A Little Fellow

”Good to a little fellow. ”「小さな顧客に親切に」
1975年に当時ピープルズバンクをモットーにしていた三和銀行に入行した際に先輩から教えられたBank of Americaの創立者であるGianniniの言葉だ。

イタリア系移民であったGianniniが移民のためにサンフランシスコで作った銀行が小さな顧客を大切にする積み重ねで世界最大の銀行に成長するいきさつは以下に述べられている。(A Little Fellowという伝記映画の説明から引用)
Before banks had a branch on every corner, they were an exclusive service for the wealthy. For the poor, working, and immigrant class, saving money was as unreliable as stashing it under a mattress. But at the turn of the 20th century, A.P. Giannini revolutionized the industry with his small bank in San Francisco.
As a first-generation Italian-American, his goal was to serve “the little fellow” and breed prosperity within his immigrant community. By building trust and giving loans on a simple handshake, he created one of the largest banks in the country – Bank of America.

今日、税金の支払いで家の近くのメガバンクへ行った。窓口が一つしか空いておらず、15分ほど待たされた。半沢直樹を演じる俳優が広告に使われている銀行だが、小さな顧客に目を向けることは少なそうだ。

預金金利は0.001%だから1000万円預けていても利息は年間100円に過ぎない。時間外に預金を引き出せばその手数料の方が大きい。

殆どの銀行は、預金は要らないから投資信託を買ってくれとかラップ口座を開設してくれと言う。フィーに目が言っての勧誘で、顧客のことを考えて勧めているわけではない。

みずほ銀行は来年から通帳の発行手数料を1000円取るそうだ。他のメガバンクも追随するらしい。あんなに豪華な通帳でなくて結構だから無料で通帳を引き続き発行してくれる金融機関に期待したい。

「Bank of Americaのお話のころは小さな預金者を大切にして金利を5%払っても中小企業に10%で貸せば利益を上げることが出来た。ゼロ金利の今は、時代が違う。銀行も赤字になりかねない時代だ。あらゆるコストは回収しなければならない」という説明はよくわかる。

ただ、その根底に、
「小さな顧客を大切にする」という精神が無ければ、そもそも銀行業を行うべきでない。
そうした精神を失った銀行は、顧客からの信頼を勝ち取ることも出来ない。

今一度Gianniniの精神を思い出す時だ。

(2020.9.24)

COVID19後の低炭素経済刺激策

低炭素社会の実現、代替エネルギー開発の推進、エコを優先した企業活動等、これらの多くは、エコに過剰な配慮をするため、経済を効果的に刺激し、社会の効率性の向上にはあまり役立たないという印象を持つ人が多いと思う。

私もその一人だったが、McKinseyの最近の、目からうろこのレポートを紹介したい。
How a post-pandemic stimulus can both create jobs and help the climate May 2020

この論文では、COVID19に悩まされる世界であるからこそ、低炭素社会に向けた景気刺激策が、雇用と環境に効果的だと述べている。

政策を定め実行する際の優先順位付けは以下の5つに注意して行うべきという分析はその通りと思われる。
・社会経済的利益
・気候の恩恵
・景気刺激策が実施されるまでの時間軸
・炭素排出量が削減される期間
・実現可能性

更に有益なのは、ヨーロッパにおける低炭素に配慮した経済刺激策の具体例が示されていることだ。12の実行可能なリストが挙げられている。
・機器の交換や廃熱技術のアップグレードなどの手段を通じて、産業のエネルギー効率を向上させる
・大規模な産業クラスターの周りに炭素捕獲と貯蔵のインフラストラクチャを構築する
・住宅を改造して、ヒートポンプを設置するなど、エネルギー効率を向上させる
・暖房、換気、空調、照明、セキュリティをより適切に管理するために、特に商業用不動産にスマートビルシステムを設置する
・広範囲の電化をサポートするために配電網(相互接続を含む)を強化する
・大規模およびコミュニティ規模のエネルギー貯蔵を拡大
・風力および太陽光発電能力の構築を加速
・発光ダイオード(LED)を使用して街路灯の展開を加速する
・電気自動車(EV)充電ネットワークの拡大
・主要なバスの高速輸送と都市鉄道プロジェクトを作成する
・EV製造をスケールアップ
・アクティブな輸送のためのインフラストラクチャを開発する(自転車レーンなど)

こうしてみると、先進の欧州と日本の差は大きくはないようにも見える。日本政府の広報が下手なのか、日本ではそれそれの政策手段をどこまで実施して来たか、実施する予定なのかがよくわからないのが問題だが。いずれにしても、日本でも、すぐにとりかかれる政策オプションも少なくないように見える。

コロナ禍の今こそ、長期的に環境を守り低炭素社会を実現する政策をすぐに採用して行くべきだ。新政権には、巨大な予備費を活用し、国家百年の礎になる政策を立てて実行してもらいたいものだ。

(2020.9.21)

Back to Normal!

