに見逃すという取扱いが行われていた。

融資部、監査部、コンプライアンス委員会による監督の不全
しかしながら、甲事案においては、常勤監事や融資部、監査部、コンプライアンス委員会など、本来は不祥事案を防止し、あるいは早期に発見するために機能すべき部門の構成員が不正行為そのものに関与しており、また隠蔽にも積極的であったことから、監督体制が機能することはなかった。乙事案及び丙事案においても、一部の役員がこれを積極的に隠蔽したことから、監事や監査部、コンプライアンス委員会など、内部組織から不祥事案を是正する機能が果たされなかった。これらのことから、三事案のいずれにおいても、内部統制システム、監督体制の全てが機能していなかったといえる。

内部監査の機能不全
監査部による内部監査においても債権書類を確認する担当は特定の職員に限定されており、その者が不正を黙認していた。また、監査部長はそれ以前から不正行為
に関与している者が代々就任していた。そのため、本来独立性が担保されるべき監査部が機能しなかったものである。

このように、甲事案においては、経営の中心となる代表理事が積極的に不正を主導し、その他の役員もこれに積極的に関与しており、本来であれば不正行為を
監督して是正すべき融資部、監査部等も、不正の隠蔽に積極的に関与しており、もはや当組合の内部統制システムは全く機能しない状況にあったと言わざるを得ない。したがって、甲事案のような不祥事案を未然に防止するためには、全役職員のコンプライアンス意識の向上は当然として、実効性ある内部統制システムを構築するとともに、当組合の外部からの監督を効果的に行うことが必要不可欠である。

乙事案及び丙事案は、元の事案自体は特定職員による不正行為であり、一般の職員はその権限も限られていることから、不正行為が実現可能な環境がなければ、その発生を未然に防止することは十分可能である。したがって、乙事案及び丙事案の様な事案の再発防止という観点では、そもそも不正行為が行われないような体制整備を行うことが有効であると考えられる。もちろん、監査部等の内部監査部門による内部統制が実効的に行われることにより、不正行為の防止だけでなく早期発見も可能であるし、甲事案と同様に、外部からの監督機能を強化することも有効な手立てである。

具体的には、常勤の員外監事を新たに選任して監視機能を高めることが期待される。加えて、新たに選任された常勤の員外監事が監視機能を適切かつ十分に発揮できるよう、員内監事及び監査部等との密な情報共有による連携の強化、当組合の一切のデータ及び資料類へのアクセス権の保障、適切な資料提供等が行われる必要がある

監査部の組織上の位置付け
当組合の監査部は、当組合の全ての業務及び連結対象子会社の業務を監査対象とするとされており、その組織上の位置付けについては、理事長直属の部署とされている(監査規程 2 条、3 条)。
そのため、監査の実施により事故等が判明した場合の報告先は理事長とされており(監査規程 14 条)、また監査報告書の提出先も理事長とされている(監査規程 17条 1 項)。さらに、監査部長は、監査結果を定期的に常務会に報告し(監査規程 17条 2 項)、また理事長は、監査結果を定期的に理事会に報告することとされているが(同条 3 項)、「経営に重大な影響を与えると認められる問題点が発見された場合」についても「速やかに理事会に報告する」とされていて、監査部長から直接監事への報告義務は規定されていない。
監事に期待される役割に鑑みれば、監査部が把握した当組合業務に関する問題点については、可及的速やかに監事にも共有すべきであり、特に甲事案のような役員主導の不祥事案に対して員外監事の監督機能を強化するためには、そのような組織内の連携は不可欠であると思われる。
したがって、監査部と監事との連携方法を新たに構築することを検討すべきである。
・・・・・
歴代の監査部長が甲案件にずっぽりと漬かっている状況がよくわかる。

・三様監査の実質的な連携を図り効力を高める。

・監査部長の報告を理事長と監事のダブルレポーティングラインにする。

・員外監事に経験豊富な剛腕の者を登用する。

と言ったような、標準的な打ち手でも、監査体制と内部統制は改善されそうだ。

2025年6月1日 日曜日

いわき信用組合 第三者委員会報告書 内部監査について

いわき信用組合が5月30日に公表した第三者委員会報告での「内部監査」についての記載を見てみる。備忘録的メモ

・・・・・
内部監査体制
 当組合においては、監査部長が年次監査計画を立案し、理事長の承認を得た上で定例監査(臨店監査)を実施している。定例監査の実施に当たっては、被監査
営業店、監査基準日、監査日程、監査方法等を定めた監査実施計画を別途策定し、理事長に報告する。
 定例監査は、各営業店及び本部各部署に対して年 1 回実施され、前回の定例監査の監査基準日の翌日から今回の定例監査の基準日までの間に実行された新規融
資案件については、全件について監査を実施する運用となっている。
 原則として、監査終了日の翌日に監査講評を実施する。
 融資案件の債権書類の監査担当者は、原則として監査部職員2名程度であり、必要な書類の徴求漏れはないか、債権書類・契約書類の不備はないか等をチェッ
クする。

