世界の動き 2022年9月5日 月曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の言葉:
「息切れ倒産」
 コロナ下で借り入れにより資金繰りをつけてきた企業の倒産が始まっている。借り入れに頼って何とか生き残りを図ったものの、売上が回復せず力尽きて倒産するパターンだ。安易な貸し出し増を、国策で求められた金融機関が息切れしないか注視する必要がある。多くの地方銀行が危険水域だ。

1.欧州は経済を守る
【記事要旨】
 週末に、ドイツ、スウェーデン、チェコは冬に備えた経済対策を公表した。フランスも追随予定。プラハでは燃料高騰への大規模抗議デモが土曜に発生し、社会不安の広がりが懸念される。ガスプロムは欧州へガスを供給するノードストリーム1の無期限停止を宣言し、G7はロシア産原油に上限をつけることで対抗。
【コメント】
 欧州の6割が500年来の干ばつに苦しんでいるという報道もある。人為的な苦境と天災のダブルパンチだ。

2.チリで新憲法への国民投票
【記事要旨】
 新憲法案は女性や先住民の権利拡大、社会保障の面で国の大幅な役割強化などがうたわれている。投票の結果はわからないが、可決されれば保守的な憲法が世界でも最も左翼的進歩的憲法になる。
【コメント】
 結果はどうなるか興味深い。軍政から急進左派への政策転換が保証される。もし国民投票で可決されれば。

3.インドの電動リキシャ
【記事要旨】
 バイクと三輪リキシャの電動化がインドで進んでいる。国民の平均所得が2400ドルのインドでは1,000ドルほどでこれらの電動車は販売されており、販売台数は43万台に増えている。大気汚染への対抗策として途上国へ輸出もインドは計画している。充電は、バッテリーの交換で行う。ガソリンを満タンにする半額ですむ。
【コメント】
 コスト次第で需要が急増する好事例。HondaやSuzukiはどうしているのだろうか。

その他:
米国は台湾へ武器売却
The U.S. plans to sell more than $1.1 billion worth of arms to Taiwan that are designed to repel a seaborne invasion. Beijing threatened countermeasures.
前大統領がスリランカに戻る(亡命しても簡単に戻れるのか。。)
Gotabaya Rajapaksa, who was ousted as the president of Sri Lanka this summer, returned to the country on Friday.
更に刑が追加される
Aung San Suu Kyi, Myanmar’s ousted civilian leader, was sentenced to three more years in prison, with hard labor, on Friday. She now faces 20 years.

(2022年9月5日 月曜日)

稲盛和夫さんのこと

 稲盛和夫さんが2022年8月24日に90歳で逝去された。1989年に部下8人とで創業した京都セラミックを時価総額2.8兆円(8月末)に育て上げた日本を代表する企業家だ。

 稲盛さんの経営は詰めるところ「アメーバ経営」と理解している。

 (京セラHPより)「アメーバ経営は、稲盛和夫の「会社経営とは一部の経営トップのみで行うものではなく、全社員が関わって行うものだ」という考えが貫かれています。組織をアメーバと呼ばれる独立採算で運営する小集団に分け、その小さな小集団にリーダーを任命し、共同経営のような形で会社を経営していきます。各アメーバの活動の成果を分かりやすく示すことで、リーダーを中心に全社員が自分たちの収支を意識するようになり、それぞれの持ち場・立場で持てる能力を発揮し、利益確保に取り組むようになります。こうしてアメーバ経営は経営者意識を持ったリーダーを社内に育成すると同時に、全従業員が経営に参画する「全員参加経営」を実現します。」と言うことだ。

 金融機関に勤め、預かった預金が勝手に収益を生み出す商売にどっぷりつかっていたので「アメーバ経営」の理念は新鮮だった、銀行を退職後は、なるべく組織の末端まで収益とコスト意識を持たせる努力をしてきた。そういう意味では私も実践者の一人でもある。

 一度稲盛さんにお目にかかったことがある。友人に「盛和塾」の熱心な会員がいて、私を紹介して下さったのだ。その時はいろいろ忙しくて入会しなかった。謦咳に触れる機会を失ったのは残念だった。ご冥福をお祈りしたい。

(2022年9月4日 日曜日)

