「雪が降る」を思い出して

いま窓の外を大粒の雪が降っている。
 水気が多いせいか、まだ積もってはいない。この後温度が下がれば、もう少し固い雪になり、「降り積む」、かも知れない。

 「雪が降る」情景で思い出す詩と小説を紹介したい。

 まずは、アダモの詩「雪が降る」。
 Tombe la neige
 Tu ne viendras pas ce soir
 Tombe la neige
 Et mon cœur s’habille de noir
 雪が降っている
 君は今夜は来ないだろうね
 雪が降っている
 ぼくの心は黒い服をまとう
   平易なフランス語の詩。白と黒の対比がきれいだ。作曲もアダモだ。

 次は、藤原伊織の短編集「雪が降る」
 作者の長編小説「テロリストのパラソル」や「てのひらの闇」のエッセンスが詰まった傑作短編集だ。
    Amazonで検索すると小説は絶版で、Kindleでしか手に入らない。

 アダモは78歳で存命だ。
 藤原伊織は2007年に食道癌で59歳で亡くなった。重なる飲酒で食道を焼き切ったように思われる。自らの小説のようにハードボイルドな生き方だった。

(2022.2.10 Thursday)

世界の動き 2022.2.10 Thursday

N.Y. Times 電子版より     雪を楽しみに待つがいまだ降らず。

1.米国のいくつの州でマスク規制撤廃
【記事要旨】
コロナ感染に最も慎重なニューヨーク州とマサチューセッツ州がマスク規制を緩和した。室内での飲食にワクチン証明及びマスク着用を不要とする(NYC)、学校でのマスク着用を不要とする(MS)という動きはニュージャージー、カリフォルニアでも見られる。
政府も専門家と図りコロナとの共存策を検討中。専門家の間でマスク規制撤廃の是非に合意はないが、世論は強く要求。
【感想】
妥当な動きかと思われる。日本では外を歩くほとんど全員がマスクをしており世界的には異常に見える。

2.ウクライナ情勢、次は?
【記事要旨】
2日間の外交的努力のあと、プーチン大統領は、軍事侵攻か西側諸国との関係維持かの難しい選択を迫られている。両立は難しい。
欧州は40%のガス供給をロシアに依存している。ロシアはエネルギー分野に経済の30%を、輸出の60%を依存している。西欧は制裁をロシアに課しても、ロシアからのエネルギー供給は必要とする。
米はロシア侵攻の際非難する数千人の自国民の救出を計画。
【感想】
この記事のように二者択一の解決ではないはず。マクロンは中間ので落としどころを捜しているはず。N.Y.Timesの記事はここにきてやや米国よりになっている印象。

3.ISの家族にとってコントロール不能な難民キャンプ
【記事要旨】
クルド人軍事勢力が元ISの60000家族が住むシリア北東にあるアル‣ホルキャンプを襲い子供一人が死亡、女性子供にけが人が出た。
キャンプを守るクルド人組織からの銃撃であり、キャンプはコントロール不能の状態。
【感想】
民族間の憎悪の連鎖をどう断ち切るのか。難しい問題だ。

その他:
チャールズ・ディケンズの判読不能だった暗号のようなメモを判読した。
For more than a century, Charles Dickens scholars have tried to decipher a one-page letter Dickens wrote in symbols, dots and scribbles. It sat unread for decades in a vault, but computer programmers finally helped crack the code.

アカデミー賞の予想。
“The Power of the Dog” secured 12 nominations,  “Dune” earned 10.  ke on “West Side Story” and  “Belfast”  — each scored seven nominations.
記者の一押しは、なんとDrive My Car! 何か受章すると良いな。
If you watch one movie: Make it Ryusuke Hamaguchi’s “Drive My Car,” which nabbed four nominations, including best picture and director. Yes, it’s nearly three hours long, but it’s a stunning meditation on grief and love.

(2022.2.10 Thursday)

ウクライナへのロシアの侵入と西側の制裁に備える

現在のウクライナの状況は日本人の多くにとっては対岸の火事だが、ロシアや東欧で事業を行う企業にとっては他人ごとではない。

 リスク・マネジメントとしては何が考えられるか?まずは自分たちのこの地域での事業規模を、特に、西欧からの制裁が発動されたら影響を受ける分野にどれだけのビジネスを行っているか今すぐ把握する必要がある。

 特に、ガス・エネルギーの分野、先端技術の分野、金融分野では、西側の制裁は確実な一方、ビジネス上の契約は長期間にわたるものが殆どなのでどのようにBCPをするか分析が必要だ。

 不確定要素が多いが、ロシアの侵入と、それに対する制裁は瞬時に起こる可能性がある。シナリオ分析をしっかりして有事に備えたい。

(2022.2.9 Wednesday)

