「悲観的に考える」と「投資家の本分」と

キャッシー・ウッドという投資家をご存じだろうか。

投資運用会社アーク・インベストメントの創業者にして、ARK Innovation ETF【ARKK】を運用する女性投資ファンドマネージャーである。2021年まではARKKはベンチマークであるSP500の4倍以上のリターンを挙げ、同氏は天才の名前をほしいままにしていたが、2022年からの環境変化でARKKも大暴落の最中にある。

Tesla・ZOOM・Conbase・Unity・Spotifyなど、最先端とも言うべき銘柄を「ノアの方舟ARK」のごとく詰め込んだのが【ARKK】だった。

少数の限られた株式に大きく張る手法は当たれば大きいが、2022年には、金融引き締めや利上げなどの環境悪化でことごとく急落しており、【ARKK】も2021年の最高値から70%以上値を下げている。

2021年後半から市場環境が反転する過程で、彼女のYouTubeを何度か見てきたが、金利上昇局面でも少しも動じず「今はインフレではない。デフレだ」と繰り返していたのが目に焼き付いている。とてもエッジの立った投資家だという印象を受けたのだ。

さて、今日のテーマ「悲観的に考える」で何を言いたいか。

金利の上昇、コロナの蔓延とサプライチェーンへの影響、ウクライナの戦争と、これでもかと悪いニュースが重なり、悲観的なコメントしか出来ないのが普通だろう。キャッシーのように断定的に世の中と逆のコメントをするのは勇気がいる状況だ。

このような状況で、私が言いたいのは、悪い情報に明るい側面は無いのだろうか考えようということだ。

・ロシアのウクライナの侵攻:
確かにロシアの理不尽なウクライナ侵攻でウクライナの国民は塗炭の苦しみを味わっているが、西欧の考え方のすり合わせ、特にNATOとEUの関係の整理、に役に立ったのではないか。ハンガリーやトルコのような考えをする国もあれば、フィンランドやスウェーデンのように考える国もある。今回の戦乱が無ければあらわにならなかった立場の違いではないだろうか。米欧の民主主義国の一体化が進み、経済安保で大きな進展があったともいえるだろう。
また、核戦争の脅威が現実にあることを指摘してくれた。人間の愚かさを見くびってはいけないのだから、国として、国民としてやることがあることを再認識させてくれた。平和ボケした日本にはよい薬だと思われる。
エネルギーを友好国への依存することがどんなに恐ろしいことかをおもい起こさせてくれた。
・コロナの蔓延:
先進国が抜け駆け的に対策を進めても世界全体で沈静化できなければ問題の解決にならないことが明らかになった。COVAXがまがりなりにも機能して来たのは大きな成果と言えるのではないだろうか。
また、国内で人種・民族紛争にうつつを抜かす国ほど解決に時間がかかることが明らかになった。
・インフレの増嵩
インフレに対してヘッジになるのが運用の基本ではなかったのだろうか。株に大きく賭ける運用の姿勢がそもそも邪道ではなかったのだろうか?
お客の資産を減らさないのをモットーとするスイスの(日本の?)銀行家の知恵が活きる時代ではないのだろうか。

さて、私が申し上げたいことを要すれば、以下に尽きる。
・悲観の中に、楽観の芽を見つけて行くのが投資家の本分だろう。
・国の失政をあげつらわず、自分で出来る工夫をするのも、投資家の本分だろう。

(2022年5月21日 土曜日)

世界の動き 2022年5月20日 金曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より
今日の一言:
今朝は所用があり発信が4時間近く遅れました。申し訳ありません。こんな時は
“Better late than never!” 「遅くてもやらないよりはまし」
と言い訳します。

1.ロシアはウクライナ南東部の支配を計画
【記事要旨】
 ウクライナの占領地を視察した露高官は「ロシア一家にとって重要な地域になる」と占領地支配方針を表明。ロシアの占領地のコントロールは弱くても、欧州の穀倉地帯、有数の原子力発電所、重要な港が含まれ、ウクライナ経済への影響は甚大。米上院は400憶ドルのウクライナへの軍事・生活支援を可決。この2か月で米の支援は540億ドルに上っている。制裁の影響は軽微とプーチン大統領は言うが徐々に露の日常生活に影響が出ている。ハンガリーはロシアからのエネルギー禁輸にいまだ反対。
【コメント】
 南東部では露とウクライナの一進一退の攻防が続きそう。破壊された市街の映像に胸が痛む。

