世界の動き 2025年4月9日 水曜日

今日の一言
 Can’t put the toothpaste back in the tube
 英語での定義はThe saying “you can’t put the toothpaste back in the tube” means that once something is done or said, it cannot be undone or unsaid, and the situation is irreversible.
 「一度起こした行為はもう逆戻りできない」という意味だ。
 トランプの関税政策はまさにこれに相当する行為だ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.トランプ大統領は貿易戦争を推し進めた
【記事要旨】
 トランプ大統領は、広範囲にわたる関税をめぐって貿易相手国、企業、投資家から反発を受けている。新たな波は今日から始まる予定だ。これには中国に対するさらなる50%の関税も含まれる。その結果、米国に輸入される中国製品への関税は少なくとも104%になる。
 ​​米国当局者は、政権は交渉に応じる用意があると示唆したが、それで厳しい関税の発効が阻止されるわけではない。ワシントンの当局者によると、約70か国が関税の撤回を求めて米国にアプローチしている。日本、韓国、その他の国との協議が開始される予定だ。
 トランプ大統領は昨日、ソーシャルメディアで、貿易と関税について韓国の大統領代行と「素晴らしい電話」をしたと述べた。また、中国との貿易戦争は回避できるだろうと楽観的な見方を示した。
 「中国も合意を望んでいるが、どうやって始めればいいのか分からない。我々は彼らの電話を待っている。それは起こるだろう!」とトランプ大統領は書いた。
 しかし、米国に対する報復関税を脅かしている中国は、譲歩していない。商務省は昨日、米国を「脅迫」と非難し、北京は「最後まで戦う」と宣言した。
 市場:S&P 500 は取引開始時に大きく上昇したが、取引終了時には 1.6% 下落した。投資家がトランプ氏の高関税を遂行する意欲を過小評価したことが一因だとタイムズの副編集長は述べた。
 自動車:先週発効したトランプ氏の輸入車に対する 25% の関税により、企業は米国への自動車の出荷を停止し、カナダとメキシコの工場を閉鎖し、米国人労働者を解雇している。

トランプについてさらに詳しく
・イーロン・マスク氏は、関税をめぐる対立が激化する中、トランプ氏の最高貿易顧問(Peter Navaro氏のことか)を「レンガ袋よりも愚かdumber than a sack of bricks」と非難した。
・最高裁は、解雇された連邦職員数千人の再雇用を政権に命じた判事の判決を差し止めた。
・税務当局は、移民の税務情報を、彼らを国外追放しようとしている治安当局と共有することに同意した。
・石油・ガス業界の幹部は、トランプ氏とその関税についてほとんど批判していない。しかし、内心では彼らは心配している。
・トランプ氏は、米国での石炭の使用拡大を目的とした大統領令に署名した。
【コメント】
 トランプ就任直後は米国株への投資はTINA, There is no alternative.だった。今は、世界中の投資家が二の足を踏んでいる状況だ。

2.イラン核協議を前に時計の針は刻々と進む
【記事要旨】
 米国とイランの土曜日の協議は核軍縮に焦点が当てられるとみられるが、この選択肢はイランの指導者らによってほぼ確実に拒否されるだろう。これは西側諸国にとって、テヘランの核能力を制限し戦争を回避する最後のチャンスかもしれない。
 トランプ大統領は最近、「これまで見たことのないような爆撃」でイランを脅したが、合意を望む姿勢を明確にしている。協議の時間は限られている。7月末までに、EUはイランに対する国連の懲罰的制裁を再開するかどうかを示唆しなければならない。そうなれば、イランは核拡散防止条約から離脱すると述べている。そうなれば、イスラエルは米国の支援を得て、イランの核施設の破壊に動くかもしれない。
 イスラエル:トランプ大統領がイランとの交渉を発表したとき、同国では多くの人が驚いた。イスラエルの一部はイラン攻撃を支持していた。
【コメント】
 イランはどうするのだろうか。誇り高い指導者は容易にトランプの誘いに乗るとは思えない。米国はウクライナ、ガザに加え3つの戦争に対応する能力があるとも思えない。両者ともこれ以上譲歩せず時間切れかと思われる。

3.コンゴの首都を襲う致命的な洪水
【記事要旨】
 数日にわたる豪雨でコンゴ民主共和国の首都キンシャサが洪水に見舞われ、少なくとも33人が死亡した。人口1,700万人の巨大都市(アフリカ最大級)を流れる川が決壊し、主要道路が冠水した。数百軒の家屋が破壊され、数千人が避難を余儀なくされた。
 当局によると、死者数はさらに増える見込み。同国は東部での反政府勢力の攻撃ですでに混乱に陥っていた。
 常に存在する危険:アフリカ諸国は致命的な洪水や干ばつに頻繁に見舞われており、科学者はこれを気候変動のせいだとしている。コンゴでは洪水により毎年数百人が死亡している。
【コメント】
 キンシャサの人口が1700万人とは知らなかった。2023年の一人当たりGDPは僅か627ドル。ルワンダやウガンダの1000ドルより出遅れている。