FOREIGN AFFAIRS 2022年/9-10月号 「妄想のスパイラル」より

原題は ”Spirals of Delusion”
How AI Distorts Decision-Making and Makes Dictators More Dangerous 

この論考は面白過ぎるのでぜひ一読を勧めたい。

イントロの3段落を示すと、
『人工知能に関する議論は常に、技術の覇権をめぐる中国と米国の対決をめぐるものになる。重要なリソースがデータである場合、10 億人を超える市民を抱え、国家の監視に対する保護が緩い中国が勝つ運命にあるようだ。有名なコンピューター科学者であるカイフー・リーは、データは新しい石油であり、中国は新しい OPEC であると主張している。しかし、優れたテクノロジーが優位性を提供するものであるとすれば、世界一の大学制度と高度な労働力を備えた米国には、依然として優位に立つチャンスがある。どちらの国でも、専門家は、AI の優位性がより広範な経済的および軍事的優位性に自然につながると想定している。

 しかし、覇権競争という観点からAIを考えること は、AI が世界の政治を変えるるより根本的な方法を見落としている。AI は対抗相手への競争を変えるのではなく、ラ自陣営を変える。米国は民主主義国家で、中国は独裁政権であるが、機械学習はそれぞれの政治体制に独自の方法で挑戦する。

米国などの民主主義国家への挑戦はあまりにも目に見えている。機械学習は二極化を促進する可能性があります。つまり、オンラインの世界を通じて政治的分裂を促進する可能性がある。確実にデマが増え、説得力のある偽のスピーチが大規模に生成される。独裁政権への挑戦はより微妙だが、おそらくより腐食性がある。機械学習が民主主義の分裂を反映し強化するのと同じように、独裁政治を混乱させ、コンセンサスの誤った外観を作り出し、根底にある社会の亀裂を手遅れになるまで隠してしまう可能性がある。』

 これから気鋭の学者3人が議論を展開するのであるが、結論部分は以下だ。

『広範な国際的な規制原則を作成することは、AI の政治的リスクに関する知識を広めるのに役立つ可能性がある。この協力的なアプローチは、米中の競争が激化している状況では奇妙に思えるかもしれないが、慎重に調整された政策は、米国と同盟国に役立つかもしれない. 危険な道の 1 つは、米国が AI の優位性をめぐる競争に巻き込まれることだ。これにより、競争関係がさらに拡大します。もう1つは、権威主義の不健全なフィードバック問題を悪化させようとすることだ。どちらも大惨事と戦争の危険がある。したがって、すべての政府が AI の共有リスクを認識し、協力してそれらを軽減する方がはるかに安全だ。』

 FOREIGN AFFAIRSはタダでかなり読めるし日本語翻訳ソフトも使える。
 この論考で寂しいのは日本の存在感が皆無なことだ。

(2022年9月3日 土曜日)

世界の動き 2022年9月2日 金曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の言葉:
『人生とはその「今日一日」の積み重ね、「いま」の連続にほかなりません。』
 亡くなった稲盛和夫氏の言葉

1.国連報告は中国の人権侵害を非難
【記事要旨】
 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は8月31日、中国・新疆ウイグル自治区の人権問題に関する報告書を公表。48ページの報告書は、ジェノサイド(虐殺)という言葉は使用していないものの、テロ対策名目で、ウイグル人やイスラム教徒の少数民族に対し、拷問や強制不妊といった重大な人権侵害が行われていると指摘した。報告書はもともと、22年初めまでには公表される予定だった。中国政府の圧力で公表が遅れたとみられ、バチェレ国連人権高等弁務官が退官する直前に発表された。「職業訓練施設」と呼ばれる強制収容所に拘束されていた26人にインタビューした内容をまとめており、元被拘禁者の3分の2は、施設または移送中に拷問や虐待を受けたと主張する。中国政府は131ページの反論文書を発表し「ウソと捏造」による報告書で、中国はテロ対策は止めないと主張している。
【コメント】
 強権中国にとっては単なる紙切れと言う位置づけだ。国連の負担金を減らすとか言い出せば国連自体がビビることもあるだろう。わが物青でふるまうドラゴンに世界はどのように対応すべきなのだろうか。

