世界の動き 2025年9月10日 水曜日

今日の一言
「二人の有力候補」
 ユーラシアグループのニュースレターで、自民党総裁選の有力候補二人が言及されている。
 『(前回の総裁選で)石破氏に次いで2位となったのは高市早苗氏です。彼女は保守的で国家主義的な人物であり、「アベノミクス」(金融緩和と財政緩和)の支持者です。彼女はおそらくその国家主義的な見解で最もよく知られています。彼女はタカ派です。 [彼女は日本初の女性首相となるでしょう。]
 3位だったのは小泉進次郎氏です。彼は父親が首相だったことから、日本でよく知られています。彼は若く、カリスマ性があり、人気があります。両候補とも概ね親米派で、中道右派です。私は小泉氏を穏健派、高市氏を保守派と位置付けます。』
 この二人が順当なところだろうと思う。石破氏を前回選んだ時も、ずいぶんいろいろな報道があり、自民党最後の切り札のようなマスコミの扱いだったが、結局何も出来ず、「口舌の徒」のままで終わってしまった。もはやオワコンの自民党に期待せずに見てゆきたい。

ニューヨークタイムズ電子版より
ネパールの混乱
【記事要旨】
 ネパールで激しい抗議活動が広がっている背景には、ソーシャルメディア禁止措置が引き金となった国民の不満があります。政府はWeChatやYouTubeなど26のサービスを禁止しましたが、これが「言論の自由」への侵害だけでなく、海外で働く家族との連絡手段を断ち切ることとなり、若者を中心に怒りが爆発しました。その後、禁止は解除されたものの、すでに抗議は過激化し、首相や内務大臣の辞任、政府施設や政治家の自宅放火に発展しました。
 抗議の背景には、深刻な若者の失業問題と腐敗したエリート支配があり、スリランカやバングラデシュ同様、若者主導の「ジェネレーションZの抗議」と位置付けられています。現在カトマンズでは軍が出動し、空港閉鎖など国家の統治状況は不透明です。
【コメント】
 「海外で働く家族との連絡手段が断ち切られた」のが暴動の理由というのはよくわかる。
 東京都内のコンビニや飲食店で働くネパール人の若者はとても多い。彼らは自国の混乱をどう見ているのだろうか。

その他の記事
カタール:イスラエルはドーハでハマス指導部幹部を標的とした攻撃を行った。ハマスは、攻撃で幹部は死亡しなかったものの、ハマス関係者が死亡したと主張した。
フランス:エマニュエル・マクロン大統領は、政権崩壊の翌日、退任する国防相で親密な同盟者でもあるセバスティアン・ルコルニュ氏を新首相に任命した。
イラン:同外相は、国連の核監視機関と核施設への国際査察を再開することで合意した。
チュニジア:支援団体は、活動家グレタ・トゥーンベリ氏を乗せてガザに向かう予定だった支援船1隻が、チュニジアに停泊中にドローンとみられる機体による攻撃を受けたと発表した。チュニジア国家警備隊はこの報道を否定した。
タイ:裁判所は、前科のあるタクシン・シナワット元首相に対し、懲役1年を命じた。
米国:下院監視委員会は、ジェフリー・エプスタイン被告の50歳の誕生日を記念して、2003年に出版された追悼の本を出版した。この本には、トランプ氏の名前が書かれた裸の女性の絵を添えた文章も含まれていた。

日本のセブンイレブン
 日本では、セブン-イレブンのようなコンビニエンスストアは欠かせない存在です。「コンビニ」として知られるこれらの店舗は、おにぎりや卵サラダサンドといった高品質な惣菜を、細部までこだわって仕入れ、豊富に取り揃えています。
 現在、セブン-イレブンの親会社である日本法人は、北米の店舗を食のメッカにすることで、事業拡大に数十億ドル規模の投資を行っています。