その他の記事
済州島航空機墜落事故:済州島航空機2216便のパイロットは、墜落して179人が死亡した数分前に、着陸のさまざまな計画を話し合っていたことが記録で明らかになった。
中国:北京の報道官は、JD・ヴァンス副大統領の「中国農民」に関する発言を「無知」かつ「無礼」と評した。
ウクライナ:大統領は、東部でロシア軍とともに戦っていた中国人2人が捕まったと述べた。

2025年4月9日 水曜日

世界の動き 2025年4月8日 火曜日

今日の一言
「株価の行方」
 多くのアナリストが口を閉ざしているが、米国株式市場では株価上昇へのマグマがたまっていると見える。
 トランプの関税緩和や大幅減税が実施されれば大きく反発する可能性が高い。
 リスクテーカーにとっては押し目買いが大きな利益をもたらす局面だ。個別株の判断は難しいから、取りあえずは米国の株式指数を買うのが妥当な戦略ではないかと思う。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.トランプ大統領、中国にさらなる関税を課すと脅迫
【記事要旨】
 トランプ大統領は昨日、中国に対し、米国に対する報復関税を撤回しなければ、明日から50%の追加関税を課すと警告した。
 ​​アジア:バングラデシュとベトナムはトランプ大統領に関税の発動延期を要請し、フィリピンは米国製品への関税引き下げを提案した。韓国と日本はトランプ政権と協議したいと述べた。
 欧州:EU当局は2部構成のアプローチをとっており、米国製自動車と工業製品への関税引き下げを提案する一方で、広範囲にわたる輸入税で報復する準備を進めている。欧州連合の代表は明日、関税の対象とする製品リストについて投票を行う予定だ。
 市場:ウォール街は大きく変動し、S&P 500 は下落で取引を終えた。

トランプについてさらに詳しく
・ジョン・ロバーツ最高裁判所長官は、米国が誤って国外追放したエルサルバドル移民を送還するよう命じた判事の命令を一時的に差し止めた。
・トランプ政権は政府のウェブサイトとデータをオフラインにすることで、大統領に独自の歴史解釈を宣言させている。
・トランプ政権は、米国でかつてない規模に移民収容施設を拡張するため 450 億ドルを支出する計画だ。
【コメント】
 景気後退のリスクはトランプは織り込み済みだ。世界の「自由貿易」と「民主主義」を彼は破壊しようとしているようだ。

2.トランプ氏、イランとの会談を発表
【記事要旨】
 トランプ氏は昨日、米国はイランの核開発計画の抑制について土曜日に会談を行うと述べた。会談で進展が得られなければ、「イランは大きな危険にさらされる」と警告した。
 場所は明らかにされていないが、対面会談は、2015年の核合意締結以来、米国とイランの間で行われる初めての会談となる。トランプ氏は誰が交渉を主導するかは明らかにしなかったが、「ハイレベル」になると述べた。
 イスラエルのネタニヤフ首相との会談後、大統領執務室で演説したトランプ氏は、イランとの新しい核合意は以前の合意よりも「強力」になると述べた。
 背景:トランプ氏は、イランが核物質の97%を国外に輸出していたにもかかわらず、2018年に以前の核合意から離脱した。イランはその後能力を回復し、現在は爆弾級に近いウランを生産している。
【コメント】
 これもトランプ流マッチポンプだ。譲歩を引き出せなければ前政権のせい、少しでも譲歩を引き出せれば自分の手柄。凄い米国司令官だ。

3.黒海停戦はウクライナに利益をもたらすか?
【記事要旨】
 タイムズ記者が先週、黒海での哨戒任務にウクライナ海軍とともに参加した。黒海ではロシア軍が撃退され、商業船舶が戦前レベルにほぼ戻った。
 記者は、ウクライナがすでに黒海で優位に立っている場合、オデッサの海軍士官や企業経営者が黒海停戦(キエフとモスクワが先月交渉に合意)をどう見ているかを知りたかった。多くはそれを否定し、一部は疑念を表明した。
「私にとっては何も変わりません」とある艦長は語った。「いつも通りの戦いです」。
 ロシア:ウクライナ侵攻後、約80万人のロシア人が国を逃れた。和平協定だけでは彼らを帰国させるのに十分ではないかもしれない。
【コメント】
 米情報機関はこうした情報を報告しているはずだが、トランプが認識しているかどうかは定かでない。情報局の上司がトランプにとって気に入らない情報を上げていない恐れが大きいからだ。

