30歳からの希望退職募集

武田薬品工業で、30歳からの希望退職を募集するそうだ。日本の製薬業界最大手企業の決断は驚きを以って受け取られている。

多分理由が二つある。

一つ目は、2014年にCEOについたクリストフ・ウェバーが果断だということだろう。これまでも希望退職を募る日本企業はあったが、対象は最年少で40歳の社員までだった。今回は、30歳に大きく引き下げられた。
会社の残って貢献できる人かどうかは30歳までには、見極められる。武田に合わない人はなるべく若い時代に再チャレンジの機会が与えられるほうが良い。というウェバー社長の考えがベースになっていると思われる。

二つ目は、希望退職に関する退職手当は、特別損失として認識される点だ。
武田の役員に対するインセンティブ・プランを見ると、業績の評価基準として、営業CF, EPS, TSRといった指標が出てくる。
今回の処置で、一時的な退職金支払損失が発生するが、会計上は特別損失であり、営業損失ではない。従って営業利益は下がらない。果断な処置が市場で評価されれば株価は上がる可能性が高い。

ついでに加えると、アイルランドの製薬会社シャイアーの買収に係る約4兆円ののれんは、シャイアーの業績次第で減損の恐れがあるが、のれんの減損が発生したとしても特別損失で営業損失ではない。

繰り返しになるが、今回の希望退職の発表は外国人CEOによる果断な決断だ。同時にその決断を行わせたのは、退職費用が特別損失になるために、彼の賞与にネガティブな影響を与えない、というのも重要な要素だ。

(2020.8.18)