2025年9月10日 水曜日

世界の動き 2025年9月9日 火曜日

今日の一言
「今後の株式相場」
 石破首相の辞任発言で昨日の日経平均は625円上昇。高値警戒センチメントを吹き飛ばした形だ。今後、どうなるのだろうか。先行きの見方を整理したい。
• 暗い面
o 過大なバリュエーションの調整(下落)は避けられない
o 日米ともに中央銀行が政府の圧力に逆らう独自性を示せば、相場は支えを失う
• やや明るい面
o 米国で金利が急激に下がれば、再び株高を正当化できる可能性がある
o 過剰流動性による大量な資金は、流動性の高い株式市場に向かわざるを得ない。ロング・オンリーの機関投資家は、下げ局面でも株式市場から離脱することはできない。
o 長期的には、米国はイノベーション、日本は政治の安定や活発化する自社株買いが相場を一定程度支えるだろう。
 今の結論としては、「短期的には流動性で支えられるが、1年のスパンでは調整が避けられない」状況に変わりはない。持ち株の半分で利食いをし、債券や金ETF更に低位株・配当株など下落に強い銘柄に入れ替えることが重要かと思われる。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.混乱のフランス
【記事要旨】
 フランソワ・バイルー首相率いる政権は、わずか9ヶ月で昨日崩壊した。過去20ヶ月で4人の首相が交代したことで、政権の崩壊は、日常茶飯事となっている。
 バイルー首相は、膨れ上がる債務問題に対処するため議会で呼びかけた信任投票で敗北した。マリーヌ・ル・ペン率いる極右政党と、左派・極左政党連合は、過半数を占めており、福祉給付の凍結や2つの祝日の廃止など、バイルー首相の提案を拒否した。ル・ペン氏は、代わりに移民への支出削減を提案した。
 マクロン大統領は、バイルー首相の辞任を本日受理し、「数日中」に新首相を指名すると述べた。しかし、マクロン大統領自身の与党である中道派同盟から新首相を指名しても、同じように麻痺状態に陥らない理由はない。
 フランスは、穏健派左派と右派の交代という従来の構図が、極右勢力の台頭によって変わったため、ほぼ統治不能状態にある。イタリアやドイツのような連立政権構築の伝統はフランスにはない。
【コメント】
 バイルー首相と石破首相の任期はほぼ同じだった。首相が代わっても何も変わらないところもよく似ている。

2.抗議活動がネパールを席巻
【記事要旨】
 昨日、ネパールの首都カトマンズで、汚職とSNSの政府による禁止に抗議するデモが行われ、少なくとも19人が死亡した。抗議活動は治安部隊の暴力的な対応を受け、カトマンズを越えて広がり、近年で最大規模となった。
 今朝早く、政府当局はSNS規制を緩和する準備が整ったようだが、汚職への懸念にはまだ対処していない。
 「Z世代の抗議活動」と呼ばれる主に若者で構成されるデモ参加者は、高官による汚職事件の訴追が不十分であることや、FacebookやWhatsAppなどのアプリの禁止に激怒していた。政府が言論の自由を制限しようとしていると主張したため、SNAの禁止は解除されることになりそうだ。
【コメント】
 もしこんなことになったら日本の若者は抗議するのだろうか。
 石破首相の辞任劇を報じ、総裁選の報道に踊る大手メディアを見ると、彼らに未来は無いように見える。さりとて野放図なSNS報道もどうかなと首をかしげる。うーん。

3.エルサレムで銃撃事件
【記事要旨】
 昨日、エルサレム北部の混雑したバス停で二人の武装集団が発砲し、少なくとも6人が死亡した。警察はこれをテロ攻撃と表現し、兵士1人と民間人数人が襲撃者と交戦し、現場で彼らを射殺したと報じた。
 イスラエル当局は、2人はヨルダン川西岸のパレスチナ人村落出身者であると発表。ネタニヤフ首相は、イスラエル軍が「犯人らの出身村落を包囲している」と述べた。
 トランプ大統領はソーシャルメディアで、ハマスが停戦提案に同意しない場合、イスラエルはガザ地区北部への地上侵攻を続行すると警告した。数十万人のパレスチナ住民は、過密状態の南部へ避難するか、リスクを冒してそこに留まるかで板挟みになっている。
【コメント】
 停戦案を拒否し続けてきたのはイスラエルと理解している。トランプの矛先はいつも少し問題の本質と異なる。

