「戦略的勇気を持つ」重要性

ブラジルのカーレーサーであったアイルトン・セナはかつて、「晴れた日には15台の車を追い越すことはできないが、雨が降っていれば追い越すことができる」と言った。

ここ数年は雨どころか豪雨に事欠かない。私たちは、新たなショック (ウクライナでの戦争、インフレの再来) が以前のショック (世界的な未知のウィルスの大流行、サプライ チェーンの混乱) に重なる、デジタル化や持続可能性といった大きなトレンド変化が前提になる世界に住んでいる。

こうした時にリーダーは二つのタイプに分かれる。最初のタイプは、ボラティリティと不確実性に対処する際に慎重で防御的な姿勢をとる。身を潜め、今ここでの脅威に集中して対応する。シナリオ計画、レジリエンスの準備、バランスシートの管理、短期的な効率化の推進、慎重なインフレ監視が、彼らの重点分野になる。これらのリーダーは、状況が明らかになるにつれて、戦略的な「様子見」モードに入っていく。現状は、上級管理職の大多数がこのカテゴリーに分類される。

しかし、2 番目のタイプのリーダーも見られる。つまり、ボラティリティに傾倒しながら、すべての適切な防御行動を取り、それを触媒として使用して、新しい機会に向けて行動を活性化するリーダーである。現在の混乱は、大胆に前進するというこれらのリーダーの考え方を活性化し、眠っていた可能性のある戦略の要素を活性化させてる。これらのリーダーは、攻撃と防御の両方でプレーしている、両利きの経営陣である。

両利きの経営陣は、この環境で単に生き残るのではなく、ボラティリティから価値を創造し繁栄しているように見える。慎重かつ大胆なこれらのリーダーは、組織のパフォーマンスに「アルファ」を生み出すために、洞察力、コミットメント、実行力の 3 種類の優位性を磨いている。

CEO と取締役会は、組織が、洞察力、コミットメント、実行力のそれぞれの優位性をどの程度信頼できると主張できるか、またそうでない場合は、どのようにしてそれを迅速に発展させることができるかについて、自社の状況を把握し、挑戦する必要がある。

”Strategic courage in an age of volatility” McKinsey Quarterly
August 29, 2022
By Michael Birshan, Ishaan Seth, and Bob Sternfels から

(2022年9月10日 土曜日)

世界の動き 2022年9月9日 金曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「魚は頭から腐る」
 自民党議員の旧統一教会との関係の調査結果が出た。多くの議員が「深い」関係を築いていたように見える。トップのありようを見て、多くの議員は安心して関係を深めていたようだ。まさに8年8か月の長期政権が為せる業だ。

ニューヨークタイムズ記事
1.エリザべス女王が96歳で逝去
【記事要旨】
 英国の君主として、70年以上の統治期間、戦後の混乱期、冷戦期を経て価値の変化の時代を、英国を英国民を鼓舞してきた。逝去の2日前にトラス首相を任命したばかりだった。チャールズ皇太子がチャールズ3世として即位した。トラスは昨日経済政策を発表したが、英国は物価上昇と燃料の高騰の困難な時期にあたる。
【コメント】
 偉大な女王が亡くなった。女王の存在感が困難な時代に君主制を継続させてきた。国葬に反対するものは誰もいないだろう。

2.ソロモン諸島は総選挙を延期
【記事要旨】
 Manasseh Sogavare首相は2024まで選挙を1年間延期を決定。パシフィック競技会という大きなスポーツ大会の開催が理由だ。中国の影響を懸念する声もある。豪州は予定通り選挙が出来るように資金援助を申し出るが、ソガバレ首相は内政干渉だと非難して拒否している。
【コメント】
 甘い債務の罠が待っているよ、ソガバレさん。

3.中国の大物が国を去る
【記事要旨】
 潘石屹(Pān Shiyì )と张欣;(Zhāng Xīn)は不動産大手SOHOの経営者で中国で最も有名な実業家たちだが、SOHOのCEOを辞任した。すでにパンデミックの時期に二人は米国に移りリモートで経営していた。自由な資本主義社会から国家の制限が厳しい経済への移行が彼らの動きの背景にある。アリババのJack Ma, TikTokのZhang Yimingなどの動きに続くもの。ロックダウンで上海からカナダに逃れたZhou Hangは習政権のロックダウン方針を批判している。
【コメント】
 中国人の名前はいつも漢字で確認してきたが、最近はローマ字の標記だけで理解できる実業家が増えてきた。中国経済の国際化が進んだ象徴だ。

その他:
豪州の気候変動対策法
Australia passed a new cimate bill that codified a pledge to cut its carbon emissions by 43 percent by 2030, and to be net zero by 2050, BBC reports.
ウクライナ原発危機深まる
The head of the Ukrainian national energy company said conditions at the Zaporizhzhia nuclear power plant were getting “worse and worse and worse.”
EUもインフレと戦う
Europe is suffering through economic turmoil. Yesterday, the European Central Bank raised interest rates, an aggressive move to fight inflation.