2.IAEAがウクライナ原発を調査
【記事要旨】
 ウクライナの国営原子力企業「エネルゴアトム」は1日、国際原子力機関(IAEA)の調査団が、ザポリージャ原子力発電所に到着したことを発表。到着前に、原発敷地内への砲撃で稼働中の原子炉2基のうち1基が緊急停止した。IAEA側は数日間の調査を予定しているが、地元の親露派幹部は露有力紙に対し、調査は「1日のみ」と話した。原発の損傷状況などの調査に必要な時間を十分に確保できない可能性がある。
【コメント】
 危険な任務だがIAEAには頑張ってもらいたい。彼らがいる間は少なくとも原子炉への攻撃は避けられるだろうから。

3.中国は成都を封鎖
【記事要旨】
 4月の上海のロックダウンに次ぐ21百万に都市の大規模なロックダウン。8月25日以降700人、水曜には157人の陽性者が出たことに対する処置だ。GoogleやAppleといったハイテク企業は地政学リスクとサプライチェーンの混乱に対応し一部事業を中国から他国へ移している。
【コメント】
 700人でロックダウンとは凄い。日本での第一波の時の緊張感がまだ全土を支配しているのだろうか。

その他:
スリランカへのIMFの支援
Sri Lanka and the International Monetary Fund reached a preliminary agreement on a bailout package.
半導体の輸出禁止
The Biden administration imposed new restrictions on sales of some sophisticated computer chips to China and Russia.
東京だは、養老院で働く赤ちゃん! 面白い記事!
A nursing home in Tokyo has been recruiting an unusual class of workers to enliven its residents’ days: babies. Socializing across generations has been shown to draw older people out, making them smile and talk more. The young workers, accompanied by their parents or guardians, spend time with residents and offer them hugs. In turn, they are rewarded in diapers, baby formula and free baby photo shoots.

(2022年9月2日 金曜日)

世界の動き 2022年9月1日 木曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「表現の自由」
 ゴルバチョフが自分が行ったソ連の改革で最も重要だと考えていたものだそうだ。

1.権威主義者へのゴルバチョフの教訓
【記事要旨】
 ゴルバチョフが火曜に亡くなった。西側では冷戦を平和裏に終わらあせた指導者として称賛されているが、権力を急速に衰退させた指導者とみる人たちもいる。習主席の3期目を目ざす中国では、ソ連の崩壊は注意すべき例と見られている。プーチンはソ連の崩壊を、史上最大の悲劇と呼んでいる。親プーチンのロシアのジャーナリストは、「ゴルバチョフの改革はすべて無くなり灰となり煙に消えた」と述べる。
【コメント】
 先日NHKで最近のゴルバチョフの生活を取り上げた番組を見た。郷里に住み、静かな生活を送っている様子だった。

2.短くなる米国の平均寿命
【記事要旨】
 2019年に79歳だったが今は76歳になり、3年も短くなった。コロナによる死亡増加に加え、事故や薬物接種が影響。病気では心臓疾患、慢性肝臓病、肝硬変が増加。コロナに苦しんだアメリカインディアンやアラスカエスキモーでは平均寿命が65歳にまで低下した。
【コメント】
 日本ではコロナ下でも死者数は平年のトレンドと比べ減少しているという結果だそうだ。米国での猛威に驚く。

3.台風Hinnamonor(日本名:台風11号)が猛威
(記事要旨】
 最大瞬間風速が時速172マイル(秒速240メートル)の今年最大の台風が沖縄を襲っている。日本の気象庁は木曜までに日本各地で20センチ以上の降雨が予想され家屋の被害が出ると警告している。気候変動による海水温の上昇が台風を苛烈にすると専門家は警告している。
【コメント】
 海外での台風の名前の付け方がよくわからない。Hinnamonorの由来がわかりませんでした。

その他:
台湾は侵略には反撃する
Taiwan said it would counterattack if Chinese forces entered its territory, Reuters reported.
日本では入国制限を緩和
Japan rolled back some of its strict Covid restrictions on tourism, but individual tourists who are not part of a package tour are still not permitted, The Japan Times reports.
AIを使った調査
French Tax Collectors Use A.I. to Spot Thousands of Undeclared Pools
Algorithms combing through satellite photos found over 20,000 unreported

(2022年9月1日 木曜日)