世界の動き 2022年5月16日 月曜日

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
 沖縄復帰から50年。私が20歳の時の出来事だったが、その時の興奮は良く覚えている。佐藤首相の名言「核抜き、本土並み」も。
 国際情勢は米軍基地を簡単に減らせない状況にあるが、基地機能の集約化、日米地位協定の改訂を進めてもらいたいものだ。

1.北朝鮮での感染爆発続く
【記事要旨】
 政府は発熱症状のあるコロナ患者は金曜の18000人から土曜には174400人になったと発表。先月来の累計は524400人。北朝鮮では一部エリート以外はワクチン接種が進んでいない。韓国は検査キット、ワクチンや治療薬の支援を表明。
【感想】
 あれだけ厳格なゼロコロナ策を取ってきてもウィルスの侵入は防げず、一度侵入されたらワクチン未接種の国民にあっという間に広がる。26百万を擁する国家での舵取りが注目される。経済政策と違い部下の責任には出来ないだろうから金政権を揺らがせる事態になりかねない。

2.インドは小麦輸出を禁止
【記事要旨】
 世界的な食糧需給の不安定に対応し世界第二位の小麦生産国であるインドの食糧相は輸出禁止を発表。4月にモディ首相はバイデン大統領に小麦備蓄の放出を約したのにこの決定発表。ウクライナとロシアの戦争、黒海の封鎖、インドの熱波、中国の豪雨が重なり小麦生産は打撃を受けている。
【感想】
 前にも書いたがリスクはいくつか同時に顕在化するとコントロールが急に困難になる。人の努力で解決できるのは「戦争」だ。世界の指導者が努力してウクライナでの戦争を止めることが「今」求められている。

3.韓国で手術室の録画が義務化
【記事要旨】
 韓国は全身麻酔下で手術する際は録画を義務化する数か国の一つになった。医師の監督がない手術が過去8年で5件の死亡事故をもたらした。医師が手術を看護師に代役させ手術手続きを膨らませ収益の最大化を目指していると監視グループは語る。倫理学者と医師からは、患者のプライバシーの保護、医師のモラル維持、危険のある手術への取組へのしり込み、といった問題があるという指摘がある。
【感想】
 国立大学の付属病院で不慣れな医師が患者を何人も死なせた事件があったが、その後の議論はどうなっているのだろうか。喉元すぎれば日本のマスコミは取り上げない。

その他:
NATO加盟
Finland’s government and Sweden’s governing party confirmed that they would seek NATO membership on Sunday, another strategic setback for Russia.
UAEの指導者
The U.A.E. has a new leader, Sheikh Mohammed bin Zayed Al Nahyan. His half brother Sheikh Khalifa bin Zayed died on Friday, after leading the Persian Gulf country for 18 years.
K-Tatooですか。
Tattooing without a medical license is illegal in South Korea, where decorative body art has long been associated with organized crime. But the law is crashing into rising international demand for what are known as “k-tattoos,” and the country’s tattoo artists argue that it’s time to end the stigma against their business.

(2022年5月16日 月曜日)

コロナ後遺症をめぐる労務問題

5月14日付のニューヨークタイムズによれば、米国では約700万人がコロナの後遺症で就業不能に陥り、大きな社会問題になっているとのことだ。

 米国での最近までの陽性確認数の累計は8240万人だから、感染者の約8.5%が後遺症に苦しんでいることになる。タイムズの記事によれば、症状が軽かった若者が仕事に戻ってほどなく後遺症に苦しむ事例が多いそうだ。後遺症での休職は失業保険の対象だそうだが、後遺症かどうかの認定が簡単ではなく、保険をもらえずに職場に居づらくなって退職する若者が多い。米国で採用しようにもできない仕事のうちの15%がこういったコロナ後遺症で充足できないのだという。後遺症はワクチン接種率の低い南部で多く見られ、接種の進む北東部との新たな南北問題の発生という見かたも出て来ている。

 日本の感染者累計は833万人。米国の約10分の1だ。さすれば、我国でも、70万人ぐらいはコロナ後遺症に悩む若者がいてもよさそうだが、日本では後遺症に関する報道は極めて少なく、詳細はやぶの中だ。