(2022年9月9日 金曜日)

世界の動き 2022年9月8日 木曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「円安が止まらない」
 金利を上げられない日銀をあざ笑うように投機筋の円売りが進む。日本の投資家の行動としても、円売りドル買い(安い円を売って金利の高いドルへ投資する)が合理的だ。本質的には、日本の国際的なプレゼンスの弱さ・日本経済の弱体化・日本政治の劣化と混乱が原因だろう。国葬をめぐる混乱、旧統一教会と自民党の関係は世界中に喧伝されている。円安が止まる要因は見当たらない。

ニューヨークタイムズ記事
1.プーチンと習が来週会談予定
【記事要旨】
 9月15日16日にウズベキスタンで開催されるアジアの首脳会議で会談予定とロシアは発表するが、中国政府は確認していない。実現すればコロナ感染拡大後初の実会談になる。欧米の制裁でアジア志向を強めるロシアは中国へのパイプラインを建設するモンゴルの大統領とも会談を予定する。
【コメント】
 中露が接近する好ましくない動きだが止められない。

2.インドの強力な経済
【記事要旨】
 世界の主要国の成長が落ち込む中で、インドは今年の成長率を7%と予想する。国際経済から比較的切り離され国内需要に依存し、政府のコロナ対策の経済政策効果(投資の増加と借入の補償)、ロシアからの原油輸入価格の低下等が要因だ。インドの経済規模は英国を抜いて現在世界5位。
【コメント】
 全般に好調だが、若年層の雇用は大変なようだ。インド人は語学能力も高い。日本で大幅に不足するソフト技術者をインドから迎い入れるべきだろう。

3.中国のゼロコロナ政策
【記事要旨】
 数千万人の市民がロックダウンに苦しんでいる。特に若者の失業率は20%に達している。国産ワクチンは有効性が低いと言われるが、老齢者の接種率は低い。10月に3期目の目指す習主席はゼロコロナ政策を堅持している。
【コメント】
 中国は中国で独自の政策を取るのは結構だが国際的なサプライチェーンの混乱には対応が必要だ。中国を「工場」としてみていた企業は対応が楽だ。「製造拠点」「販売市場」としてみてきた企業は対応が大変だ。

その他:
モヘンジョダロって世界遺産だったんですね
Flooding in Pakistan damaged Mohenjo-daro, a UNESCO World Heritage site that is at least 4,500 years old, The South China Morning Post reports. Reuters reports that Shehbaz Sharif, the prime minister, said some areas look “like a sea.”
円安が続く
The Japanese yen continues to slide, Bloomberg reports. It is on track for its worst year on record.
英国のカラフルな新内閣
Liz Truss, Britain’s new prime minister, is assembling a racially diverse but ideologically uniform cabinet. Most are conservatives loyal to her.

(2022年9月8日 木曜日)

世界の動き 2022年9月7日 水曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「物価問題!」
 日本列島改造論がもたらした物価上昇に対して、田中角栄首相がだみ声で切り出す言葉だ。芸人が真似て広まった。
 狂乱物価の時は経済成長も大きかった。給料も伸びたので、物価上昇がそれほど生活に響いたという記憶はない。今は、所得が増えない中での物価上昇なのが厳しい点だ。

ニューヨークタイムズ記事より
1.韓国は台風被害を免れる
【記事要旨】
 浦項市では少なくとも3人が死に停電が広がったが史上8番目の巨大な台風にしては被害は少なかった。政府の準備を評価する専門家もいる。前回のソウルでの洪水対応を批判された尹大統領は今回は周到な対応を指示した。
【コメント】
 韓国で被害が少なかったのは良かったが、タイムズは随分この台風が好きだ。