世界の動き 2022.2.9 Wednesday

N.Y. Times 電子版より

1.Russia undercuts Macron
【表現】
 タイトルがはっきり理解できない初めての事例。undercutというのは
マクロンの発表を少し値引きしている(それほどの成果がない)ということ。
【記事要旨】
 フランスは、マクロンはプーチンとの会談で、ベラルーシでの演習が終われば2月中にロシア軍は撤兵する。近い将来、ウクライナ周辺で軍事行動を起こすつもりはない。という約束を得た、と発表した。
 これに対し露は以下の反応。A Kremlin spokesman rejected those reports. “In the current situation, Moscow and Paris could not make a deal. France is an E.U. and NATO member,” he said, adding, “France is not leading NATO.”
 マクロンはウクライナでゼレンスキー大統領に事態を軽視しないようにと語る。
【感想】
 マクロンープーチン会談後共同記者会見があったのだがプーチンの説明は明瞭ではなかった。フランス当局の踏み込んだコメントに、ロシアは否定している。 フランスの努力は特筆ものだが、プーチンとの会談では彼の発言を好意的に解釈するのは禁物。安倍元首相のプーチンとの十数回の首脳会談が希望的観測に終始し全く成果を生まなかったのが教訓。

2.デンマーク、コロナ制限を解除
【記事要旨】
 デンマークは世界でもっとも人口当たりコロナ感染者が多い国だったが、コロナに関する制限をすべて解除した。
 重症者、死者は著減し、ICUの使用率がここ数か月で最低水準なのが解除の理由。
 先進国ではこうなる。
 The end of restrictions in Denmark could herald a future in which rich countries can afford “living with the virus,” as long as they have high vaccination rates, huge testing capacities and strong health data infrastructure. In Denmark, 81 percent of the population has been fully vaccinated, and 62 percent have received a booster.
【感想】
 前提となるのは、高いワクチン接種率、巨大なテスト能力、強い健康データのインフラ整備、と言っているが、いずれも我が国ではまだ備わっていない。ああ。

3.オリンピックのウイグル人競技者
【記事要旨】
 Dinigeer Yilamujiangという20歳のウイグル人女性が聖火点火者に選ばれたことについて見方が分かれている。中国では好感され西側は人権弾圧を洗い流そうとするものだと見ている。
 式後目立たなくしていた彼女は出場したクロスカントリー競技で予選突破できなかった。また、
 For the second consecutive Winter Games, four of the six U.S. figure skaters who arrived to compete in singles events are Asian American. A few decades ago, figure skating was almost uniformly white.
【感想】
 人種の多様性について米国の許容性の高さを最後は言っているのかな。
 陸上競技では昔から黒人選手が代表を占めており、N.Y.Timesの自慢ともとれる記事は、的外れ。
 それから聖火の彼女はヒジャブをしておらず家族の生活ぶりをTVで見て、彼女の一族はムスリムではないと思うのだが、この重要な点を明確にした記事はない。

その他:
ワクチンはファイザーとモデルナが独占的ということか。
Johnson & Johnson has quietly shut down a crucial plant producing its Covid vaccine.

The 2022 Oscar nominations were dominated by “The Power of the Dog,” “Dune,” “Belfast” and “West Side Story.” Beyoncé got her first nomination.
日本では「ドライブマイカー」がノミネートされたことが大きなニュースですが。。

インドではヒンズーとイスラムの人種対立が激化の様子。
 Indian extremist elements are taking their calls for anti-Muslim violence into the mainstream, enabled by political leaders and law enforcement.
 Officials closed schools in India’s southern Karnataka State after protests erupted over a ban on hijabs, Reuters reports.

(2022.2.9 Wednesday)

三好達治「乳母車」を読んで

最近はめっきり乳母車を見なくなった。たまに見かけると犬が鎮座していたりする。前回の「雪」に続いて、三好達治の「乳母車」だ。

・・・・・・・・・・
母よ――
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花いろのもののふるなり
はてしなき並樹のかげを
そうそうと風のふくなり

時はたそがれ
母よ 私の乳母車を押せ
泣きぬれる夕陽にむかって
轔轔と私の乳母車を押せ

赤い総のある天鵞絨の帽子を
つめたき額にかむらせよ
旅いそぐ鳥の列にも
季節は空を渡るなり

淡くかなしきもののふる
紫陽花いろのもののふる道
母よ 私は知っている
この道は遠く遠くはてしない道
・・・・・・・・・・
前回紹介した「雪」と同じく、「乳母車」は三好30歳の処女詩集「測量船」に掲載されている。

 この詩を読むと、夕日に向かって母親が乳母車を押しており、その中には幼児時代の三好がいる情景が目に浮かぶ。全編に「淡くかなしき」「たそがれ」「泣きぬれる」「つめたき」といった主情的な言葉がちりばめられ、強い抒情性を感じる詩だ。

 細部の理解はなかなか難しいが、最後の「この道は遠く遠く果てしない道」で母への変わらない思慕の念が表現されているのは理解できる。

 「雪」と「乳母車」をいう日本詩の中の最高傑作を処女詩集に著した三好達治は天才だと思う。三好は63歳まで生きたが、この2作を超える詩は残せなかった。

 プライベートにも波乱に富んだ生き方をした人だが、彼自身は自分の才能をどのように見ていたのだろうか。

(2022.2.8 Tuesday)