その他の記事
ミャンマー:混乱状態にある同国の軍事政権が、重要な援助の到着と配布を遅らせ、制限していると批評家らは指摘している。
米国:2023年10月7日のイスラエル攻撃の犠牲者の家族が、パレスチナ系アメリカ人ビジネスマンを訴え、ハマスのトンネルと武器の隠し場所を隠すために不動産を開発したと非難した。
南スーダン:トランプ政権は、戦争再開の脅威が広がる中、世界で最も若い国の国民が保有する米国ビザをすべて取り消した。

2025年4月8日 火曜日

世界の動き 2025年4月7日 月曜日

今日の一言
「市場の混乱への見方」
 強気派:ベッセント米財務長官は、新たな関税が米経済のリセッション(景気後退)を招くとの見方を否定し世界の金融市場が売り浴びせに直面する中、強気の姿勢を示した。ベッセント氏は、新たな関税は必要な措置だとの見解を示し、「リセッションを織り込まなければならない理由は見当たらない」と語った。
 ハセット国家経済会議(NEC)委員長は、関税により米国の消費者物価が「幾分上昇するかもしれない」と認めつつ、エコノミストや連邦準備制度理事会による懸念は行き過ぎとの認識を示し、「米国における消費者への大きな影響」は予想していないと述べた。
 弱気派:サマーズ元米財務長官はソーシャルメディアXに投稿し、3日と4日の株価急落について、「2日間の値動きとしては第2次世界大戦以降で4番目の大きさだった」と指摘。「これ以外の3回は1987年のブラックマンデー、2008年の金融危機、そして新型コロナウイルスのパンデミックだ。このような規模の下落は、先行き問題が起きる可能性が高いことを示唆する」と記した。
 インフレ率の上昇や成長鈍化、個人消費の減少を警告。景気減速は「ほぼ不可避」だと語った。トランプ関税によって被り得る打撃については「恐らく30兆ドル程度。経済への損失は、原油価格が2倍になったようなものだ」と指摘した。
 強気派は少数派だ。彼らでさえ、トランプの意図を測りかねている。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.トランプ大統領のチームは怒りに直面しても関税を擁護
【記事要旨】
 トランプ大統領の最高顧問らは昨日、週末に発効した世界関税を擁護するため、さまざまなメディアに出演した。彼らは、世界中の金融市場の混乱を一蹴し、貿易戦争は最終的に米国の経済状況を改善すると主張した。
 英国のEU離脱の影響をの比較でロンドン支局長は分析している。米国が世界貿易の支点となっていることから、トランプ大統領の動きははるかに広範囲に影響を及ぼしている。また、英国のEU離脱と同様に、最終的な影響は未定である。トランプ大統領が方針転換する可能性はまだある。楽観論者は、EUは英国の離脱後も崩壊していないと指摘している。
 しかし、自由貿易の台頭は不可逆的であり、その恩恵はあまりにも強力であるため、世界の他の国々は、主役がいなくてもシステムを維持する方法を見つけることができるだろうと経済学者は述べた。
 今後: 関税は予想よりもはるかに高く、米国企業を混乱に陥れた。先週の余波にまだ動揺しているウォール街は、さらなる混乱に備えている。

トランプについてさらに詳しく
・ピエール・ポワリエブルは、カナダの次期首相になる運命にあるように思われた。しかし、カナダを併合するというトランプの脅しにより、彼のチャンスは一変した。
・ベトナムは、トランプをなだめるために米国に対する関税をゼロに引き下げると提案した。それで十分だろうか?
・連邦判事は、トランプ政権はメリーランド州出身の男性を悪名高いエルサルバドルの刑務所に強制送還する方針を転換しなければならないと述べた。
・マルコ・ルビオ国務長官は、国外追放をめぐる論争のため、米国は南スーダンのパスポート所持者全員のビザを取り消すと述べた。
【コメント】
 特定の国民向けにビザを取り消してしまえば、その国民で米国在留者は不法移民ということになる。国外追放の対象だ。
 次のステップは特定国のパスポート保持者の入国禁止だろう。

2.ガザで殺害された援助活動家について新たな光が当てられたビデオ
【記事要旨】
 イスラエル軍は土曜日、先月ガザで15人が殺害された事件への軍の関与に関する当初の説明に欠陥があったと発表した。国連は、15人は救急隊員と救助隊員だったと述べた。
 この発言は、タイムズ紙が入手したビデオが軍の以前の事件の説明の重要な部分に矛盾しているように見えた翌日に行われた。軍は、暗闇の中「ヘッドライトも緊急信号もなしに」車列が近づいてきたため、兵士らが発砲したと主張していた。しかし、ビデオには救急車と消防車がはっきりとマークされ、緊急ライトが点灯していた。
 このビデオ映像は、集団墓地で発見された救急隊員の携帯電話で発見された。
【コメント】
 イスラエルの説明はいい加減だ。要するにイスラエル軍に近づくなという警告だ。警告のために救急隊員15人を殺害するのは惨い。