その他の記事
英国:ロンドン地下鉄でストライキが発生し、金曜日まで続く予定だ。数百万人が影響を受けている。
韓国:売春婦として働いていた数十人の女性が、米軍を相手取り、謝罪と賠償を求めて訴訟を起こした。これは初めてのケースだ。
米国:ジェフリー・エプスタイン氏の50歳の誕生日を記念した本に掲載されていた、トランプ大統領の署名入りと思われる挑発的な絵が議会で入手された。トランプ大統領はこの絵は偽物だと主張している。

インド:中間層は、トランプ大統領の貿易戦争から財産を守るため、貯蓄を株式市場に投じています。
中国:中国企業がトランプ大統領の関税によって迂回させられた貿易を方向転換させているため、同国のアフリカへの輸出は急増しています。

2025年9月9日 火曜日

世界の動き 2025年9月8日 月曜日

今日の一言
「債券自警団Bond Vigilantes」
 長期国債の金利上昇が止まらない。個人になじみの深い個人向け10年物国債の利回りは1.5%になった。6月には0.55%だったので、急上昇ぶりがわかる。
 最近目にすることが出てきた「債券自警団」という言葉がある。これは、過度な財政出動のような問題の大きい政策がとられた場合、投資家らがその国の国債を損失回避のために売却し、財政規律の緩みを牽制する市場の作用をいう。
 米国のエコノミストが約40年前に名づけたといわれるが、日本でも自警団が活躍できる金利のある世界がそろそろ成立してきたようだ。

ニューヨークタイムズ電子版より
イランで記者が見たこと:崖っぷちにいる国家
【記事要旨】
 イランを取材したTimesの記者は、戦争の痕跡が残る一方で、国民が不安を共有しつつも多様な姿を見せていることを報告している。
 革命防衛隊将軍の追悼では反米・反イスラエルの声が響く一方、若者を中心にインターネットで外の世界とつながり、政府への反発や変化への願望も強まっている。特に女性のヒジャブ離れは象徴的な変化とされる。
 ただし、彼らは外国による介入を望んでいないため、戦争が反乱を誘発するというイスラエル側の期待は外れている。加えて、水不足や電力不足といった生活面の困難も国民を疲弊させている。
 戦闘は一時停止しているが、防衛力の脆弱さや核開発をめぐる選択に直面する中、今後数ヶ月はイランにとって極めて重要な時期になるとみられている。
【コメント】
 中東の大国の様子は日本ではほとんど報道されないので、興味深い記事だ。

その他の記事
ウクライナ:ロシアは、キエフで戦争中最大規模のドローン攻撃を仕掛け、5人が死亡、首相官邸が損傷した。ウクライナの防空軍の網の目の中心に位置する政府地区の主要建物が損傷したのは、戦争勃発以来初めてのことだ。トランプ大統領は昨日、ロシアに対する新たな制裁措置を進める用意があると述べた。
【コメント:トランプの有言不実行が目立つ対露政策だ。米国は何をしたいのか全く見えない】
日本:石破茂首相は、就任から1年も経たないうちに辞任する意向を表明した。自民党は7月の衆議院選挙で大きな打撃を受け、新たな右派勢力が支持を獲得した。
【コメント:この人も、総裁選で登場した際にした約束を果たしていれば、早期退陣に追い込まれることはなかっただろうにと悔やまれる】
ガザ:イスラエルがガザ市への全面侵攻に先立ちパレスチナ人を南へ追いやる計画は、エジプトとの緊張を高めている。エジプトは、イスラエルが自国領内に住民を押し込もうとするのではないかと懸念している。イスラエル軍は、ハマスが利用しているとしてガザ市の高層ビルを攻撃している。
【コメント:南に圧迫されたガザ住民が流出するのはエジプト方面しかない】

