カエルの面に (NYTimes Deal Bookより)

ドナルド・トランプは、2016年の選挙戦で、ポルノ女優とのセックススキャンダルを隠すために事業記録を偽造したと陪審が判決を下したことで、米国史上初の重罪で有罪判決を受けた大統領となった。
通常であれば、これは彼の政生命の終わりを意味するだろうが、不思議なことが起きている。判決を受けてウォール街とシリコンバレーの資金が彼の再選キャンペーンに流れ込んでいるのだ。
共和党の大口献金者たである1789キャピタルの社長で昨夜ピエールホテルで行われたトランプの資金調達イベントの共同主催者でもあるオミード・マリク氏は「判決は全く影響ない」と語った。
ヘッジファンドの億万長者(そしてバイデン批判者)ビル・アックマンもトランプを支持する予定だ。
来週サンフランシスコでトランプの資金調達イベントを共同主催するベンチャーキャピタリストのデビッド・サックス氏は、これを「見せかけの裁判」と呼んでいる。セコイア・キャピタルのパートナー、ショーン・マグワイア氏は、判決後にトランプ陣営に30万ドルを寄付した。
選挙は激戦州の数郡で決まる可能性が高いため、トランプ氏に流れ込む大金は意味を持つ。
こうした動きは、バイデン大統領の政策への不満が理由の1つだ。トランプ氏の移民に対する強硬姿勢、低税、規制撤廃の姿勢は億万長者にとって大きな魅力であり、11月にトランプ氏が勝利すれば、現在の寄付をはるかに上回る利益が得られると計算しているのかもしれない。もう1つの計算は、トランプ氏が低迷しているときに支持すれば、その利益がさらに大きくなる可能性があるということだ。
トランプ氏は数々の論争にもかかわらず、多くの世論調査で支持率のトップに立っている。ブラックストーンのCEO、スティーブ・シュワルツマン氏のように、一度はトランプ氏と距離を置いたが方針転換して再びトランプ氏を支持する者もいる。
フロリダ州のロン・デサンティス知事などのトランプ氏の同盟者や、イーロン・マスク氏のようなバイデン氏の強硬な批判者は、この判決が「アメリカの司法制度に対する国民の信頼」を傷つけたと述べた。
トランプ陣営も有罪判決を利用しようとしている。彼の選挙運動ウェブサイトには「速報」バナーが貼られ、「トランプ大統領は何も悪いことをしていないと思うなら100ドル!」など、緊急の募金要請が書かれていた。
一方、バイデン陣営はこれを利用するつもりだ。ホワイトハウスは、判決が選挙結果にほとんど影響しないとしても、有権者に選択を委ねる機会と捉えている。「ドナルド・トランプを大統領執務室から締め出す唯一の方法は、投票箱だ」とバイデンは判決後にXに投稿し、寄付を呼びかけている。
マスクのソーシャルメディアプラットフォームであるXは、選挙前にトランプとのライブビデオタウンホールを開催する。トランプは共和党全国大会開始の4日前の7月11日に判決を受ける予定だ。刑務所に入ることになるのか?大統領になれば自分自身を赦免できるのか? それは不明だが、確実なのは、彼がおそらく控訴し、この訴訟を選挙シーズンのさらに奥深くまで引きずり込むだろうということだ。
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ウォールストリートやベンチャーキャピタリストが、有罪判決にも関わらずトランプを支持し続ける理由がわからない。彼らにメリットのある政策を実行してくれる政治家は、モラル面で大きな問題があっても支持するということのようだ。
アメリカのサスペンス映画を見ると、政治家は良心のかけらもない我利我利亡者に描かれるのが通例だ。
そういう人物に乗っかって金を儲けようとする資本家の姿がよくわかる記事だ。

2024年6月1日 土曜日