2.ウクライナでの戦争がアフリカの飢餓を招く
【記事要旨】
 コロナ禍と南米での干ばつのさなかに2大食料生産国、ロシアとウクライナ、を巻き込んだ戦争が農作物に大きな影響を与えている。アフリカ諸国のうち14か国は食料輸入の5割以上をウクライナとロシアに依存している。ソマリアを始め東アフリカ諸国での飢餓が懸念される。些細な食糧価格の上昇も弱小国には激甚な影響を与える。国連FAOは西・中央アフリカでの飢餓に直面する人口が戦争前の4倍の41百万人に上ると推定する。
【コメント】
 限界的な生活をしている人々は少しの変調で飢餓に直面する。日本ではおびただしい食料が廃棄されているわけだが、それを飢餓に苦しむ人々に送るすべがない。世界的なフローはさておき、日本の貧困家庭でも食べるものに事欠く人もいるようだ。
 日本国内であれ世界的であれ所得の再配分、過剰物資の流動化、民族的な政治運動の解消、もう何十年も繰り返されてきたテーマだが我々には解決策が見つからない。結局はレッセフェール、市場原理に任せる、というのが万人が合意できる解決策と言うことになる。

3.オーストラリアの民主主義を女性がよみがえらす
【記事要旨】
 約25人の独立系女性候補ーほとんどが成功した経歴の持ち主ーが腐敗し、右傾化し、女性嫌悪に傾く豪州の政治に新風をもたらそうとしている。The tealsと呼ばれるこの人たちは、土曜の選挙で与党の自由党連合も野党の労働党も過半数が獲得できない際には、政府に迅速な反応を期待し高い生産性を期待するtealsは大きな力を発揮すると見られている。Tealsは親ビジネス、親イノベーション(特にエネルギー分野で)、親平等(特に人種差別と性差別に関し)でありClimate200というグループ名で850万ドルの政治資金を集めてきた。
【コメント】
 このような動きが日本でも出てきてほしいと思うが、女性間でのやっかみや嫉みが大きい我が国ではなかなか出てこないのかなとも思う。

 人口の3 %が変われば社会は変化するという政治研究もある。沈滞した世襲政治に変化をもたらすものは何なのだろうか。

その他:
日本の誤入金事件
A city worker in Japan wired a 24-year-old man an entire town’s Covid aid by mistake. The recipient gambled it away and has been charged with fraud.
イスラエルの不安定な政権
Israel’s opposition now has a two-seat majority in Parliament, raising the possibility of a fifth election in three years.
英米法では
In the 17th century, an English judge, Lord Matthew Hale, wrote that women were contractually obligated to their husbands. That ruling still looms large in the U.S., Britain and India — where a Times reporter spent the past two weeks speaking to women about their struggle to balance between their ambitions in a modernizing economy and the constraints of a patriarchal system.

(2022年5月20日 金曜日)

世界の動き 2022年5月19日 木曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より
今日の一言:
「敵の敵は味方」
 The enemy of the enemy is an ally

1.トルコはNATOの拡大を阻むか?
【記事要旨】
 水曜日にスウェーデンとフィンランドはNATO参加要望を正式に発表するが、同日トルコは反対を表明。同国の政治問題、特にトルコ政府がテロリストと見做すクルド人グループへの西側の支持、に国際的な譲歩を引き出し、エルドアン大統領の地盤固めを狙う動き。また、ハンガリーのオルバン首相は西側のロシアからのエネルギー輸入阻止の努力に反対している。
【コメント】
 トルコ(というやや「異分子」)がそもそもNATO加盟国というのが不思議。ロシアはそのころは不満を漏らさなかったのだろうか。いずれにして外国を見ると外交カードの使い方がとても上手。我が国も外交上の揉め事や懸念が数多くあるが、交渉の引き出しの使い方が上手くない。