金融財政事情研究会(きんざい)という組織があり、金融機関向けに書籍を刊行し、セミナーを主催している。

10月26日から30日まで「第52回金融内部監査人養成スクール」の開催を予定しており、筆者は初日と二日目の午前中に内部監査と内部統制の概論を話すのが初回(もう20年ほど前だ)からの通例になっている。

最近は年3回開催してきたが、今年の4月と7月はコロナ禍で流れた。今回も心配していたが、きんざいによれば、受講希望者が多く、今回は実開催される模様だ。

多くの金融機関が、東京への出張を許可するようになったのだろう。ビジネスがノーマルに戻ってきている兆しだろう。

北海道から沖縄まで、日本国中の金融機関から、内部監査の新任の担当者(部長クラスの受講も多い)が集まる楽しいスクールだ。受講生の皆さんにお目にかかるのが楽しみだ。

(2020.9.18)

The Harder You Work, the Luckier You Get. (その2)

オリンピックのアスリートになるには20000時間の練習が必要、とか、「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす」という宮本武蔵の言葉を紹介したところ、読者の方から質問が来た。

私のブログの読者には内部監査やリスク管理担当の方、CIAの受験を目指している方が多いが、この方はCIAの受験を目指している方のようだ。

質問の趣旨は「CIA試験に合格したいが20000時間もかけるわけにはいかない。どうしたらよいか?」というものだった。

ご存知の無い方に簡単にCIA(公認内部監査人)の試験について概説すると、試験は以下の3つのパートに分かれている。
Part 1: 内部監査に不可欠な要素(基準や原則の理解)
Part 2: 内部監査の実務(実施の仕方)
Part 3: 内部監査のためのビジネス知識

各科目の80%が出来れば合格と言われ、合格率は約30%。通常、各科目で合格点を取るためには200-300時間の勉強が必要だと言われる。200時間X3科目=600時間 一日2時間勉強に時間が割けるとして300日が必要である。「鍛」の3分の1ぐらい。勤め人にはなかなか捻出するのが難しい。

どうすればよいか?
ゴルフでプロになるのは難しいが、100を切るのはそれほど難しくない。月一ゴルファーにも可能な目標だ。
まず、ドライバーが大体まっすぐに飛んでフェアウェイをキープしたい。次に、グリーンの100ヤードまで来たら寄せがぴたりと決まると嬉しい。更には、パットは3パットはしないレベルになる。こうして、ドライバー、グリーン周り、パットという3つのスキルに自信が持てれば、100を切るのは簡単だ。

内部監査で考えよう。ゴルフの3つのスキルに相当するのは何だろうか。内部監査の対象は、ガバナンス、リスク管理、コントロール(内部統制)である。であるとすれば、この3つの分野への知識を収め自信を深めることが出来れば、テストに合格する可能性が高まる。

しかも、これらの分野は、CIAを目指している人なら、毎日仕事で接している分野であるから、仕事をすることが即ち受験勉強になるはずで、仕事の自信を深めることが、即ち受験の自信を深めることになる。

プロになるとかオリンピックに出るのでなければ、あるレベルへ達するのは短時間で効率的なアプローチがある。

短時間でもThe Harder You Work, the Luckier You Get.であるのは間違いない。幸運を祈りたい!

(2020.9.13)

The Harder You Work, the Luckier You Get.(1)

この言葉はプロゴルファーのGary Playerによるものだと思っていた。南アフリカの黒ヒョウと呼ばれ、Arnold Palmer, Jack Nicklausと並びBig 3の一角を占めた。 日本人と変わらぬ体格ながらキャリアグランドスラムを達成している。

この言葉はプレーヤーだけのものではなく、他の多くが言った名言のようだが、猛練習で飛距離を伸ばしショット、パットの正確性を高めた彼にピッタリの言葉といえる。

言われてみれば、それはそうだ。猛練習を積めば積むほど、修羅場で平常心が維持できるだろうし、ミラクルショットが打てる確率が高まる道理だ。

以前バレーボールの話で、素質のある人がオリンピックで活躍できるレベルになりのに20000時間かかると聞いたことがある。小学校高学年から始めて、一日6時間毎日練習して年間2190時間。これを9年間(つまり小学4年から高校3年まで)続けて20000時間になる。これほど努力しないとオリンピックレベルの選手にならないとすると、これは厳しいですね。

そうそう、「千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす」という鍛錬の元になった言葉。宮本武蔵が五輪書に書いた言葉である。
(この項つづく)

(2020.9.9)