内部監査における発覚防止措置
 無断借名融資が発覚することのないように、内部監査においても発覚防止措置がとられていた。当組合では、概ね 2 名の監査部担当者により各支店にある債権書類の監査が行われていたが、監査担当者となる者に対しては、無断借名融資に係る債権については監査で指摘を行わないよう前任者からの引き継ぎ又は役員からの指示がなされていたことが確認された。この結果、印鑑証明書が添付されていなかったり、担保が設定されていなかったりするような不備があり、通常の内部監査であれば指摘すべき対象となる問題点がある融資についても指摘せずに意図的に見逃すという取り扱いが継続的に行われていた。
 また、前任者の引き継ぎや役員の指示がなかった場合であっても、監査担当者が特定の債権の不備について支店長に確認した際に、上層部からの指示により実行している融資であることが告げられ、それ以上に内部監査手続において不備のあることを指摘することができなかったという事案も確認された。
 以上のような取り扱いのために、現在に至るまで無断借名融資に係る債権について内部監査で指摘されたり、それに基づいて無断借名融資の存在が公になったりすることはなかった。

、個人ローンを利用した横領の比率は、融資実行額ベースで見ても全体の 5%未満に過ぎなかったが、後述の預金担保付手形貸付を利用した横領行為と比較した場合、本人確認書類控え等の必要書類自体は一通り全て揃えることが可能であったため、万が一、内部監査等で検査対象になったとしても不正融資と判断される可能性が低いと考え、若干ではあるが横領手口の 1 つとして利用した。また、当該手法の実行時期が比較的早期であること及び 1 件当たりの金額が僅少であることからすると、不正のファーストステップとして利用さ
れ、その後より大胆かつ高額の手口に発展していったものと考えられる。

 隠蔽措置への関与
 無断借名融資に関する期日案内通知については管理担当役員による抜き取りが行われており、期日案内通知を送付することを担当していた事務管理部としても、そ
のような抜き取りが行われていることは認識していたものと考えられる。
 また、預金担保付きの無断借名融資の中には、担保となる定期預金証書が偽造されていた事例が確認されており、指示を受けて定期預金証書を偽造する作業を実施していた役職員が存在した。
 監査部担当者による内部監査では、監査担当者への事前の指示に基づいて、印鑑証明書が添付されていないといった不備のある無断借名融資の債権書類を監査した場合にも、意図的に指摘せずに見逃すという取扱いが行われていた。

  小括
  以上のとおり、本件不正融資の方針決定には当時の代表理事、その他の常勤理事及び常勤監事、X1 社グループへの出向者が深く関与していたほか、無断借名融資の実行及び管理に関しては、名義を提供した役職員、営業店の支店長及び融資担当者、本部の審査担当者、内部監査担当者、償却に関わる自己査定担当者など、より広範囲の役職員が関与していたと認められる。  そして、本件不正融資が長期間にわたり多数実行されていたことから、結果として多数の役職員がこれに関与することとなった。
 また、そのようなために、直接的に本件不正融資の方針決定や実行及び管理手続に関与しておらず、また、詳細な手口や内容を正確には認識していないとしても、
何らかの不正融資が存在していると認識していた役職員はより多数に及ぶと考えられる。ただし、その時点における無断借名融資の件数や総額といった全体像は、管理担当役員、管理実務担当者及びそれらの者から説明・報告を受ける代表理事など、限られた役職員のみが認識していたと考えられる。

 「行使の目的」については、「当該文書が偽造文書であることを知らない他人」に交付・提示等して、その閲覧に供し、その内容を認識させ又はこれを認識しうる状態に置くことを要するとされている。無断借名融資の実行過程で借入申込書等の文書を目にする当組合の役職員らはいずれもそれが偽造文書であることを認識していたと考えられるが、借入申込書等作成の際には筆跡が全て同じにならないように細工していたりするなど、無断借名融資であることを知らない職員に対して、又は将来的な内部監査や会計監査人監査を含む外部監査の際に融資に実在性を疑わせないための材料とすることも見据えていたことからすると、「行使の目的」が肯定される可能性も十分にある。

