ガバナンスの無い組織

 東京五輪組織委員会の理事会といえば、森元会長の女性に対する差別的な発言がきっかけで女性理事が半分になったという報道で取り上げられたことくらいしか記憶にない。

 高橋元理事の疑惑は、彼が委員会の中でほぼ野放図に権力をふるうことができたのが根本原因と言ってよいと思う。東京五輪組織委員会のHPを見ると、理事会と評議会の人員構成を見ることができる。

 見て驚くのは、政治家がトップで、天下り官僚が専務理事・常務理事を占め、多くのスポーツ選手・スポーツ団体の代表・著名な有識者が理事で並び、会議が構成されていることだ。これでは、実務に長けた高橋氏の仕事が汚職につながりそうなものであったとしても、ストップをかけられそうな人がいない。

 東京オリンピックを招致するさいは、既存施設を使ったコンパクト五輪を標榜していたはずだが、安倍首相、森会長、菅幹事長(のち首相)と役者がそろうと、予算に対するブレーキは全く効かず、当初案を2兆円も上回る放漫五輪になった。

 五輪に関する、予算統制や、契約の管理は、誰がどう云う権限で行っていたのだろうか。女性蔑視で揺れているときに、そこに気が付かなかった自分の不明を恥じるし、メスを入れることが無かったメディアの責任は重大だと思う。組織委員会はさっさと解散しており、元当事者へのヒアリングも簡単に行きそうもない。

 ガバナンスが無い組織を作り、自在に動かし、利権の巣窟にする愚は、いい加減に犯すのを止めにしたい。

(2022年8月21日 日曜日)