 厚生労働省のHPを見ると以下の記述がある。
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<感染し休業する場合>
問1 新型コロナウイルスに感染したため会社を休む場合、休業手当は支払われますか。
回答: 新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当は支払われません。 なお、被用者保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。 具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。 具体的な申請手続き等の詳細については、加入する保険者に確認ください。
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一方、後遺症についての厚生労働省の説明は以下だ。
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<感染後の職場復帰>
問2 新型コロナウイルス感染症に感染し、治療・療養が終わりましたが疲労感、息苦しさなどの症状が続いています。どうしたらよいでしょうか。
回答:新型コロナウイルス感染症になった後、治療や療養が終わっても一部の症状が長引く人がいることが分かってきております。長引く症状(いわゆる後遺症)については、令和3年6月16日に以下の様に3つの研究班から報告されており、詳細は参考からご確認頂けます。今後も引き続き研究を進め、新たに分かってきた情報については順次明らかにして参ります。
療養後にもこのような症状が継続している場合には、使用者は労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮を行うこととされていることなどを踏まえ、主治医等の意見を聞いた上で、会社の担当者等に勤務時間の短縮やテレワークの活用等の負担軽減の措置がとれないかご相談いただくことが重要です。
① 2020年9月~2021年5月にCOVID-19で入院した中等症以上の例において、退院3ヶ月後に肺CT画像上で何らかの画像所見があった者は353例中190例、肺機能検査の結果では肺拡散能(DLCO)が障害されやすい、自覚症状はとして筋力低下と息苦しさは明確に重症度に依存
② 2020年1月~2021年2月にCOVID-19 PCR検査もしくは抗原検査陽性で入院した症例のうち、診断後6ヶ月経過した246例において症状が残っている人の割合は、疲労感・倦怠感21%、息苦しさ13%、睡眠障害・思考力や集中力低下11%、脱毛10%、筋力低下・頭痛・嗅覚味覚障害9%
③ 2021年2月~2021年5月に病院入院中、ホテル療養中の無症状・軽症・中等症のCOVID-19患者(20歳~59歳)の参加希望者において、1か月後までの改善率は嗅覚障害が60%、味覚障害が84%であり多くの味覚障害例は嗅覚障害に伴う風味障害の可能性が高い
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この回答は長いが、労災が適用されるかどうかの説明がなく、核心からずれている。結局は、日本でもルールははっきりしていないと考えるのが妥当なのだろう。

 業務に関連してコロナに罹患すれば労災に認定され、後遺症も労災に認定されるが、空気感染するコロナでは、業務由来の感染かどうか判断が難しいケースが多そうだ。

 労使間で話し合いをしっかり行い、コロナ後遺症への対応を整備しておくべきだろう。「うちの会社はここまで社員の面倒をしっかり見てくれる」という従業員の意識こそが、企業の生産性向上の要だろうと思われるからだ。

(2022年5月15日 日曜日)

「人的資本」の情報開示に思う

今朝(2022年5月14日土曜)の日経一面トップに、「『人的資本』情報開示へ スキルや女性登用 人材に投資 政府指針」という見出しが躍っている。しかも、「有報記載、23年度義務も」という小見出しもある。

記事を読むと、19項目で人的資本の開示を促すそうで、主な開示例が表になっている。人材育成、多様性、健康安全、労働慣行から自社に適した項目を選び、具体的な数値目標や事例の開示を求めるそうだ。

やれやれ、また我が国が得意な「先進の欧米の開示を日本にも取り入れる」動きだ。アメリカではどうなっているか見てみよう。ハーバード・ロー・スクールのセミナー(2021年2月)の記事から引用する。
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(引用)
ほとんどの企業は、10-K(筆者注:日本の有価証券報告書に相当)の冒頭にある「事業の説明」に人的資本の開示を公開しています。いくつかの企業(たとえば、QUALCOMMやVisa)は、10-Kの人的資本に関するいくつかの段落を提供し、委任勧誘状または企業のWebサイトに投稿された文書ではるかに長い議論を読者に紹介しています。