2.北朝鮮は中国を習う
【記事要旨】
 コロナの感染爆発が発表され金正恩主席は中国に倣えと指令したが、通常の食料確保が困難で医薬品が不足する北朝鮮では中国型のロックダウンは破局をもたらすと専門家は指摘。検査キットの不足する北朝鮮では発熱者を公表しているがすでに数十万人を数える。
【コメント】
 中国からワクチンと治療薬を入れているようだが、国民全員をカバーできるのには長い時間がかかるだろう。

3.中国の新しい検閲
【記事要旨】
 中国政府のインターネット検閲で、発言者の場所がタグ付けされる規制が始まった。海外や地方からの政府批判発言を見つける狙い。政府批判の意見には、国家主義的なユーザーから、反政府主義者、独立派、非愛国者、クズ、といった罵詈雑言が浴びせられている。場所のタグ付けはロシアのウクライナ侵攻以来始まったが、上海でのロックダウンへの批判が噴出するいまは、広く非愛国者を指摘するために使われている。
【コメント】
 ますます統制の強化された生きにくい世界が身近に迫っている。

その他:
ロシアとウクライナの捕虜の取扱い
Russia said that nearly 1,000 fighters had surrendered to Kremlin custody at the Mariupol steel plant.
In a Kyiv court on Wednesday, a Russian soldier pleaded guilty to having shot a civilian, during the first Ukrainian trial for a potential war crime.
日本の観光客入国制限緩和
Japan will admit small groups of fully vaccinated and boosted tourists from the U.S. Thailand, Singapore and Australia as a test before reopening fully.
米国でのインド的な火葬
A small Colorado town maintains the only public outdoor funeral pyre in the U.S., a common practice in India. One man, Dr. Philip Incao, saw in it his own perfect ending.

(2022年5月19日 木曜日)

世界の動き 2022年5月18日 水曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より
今日の一言:
「撤退」か「降伏」か?
 日本の報道でマリウポリの状況について「撤退」か「降伏」か使われる言葉が違っている。以下をみればわかるがタイムズは「撤退」派だ。
 鉄鋼所に残ったウクライナ部隊はロシア軍に投降したのが事実のようだから「降伏」という用語が正しいのではないかと思う。
記者の心境で言葉が選ばれるのは避けられないが、事実に近い用語が尊重されるべきだ。

1.危機のふちをふらふら歩くスリランカ
【記事要旨】
 新首相Ranil Wickremesingheはスリランカの経済状況の現実は30年間の内乱で外見より悪く、石油の輸入のために5百万ドルを使うことも出来ず油槽船が沖待ちしていると表明。国民の多くは食料の確保が困難で燃料は使えす医療品は病院に供給されていない。前政権Rajapaksa一族の支配下で外貨準備は2019年の75億ドルからゼロに減少。他の中低所得国の経済もウクライナの戦争と中国の経済停滞で大打撃を受ける。
【コメント】
 圧政と腐敗という人為的要素が経済を窮地に陥れている。新政権が急に状況を改善するのは困難だから、成長路線に戻れる基本路線を支える国際的な支援と国民の我慢強さが必要だ。

2.上海ではロックダウン継続
【記事要旨】
 市保健局は上海は「社会的ゼロ(コロナ)」を達成したと発表したが、住民はロックダウンの継続と不満をWeiboで発表している。一部ビジネス、バス交通は再開するが、感染テストを強制され移動できず日用品に事欠く市民の不満は高まる。市当局は6月までに制限は全廃と言うが、学校や文化施設の閉鎖は続いている。
【コメント】
 世界の動きから見ると明らかに「非合理」な政策をどのように剛腕中国政府が軟着陸させるかは見もの。話はそれるが、日本での入国制限の緩和は大きな混乱を招きそう。「統一感」も「剛腕」も無いので。

3.インドのヘルスワーカーの状況
【記事要旨】
 100万人の女性がインドの女性・子供という弱者にヘルスケアを提供している。パンデック下での激務後、これらのワーカーは現状月40ドルほどの給与の150ドルへの引き上げを要望している。インドでは公的医療は貧弱で医師60万人、看護師2百万人が不足していると言われる。これらワーカーは僻地医療を支えワクチン接種の推進に大きな役割を果たした。
【コメント】
 こうした一部の人たちの英雄的努力に支えられるいるのは、日本でも同様なのかなと思う。医療制度のメッシュを見回して、足らずを補いダブりを無くす努力を政府にはしてほしい。それが出来るのは政府だけだ。