2.ロシアは北朝鮮から武器を購入
【記事要旨】
 「大量の弾薬とミサイルを買っている」との米国の情報筋が掴んだ情報だが、国連の対北朝鮮制裁への明白な違反だ。イランからのドローン購入に続く動きだ。北朝鮮は、ドネツクとルハンスクを独立国として承認しているが、ドンバス地方へ労働者を提供するとの予想もある。ロシアは中国からも武器輸入を希望しているが、中国はロシア産の原油を輸入しているものの、武器輸出には慎重だ。
【コメント】
 なるほど。困窮している北朝鮮にとっては渡りに船の機会だ。

3.中国がiPhoneに変化を
【記事要旨】
 今日発表されるiPhone14では、生産を支えるFoxconnは生産の一部を中国からインドに移すと伝えられている。しかし、実際は、パンデミック下の移動制限で、アップルのiPhone生産での中国依存は更に進んでいる。従来はiPhoneはカリフォルニアでデザインされ中国で生産されていたが、現在は二つの国が一緒にデザインし生産するということになっている。当初は低賃金と豊富な労働力で米ハイテク企業を引き付けた中国は、その後の製造技術の成長で、大きなパイを得るようになっている。
【コメント】
 中国をサプライチェーンから切りはなすと言っても一筋縄ではいかないのだ。日本企業が簡単に中国から他国へのシフトを勧められるのは、企業活動の統合が出来ていなかった証左でもある。

その他:
中国の大地震
The death toll after an earthquake in southwestern China has risen to at least 65, state media reports.
インドの洪水
Floods in Bengaluru, India’s Silicon Valley, have forced tech workers to ride boats and tractors to work.
英国の新首相
Liz Truss is now Britain’s prime minister.

(2022年9月7日 水曜日)

世界の動き 2022年9月6日 火曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の言葉:
「企業の目的は、それぞれ企業の外にある。企業は社会の機関であり、目的は社会にある。したがって、事業の目的として有効な定義は一つしかない。顧客の創造である。」
 ピーター・ドラッカー『現代の経営』より
 「マーケティングは、顧客から出発する。すなわち人間、現実、欲求、価値から出発する。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。」
 同 『創造する経営者』より
 マーケティングの覇者「電通」はいまどうなっているのだろうか。

電子版の記事から
1.リズ・トラスが英国の次期首相に
【記事要旨】
 保守党の党首選は外相のトラス57.4%、スナク前蔵相が42.6%の得票でトラスが勝利。低税率と小さな政府の主張が160000人の保守党員に支持された。トラスは6年で4人目、女性で3人目の首相に、明日女王の信任を受けて就任予定。タカ派の外相は、エネルギー価格が80%上昇し、来年までに物価が20%上昇すると見込まれる大変な時期に、経済の立直しに加えジョンソン首相の3年間で分断された保守党の再建に立ち向かうことになる。
【コメント】
 燃料価格と食品の高騰は日本も他人ごとではない。財源の厳しい中で我が国は今年の冬にかけてどういった政策を打ち出せるのだろうか。支持率の下がる岸田政権の命取りになりかねない。
 何れにしても47歳の「鉄の女2.0」の手腕を見守りたい。

2.韓国は台風に備える
【記事要旨】
 最大風速216k/hを持つ台風Hinnamnor(台風11号)の進路にある韓国に加え中国と日本でも備えが進んでいる。数週まえの洪水で9人が亡くなって間もないソウルでは、台風は30cm以上の降雨をもたらす恐れ。済州島ではすでに水害が報告されている。
【コメント】
 日本からは少しそれたのでやや安心だが、注意は怠れない。

3.中国で更にロックダウンが進む
【記事要旨】
 成都から深圳、更に大慶ヘとロックダウンが進み60百万人が閉じ込められている。3年にわたるコロナ抑え込み政策で経済成長は鈍化し若者の失業率が急増している。無期限のロックダウンが進む成都は干ばつの進む四川省の州都であり地域の混乱を深めている。10月16日の共産党大会で3期目を目指す習主席はコロナ抑え込みの主導者であり誰も異議を唱えることができない。
【コメント】
 3期目以降もコロナ封じ込めを続けるのだろうか。同様な政策を試行して放棄した我が国への教訓は何だろうか。

その他:
アフガンでの自殺テロ
A suicide attack targeted the Russian embassy in Afghanistan, killing two employees and four Afghan civilians. The bombing was the first strike on a diplomatic mission since the Taliban regained control.
カナダでの刺殺事件
At least 10 people were fatally stabbed in an Indigenous community and nearby village in Saskatchewan, Canada. Here are live updates.
チリの新憲法案は否決される
Voters in Chile rejected a left-leaning constitution that would have guaranteed more than 100 rights.

(2022年9月6日 火曜日)