一般的に取り上げられる人気のあるトピックは次のとおりです。

・従業員の総数、各主要地域の数または割合、フルタイム、パートタイム、季節を含む従業員の種類別の内訳、管理、管理、エンジニアリングなど、労働力の構成に関する事実、組合か非組合かを問わず、スキルの有る熟練労働者と時間労働者。
・企業文化の声明とコアバリューの特定。
・取締役会、上級管理職、場合によっては従業員で構成されるさまざまな評議会または諮問グループによるガバナンスおよび人的資本イニシアチブの監視の説明。
・多様性と包含に関連する企業のイニシアチブと実情。
・退職金や福利厚生、生活賃金への取り組みなど、全従業員プログラムに重点を置いた、総報酬の概要。
・人材育成とトレーニングについての議論。
・採用と維持の慣行。
・従業員エンゲージメント調査の使用。
・同一労働同一賃金。と
・健康と安全についての企業のイニシアチブと測定基準。

私たちがレビューした企業は、一般的にこれらのトピックのすべてに対応しているわけではないことに注意してください。代わりに、ほとんどの企業は、このメニューから、業界およびビジネス戦略に最も関連性があると見なす3〜6個のトピックを選択しました。

非常に明確に、人的資本管理の開示は高度に個別化され、同じスペースで活動している直接の競合他社でさえ、企業間の比較を行うことは不可能ではないにしても困難になります。
(引用終わり)
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米国でさえ個別企業にとって対応が困難な人的資本についての開示が、我が国で政府に強要されるとしたら、それがもたらす混乱は容易に想像がつく。

日本再興戦略から始まったコーポレートガバナンス・コードは我が国のガバナンスを「形式的に」欧米スタンダードに近づけた。しかし、一流企業での検査不正が間断なく相次ぎ、ガバナンスが良くなった実感は乏しい。ガバナンスの改善が業績向上に結び付いたと言われる企業は寡聞にして知らない。

政府にあれこれ云われなくても「人的資本の拡充」は、個々の企業が経営の重要事項として認識しているはずだ。実際にやっていることを飾らずに開示し、足らないところは改善に努めれば良い。

「仏作って魂入れず」の愚を再度犯すのは避けたい。

(2022年5月14日 土曜日)

世界の動き 2022年5月3日 金曜日

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
今日は13日の金曜日。
「イエス・キリストが磔刑につけられたのが13日の金曜日であり、キリスト教徒は忌むべき日」と考えられているが、実は、1年の間に必ず1回以上、最大で年3回、13日の金曜日が現れるそうで、それほど珍しくはない。

1.誰が銃弾を放ったのか
【記事要旨】
 アルジャジーラの記者Shireen Abu Aklehを殺した銃弾は誰が放ったのか。イスラエルはパレスチナ政府に合同調査を呼び掛けるも、パレスチナ政府はイスラエルを信頼できないとして拒否。イスラエルは銃弾の検査を要求するがパレスチナは提供せず、イスラエルもパレスチナもM16ライフルを使用しており問題を複雑化。殺された記者は数週間の暴動中取材を続けていた。葬儀はウェストバンクの中心であるラマラで行われ大勢のパレスチナ人が集まった。
【感想】
 昨日に続きAbu Aklehの記事。日本では報道が殆どないが、BBCでも大きなニュースになっていた。

2.ウクライナでの戦争がNATOを拡大?
【記事要旨】
 プーチンのロシアの政策が、逆説的に、フィンランドとスウェーデンのNATO参加の動きをもたらした。木曜にフィンランドの首相と大統領はNATO参加の考えを表明し月曜に議会で承認の見込み。NATO事務総長は参加歓迎。200年以上中立政策を取ってきたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟は大きな政策変換。露はフィンランドのNATO加盟は大きな脅威であり対応すると表明。正式加盟までには一年以上かかる見込みでその間の保証として英国が両国の防衛を約束。
【感想】
 ロシアは「自業自得」とは決して考えないだろうからこれからの動きに目が離せない。「中立」「専守防衛」の両国のNATO参加は我が国の防衛・防衛費論議にも影響するだろう。
 フィンランドはロシアと1300kmの国境を接しており、日本でいえば青森から宮崎までの距離。これだけ接していると不安にもなる。今のロシアは全く信頼できず、暴力的な行為を予見できない。