その他:
ヒズボラってまだ勢力を持っていたのか
Hezbollah lost its majority in Lebanon after voters pulled for independent candidates in parliamentary elections.
マリウポリの状況
Ukraine declared an end to its combat mission in Mariupol and ordered some soldiers at the steel plant to surrender to Russian forces.
カナダの英王室への考え
Canadians widely respect Queen Elizabeth II, the ailing 96-year-old British monarch. But many are increasingly skeptical of the monarchy and also dislike Prince Charles, who is touring the country this week to celebrate her Platinum Jubilee.
“The general approach now in Canada is that the monarchy is there, it’s not broken,” one expert said. “Don’t deal with it, but also don’t give it any more room than it actually needs.”

(2022年5月18日 水曜日)

世界の動き 2022年5月17日 火曜日

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
 日経新聞に「身代金要求ウィルス」が大きなビジネスに育っているとの報道があった。毎日メールを開くを数多くのフィッシングメールが届く。便利な道具には危機が忍ばされているのだ。
 「感度を高め引っかからないように個人的な努力を続ける」ことしか有効な対策はなさそうだ。ジャンクメール・フィッシングメールをしっかり押さえてくれる対策ソフトはまだない。有効なソフトが開発されれば巨大なビジネスになるだろう。

1.ロシアでは東部での攻勢を弱める
【記事要旨】
 米ISW研究所の発表ではロシアは侵攻当初の計画を縮小しドンバス地域の確保を目標にしているがそれにも頓挫している。日曜にウクライナ軍はウクライナ第二の都市カルキウ近郊でロシア国境に到達した映像を公開。NATOはフィンランドとスウェーデンの加盟を早期に承認の見込み。NATO14か国からの軍隊がエストニアで大規模演習を実施。ロシアでは戦争可能な予備役も払底し民間企業や私的軍隊を動員。ロシア国民の多くにはそうした状況は知らされていない。
【コメント】
 NATOに対抗しプーチンはロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)のサミット開催した。参加諸国からの積極的な支持は得られなかった模様。プーチンの表情に精彩が欠ける。健康不安説は本当だろうか。

2.オーストラリアでの山火事がもたらすもの
【記事要旨】
 2019年から2000年に発生した山火事で焼失した家宅はまだ10分の1しか再建されていない。政権にある保守同盟は議会で1議席の多数を有するのみ。従来都市部は弱く、地方で支持を得ていたが、山火事で、日曜の総選挙では、保守が大敗する可能性がある。
【コメント】
 気候変動が直接政治への変化をもたらす事例だ。日本でも集中豪雨や台風の激化があるが、それが政治に変化を求めるまでには至っていない。日本の政治環境は緩くそれが現政権を安定させている。

3.北京大学でコロナ対策へ抗議
【記事要旨】
 学生によれば、「教師や家族が自由にキャンパスの出入りが出来るのに、学生は食料に不足し孤立している。この状況はジョークだ。」 抗議に対し当局は壁の設置て対応。当局は情報の拡散を押さえるが、北京大学は従来文化と政治面で特殊な地位を占め動向が注視される。
【コメント】
 天安門事件も北京大学の学生の動きが発端だった。今は小さな動きかも知れないが北京でどのように動きが広まるか続報に期待したい。

その他:
フランスの首相は左派から
President Emmanuel Macron of France named a new, left-leaning and climate-focused prime minister: Élisabeth Borne. Currently the minister of labor, she will be the second woman to occupy the position.
バッファローでの銃乱射事件の理論的根拠
Some right-wing politicians have helped promote “replacement theory,” the racist ideology that the gunman espoused. In recent years, other perpetrators of mass shootings have also cited the idea, popularized on Tucker Carlson’s Fox News show.
修道女の生活が見られる?
Nuns are joining TikTok, offering a window into their cloistered experiences. “We’re not all grim old ladies reading the Bible,” one said.

(2022年5月17日 火曜日)