 内部監査の機能不全
 監査部による内部監査においても債権書類を確認する担当は特定の職員に限定されており、その者が不正を黙認していた。また、監査部長はそれ以前から不正行為
に関与している者が代々就任していた。そのため、本来独立性が担保されるべき監査部が機能しなかったものである。

 乙事案及び丙事案は、元の事案自体は特定職員による不正行為であり、一般の職員はその権限も限られていることから、不正行為が実現可能な環境がなければ、その発生を未然に防止することは十分可能である。したがって、乙事案及び丙事案の様な事案の再発防止という観点では、そもそも不正行為が行われないような体制整備を行うことが有効であると考えられる。もちろん、監査部等の内部監査部門による内部統制が実効的に行われることにより、不正行為の防止だけでなく早期発見も可能であるし、甲事案と同様に、外部からの監督機能を強化することも有効な手立てである。
・・・・・

 内部監査の機能不全についての記述に終始している。不正事案の片棒を監査部が担いでいる様子も記載されている。
 内部監査の有効性を担保する「客観性」「独立性」についての記述はない。絶対的な経営者の主導する不正事案に関し、監査部は員外役員と会計監査人との協働で何か有効な手が打ててのではないかと言う疑問が残る。

2025年6月1日 日曜日

いわき信用組合 第三者委員会報告書の内部統制に関する記載

5月30日に公表された第三者委員会報告書では内部統制に関してどのような記載があるか見てみたい。備忘録的メモだ。

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内部統制システムの機能不全
三事案(筆者注:甲事案が無断名義借りの組織的不正融資。乙事案は職員による顧客資金の横領。丙事案は職員による支店保管現金の着服。)のいずれにおいても、役員による事案の隠蔽がなされているが、これらは内部統制システム、監督体制が適切に機能していれば、より早期に不正が明らかになっていたはずである。

融資部、監査部、コンプライアンス委員会による監督の不全
しかしながら、甲事案においては、常勤監事や融資部、監査部、コンプライアンス委員会など、本来は不祥事案を防止し、あるいは早期に発見するために機能すべき部門の構成員が不正行為そのものに関与しており、また隠蔽にも積極的であったことから、監督体制が機能することはなかった。
乙事案及び丙事案においても、一部の役員がこれを積極的に隠蔽したことから、監事や監査部、コンプライアンス委員会など、内部組織から不祥事案を是正する機能が果たされなかった。これらのことから、三事案のいずれにおいても、内部統制システム、監督体制の全てが機能していなかったといえる。

甲事案においては、経営の中心となる代表理事が積極的に不正を主導し、その他の役員もこれに積極的に関与しており、本来であれば不正行為を監督して是正すべき融資部、監査部等も、不正の隠蔽に積極的に関与しており、もはや当組合の内部統制システムは全く機能しない状況にあったと言わざるを得ない。
したがって、甲事案のような不祥事案を未然に防止するためには、全役職員のコンプライアンス意識の向上は当然として、実効性ある内部統制システムを構築するとともに、当組合の外部からの監督を効果的に行うことが必要不可欠である。

乙事案及び丙事案は、元の事案自体は特定職員による不正行為であり、一般の職員はその権限も限られていることから、不正行為が実現可能な環境がなければ、その発生を未然に防止することは十分可能である。したがって、乙事案及び丙事案の様な事案の再発防止という観点では、そもそも不正行為が行われないような体制整備を行うことが有効であると考えられる。もちろん、監査部等の内部監査部門による内部統制が実効的に行われることにより、不正行為の防止だけでなく早期発見も可能であるし、甲事案と同様に、外部からの監督機能を強化することも有効な手立てである。
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この第三者委員会報告は、内部統制に関して同じ説明を繰り返している。「内部統制システムが機能していなかった」のが不祥事の原因だったという表現だ。
こうした説明は、合格点が取れなかったから試験に落第したという表現と同じで、何の説明にもなっていない。

内部統制に不備があるとしたら、内部統制の6つの基本的な要素である「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」「ITへの対応」のどこがどのように機能していなかったかを分析しなければならない。

「監査部等の内部監査部門による内部統制が実効的に行われることにより、不正行為の防止だけでなく早期発見も可能である」という記述があり、内部統制の「モニタリング」機能が弱かったとも読める記述がある。
しかし、同組合の場合、組織の気風を決定する「統制環境」や営業部門や管理部門の「統制活動」の状況が重要であり、そこを掘り下げて分析するのが内部統制全体の改善のポイントだ。

2025年6月1日 日曜日