3.北朝鮮でのコロナ爆発
【記事要旨】
 全国でのロックダウンが指示されたが、殆ど全国民がワクチン接種していない国での感染爆発を防ぐのは困難。長年の国連からの経済制裁とコロナ防疫のための2年前からの中国国境の閉鎖が経済状況を劣悪にしている。ロックダウンの発表後に短距離ミサイル3発を発射し人民を鼓舞。
【感想】
 今までゼロだと言ってきたのに感染を公表するとは、隠しきれなくなったということだろう。医療体制も整っていないから感染爆発したらどうなるのだろうか。金王朝への影響を注視したい。

その他:
原理的なイスラム教では同性愛は死刑ですから
A popular podcast host in Indonesia deleted an episode with a gay married couple after backlash from conservative fans and Muslim religious authorities.
珍しいエルサルバドルの記事
El Salvador has imprisoned more than 25,000 people in about a month and a half after suspending civil liberties amid a crackdown on gang violence.

恐怖映画の新潮流、「母親」?

Several new horror movies and shows hinge on mothers, our critic Amanda Hess writes: “Their stories signal that there is something psychologically harrowing about the role of motherhood itself.”

(2022.5.13 Friday)

世界の動き 2022.5.12 Thursday

N.Y. Times 電子版より
今日の一言:
日本の自殺者は年間2万人以上いるが有名人の自殺にはやはり驚く。特に喜劇人の自殺には。明るい顔の蔭での人生の悩みに思いを致すからだ。ご冥福を祈りたい。

1.アルジャジーラの記者がウェストバンクで銃撃され死亡
【記事要旨】
 アルジャジーラのパレスチナ系米人であるShireen Abu Aklehが取材中ウェストバンクで銃撃され死亡した。パレスチナ政府はイスラエル軍の発砲によるものと発表。イスラエスはパレスチアの銃撃を調査中と発表。現地にいた他の記者は当時は争いがなく、Abu Akleh個人を狙った銃撃と証言。彼女はプレスを示す防弾チョッキを着用していたが背後からうたれた。
【感想】
 プレスへの政府の圧力には徹底抗議するTimesの意思の表れであるトップニュース。パレスチナ寄りのアルジャジーラは常にイスラエルの頭痛の種だった。イスラエル政府の警告だろう。

2.戦争が中国での小麦収穫を下げる
【記事要旨】
 ロシアの侵入後ウクライナの小麦収穫は減少。干ばつがインド、北アフリカ、アメリカで収量減少。中国の農業相は昨年秋の豪雨により国内の小麦は歴史的な不作と発表。コロナのロックダウンで農作業と肥料の輸入に影響あり、肥料の値上がりで農民は使用を減らし更なる収穫減に。昨年7月以来小麦の価格は80%高騰。中国は小麦の最大の生産国であり消費国。中国での不作は世界の不安を増幅。
【感想】
 一つのリスクが顕在化しても対応可能。二つだと何とか可能。それ以上のリスクが一度に顕在化すると対応は難しい。
 戦争、天候不順、不作、肥料の不足、価格高騰という要因がある。この要因のループの大きな原因である戦争を早く終結しなければ不安は解消しない。

3.インドで宗教紛争が激化
【記事要旨】
 ヒンズー教徒とイスラム教徒間の紛争激化がインドに不安定をもたらす。紛争激化に対し政府はイスラム教徒への弾圧強化で対応。ヒンズー教右翼はムスリムへの攻撃を強め二級市民として指弾。以前はそのような動きは限定的だったがSNSの普及でインド全土に広がってきた。裁判所もこの動きに加担。
【感想】
 一年に何回かは宗教紛争が起きているインド。多神教のヒンズーと、原理主義的な一神教のイスラム。両立するのは難しいとは思う。が何とか知恵を活かしてほしいものだ。

その他:
対ロシアで欧州での動き
Once a close Kremlin ally, Bulgaria has imposed economic sanctions on Russia and expelled Russian diplomats.
E.U. ambassadors are struggling to persuade Hungary to join with the bloc and stop importing Russian oil. The war’s economic toll is testing the West’s solidarity.
コロナ対応は大幅に緩む
New Zealand will fully reopen its borders at the end of July, two months ahead of schedule, in an effort to speed up economic recovery.
The E.U. will no longer recommend that masks be required for air travel, citing vaccination levels.
習慣性がある薬を作っていたから?
The Guggenheim Museum in New York and the National Gallery in London are removing the Sackler family name from their walls.

(2022.5.12 Thursday)