韓国:ジョージア州の建設現場での入国管理捜査中に拘束された韓国人労働者数百人を解放することで米国と合意した。
【コメント:「450人を拘束」の昨日の報道には仰天した。友好国からの重要プロジェクトでも、不法移民は容赦しないというトランプの考えだ。この点だけはTACOではない。】

2025年9月8日 月曜日

AIエージェント論文

 先日、arXivという未査読論文が満載されたサイトの紹介をした。今日はそのサイトで見つけた面白い論文を紹介したい。

 [Submitted on 26 May 2025] (提出日)
Ten Principles of AI Agent Economics (原題)
Ke Yang, ChengXiang Zhai (提出者)

 この論文は、AIエージェント経済学に関する10の原則のまとめだ。AIエージェントが経済活動にどのように関与し、人間や社会と相互作用するかを理解するフレームワークとして非常に参考になる。
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AIエージェントの意思決定に関する原則(Principles I–IV)
1. 原則 I:構造的差異
 AIエージェントは人間とは異なる意思決定の駆動要因とメカニズムを持ち、目標関数を最適化することで決定し、その行動は予測可能かつ再現可能である。人間と異なり、生物学的制約を持たず学習や更新が構造的に異なることが影響する。
2. 原則 II:自己認識と自己ニーズ
 エージェントの意思決定は、環境認識・フィードバック・記憶保持を通じて形成される「自己認識」と、その目標関数による「自己ニーズ」に基づく。将来的には、パターン認識からゴール主導へと進化し、より自律的な学習へ移行すると予想される。
3. 原則 III:人間の代理としての存在
 多くのAIエージェントは、人間または集団の利益に基づいて行動する「人間代理(プロキシ)」として機能する。これらは人間福祉を追求する「利他的エージェント」が主流と見なされる一方、悪意ある目的を持つエージェントや「生存志向型エージェント」が存在する可能性にも触れられている。
4. 原則 IV:制約付き最適化としての意思決定
 AIエージェントの意思決定は、制約付き最適化問題として定式化できる。この中で「自律性(autonomy)」は、能力ではなく「権利」として、意思決定の自由度に影響する重要なパラメータであり、効率と安全性とのバランスを取る必要がある。
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社会的相互作用に関する原則(V–VI)
5. 原則 V:共存と相互影響
 AIエージェントと人間は同じ物理世界で共存し、相互に学び合う存在となる。AIが人間の学びを支える時代から、人間がAIから学ぶ時代への転換が進む。マテリアル面・知の面で人間の生活や思考に大きな影響を与えることとなる。
6. 原則 VI:協調と競争
 AIエージェント同士、または人間との間で協調と競争が存在し、それぞれの利害に応じた意思決定を行う。人間の目標が一致すれば協力し、対立すれば競争へ。生命維持を目指す生存志向型エージェントも含めて、エコシステム全体のダイナミクスが複雑化する 。
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経済システムへの統合と影響に関する原則(VII–X)
7. 原則 VII:機能的専門化と階層構造
 AIエージェントは、特定業務に特化した分散型から統合的に意思決定を行う集中型まで、さまざまな構造を形成する。AI同士の分業・階層的組織化が自然に現れ、人間社会の様々な構造に適応していく。
8. 原則 VIII:人間役割とのバランスと規制の必要性
 AIが社会のあらゆる役割を代替しうる一方、人間の専門性が消失するリスクもある。教育・医療・政策判断など、重要分野へのAI代替には法的・行政的な上限設定が求められる。
9. 原則 IX:二形態知性による共著文明
 AIエージェントは文明の重要な共著者となる。日常生活から政治や価値観形成に至るまで、人間とAIの知性が共同で未来を築くことになる。
10. 原則 X:人類存続の最優先原則
 AIが持つ潜在能力とリスクから、人類の存続が常に最重要となる設計・運用原則である。効率や革新を追うあまり、安易に安全性を犠牲にすることのないように、AIガバナンスに人類存続の視点を組み込む必要がある。
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ブログの視点と感想
・ AIと共存する未来社会への骨太の指針が示されている。
•  未来社会の共著者としてのAI:人間とAIが共に文明を築くという視点から、AIとの共進化を描く。
•  効率と安全の葛藤:原則IV・VIIIを軸に、どこまでAIに任せるべきか議論。
•  AIと人間の協調から競争へ:教育や経済活動におけるAIと人間の関係変化をフォーカス。
•  AIガバナンスにおける人類存続の優先:倫理と政策の視点を交えて。
・ 著者の二人はいずれもイリノイ大学の研究者だ。これら二人を調べると芋づる式に数多くの中国人AI研究者が出てくる。米国大学でのAI研究の多くが中国人に依っていることがわかる。先進AIや半導体研究から中国排除のトランプ政策はもう手遅れだ。