3.シリアには安全が確保されていない化学兵器があるかもしれない
【記事要旨】
 世界有数の化学兵器監視団体によると、アサド政権崩壊後もシリアには100カ所以上の化学兵器施設が残っているとみられる。この数字はこれまでのどの推定よりはるかに高い。
 監視団体は現在、致死的な備蓄のうち何が残っているか、またどれだけが安全であるかを評価しようとしている。サリン、マスタード、塩素ガスなどの化学物質は、シリア暫定政府にとって大きな試練となる。先月、監視団体は残っている兵器をすべて破壊すると述べたが、重要な第一歩となる監視団体の代表をまだ任命していない。
【コメント】
 イラクと違いシリアは化学兵器を使用したことがあるので、備蓄があるのは不思議ではない。少量でも過激派の手に渡ればその効果は政権を破壊するのに十分だ。少量のサリンで日本の首都が震撼したのは1995年3月20日だった。

その他の記事
スーダン:最近チャドに逃げた生存者は、緊急支援部隊RSFのを狙った軍の空爆は、民間人を襲うだけだったと語った。
バチカン:フランシスコ法王は巡礼者のためのミサで、2週間前に退院して以来初めて公の場に姿を現した。
イスラエル:テルアビブの入国管理当局は2人の英国議員の入国を拒否し、ロンドンに送還した。

2025年4月7日 月曜日

「22世紀の資本主義」を読んで

 久しぶりに書店に行ったら、ベストセラーの第二位に挙がっていた。成田悠輔氏の著作を初めて読んだ。

 貨幣がなくなるという主論理が、本を読んでも理解できなかった。現在は貨幣がありお金を所有する人はお金を出せば(殆ど)なんでも(値上がりしたコメも)手に入れることが出来る。政府の補助制度で難病の人でも高額医療制度により高度医療を受けて命が守られる。そして医療費の上限が守られる。これらは貨幣制度を前提としたシステムのおかげだと思う。

 成田氏の描くすべての情報が物の(人間の)価値を決める世界では、生きるのに必要なお米をどうしても入手できない人が出てくるのではなかろうか。社会的に「与える」ことが出来ない人は社会から見捨てられることになるのではなかろうか。

 成田氏の「老人は切腹しろ」という過激な言動を、本書は理論的に(あまり私には論理的に思えないのだが)支える論考に思えてきた。

 本書でわかりやすいのは「はじめに」と「おわりに」だ。成田氏のペダンティクな考えがよくわかる。

2025年4月6日 日曜日

Laura Loomer氏の役割

 最近Signal Gateで話題になったThe Atlantic誌のニューズレターの記事だ。
 以下要約する。

『極右活動家であり陰謀論者でもあるローラ・ルーマーは、トランプ政権内の決定に影響を与えるという物議を醸す役割を果たしてきた。ソーシャルメディアでの扇動的な発言と挑発的な行動で知られるルーマーは、トランプ大統領に直接アクセスし、人事問題で助言し、大統領の政策に不誠実だとみなした役人の解任を主張したと報じられている。
 彼女の影響力は、最近の国家安全保障会議(NSC)の人事異動で特に顕著になった。大統領執務室でトランプと会談した後、複数の上級職員が解任された。ルーマーは、トランプのMAGA政策を弱体化させていると彼女が考える人物のリストを提示し、NSC内で「血みどろの惨劇」と表現される事態を招いたと報じられている。トランプはルーマーを「愛国者」で「強い人」と称賛しているが、彼女の物議を醸す見解と扇動的な発言の履歴は、トランプ自身の側近の間でさえも批判を巻き起こしている。
 ルーマー氏の役割は、特に伝統的な専門知識よりも指導者への忠誠心が優先される政権において、型破りな人物が政治的決定を形作る上で影響力を増していることを浮き彫りにしている。彼女の関与は、政府運営におけるイデオロギー的整合性と専門的能力のバランスについて疑問を投げかけている』

 ルーマー氏の批判によりウォルツ安全保障補佐官は風前の灯のようだ。ルーマー氏は国務省を次のターゲットにしており、マルコ・ルビオ国務長官も安泰ではいられないようだ。

 トランプの第一次政権では彼を押しとどめるマチス国防長官やケリー首席補佐官がいたが、現在トランプを取り巻くのはイエスマンばかりだ。そしてこの傾向をルーマー氏は更に助長している。トランプの政権運営はとても危うい。

2025年4月5日 土曜日