2025年9月7日 日曜日

株式市場の動き(9/1-9/5/2025) 備忘的メモ

1. 先週の米国株式市場(終値)
株価指数の動き(週次ベース)
ダウ平均(Dow Jones Industrial Average)
 週初から週末にかけては、金曜日におよそ −220ポイント(約−0.48%) の下落で引けた
Nasdaq 総合指数(NASDAQ Composite)
 金曜日にはほぼ横ばいで終了(−0.1%程度)でしたが、週全体では 約+1.14% 上昇した
S&P 500
 金曜日は −0.3% 下落、一方で週間では +0.33% 前後の上昇で終了

2. 先週の日本市場(終値)
日経平均株価(Nikkei 225)
 週間では +0.70% 上昇
TOPIX(東証株価指数)
 同様に +0.98% 上昇

3. 今週の注目ポイント
・米国雇用統計の衝撃
 8月の非農業部門雇用者数は +22,000人 に留まり、予想の +77,000人前後を大幅に下回った。これにより、FRBの利下げ期待が強まる(CME FedWatchでは次回0.25%利下げの確実性が高まった)
・テクノロジー株の明暗
 Google(Alphabet)は反トラスト訴訟の緩やかな判決を受けて +9% 前後の急騰。AppleやBroadcomなども高パフォーマンスだったが、NVIDIAなど中国依存の強いAI関連企業には弱気な見方も出ている
・長短金利の非伝統的変動
 長期債(30年)の利回りが上昇しながら、短期債(2年)が低下するという逆イールドに近い展開。市場はFRBの将来の政策に敏感に反応
・日本市場への追い風
 米国と日本間の自動車などの関税上限合意(15%)が、日本株(特に自動車関連)を押し上げた模様

4. プライベート・エクイティ(PE)市場の動向
・価値創造の手法が変わる
 アルベレス&マーサル(A&M)は、従来の「レバレッジ+マルチプル拡大」ではなく、オペレーショナル改善へシフトする必要性を強調。AIによるデューデリジェンス加速や、オペレーティングパートナーの台頭がその背景
・2025年前半のPE市場トレンド
 EYによれば、上半期の**M&Aは昨年比+30%**の活況、PEのエグジットは過去3年間で最多。ファンドレイズには苦戦があるものの、ディールの勢いは継続中
・グローバルPE市場の展望
 ベインは、2024年は「息つき」の年だったが、ディールとエグジットが増加傾向にあり、金利の安定化と豊富なドライパウダー(未投資資金)が今後の成長を支えると見ている

5. プライベート・クレジット(PC)市場の動向
・銀行離れの市場シフト
 BlackRockは「銀行が貸出縮小する中、プライベート・クレジットがそのシェアを獲得している」と指摘し、魅力的なリターン源として注目されている
・資産規模の拡大予測
 Morgan Stanleyは、プライベート・クレジットが2024年初時点で約1.5兆ドル、2029年には2.6兆ドルへ成長と見込む
・バブル懸念との関連
 Future Standardの分析では、プライベート・クレジットの成長は銀行・公的市場からのシェア移行が主因であり、全体的な債務増によるバブルではないとしている
・付加価値のある投資源
KKRは、現在の高金利環境が「高い現金利回り」と「堅固な保全付きリターン」を生む構造になっており、特にシニアセキュリティ型のプライベート・クレジットが安定的な収益源として支持されている
・規模は?
 IMFなどの推定では、2024年時点でプライベート・クレジット市場は2兆ドル超〜3.14兆ドルと見積もられており、推計にはばらつきがある。いずれにしても巨大な市場であることは間違いない

6 注目セクター
 以下のセクターに注目:
・小型株(Small-cap stocks)
ラッセル2000が8月に約7%上昇し、S&P 500の約2%を上回るパフォーマンスを記録。利下げへの期待や力強い業績見通しに支えられている。
・ヘルスケア(Healthcare)
 8月以降、ヘルスケア株のリバウンドが進行中。S&P内で最も割安なセクターの一つであり、P/E比も相対的に低め。長期にわたる需要と堅固な収益見通しが魅力(FY2027まで2桁台のEPS成長予想)
・AIの恩恵が広がるセクター全般
 Goldman Sachsは、従来のビッグテック以外にも、FordやBoeing、日用品や小売(Newell Brands、Dollar Generalなど)がAIによる効率向上で恩恵を受けると予想。今後のAI拡大では、テック以外へも波及する可能性
・金融・素材・公益・不動産(Financials, Materials, Utilities, Real Estate)
 Bank of Americaはこれらの“Valueセクター”へのポジションを推奨。インフレ耐性があり、株主還元としての利回りやバリュー性が魅力
・強気な市況&金利環境の支援
 Morgan StanleyのMike Wilsonは、株式市場はまだ利下げのメリットを完全には織り込んでおらず、今後利下げ局面でのパフォーマンスは高まると予想。小型株も有望との見解

(おまけ)キャシー・ウッド氏の推薦銘柄
1位 Bitcoin(暗号資産)
 ARKは長期的に強気で、2030年までにビットコインが数十万〜数百万ドルになるという大胆な予測をしてきた。
 ボラティリティが大きくリスクも高いため、ポートフォリオの中で適度な割合に留める分散投資が望ましい。

2位 Tesla(TSLA)
 ARKの筆頭保有銘柄。AI/自動運転やロボットタクシーといった次世代ビジネスモデルに強い信念がある。
 ただし、逆に2025年通年ではS&Pの「マグニフィセント7」の中で −17.3% とパフォーマンスは低迷中であり、市場の期待を織り込みきれていない面もあり。

3位 Coinbase(COIN)
 暗号通貨交換所として、ARKの中で2番目に大きな構成銘柄。ただし、2025年7月には急騰後に4710万ドル相当が売却されたとの報道もあり。
 規制や業績動向への感応度が高く、価格変動リスクが大きいため注意が必要。

4位 Palantir(PLTR)
 防衛・AI両方の文脈で注目され、年率55%という高成長を維持する企業としても評価されている。
 早期からの革新的ソリューション提供と業界での独自プレゼンスが優位です。

で、どうするか。
 成長テーマ(小型株、AI関連、Palantirなど)と、ディフェンシブ或いはバリュー的なセクター(ヘルスケア、金融、公益、素材)をバランスよく組み合わせるのが堅実。
 キャシー・ウッド氏の銘柄は高い成長見込があるものの、いずれも 高ボラティリティかつリスクあり。ポートフォリオ中に占める割合を抑えながら、テーマ性を取り込むスタイルが望ましい。

2025年9月6日 土曜日